9M119 (ミサイル)
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9M119「レフレークス」(ロシア語:9М119 «Рефлекс»ヴェーヴャチ・エーム・ストー・ヂヴィナーッツァチ・リフリェークス)は、ソ連で開発された対戦車ミサイルである。改良型は、9M119M「レフレークスM」と呼ばれた。ミサイル本体は9M119であるが、ミサイル発射システムは9K119と呼ばれる。北大西洋条約機構(NATO)の用いたNATOコードネームでは、9M119はAT-11「スナイパー」(Sniper)、9M119MはAT-11「スナイパーB」(Sniper-B)と呼ばれた。
なお、愛称に関しては9M119に対してはロシアのスヴィーリ川に因んだ「スヴィーリ」という愛称が使われ、9M119Mに対して「レフレークス」が用いられたとする資料も少なくないが、ロシアではこのような区分は見られず「スヴィーリ」は9M120の愛称とされている。
[編集] 概要
ソ連では、戦車の125 mm主砲から発射できる対戦車ミサイルの開発が盛んに行われていた。9M119は、新型戦車T-80の開発にあわせ、それまでのT-64で使用されていた9M112「コブラ」に代わるミサイルとして開発された。設計は、トゥーラにある自動化・制御システム開発設計局で行われた。
発射は2A46戦車砲やKBA-3戦車砲から行われる。射程は75 mから5000 mで、目標へ直角に命中した場合、700 mmから750 mmの装甲を破壊できる。湾岸戦争ではイラク軍のソ連製戦車はアメリカ陸軍のM1A1にまったく歯が立たず、特に3000m以上の遠距離からのアウトレンジ攻撃による損失が目立った。これにはイラクのソ連製戦車が9M119を運用できないものばかりであったことも関係しており、9K119を装備するT-80などが相手であれば必ずしもM1の圧勝に終わるとは言えない。
また、9M119は2A45MスプルートB砲からも発射できる。9K119は、ソ連時代に開発されたT-80シリーズに加え、ロシア連邦のT-90シリーズ、ウクライナのT-84シリーズにも継承された。普及型戦車として開発されたT-72は当初は主砲からのミサイル発射能力を有していなかったが、ウクライナで開発されたT-72AG(T-72AH)のような近代化改修型では9M119の運用が可能となっている。加えて、中華人民共和国の98式戦車でも運用が可能となっている。
[編集] 運用される主な車輌
- T-72AG(ウクライナ)
- T-80U/UD(ウクライナ・ロシア連邦)
- T-84(ウクライナ)
- T-90(ロシア連邦)
- T-95(ロシア連邦)
- チョールヌィイ・オリョール(ロシア連邦)
- オプロート(ウクライナ)
- ブラート(ウクライナ)
- 98式戦車(中華人民共和国)
- M-2001(セルビア)