ホルン
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ホルン(Horn, horn)は金管楽器の一種。イタリア語ではCorno(コルノ)、フランス語ではCor(コール)と言い、もともと「角」の意味を持った言葉であるが、古くから「角笛」を意味してもいた。現在ではホルンとは、一般にはフレンチ・ホルンを指すことが多い。
なおホルンと名のつく金管楽器にサクソルン族のフリューゲルホルン、アルトホルン、テナーホルンなどが有るが、これらはマウスピースやバルブの構造、管体の形状からホルンとは区別される。マーチングなどでホルンの代わりなどに使われるメロフォンは外観はホルンに似ているが別の楽器である。またホルンを名前に含む楽器に木管楽器でオーボエ族のイングリッシュホルン(コールアングレ)やクラリネット族のバセットホルンなどがある。これらはもちろん金管楽器であるホルンとは直接の関係はないが、ホルンを名前に含む楽器がこのように多いことから、ヨーロッパの吹奏楽器の歴史の中で角笛が重要な位置をしめていたことが伺える。
目次 |
[編集] フレンチ・ホルン
フレンチ・ホルン(英語:french horn)はカタツムリの様な形状に巻かれた円錐状の管と、3つから5つの、通常はロータリー式のバルブ(弁)を持つ。へ調と変ロ調の調性を持った楽器があり、それぞれF管、B♭管と呼ばれるが、一般的には、それらを一つに組み合わせ「切換バルブ」と呼ばれる特殊なバルブで切り換えられるものが多用される。単一の調性の楽器をシングル・ホルン、2つの調性を持つものをダブル・ホルンと言って区別するが、ダブル・ホルンに一般的なヘ調より1オクターブ高い「ハイF」などを追加したトリプル・ホルンと呼ばれるものも存在する。
ホルンの管体は0.3-0.5mm程度の薄い、様々な真鍮素材で作られている。ホルンの管体部はその真円形状を保つため、高温で溶かした鉛、タール等の充填材を流し込み、曲げ加工の後再度その充填材を取り除く形で制作される。大量生産の場合には管体に水を通し、そのまま凍らせてしまい、曲げ加工の後氷は融かして外に出し、その後管体を型にはめ内部から圧力をかけて完全な形に仕上げる工法が取られている場合もある。
英語圏ではhornという単語が金管楽器一般に用いられるため、他の金管楽器と区別する為にこの楽器にはフレンチ・ホルンという名称が一般的に用いられる。名前からフランス発祥の楽器かと思えるがそうではなく、たまたま英国にはフランス宮廷文化の一部として伝わった事により「フランス趣味のホルン」の名が冠されたものである。ドイツ語では同じ様な理由で動物の角(Hornの原義)と区別する為、「森のホルン」(ヴァルトホルン、Waldhorn)という名称が用いられる場合もある。
金管楽器であるが、音色のやわらかさから金管楽器のみならず木管楽器ともよく調和し、通常の木管五重奏では標準的にホルンが加えられている。
[編集] ダブル・ホルン
ダブル・ホルンには、切り換えの仕方により次の様な形式がある。
- セミダブル
- セミダブル式は、高い方の調性の楽器に補正管と呼ばれる、低い方の調性を正しく演奏できるようにするための迂回管を追加したものである(補正ピッチ方式)。
- フルダブル
- フルダブル式は、それぞれ独立した2つの調性を、切り換えて使用する楽器である。セミダブル式の楽器と違い、一方の調性を使用している時には、もう一方の管は迂回しない。セミダブルよりも楽器の重量は増すが、低い方の調性の音色がよりシングルに近いものになる長所を持つ。
もともとはF管あるいはB♭管だけの(シングルの)ホルンが使われたが、現在ではF管とB♭管とを組み合わせたダブル・ホルンか、簡易にB♭管に切り替えられるセミダブル・ホルンが主流である。この切替は親指で行うようになっている。 オーケストラではF管とB♭管を組み合わせたダブル・ホルンの他に、通常のF管よりも1オクターブ高い音域の出る、Fアルト(或いはハイF管)のデスカント・ホルンが用いられる。これは、バッハのブランデンブルク協奏曲のような高音域を演奏する為には必要とされるが、曲目によって数台のホルンを持ち歩くのは困難である為に、ハイF管とB♭管を組み合わせたデスカント・ダブル・ホルン、F管とB♭管・ハイF管とを組み合わせたトリプル・ホルンも使用されている。しかしトリプル・ホルンは高価で重く、長時間の演奏にはそれなりのトレーニングを要する。またその重さゆえに独特のボリューム感のある響きがあり、さらなる開発が望まれる。
[編集] ウィンナ・ホルン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団では、ウィンナ・ホルン(ヴィーナー・ホルン)と呼ばれる伝統的なF管シングル・ホルンを原則的に使用している。これは、ウィンナ・バルブ(あるいはダブルピストン・バルブ、プンペン式バルブ)と呼ばれる特殊な旧式のバルブを備えている。またナチュラルホルンのコル・ドルケストラ同様に吹き込み口に円形のボーゲンが装着されている。
[編集] ナチュラル・ホルン
19世紀前半まではバルブを持たず、自然倍音のみを発音できるナチュラル・ホルンが用いられた。この楽器では普通の状態では自由に半音階を演奏することはできない。バロックから古典派前期のホルンのパートが比較的単純な音形に限られるのはこのためでもある。18世紀中葉に、ハンドテクニックの開発すなわちベルの中の右手の位置を変える事により、自然倍音から音程を最大で長2度上昇もしくは下降させる奏法が考案され、この技法と管体自体の調性を変える事で、開放音とストップ音、ハーフ・ミュートなどによる音色の犠牲はあるものの、ある程度の半音階は演奏できる様になった。この時代からソリストとして活躍する奏者が現れ出す。 ナチュラルホルンも、コール・ソロ、コル・ドルケストラの2種類があり、前者の演奏家はサロンでもてなされ、後者は台所でビールを傾けるなど、身分的な差もあった。 ハイドンやモーツァルトの協奏曲はこの時代に書かれた。しかし、1814年のバルブの出現により、ナチュラル・ホルンは次第にバルブ付きホルンに取って代わられる事となる。 それでもブラームスはナチュラルホルンを好みホルン・トリオを残し、オーケストラの作品でもナチュラルホルンのために書かれたと思われるパートが存在する。パリ音楽院からナチュラルホルン専攻のコースは19世紀末に廃止された。 現代では古楽復興の流れのなか、バウマンによってモーツァルトの協奏曲集が録音の影響により様々な演奏家によって演奏されるようになってきた。
また、ヨーロッパでは郵便馬車がその到着を示すためにこの系統のホルンを用いた。これはポストホルンの名で知られる。この楽器を音楽作品に用いた例として知られるものにモーツァルトの「ポストホルン」セレナーデ (第9番ニ長調、K.320)、マーラーの交響曲第3番がある。なお、こうした歴史からヨーロッパの郵政機関の標章には、今日でも角笛やポストホルンをモチーフにしたものが多い。
[編集] 著名なホルン演奏家
- アイファー・ジェームズ(Ifor James 1931-2004)
- アブ・コスター
- アラン・シヴィル
- アレッシオ・アレグリーニ
- ウォルフガング・ガーク
- ウォルフガング・トムベック
- エリック・ラスク
- ギュンター・ヘーグナー
- クラウス・ヴァレンドルフ
- クリスティアン・フリードリッヒ・ダルマン
- ゲルト・ザイフェルト
- サラ・ウィルス
- シュテファン・ドール
- ジョルジュ・バルボトゥ
- ズデニェク・ティルシャル
- デニス・ブレイン [1]
- デール・クレヴェンジャー
- ノルベルト・ハウプトマン
- バリー・タックウェル
- フィリップ・ファーカス
- フランク・ロイド
- ヘルマン・バウマン
- ペーター・ダム
- マンフレッド・クリアー
- マリー・ルイーゼ・ノイネッカー
- ミヒャエル・ヘルツェル
- ラディク・バボーラク [2]
- ラドヴァン・ヴラトコヴィッチ
- ラルス・ミヒャエル・ストランスキー
- ローウェル・グリアー
- ローランド・ベルガー
- 伊藤泰世
- 笠松長久
- 千葉馨
- 樋口哲生
- 松崎裕
- 丸山勉
- 吉永雅人
- 根本雄伯 [3]
[編集] ホルンが活躍する楽曲の例
[編集] 協奏曲・管弦楽曲等
- J.S.バッハ ブランデンブルク協奏曲第1番
- モーツァルト ホルン協奏曲第1番~第4番
- ベートーヴェン
- ウェーバー
- 歌劇「魔弾の射手」 - 序曲導入部
- ホルン協奏曲Op.45
- ロッシーニ
- 歌劇「イタリアのトルコ人」 - 序曲導入部
- 歌劇「セミラーミデ」 - 序曲導入部
- グランド・ファンファーレ(狩のランデヴー)
- ブラームス
- チャイコフスキー
- ワーグナー 楽劇「ジークフリート」 - 第2幕
- リヒャルト・シュトラウス ホルン協奏曲第1番・第2番、交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
- フランツ・シュトラウス(リヒャルト・シュトラウスの父親) ホルン協奏曲
- ホフマイスター ホルン協奏曲
- ケルビーニ ホルンと弦楽オーケストラの為の2つのソナタ
- シューマン
- 4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ヘ長調 op.86
- グリエール ホルン協奏曲
[編集] 独奏曲・室内楽
- ベートーヴェン ソナタ(Hrn., Pf.)Op.17、七重奏曲Op.20(Vn., Va., Vc., Db., Cl., Hrn., Bn.)
- ブラームス ホルン三重奏曲Op.40(Vn., Hrn., Pf)
- シューマン アダージョとアレグロ op.70 (Hrn., Pf.)、アンダンテと変奏曲 op.46(Hrn., 2Vc., 2Pf.)
- シューベルト Auf den Strom D.943(Soprano., Hrn., Pf.)
- ロッシーニ 6曲の四重奏曲(Fl., Cl., Hrn., Bn.)
- モーツァルト ホルンの為の12の二重奏K.487、ホルン五重奏曲K.407(Hr.,Vn.,2Va.,Vc.)
- ヒンデミット ソナタ(Hrn.,Pf.)、ホルン四重奏曲(Hrn.4)
- プーランク ホルンとピアノの為のエレジー
- デュカス ホルンとピアノの為のヴィラネル(田園詩)(Villanelle, pour cor et Piano)
[編集] 一般的なメーカー
- ヤマハ(日本)
- アレキサンダー(ドイツ)
- ホルトン(アメリカ) 《ホルトン社は1964年にルブラン社に経営権を委託》
- ハンスホイヤー(ドイツ)
- パックスマン(イギリス)
- コーン(アメリカ)
- E.シュミット(ドイツ)
この他に、クルスペ(ドイツ)、メーニヒ(ドイツ)、クノッフ(ドイツ)、イオ、マイスター・マイネル、D.オットーなどが挙げられる。
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
- 日本管打・吹奏楽学会実行組織機関による楽器WEBライブラリー
- Deutsche Post - ドイツの郵便会社。ポストホルンをモチーフにした標章を用いている