エルヴィン・シュレーディンガー
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エルヴィン・ルドルフ・ヨーゼフ・アレクサンダー・シュレーディンガー(Erwin Rudolf Josef Alexander Schrödinger, 1887年8月12日 - 1961年1月4日、ウィーン生まれ)は、オーストリアの理論物理学者。波動形式の量子力学である「波動力学」を建設し、彼の名を冠したシュレーディンガー方程式によって非常によく知られている。これは量子力学の基本方程式の位置を占める。
1906年にウィーン大学に入学して物理学を学び、1921年にチューリヒ大学教授に就任。ド・ブロイの物質波の概念を元にして、1926年にシュレーディンガーの波動方程式を導出して波動力学を展開。ついで、波動力学がハイゼンベルクらの行列力学と数学的に同等であることを証明して、量子力学の確立に大いに貢献した。また、シュレーディンガー方程式を解くことが、ボーアの量子論の結果を完璧なものにした。
1927年にベルリン大学教授。1933年にノーベル物理学賞を受賞。同年、ナチス・ドイツの台頭とともにドイツを去って、最終的にはアイルランドのダブリンへ亡命。量子力学の確率解釈には反対した。戦時中からさらに広い領域に活動を進め、1944年「生命とは何か」によって分子生物学への道を開く。1958年には「精神と物質」によって人間の精神世界の解明にとりくんだ。科学の多くの領域に足跡を残した20世紀の巨人である。
思想的にはショーペンハウアー哲学やインド哲学に深く影響され、その世界観はマッハ哲学やハイデッガー思想と関係している。
[編集] 関連項目
[編集] 著作
- 『生命とは何か―物理的にみた生細胞』岡 小天、 鎮目 恭夫訳 岩波新書
- 『わが世界観』橋本 芳契、 中村 量空、 早川 博信、 橋本 契訳 ちくま学芸文庫
- 『シュレーディンガー わが世界観【自伝】』橋本芳契 監修 中村量空・早川博信・橋本契 訳 共立出版 1987
- 『精神と物質―意識と科学的世界像をめぐる考察』中村 量空 訳 工作舎 1987
- 『シュレーディンガー選集』全2巻 湯川秀樹監修、田中正ほか訳 共立出版 1974
[編集] 参考文献
- 『シュレディンガーの哲学する猫』竹内薫・SANAMI (著) 徳間書店 1998
- 『シュレーディンガー―その生涯と思想』Walter Moore (原著) 小林澈郎・土佐幸子 訳 焙風社 1995
カテゴリ: オーストリアの物理学者 | ノーベル物理学賞受賞者 | 1887年生 | 1961年没