アマチュア無線技士
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アマチュア無線技士(-むせんぎし)は、無線従事者免許の一つ。総務省管轄。
アマチュア業務を行なう為には、個人に対して与えられるアマチュア無線技士(または対応資格)の無線従事者免許と、個人及び無線設備に対して与えられる無線局免許状が必要となる。
この資格では、アマチュア無線業務以外の無線設備の通信操作・技術操作(営利目的業務)はできない。その為、あくまで趣味の一つに過ぎないのであって、履歴書等に記載する所持資格(実務)としては、通常は役に立たないと考えられる(ただし、これには例外的な側面もある。第一級アマチュア無線技士の有資格者は、電波法及び登録点検事業者等規則に基づき、登録点検事業者制度における点検員の職務に従事することができるため、無線設備の通信操作・技術操作以外の面では無線通信士・無線技術士といったプロ資格に準ずる一面を併せ持っている。総務省電波利用ホームページ・登録点検事業者制度)。
免許(国家資格)が必要で、かつ全世界共通の資源である電波を利用するというスケールの大きい趣味であるので、King of Hobby(趣味の王様)と言われる。
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[編集] 資格の種別
操作範囲により、次の4種類がある。
- 第一級アマチュア無線技士(略称:1アマ)
- アマチュア無線局の無線設備の操作
- 電波法施行令に規定される操作範囲には空中線電力の制限はないが、実際には、無線局の免許において容易に免許されるのは空中線電力が1000W以下の無線設備までとされている。超過する局の開設は絶対に不可能とはいえないものの、大出力を必要とする理由の明確な説明を求められ、また申請が総合通信局決裁でなく総務省本省の総合通信基盤局回付(つまり総務大臣直接免許)になるなど事実上相当の困難を伴う。実際、短波帯以外における大出力が月面反射通信専用設備以外で認可された例はない。
- 第二級アマチュア無線技士(略称:2アマ)
- アマチュア無線局の空中線電力200W以下の無線設備の操作
- 第三級アマチュア無線技士(略称:3アマ)
- アマチュア無線局の空中線電力50W以下の無線設備で18MHz以上または8MHz以下の周波数の電波を使用するものの操作
- 第四級アマチュア無線技士(略称:4アマ)
- アマチュア無線局の無線設備で(モールス符号による通信操作を除く)空中線電力10W以下の無線設備で21MHzから30MHzまで又は8MHz以下の周波数を使用するもの、空中線電力20W以下の無線設備で30MHzを超える周波数の電波を使用するものの操作
1990年までは、現在の第三級、第四級に対応する資格はそれぞれ電信級、電話級という名称(資格創設後しばらくは、名前の通り、それぞれの電波型式しか許されない時期もあった)であった。
[編集] 対応資格
次の無線従事者免許を持つものは、下記のアマチュア無線技士と同様の操作を行なうことができる。
- 第一級・第二級総合無線通信士
- 第一級アマチュア無線技士
- 第三級総合無線通信士
- 第二級アマチュア無線技士
- 第四級アマチュア無線技士
[編集] 試験科目
- 第一級
- 無線工学
- 無線設備の理論、構造及び機能の概要
- 空中線系等の理論、構造及び機能の概要
- 無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の概要
- 無線設備及び空中線系並びに無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の概要
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の概要
- 国際電気通信連合憲章及び付属無線通信規則の概要
- 電気通信術
- 1分間25字の速度の欧文普通語による約2分間の音響受信
- 第二級
- 無線工学
- 無線設備の理論、構造及び機能の基礎
- 空中線系等の理論、構造及び機能の基礎
- 無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の基礎
- 無線設備及び空中線系並びに無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の基礎
- 法規
- 第一級と同じ
- 電気通信術
- 第一級と同じ
- 第三級
- 無線工学
- 無線設備の理論、構造及び機能の初歩
- 空中線系等の理論、構造及び機能の初歩
- 無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の初歩
- 無線設備及び空中線系並びに無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の初歩
- 法規
- 電波法 及びこれに基づく命令の簡略な概要
- 国際電気通信連合憲章及び付属無線通信規則の簡略な概要
- 2005年10月試験から、第三級アマチュア無線技士試験で、電気通信術の音響受信が廃止された。そのかわり、法規においてモールス符号の理解度問題が2問又は3問出題される。
- 第四級
- 無線工学
- 無線設備の理論、構造及び機能の初歩
- 空中線系等の理論、構造及び機能の初歩
- 無線設備及び空中線系の保守及び運用の初歩
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
国家試験はかつては年2回程度の実施であったが、現在では第四級については東京で毎月開催、他の地区でも大幅に実施回数が増加している。実施は日本無線協会による。電気通信術については3年間の科目合格制度がある。
1958年から1963年までの間に当時の第二級は、電気通信術試験に合格すれば現行第二級となれた(受けなかった人・不合格のままだった人はのちの電話級に降格)。また1985年から1990年まで、当時の電話級(更に古くは旧第二級)保持者は学科試験が免除され、電気通信術試験に合格すれば電信級免許が与えられた(電信級に電話モードが開放されたための経過措置。法規の内容は同一、また工学の内容は電話級の方が高度だった)。現在は通信術試験は第一・二級のみ、また2005年9月末までに(旧制度扱い)三級を取得していれば一・二級の通信術が免除となる。
第三級、第四級は、日本アマチュア無線振興協会が実施する養成課程講習会を受講し、修了試験に合格することでも取得できる。
[編集] 備考
一般的に試験のレベル(確実な解答を得るために必要な数学、物理学の知識)は高校卒業程度と言われる。学科、法規の筆記試験は全て多肢選択式(マークシート)を用いるため、場合によっては高校相当年齢以下でも合格が可能である。3歳で第三級アマチュア無線技士、小学3年生で第一級アマチュア無線技士に合格した例がある。
たまに「アマチュア無線技師」と誤記される。
[編集] 日本国外における対応資格
日本国外においてアマチュア無線技士に対応する資格を次に示す。実際にアマチュア無線の運用を行うには、免許証を所持しているだけでなく各国の免許手続き、届出が必要である。
日本 | 第一級 | 第二級 | 第三級 | 第四級 |
---|---|---|---|---|
アメリカ | Amateur extra | Advanced, General, Conditional | Technician(CW試験合格証書保有者), Novice | Technician |
ドイツ | B class | A class | C class | |
カナダ | Advanced Amateur class, Digital class | Amateur class | ||
オーストラリア | Amateur Licence (unrestricted) | Amateur Licence (novice) | Amateur Licence (limited) | |
フランス | Group E | Group D, C | Group B | Group A |
大韓民国 | First Class | Second Class | Third Class (Telegraph) | Third Class (Telephone), Special Radio Operator for Aeronautical, Special Radio Operator for Radio-telephone A |
フィンランド | General | Technical | Novice | |
アイルランド | A class | B class | ||
ペルー | Advanced | Intermediate | Begineer |