欧州連合理事会
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欧州連合理事会(おうしゅうれんごうりじかい)は、欧州連合 (EU) の立法・政策決定機関。EU加盟国の閣僚で構成されている。欧州連合理事会は、欧州連合の公式文書において、単に理事会(Council)や 閣僚理事会(Council of Ministers)と表記されることもある。なお、欧州憲法が発効すれば「閣僚理事会」が正式な名称になる。本部はベルギーのブリュッセルにおかれているが、各種会議はルクセンブルクの首都ルクセンブルク市で開かれる。なお欧州連合理事会は、欧州委員会の委員長と加盟各国の首脳が構成員となる欧州理事会とは異なる機関である。
目次 |
[編集] 概要
欧州連合理事会は、マーストリヒト条約(欧州連合条約)に定められた「3つの柱」(共同体の活動、共通外交・安全保障政策、警察・司法協力)の達成のために、加盟国の一般経済政策の調整や、共通政策に関する主要な決定の採択、欧州連合理事会が定める規定を実施する権限の欧州委員会への付与を行っている。具体的には、欧州委員会の提案を受けて、欧州議会との共通手続きに沿う形でEU法を制定する。また予算についても欧州議会とともに承認する。また、外交防衛においては加盟各国の独自政策を認める一方で、EU全体として対外条約の署名・締結するほか、司法行政においても欧州刑事警察機構(Europol)を通じた協力の推進にあたっている。
[編集] 名称
EUでの公用語は加盟国それぞれの公用語となっており、2007年1月1日以降はその数が23となっている。したがって欧州連合理事会の正式名称も公用語と同じ数だけあることになる。
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[編集] 権限
欧州連合理事会はEUにおける主たる立法機関であるが、その権限は欧州連合の3つの柱のうち、第1の柱である共同体の活動分野についてはローマ条約の第202条に、第2の柱である共通外交・安全保障政策分野については、マーストリヒト条約の第14条と第15条に、第3の柱である警察・司法協力分野については、同条約第34条によってそれぞれ与えられている。
[編集] 立法権
欧州連合理事会は欧州委員会から提出された法案について審議する。採択された法案は欧州議会で諮られ、賛同を得られて初めて法令として制定される(欧州議会の立法手続きについては欧州議会の立法権の項を参照)。法案の発議権は欧州委員会が独占しており、法案が提出されなければ立法手続きが開始されないが、欧州連合理事会は欧州委員会に対して法案の提出を要求することができ、なおも提出されなければ、欧州司法裁判所に不作為訴訟を提起することができる。
[編集] 予算審議
欧州委員会が作成した予算案について、欧州連合理事会は欧州議会と共同で審議する。ただし条約や法律で義務とされていない支出については、欧州議会が最終的な決定権を有し、また欧州議会は予算案を全体として拒否することができる。(欧州議会の予算審議については欧州議会の予算審議の項を参照)
[編集] 対外関係
欧州連合理事会はEU域外の国や国際機関との間での条約や協定を締結することができる。この間の交渉については通常欧州委員会が行う。このほか、第3国に対して経済制裁を課すことができる。
[編集] 第3国のEU加盟
EUへの加盟を希望する国は、欧州連合理事会に対してその旨を申請する。欧州連合理事会は欧州委員会の意見を聞き、欧州議会の総議員の過半数となる賛成を得たのちに、全会一致で加盟を決定する。なおEU加盟条約の締結にあたっては、EUは当事者にはならず、現在加盟している各国と加盟予定国との間で締結される。
[編集] 組織
欧州連合理事会の議長は、欧州理事会の議長国の閣僚が務める。また、各国の常設代表部で構成される委員会のコレペール(COREPER Comité des représentants permanents)と理事会事務局が欧州連合理事会の補佐にあたる。コレペールは常設代表(大使)が出席するコレペール2と、常設代表代理が出席するコレペール1がある。前者は政治案件、司法・内務、予算などを扱い、後者は域内市場、環境、雇用、研究を扱っている。理事会事務局は議長国を補佐し、共通外交・安全保障政策(Common Foreign and Security Policy CFSP)、司法・内務の分野で特に重要な役割を担っている。事務局の下には欧州委員会に類似した分野別の総局(Directorat-General)が置かれている。一般に、欧州委員会の総局と欧州連合理事会事務局の総局の関係は必ずしも良好ではない。事務総長はCFSP上級代表(High Representative)が兼務している。1999年10月18日からは、スペインの外務大臣や北大西洋条約機構(NATO)の事務総長などを歴任したフランシスコ・ハビエル・ソラナ・マダリアーガが事務総長を務めている。
[編集] 理事会の種類
欧州連合理事会は、固定的なメンバーによって構成される機関ではなく、政策分野別に複数存在し、それぞれ加盟国を代表する関係閣僚がメンバーとなる(外交なら総務・対外関係理事会、司法・内務なら司法・内務理事会)。しかし、これらの理事会は法令上は単一の「欧州連合理事会」であり、そのためコレペールの調整で合意を得た事項(Aポイント事項)は、直近の理事会に上程され、承認されることができる(例:司法・内務関係の事項について、総務・対外関係理事会に上程する)。
- 総務・対外関係理事会 (General Affairs and External Relations GAERC):加盟国の外務大臣で構成される、欧州連合理事会の核となる理事会で、毎月1回会合が開かれており、CFSP上級代表も出席する。
- 経済・金融理事会 (Economic and Financial Affairs Ecofin)
- 農業・漁業理事会 (Agriculture and Fisheries):毎月1回会合が開かれており、加盟国の農業・漁業大臣で構成され、農業特別委員会が補佐にあたる。
- 司法・内務理事会 (Justice and Home Affairs JHA)
- 雇用・社会政策・保健・消費者理事会 (Employment, Social Policy, Health and Consumer Affairs Council EPSCO)
- 競争力理事会 (Competitiveness):2002年6月に域内市場、産業、研究の3理事会が統合されて発足した。ヨーロッパ域内、科学研究担当閣僚で構成される。
- 運輸・通信・エネルギー理事会 (Transport, Telecommunications and Energy):2002年6月に3つの理事会が統合されて発足した。
- 環境理事会 (Environment)
- 教育・青少年・文化理事会 (Education, Youth and Culture EYC)
[編集] 表決手続き
欧州連合理事会における表決手続きには以下の3種類がある。どの手続きを適用するかについてはローマ条約、マーストリヒト条約で定められている。
- 単純多数決:過半数の賛成で可決となる。事務的案件などで適用される。
- 特定多数決:加盟国ごとに割り当てられた票数に基いて投票され、全345票中255票以上の賛成があり、かつ賛成票を投じた国の人口の合計が加盟国の総人口の62%以上であるときに可決となる。欧州連合「3つの柱」の1つである「共同体の活動」に関する多くの案件について適用される。各国の割当票数は次のとおり。
- 全会一致:全ての加盟国の合意で可決する。棄権は認められているものの、棄権国も決定事項に従わなければならない。欧州連合「3つの柱」のうち、「共通外交・安全保障政策」や「刑事問題に関する司法協力」に関する案件、「共同体の活動」に関する案件でも徴税に関するものや欧州委員会の提案と異なる決定、欧州委員会の同意を得ている欧州議会の修正案を退けるときに適用される。またEUへの新規加盟の承認に当たっても適用される。