くるみ割り人形
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くるみ割り人形(くるみわりにんぎょう 英語:The Nutcracker ロシア語:Щелкунчик)は、ピョートル・チャイコフスキーの作曲したバレエ音楽、ないしそのバレエである。2幕3場。くるみ割りとはくるみを割る道具であり、くるみ割り人形とは、人形の形をしたくるみ割りのことである。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 全タイトル
本作品は組曲版や省略版で演奏されることが多いため、全曲を聴きたい場合は注意が必要である。レコードの場合は「全曲」「Complete」といった表示の有無が目安となる。演奏時間は約80分。
- 序曲
- クリスマスツリー
- 行進曲
- ギャロップと両親の踊り
- 踊りの情景 - ドロッセルマイヤーの贈り物
- 情景 - グロスファターの踊り
- クララとくるみ割り人形
- くるみ割り人形とねずみの王様の戦い、くるみ割り人形の勝利、そして人形は王子に姿を変える
- クリスマスツリーの中で(冬の松林)
- 情景と雪片のワルツ
- お菓子の王国の魔法の城
- 情景 クララと王子
- 登場人物たちの踊り(ディヴェルティスマン)
- チョコレート(スペインの踊り)
- コーヒー(アラビアの踊り)
- お茶(中国の踊り)
- トレパック(ロシアの踊り)
- 葦笛の踊り
- 道化者の踊り
- 花のワルツ
- パ・ド・ドゥ
- イントラーダ
- ヴァリアシオン I (タランテラ)
- ヴァリアシオン II (金平糖の精の踊り)
- コーダ
- 終幕のワルツ - アポテオーズ(グランド・フィナーレ)
[編集] あらすじ
[編集] 第1幕
- 小序曲 (Overture)
[編集] 第1場
- ドイツ。シュタールバウム家
- 行進曲 (March)
おもちゃの兵隊の行進曲
クリスマスの夜。広い大広間ではパーティーが行われ、少女クララはドロッセルマイヤー老人からくるみ割り人形をプレゼントされる。ところが、取り合いになり兄のフリッツが壊してしまったので、ドロッセルマイヤー老人が修理する。
- scene6
お客様も帰り、夜みんなが寝静まってから、クララは人形のベットに寝かせたくるみ割り人形を見に来る。ちょうど時計の針が12時を打つ。
- scene7→8
すると、クララの体は人形ほどの大きさになる(舞台ではクリスマスツリーが大きくなることで表現される)。そこに、はつかねずみの大群が押し寄せる。対するくるみ割り人形指揮する兵隊人形。最後はくるみ割り人形とはつかねずみの王様の一騎打ち。くるみ割り人形あわやというところで、クララがスリッパをはつかねずみの王様に投げつけ、はつかねずみたちは退散する。倒れたくるみ割り人形が起きあがってみると、凛々しい王子になっていた。王子はクララをお菓子の国に招待し、二人は旅立つ。
[編集] 第2場
- 松林
雪が舞う松林に二人がさしかかる。
- 雪片の踊り 雪の精たちのコール・ド・バレエ(群舞)
[編集] 第2幕
- お菓子の国の魔法の城
王子は女王、こんぺい糖の精にクララを紹介する。歓迎の宴が繰り広げられる。
- ディヴェルティスマン
- チョコレートの精が踊る「スペインの踊り」(ボレロ)
- コーヒーの精が踊る「アラビアの踊り」(コモード)
- お茶の精が踊る「中国の踊り」
- 大麦糖の精が踊る「ロシアの踊り」(トレパック)
- アーモンド菓子の精(女羊飼い)が踊るフランスの踊り(あし笛の踊り)
- 靴に住む老婦人と子供たちが踊る「道化者の踊り」
- デコレーションクリームの精(女王の侍女たち)が踊る「花のワルツ」
- こんぺい糖の精と王子が踊るグラン・パ・ド・ドゥ
(このあと、そのまま終演する演出と、元の世界に戻る演出とに分かれる)
[編集] バレエ組曲「くるみ割り人形」
バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71aは、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である。「くるみ割り人形」作曲中のチャイコフスキーはこの頃、自作を指揮する演奏会を企画していたが、あいにく手元に新作がなく、また作曲する暇もなかったので、急遽作曲中の「くるみ割り人形」から8曲を抜き出して演奏会用組曲とした。バレエの初演に先立ち、1892年3月19日初演された。
- 小序曲 (Ouverture Miniature)
Allegro guisto、変ロ長調、4分の2拍子 (複合2部形式)
この小序曲のみ低弦、つまりチェロとコントラバスが除かれている。このバレエ全体のかわいらしい曲想を感じさせる。おとぎ話のような主題がヴァイオリンにより提示される。これらはクラリネット、フルートなどに引き継がれ、次第に大編成化する。すると一転してオーボエによる叫びがあり、メロディックで優雅な第2主題(ヘ長調)が提示される。この後、第1主題・第2主題(変ロ長調で再現)はそのまま反復される。 - 登場人物たちの舞曲 (Danses caracteristiques)
- 行進曲 (Marche)
Tempo di marcia viva、ト長調、4分の4拍子 (ロンド形式) - 金平糖の精の踊り (Danse de la Fée Dragée)
Andante non troppo、ホ短調、4分の2拍子 (複合三部形式)
当時、発明されたばかりであったチェレスタを起用した最初の作品として広く知られる。しかしながら当初、このパートは天使の声と喩えられた珍しい楽器アルモニカのために書かれており、後にチェレスタと出会ってから楽器指定を取り替えたことが明らかになっている。 - ロシアの踊りートレパック (Danse russe - Trepak)
Tempo di Trepak, Molto vivace、ト長調、4分の2拍子 (複合三部形式) - アラビアの踊り (Danse Arabe)
Allegretto、ト短調、8分の3拍子 (変奏形式)
この曲のベースになった曲はグルジア民謡の子守唄である。 - 中国の踊り (Danse Chinoise)
Allegro Moderato、変ロ長調、4分の4拍子 (小三部形式) - 葦笛の踊り (Danse des Milritons)
Moderato Assai、ニ長調、4分の2拍子 (ロンド形式)
おもちゃの笛「ミルリトン」が踊る。
- 行進曲 (Marche)
- 花のワルツ(Valse des fleurs)
Tempo di Valse、ニ長調、4分の3拍子 (複合三部形式)
序奏にはハープが効果的に用いられる。ハープのカデンツァののちに、ホルンにより主題が提示される。続くワルツは弦による有名な旋律である。さらにウィーン風の旋律がフルートに、情熱的な旋律がヴィオラ・チェロに提示される。前者2つは結尾部でまとめられ、大交響楽的なクライマックスを迎える。
[編集] 関連項目
カテゴリ: バレエ作品 | 管弦楽曲 | チャイコフスキーの楽曲