磯崎新
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磯崎 新(いそざき あらた、1931年7月23日 - )は日本の建築家で、ポストモダンの代表的な建築家。建築設計のみならず活発な評論活動でも知られ、海外の建築界から最も信頼されている日本人建築家のひとり。国内外を通じて幅広く活躍している代表的なアトリエ建築家である。大分県大分市出身。妻は彫刻家の宮脇愛子。
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[編集] 経歴
- 1954年、東京大学工学部建築学科を卒業。
- 1960年、丹下健三研究室で黒川紀章らとともに東京計画1960に関わる。
- 1961年、東京大学数物系大学院建築学博士課程を修了。
- 1963年、丹下健三研究室(都市建築設計研究室)を退職し、磯崎新アトリエを設立。
- 1967年、大分県立大分図書館竣工。
- 初期の代表作。1997年に改修され、アートプラザになった。
- 1970年、大阪万博のお祭り広場(1970)を丹下と共同で手がけた。
- 1975年、著書『建築の解体』、群馬県立近代美術館、北九州市立美術館など多産な年。
- 1980年、写真家篠山紀信とコンビで「建築行脚」シリーズを刊行(-1992年)。
- 1983年、つくばセンタービルでポストモダン建築の旗手と目されるようになった。
- 1986年、東京都庁舎のコンペに参加(8社指名)、超高層建築の丹下健三案(当選)に対して、シティホールのあり方を問う中層建築の案を提出した。
- 1991年、1991年から2002年まで第一期、二期、三期と亘り『批評空間』誌編集顧問。
- 1991年、1991年から2000年に亘り世界各地で開催されたAnyコンファレンスを企画、参加。
- 1996年、2000年、2004年、ヴェネチアビエンナーレ建築展・日本館コミッショナー。
[編集] 評価
ポストモダン建築を牽引した建築家である。豊富な受賞経験による権威感からか、公共施設の受注が多い。1980年代以降はロサンゼルス現代美術館、ブルックリン美術館など日本国外でも活躍している。閉塞的な日本のアカデミズムを脱却して、世界的な次元で建築を構想する姿勢は、日本国内では批判に晒されることも多かったが、日本の現代建築を世界的なレベルに押し上げた建築家の一人といえるだろう。現代において磯崎の影響を受けずに、建築を学ぶことはありえないという声も一部にある。キューブ(立方体)などのプラトン立体を多用することで知られる。
また、その建築設計や評論活動などでは、歴史的な文脈を踏まえた上での極めて批評的、批判的な活動が具体的な建築計画や建築物、著作なども含めた幅広い活動へと絶えず反映されている点において、建築家としては極めて突出した活動を継続的に行っていることからも、単にポストモダン建築家としてのみに位置づけることが困難な存在でもある。
[編集] 受賞
- 1967年、大分県立大分図書館(大分市)により、日本建築学会賞(作品部門)受賞
- 1975年、群馬県立近代美術館(高崎市)により、日本建築学会賞(作品部門)受賞
- 1986年、王立英国建築家協会(RIBA)により、RIBAゴールドメダル受賞
- 1988年、朝日賞受賞
- 1996年、第6回ヴェネチアビエンナーレ建築展日本館展示「亀裂」(ヴェネチア)により、ヴェネチアビエンナーレ建築展金獅子賞受賞
[編集] その他
- 読売新聞で、バブル期の東京都の公共建築である東京芸術劇場、東京都庁舎、江戸東京博物館、東京都現代美術館、東京国際フォーラムの5作品を「粗大ゴミ」と評した。ただ、これは建築家のデザイン力だけではなく、東京都が建築家に要求したプログラムに対する発言とされる。(『磯崎新の発想法』参照)
- コンペの審査員も多数務め、長谷川逸子の湘南台文化センターや、伊東豊雄のせんだいメディアテークの際の審査員でもある。プリツカー賞の審査員も務めた。
- 漫画「ママレード・ボーイ」の中にも彼の作品の絵が載っている
- 丹下健三を最もよく知る一人で、2005年の葬儀において弔辞を読んだ
- 作家の沢木耕太郎と親交があり、沢木の紀行文『深夜特急』にも登場する。(『深夜特急 4 シルクロード』新潮社文庫、参照)
[編集] 代表作
- ホワイトハウス(1957) 現存せず。
- 美術家吉村益信のアトリエ。
- 大分医師会館(1960) 現存せず。
- N邸(中山邸)(1964) 現存せず。
- 1998年、秋吉台国際芸術村内にN邸をベースにした建物が建築された。
- 岩田学園(1964)
- 大分県立大分図書館(1966) 1997年、大分市立磯崎新記念館アートプラザとしてリニューアル。
- 日本万国博覧会・お祭り広場の諸装置(1970) ロボットの「デク」、「デメ」が知られる。
- 北九州市立美術館(1974)
- 北九州市立中央図書館(1974)
- 群馬県立近代美術館(1974)
- 西脇市岡之山美術館(1983)
- つくばセンタービル(1983)
- パラディアム(1985)
- ニューヨークの古い映画館をディスコに改装したもの。
- 新都庁舎コンペ案(1986)
- ロサンゼルス現代美術館(1987)
- カザルスホール(主婦の友社)(1987)
- 水戸芸術館(1990)
- JR九州・由布院駅駅舎(1990)
- 1992年、駅舎の一部が第二回Anyコンファレンス「Anywhere」の会場となった。
- 国際花と緑の博覧会 国際陳列館・国際展示水の館(1990)
- バルセロナ92年オリンピック体育館(1991)
- 兵庫県立先端科学技術支援センター(1993)
- ア・コルーニャ人間科学館(1993)
- 京都コンサートホール (1995)
- 珠海/海市計画(計画案)(1995)
- 1997年、東京にて「「海市」-もうひとつのユートピア」と題した展覧会が開催された。その後、海外へと巡回。
- 岡山西警察署(1997)
- 静岡県コンベンションアーツセンター(1998) GA JAPAN36
- Isozaki Ateaビルバオ,スペイン[1998-]
- 秋吉台国際芸術村(1998)
- なら100年会館(1999)
- 1992年-1993年、ニューヨーク近代美術館において"Nara Convention Hall International Design Competition"と題した展覧会がコンペ終了後に開催された。
- カイシャ・フォールム(2002)
- セラミックパークMINO(2002)
- 山口情報芸術センター(2003)
- 「トリノ・パラスポート・オリンピコ」(トリノオリンピックアイスホッケー会場) (2005) GA JAPAN79
[編集] 展覧会
- 第14回ミラノ・トリエンナーレ 「電気的迷宮」(1968年)ミラノ
- 2002年にカールスルーエと大阪、2003年に横浜で再制作作品を展示。
- 「日本の時空間―間―」展(1978年-1979年)パリ
- 2000年、東京にて帰還展「間―20年後の帰還展」を開催。
- 「磯崎新1960/1990建築展」(1991年-1998年)
- ロサンゼルス、東京、茨城、群馬、大阪、福岡、ヨーロッパ各都市へと巡回。
- 第6回ヴェネチアビエンナーレ建築展日本館展示「亀裂」(1996年)
- 日本館コミッショナー:磯崎新 (日本館金獅子賞、パビリオン賞受賞)
- 1996年度アーキテクチュア・オブ・ザ・イヤー「カメラ・オブスキュラあるいは革命の建築博物館」(1996年)
- プロデューサー:磯崎新、キュレーター:田中純、中谷礼仁、松原弘典、貝島桃代
- 「海市」-もうひとつのユートピア(1997年)
- 第7回ヴェネチアビエンナーレ建築展日本館展示「少女都市」(2000年)
- 日本館コミッショナー:磯崎新、キュレーター:小池一子
- 「間―20年後の帰還展」(2000年)東京
- 第8回ヴェネチアビエンナーレ建築展日本館展示「漢字文化圏における建築言語の生成」(2002年)
- 日本館コミッショナー:磯崎新、ディレクター:岡崎乾二郎
- 「アンビルト/反建築史」展(2002年)東京
- 以後、中国へ巡回。
- 「磯崎新版画展―百二十の見えない都市」(2002年)岡山
[編集] 著作・作品集
- 空間へ(1971年)(美術出版社)
- 建築の解体(1975年)(美術出版社)
- 建築および建築外的思考/磯崎新対談(1976年)(鹿島出版会)
- 現代の建築家 磯崎新(1977年)(鹿島出版会)
- 建築の1930年代/系譜と脈絡(1978年)(鹿島出版会)
- 手法が(1979年)(美術出版社)
- 建築行脚(1980年-)(六耀社)
- 現代の建築家 磯崎新2(1984年)(鹿島出版会)
- 週刊本 ポスト・モダン原論(1985年)
- ポストモダンの時代と建築/磯崎新対談(1985年)(鹿島出版会)
- 建築の政治学 磯崎新対談集(1989年)(岩波書店)
- 見立ての手法(1990年)(鹿島出版会)
- イメージゲーム-異文化との遭遇-(1990年)(鹿島出版会)
- 世紀末の思想と建築(1991年)(岩波書店)
- 見立ての手法(1990年)(鹿島出版会)
- 現代の建築家 磯崎新3(1993年)(鹿島出版会)
- 現代の建築家 磯崎新4(1993年)(鹿島出版会)
- 季刊ja no.12 磯崎新(1994年)(新建築社)
- 始源のもどき-ジャパネスキゼーション-(1996年)(鹿島出版会)
- 造物主議論-デミウルゴモルフィスム-(1996年)(鹿島出版会)
- 建築家捜し(1996年)(岩波書店)
- 建物が残った-近代建築の保存と転生-(1998年)(岩波書店)
- 栖十二(1999年)(住まいの図書館出版局)
- 人体の影-アントロポモルフィスム-(2000年)(鹿島出版会)
- 神の似姿-テオモルフィスム-(2001年)(鹿島出版会)
- 反建築史/UNBUILT (2001年)(TOTO出版)
- 対論 建築と時間(2001年)(岩波書店)
- 建築における「日本的なもの」(2003年) (新潮社)
- 空間の行間(2004年)(筑摩書房) 福田和也との共著
- Japan-ness in Architecture(2006)(MIT Press)