蔵王連峰
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蔵王連峰(ざおうれんぽう)は、奥羽山脈の一部を構成する連峰で、山形県と宮城県の両県南部の県境に位置する。『日本百名山』においては蔵王山と紹介されている。単に蔵王と呼ぶ場合は、北を山形自動車道、東を東北自動車道、南を国道113号、西を国道13号で囲まれた地域にある峰々や高原などの総称である。
活火山であり、新噴気口や火口湖の御釜が見られる(いずれも宮城県側)。火山の恩恵である温泉が両県の裾野に数多く存在し、スキー場も多く設置されている。両県における主要観光地の1つ。
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[編集] 主な山
日本海側と太平洋側とに分け、且つ、山形・宮城両県の県境を形成する「中央分水界」(分水嶺)が北東から南西にかけて斜めに走る一方、一般に「蔵王連峰」と認識される峰々は、これに交差するように北西から南東に斜めに走る(以下、これを「蔵王連峰」とする)。両者が交わるのは、熊野岳(主峰)から刈田岳の辺り。
このように蔵王連峰は、中央分水界(県境)をまたいで山形・宮城両県に張り出した形になっているため、各々の県内部分を「山形蔵王」「宮城蔵王」と呼ぶことがある。
中央分水界の峰々と蔵王連峰の峰々の両者の総称として「蔵王」と呼ばれるが、「蔵王連峰」の名称で一括されることも多々ある。以下、総称は「蔵王」とする。
[編集] 中央分水界
中央分水界上で「蔵王」の一部とされる場合があるのは、北の笹谷峠から南の二井宿峠(または金山峠)までの峰々。北東から記載。★は「蔵王連峰」と共通部分の峰々。
- 北端:笹谷峠(山形自動車道・国道286号)
- 雁戸山(1,485m)
- 熊野岳(1,841m)★
- 馬の背★
- 刈田岳(1,758m)★
- 冷水山(1,340m)
- 船引山(1,173m)
- 二ツ森山(1,269m)
- 番城山(1,323m)
- 蓬沢山(975m)
- 南端:二井宿峠(国道113号)
[編集] 蔵王連峰
蔵王連峰上の峰々を北西から記載。★は「中央分水界」と共通部分の峰々。共通部分、特に馬の背より北西側が「山形蔵王」、南東側が「宮城蔵王」と呼ばれる。
- 西端:国道13号
- 瀧山(1,364m)
- 鳥兜山
- 横倉山
- 三宝荒神山(1,703m)
- 地蔵山(1,736m)
- 熊野岳(1,841m)★
- 馬の背★
- 五色岳(1,674m)
- 刈田岳(1,758m)★
- 杉ヶ峰(1,745m)
- 後烏帽子岳(1,681m)
- 屏風岳(1,817m)
- 不忘山(1,705m)
- 大梁川山(720m)
- 花房山(819m)
- 青麻山(779m)
- 東端:東北自動車道
[編集] 歴史
蔵王連峰の名前は、蔵王権現を祀ったことに由来する。
戦後、宮城県側の蔵王高原には、引揚者が入植し、山を切り開いて酪農地帯に変えた。近年は牛乳の消費量低下と価格の底割れで一次産品中心の経営が不安定化しているため、蔵王ブランドの乳製品や肉製品などの二次産品開発が進められている。さらに、それらの二次産品を用いたレストランも増えている。また、牧場を観光牧場化して野外コンサートを誘致したり、キャンプサイト化したりもしている。その他、公衆温泉の改築、蕎麦の特産化など、日帰り客向けの観光開発が進められている。
[編集] 観光
南東北(仙台経済圏)の山岳観光地としては、近接する福島県の裏磐梯と観光コンテンツがやや似通っており、場合によっては競合関係にある。裏磐梯が東京資本などの域外からの投資が多いため、首都圏からの集客にも力を入れているのに対し、蔵王は地元資本が中心であるため、首都圏での営業力がやや弱い。
南東北主要都市圏の内、仙台都市圏は夏季にあまり暑くならないため避暑の需要は少ないが、他の山形都市圏・福島都市圏・郡山都市圏などはフェーン現象で高温となるため、避暑需要がある。避暑地としては、バブル景気期に高級化したホテルやペンションが多く、また、湖や温泉がある裏磐梯の人気が強く、宿泊もする者も多いため客単価が高い。一方、蔵王は仙台から近いため、日帰り客を中心としており、夏季の客単価増が課題となっている。
秋季は、宮城県側では鳴子峡が最も有名な紅葉スポットであるため、蔵王では、新蕎麦などの秋の味覚との組合せで集客を図っている。
冬季は、巨大なスキー場群と温泉がセットになっている山形蔵王が人気であるが、仙台との交通の便が良くなったため、宿泊客より日帰り客の比重が高くなり、客単価が下がっている。日帰りでは仙台からは宮城蔵王の方が近いため、ナイタースキーでは宮城蔵王の方が競争力がある。また、宮城県側では、山形に比べて1つ1つのスキー場が小さいため、スノーボードに特化した経営やファミリー層向けのそり用ゲレンデを設定するなど焦点を絞った小回りの利く経営がなされている一方、山形蔵王はその巨大さがかえって焦点を絞りにくくし、商品力の弱さを露呈する形になっている。また、暖冬の年には、暖冬であっても確実に充分な積雪がある岩手県の夏油高原スキー場や安比高原スキー場などに仙台のスキー客が流れ、山形蔵王の経営は楽ではない。
しかし、「樹氷原コース」や「横倉の壁」を初めとした多様なコースと温泉・郷土料理などは、海外、特にスキー熱が高まりつつある韓国では受け入れられ、毎年韓国人スキーヤーが増加している。そのため、ソウル・仁川国際空港便が毎日往復している仙台空港と山形蔵王との間に直行スキーバスを運行し、韓国での営業に力を入れている。今後は、従来からの地元・仙台・首都圏に加え、仙台空港の定期路線がある韓国および台湾、そして、北海道で集客が見られるオーストラリアやタイ王国もターゲットに入れた営業が進められる。
- 夏季はトレッキングが盛んで、山頂の火口湖である御釜(五色沼)や地蔵岳を巡るコースや、ドッコ沼、いろは沼などを巡る、高山植物を見る事ができる散策コースなど、散策路が充実している。冬期には、世界的にも珍しい樹氷ができ、ライトアップされた樹氷を見る事ができる。これらの様々な火山地形、植生は、蔵王国定公園に指定され、保護されている。
- スキーゲレンデが密集する巨大なスノーリゾートとなっており、一般的にスキーや樹氷見物で有名な「蔵王」とは山形側の蔵王温泉スキー場のことである。国際的なスキー(ジャンプ)大会が開かれる。蔵王樹氷祭りなど、スキーゲレンデを利用したイベントが行われる。
- 冬季、みやぎ蔵王側においては、雪上車による観光ツアーを行っており、こちらでも樹氷見物が一般客でも見学できる。
- 温泉地としての側面もあり、古くは高湯と呼ばれた山形の蔵王温泉は、強酸性の泉質が特徴である。伝説によると、東征した日本武尊に従った吉備多賀由によって発見され、多賀由温泉から転じて高湯と呼ばれるようになった。
- 宮城県側には、青根温泉・遠刈田温泉等がある。
[編集] 交通
- ロープウェイは、蔵王の山麓から、山頂までを結ぶものである。蔵王温泉までの交通は、バス、自動車などを利用することになる。この他に、スキーゲレンデには多数のリフトが設置されている。
- 索道
[編集] 関連市町村
[編集] 関連項目
- 道路
- 駅名
- スキー場
- 山形蔵王温泉スキー場
- スキー客は、1992-93年シーズンの158万人をピークに年々減少。2004-05年シーズンは60万人が利用。
- 西蔵王スキー場
- ライザスキーワールド
- 猿倉スキー場
- みやぎ蔵王すみかわスノーパーク
- みやぎ蔵王えぼしスキー場
- みやぎ蔵王白石スキー場
- みやぎ蔵王セントメリースキー場
- 山形蔵王温泉スキー場
- 温泉
- 西蔵王テレビ・FM放送所