98式戦車
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98式戦車 | |
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性能諸元 | |
全長 | 11.0 m |
車体長 | 7.30 m |
全幅 | 3.40 m |
全高 | 2.20 m |
重量 | 52.0 t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
速度 | 70 km/h(整地) |
60 km/h(不整地) | |
行動距離 | 450 km(最大600km) |
主砲 | ZPT-98式50口径125mm滑腔砲 |
副武装 | 85式12.7 mm機関銃 59式7.62 mm機関銃 |
装甲 | 拘束セラミック複合装甲 |
エンジン | 水冷4ストローク V型12気筒ディーゼルエンジン 1200 hp |
乗員 | 3 名 |
98式戦車(98式主战坦克・ZTZ-98/WZ-123)は、中華人民共和国の戦車。1991年の湾岸戦争をきっかけに開発が開始された。既に生産が開始されていた90-II式戦車をベースに更なる近代化を図った国内向け仕様の戦車である。当初は21世紀における中国軍の主力戦車となると思われたが、実際は更なる改良が施された99式戦車が代わって正式採用された。
[編集] 概要
1991年の湾岸戦争でアメリカ軍を始めとする西側の第3世代戦車になすすべ無く撃破されるソ連製や中国製の第1・第2世代戦車は中国にとってはまさに衝撃的な光景であった。当時中国は88B式戦車と90-II式戦車の導入を進めていたが、90-II式戦車は正式採用されず、主に輸出向けモデルとなった。両戦車は基本設計はいわゆる第2世代戦車にあたり、改良を加える程度では西側の第3世代の戦車には対抗できなかった。そこで中国軍は西側諸国の戦車に対抗できる本格的な第3世代戦車の自国生産を目標に開発に着手した。
1980年代に中国は旧西ドイツからレオパルド2の購入またはライセンス生産を検討したが実現しなかった。しかしそれ以降も戦車開発に関してはレオパルド2を強く意識した案が数多くあがった。
1980年後半以降の中国軍の戦車開発コンセプトは、
- 車体は比較的実績があり、信頼性の高い69/79式戦車や旧ソ連のT-72系ベースに開発。
- 西側主力戦車に匹敵するFCS(射撃統制装置)の導入。
- 旧ソ連製2A46M系の125mm滑腔砲をさらに発展した国産滑腔砲と自動装填装置の装備。
で、98式戦車はこれを実現した中国軍初の本格的第3世代戦車言える。
開発に際してはドイツのレオパルド2を意識した砲塔デザインと自国の90-II式戦車とソ連のT-72、T-90の砲と車体技術をベースに、1993年に4輌の試作車が造られ1995〜1996年にかけて各種テストが実施され更に4輌の試作車輌を加え開発が進められた。そして1996年に正式に98式戦車の名称を受け本格配備が始まった。
エンジンにはイギリス製 パーキンス・コンドーCV12-1200TC V型12気筒水冷ディーゼルを当初採用した。98G式戦車では、ドイツとウクライナの技術を元に自国で開発した1200hpディーゼルエンジンを搭載している。
また、変速機も90-II式戦車から採用されたオートマチック(自動変速)からマニュアル(手動変速)に切り替えられた。
1999年10月の人民解放軍の50周年記念パレードで初めてその姿を現すも、それ以降は量産されることはなく、更にエンジンを1500hpに改良した99式戦車が21世紀初めの中国人民解放軍の主力戦車として正式採用された。
[編集] 武装
砲手用照準器にはフランス製のペリスコープ型昼夜兼用システムSAGEM-HL60が採用されている。これはニ軸式主砲スタビライザー2E28と同調し、弾道計算コンピュータ、環境センサーのデータとリンクして極めて高い初弾命中精度を実現している。内臓されているレーザー測距器は200~5,000mの範囲で正確に測定する事が可能で、データは自動的に弾道計算コンピュータに入力される。暗視システムは熱線映像式で目標の有効識別距離は125mm滑空砲の最大有効射程を上回る(3,100m)。倍率は4倍と10倍の切り替え式で、前方20度の範囲の視界を確保している。高さ2.7mの停止目標に対しては2,500m、動目標に対しては1,300mの距離で高い命中率を誇るとされている。車長にも主砲用に使用できるパノラマ式照準器SFIM-HL70が装備されている。これと操砲ハンドルを用いて車長が砲手をオーバーライドして主砲を装填、発射する事が可能。HL70は周囲180度に渡り視界を有しており、レクチル内の倍率は7.5倍である。
戦車砲はロシアの2A46Mをベースに威力の向上や砲身命数の向上などの改良を加えたZPT-98式 50口径125mm滑腔砲が採用されている。砲身はサーマルスリーブで覆われており、砲身命数は700発。ZPT-98はベースとなった2A46Mと同じくレーザー誘導式の砲発射ミサイル9M119が発射可能である。自動装填装置はT-72のカセトカ自動装填装置の改良型を採用し、最大発射速度は毎分12発に達する。FCSや外部視察装置は西側の技術が導入されている。HL60照準器はニ軸式主砲スタビライザー2E28と同調し、弾道計算コンピュータ、環境センサーのデータとリンクして極めて高い初弾命中精度を実現している。高さ2.7mの停止目標に対しては2,500m、動目標に対しては1,300mの距離で高い命中率を誇るとされている。
さらに、JD-3と呼ばれる中国軍独自のアクティブ・レーザー防御システムを搭載している。これは敵車両からのレーザー照準を感知し警告を発し、敵のレーザー照準機に対し攪乱・破壊レーザーを発する事で攻撃を防ぐシステム。レーザー通信機能も兼ねるとされる。また、中国側はこのレーザーは発射された砲弾や対戦車ミサイルの迎撃能力もあり、対空兵器としても効果があると謳っているがその能力は定かではない。
[編集] 外部リンク
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