真宗大谷派
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
基本教義 |
---|
縁起、四諦、八正道 |
三法印、四法印 |
諸行無常、諸法無我 |
涅槃寂静、一切皆苦 |
人物 |
釈迦、十大弟子、龍樹 |
如来・菩薩 |
|
部派・宗派 |
原始仏教、上座部、大乗 |
地域別仏教 |
インドの仏教、日本の仏教 |
韓国の仏教 |
経典 |
聖地 |
|
ウィキポータル |
真宗大谷派(しんしゅうおおたには)は、浄土真宗の一派。京都・六条烏丸にある真宗本廟を本山とする。末寺数は9804。
目次 |
[編集] 概要
宗祖親鸞聖人が、仏説無量寿経に基づき、教行信証(顕浄土真実教行証文類)を撰述してあきらかにした、阿弥陀如来の本願の名号を体とする往還二廻向(往相廻向・還相廻向)を教義の要旨とする。
本尊は、阿弥陀如来一仏。
正依の聖教は、
浄土真宗本願寺派(通称「お西さん」、「本派」、「西本願寺」)との区別の便宜上、「お東さん」、「大派」等と呼ばれる。本山の真宗本廟も、同様の理由により、本願寺の東西分派以降、「東本願寺」と通称されている。
宗派の運営は、上記の教義の要旨・本尊・正依の聖教に依拠し定められた、同派における最高規範である「真宗大谷派宗憲」、及びそのもとに制定される諸規則、条例、達令に基づいて行われている。「宗憲」前文に謳われている、宗派運営の根幹となる方針は、次の3点である。
- 同朋社会の顕現
- すべて宗門に属する者は、常に自信教人信(一人ひとりにおいて浄土真宗の教えを常に受け止め直し、それを他の人とともに確かめてゆくこと)の誠を尽くし、同朋社会の顕現(ともに阿弥陀仏の浄土に向かって歩む社会生活を実践し続けること)に努める。
- 宗本一体
- 宗祖親鸞聖人の真影を安置する真宗本廟は、宗門に属するすべての人の帰依処(依り所となる教えを確かめる大切な場所)であるから、宗門人はひとしく宗門と一体としてこれを崇敬護持する。
- 同朋公議
- 宗門の運営は、何人の専横専断をも許さず、あまねく同朋の公議公論に基づいて行う。
[編集] 現在の組織
上記の基本方針に従い、種々の教化活動・社会活動・諸事業が展開されている。具体的な運営は、現在、中央と地方(国内30の教区と海外3の開教区、及びそのもとにある420の組〈そ〉)の組織によって行われている。それぞれの組織においては、以下に示す通り三権分立の形態が取られている。
- 中央
- 立法府に相当する組織(議決機関):宗会(宗議会〈各教区から選出される僧侶の代表〉と、参議会〈各教区から選出される門徒の代表〉の二院制)
- 行政府に相当する組織(執行機関):内局(宗会によって指名され宗教法人真宗大谷派の代表役員を務める宗務総長、及び宗務総長が任命する5名の参務により構成される)、及びそのもとに置かれる宗務所(中央)・教務所(教区ごとに置かれる地方出先機関)・開教監督部(海外の開教区ごとに置かれる出先機関)等の宗務執行機関
- 司法府に相当する組織(審査機関):審問院(宗議会の同意を得て内局が指名する審問院長を長とする)
- 地方(教区)
- 立法府に相当する組織(議決機関):教区会(各組から選出される僧侶の代表)と、教区門徒会(各組から選出される門徒の代表)
- 行政府に相当する組織(執行機関):教区教化委員会(教務所長を委員長とする)、及び教務所に駐在する宗務役員
- 司法府に相当する組織(審査機関):査察委員会
- 地方(組〈そ〉)
- 立法府に相当する組織(議決機関):組会(各寺院・教会の主管者〈各寺院・教会の僧侶の代表〉)と、組門徒会(各寺院・教会の門徒の代表)
- 行政府に相当する組織(執行機関):組教化委員会(組会で選出される組長を委員長とする)
- 司法府に相当する組織(審査機関):査察委員
※上記以外に、各教区・開教区における教法の聞信・宣布の拠点として、56の別院が設置されている。
また、以上に属する僧侶・門徒を代表して、真宗本廟の宗祖親鸞聖人真影の御給仕並びに仏祖崇敬の任に当たり、同朋とともに真宗の教法を聞信する宗派の象徴的地位として門首が置かれている(現在の門首は、第25世の浄如〈大谷暢顕〉)。
なお、混同されやすいが、東京都台東区の東本願寺を本山とする浄土真宗東本願寺派(末寺数 三百数十)は、宗派のあり方をめぐる見解の相違により、1981年に真宗大谷派から離脱・独立したもので、現在、両者は別個の宗教法人である(⇒お東騒動)。
本願寺を中心とする教団は、もと一つの勢力であったが、江戸時代の最初期に、現在見られるような東西両本願寺を中心とするかたちになった。
[編集] 本願寺の東西分派の経緯
本願寺教団の東西分派は、戦国時代の最末期、大坂の石山本願寺を本拠地として戦われた一向一揆(石山合戦)(1570年~1580年)終結時の教団内部における見解の相違に遠因を持つ。
石山合戦末期の本願寺教団内には、当時対立していた織田信長との講和を支持する意見と、徹底抗戦を主張する意見とがあった。当時の本願寺門主であった11代顕如は、全面講和を支持する勢力と行動を共にし石山本願寺を退去したが、顕如の長男教如は、徹底抗戦派と共に一時石山に留まり、退去後も抗戦派への支持を募った。この教団の分裂的状況は、1591年、本願寺が豊臣秀吉から寺地(七条堀川)を与えられて京都に戻った後も継続していた。これに着目した徳川家康は、1602年、本願寺のすぐ東(六条烏丸)の土地を教如に与え、最大の宗教勢力であった本願寺の勢力分散をはかった(自身も三河時代に一向一揆に苦しめられた経験を持っており、本願寺教団の力を大きな脅威と感じていた)。これにより本願寺は、顕如の三男准如を12世門主とする西本願寺(現在の浄土真宗本願寺派)と、長男教如を12世門主とする東本願寺(現在の真宗大谷派)とに分裂することになった。(*以上、浄土真宗、本願寺の歴史の項をも参照)
現在、本願寺派(西本願寺)の末寺・門徒が中国地方に特に多い(いわゆる「安芸門徒」など)のに対し、大谷派(東本願寺)のそれが、別院・教区の設置状況に見られるように北陸地方・東海地方に特に多い(いわゆる「北陸門徒」「尾張門徒」「三河門徒」など)のも、上述の歴史的経緯の反映といわれる。
[編集] 歴代門首
- 親鸞 (1173~1262)
- 如信 (1235~1300)
- 覚如 (1270~1351)
- 善如 (1333~1389)
- 綽如 (1350~1393)
- 巧如 (1376~1440)
- 存如 (1396~1457)
- 蓮如 (1415~1499)
- 実如 (1458~1525)
- 証如 (1516~1554)
- 顕如 (1543~1592)
- 教如 (1558~1614) (これ以降、真宗大谷派)
- 宣如 (1604~1658)
- 琢如 (1625~1671〈1664譲〉)
- 常如 (1641~1694〈1679譲〉)
- 一如 (1649~1700)
- 真如 (1682~1744)
- 従如 (1720~1760)
- 乗如 (1744~1792)
- 達如 (1780~1865〈1846譲〉)
- 厳如 (1817~1894〈1889譲〉)
- 現如 (1852~1923〈1908譲〉)
- 彰如 (1875~1943〈1925譲〉)
- 闡如 (1903~1993)
- 浄如 (1930~)
[編集] 別院
- 同派の別院は、下記の通り56ヵ寺院が置かれており、設立の経緯は、
- 宗祖や歴代門首等の旧蹟地、もしくは由緒地に設置される場合
- 各地域における弘教の拠点地に設置される場合
- 上記1、2の理由が複合的に作用して設置される場合
がある。地域的偏頗はあるもののほぼ全国(海外3)に置かれ、各地における聞法・弘教の拠点となっている。
- 北海道(6)
- 札幌別院(札幌市中央区)
- 函館別院(函館市)
- 旭川別院(旭川市)
- 帯広別院(帯広市)
- 根室別院(根室市)
- 江差別院(北檜山郡江差町)
- 東北(2)
- 東北別院(仙台市宮城野区)
- 原町別院(福島県原町市)
- 関東・甲信越(5)
- 横浜別院(横浜市港南区)
- 甲府別院 光沢寺(甲府市)
- 三条別院(新潟県三条市)
- 高田別院(新潟県上越市)
- 新井別院(新潟県妙高市)
- 北陸(7)
- 東海(12)
- 高山別院 照蓮寺(岐阜県高山市)
- 大垣別院 開闡寺(岐阜県大垣市)
- 高須別院 二恩寺(岐阜県海津市)
- 岐阜別院(岐阜市)
- 竹ヶ鼻別院(岐阜県羽島市)
- 笠松別院(岐阜県羽島郡笠松町)
- 静岡別院(静岡市)
- 三河別院(愛知県岡崎市)
- 豊橋別院(愛知県豊橋市)
- 赤羽別院 親宣寺(愛知県幡豆郡一色町)
- 名古屋別院[東別院](名古屋市中区)
- 桑名別院 本統寺(三重県桑名市)
- 近畿(16)
- 中国・四国(2)
- 広島別院 明信院(広島市中区)
- 土佐別院(高知市)
- 九州(3)
- 四日市別院(大分県宇佐市)
- 佐世保別院(長崎県佐世保市)
- 鹿児島別院(鹿児島市)
- 海外(3)
- ハワイ別院(アメリカ合衆国 ハワイ)
- ロスアンゼルス別院(アメリカ合衆国 ロスアンゼルス)
- ブラジル別院南米本願寺(ブラジル サンパウロ)
[編集] 教区
- 北海道教区(北海道)
- 奥羽教区(青森県、秋田県)
- 山形教区(山形県)
- 仙台教区(岩手県、宮城県、福島県)
- 東京教区(茨城県、群馬県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県)
- 三条教区(新潟県東部・北部)
- 高田教区(新潟県西部)
- 富山教区(富山県東部)
- 高岡教区(富山県西部)
- 能登教区(石川県能登地域)
- 金沢教区(石川県南部)
- 小松教区(石川県小松市及び周辺地域)
- 大聖寺教区(石川県加賀市及び周辺地域)
- 福井教区(福井県、岐阜県郡上市の一部)
- 高山教区(岐阜県北部)
- 大垣教区(岐阜県西部)
- 岐阜教区(岐阜県中部・東部)
- 岡崎教区(静岡県、愛知県東部)
- 名古屋教区(愛知県西部)
- 三重教区(三重県)
- 長浜教区(滋賀県北部、福井県敦賀市)
- 京都教区(福井県若狭地域、滋賀県東部・南部・西部、京都府、兵庫県北部、鳥取県、島根県)
- 大阪教区(大阪府、兵庫県南東部、奈良県、和歌山県)
- 山陽教区(兵庫県南西部、岡山県、広島県、山口県)
- 四国教区(香川県、愛媛県、徳島県、高知県)
- 日豊教区(大分県、福岡県東部)
- 久留米教区(福岡県西部、佐賀県)
- 長崎教区(長崎県)
- 熊本教区(熊本県)
- 鹿児島教区(宮崎県、鹿児島県、沖縄県)
- 海外
- ハワイ開教区
- 北米開教区
- 南米開教区
- なお、大谷派では、国内各教区の広域的な連携をはかり、各地域における聞法・弘教活動を一層推進することを目的として、連区制が定められている。現在置かれているのは、以下の5連区。
- 連区 一覧
- 北海道・東北連区 上記教区のうち、1~7の7教区
- 北陸連区 上記教区のうち、8~14の7教区
- 東海連区 上記教区のうち、15~20の6教区
- 近畿連区 上記教区のうち、21~24の4教区
- 四国・九州連区 上記教区のうち、25~30の6教区
[編集] 教育(真宗大谷派学校連合会)
- 大学院(7)
- 大谷大学大学院
- 京都光華女子大学大学院
- 大阪大谷大学大学院
- 同朋大学大学院
- 名古屋音楽大学大学院
- 名古屋造形芸術大学大学院
- 愛知文教大学大学院
- 短期大学(11)
- 高等学校(19)
- 上記の他、全国に所在する宗派関係の保育園・幼稚園 520園は、「社団法人大谷保育協会」を組織している。
- 大谷保育協会 地域別 加盟園数
- 北海道 31
- 東北 34
- 関東甲信越 72
- 北陸 38
- 東海 111
- 近畿 67
- 中国・四国 6
- 九州 151
- 大谷保育協会 地域別 加盟園数
- その他の教育機関
- 大谷専修学院(京都)
-
- 各教区が設置する教育機関
- 三条真宗学院(新潟)
- 金沢真宗学院(石川)
- 名古屋真宗学院(愛知)
- 大垣真宗学院(岐阜)
- 大阪真宗学院(大阪)
- 各教区が設置する教育機関
[編集] 関連項目・人物
- 浄土真宗
- 本願寺
- 東本願寺
- お東騒動
- 的場直樹 - 福岡ソフトバンクホークス捕手、実家が真宗大谷派寺院で自身も大谷派の僧籍を持つ
- 杉浦正健 - 法務大臣、就任時の記者会見で、真宗大谷派の門徒であり、宗教上の信念から「死刑執行のサインはしない」と発言した。
- 植木等 - 実父は大谷派僧侶、芸能界入りのため果たせなかったが父の後継を志し東洋大学へ進学・修行していた。