エンカウント
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エンカウントとは、主にコンピュータ・ロールプレイングゲーム(RPG)において、移動画面(フィールド画面)上で敵キャラクターと遭遇すること、またその際に移動画面から戦闘画面(バトル画面)に切り替わることを指す。これは和製英語であり、語源は「遭遇する」という意味の英語“encounter”である(注:encount という英単語はない)。本来の英単語からエンカウンターとも呼ばれる。
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[編集] ランダムエンカウント
敵のキャラクターが直接表示されないゲーム画面のフィールド上において、自身のキャラクターが移動している時に一定の確率で敵と遭遇し、新たな画面が表示されて戦闘が始まる形式をランダムエンカウント(ランダム・エンカウンター)(英語:random encounter)という。ドラゴンクエストシリーズ、ファイナルファンタジーシリーズ(X-2以前)など多くのRPGで採用されている。
ランダムエンカウントの場合は、その確率を操作することで、ゲームバランスをゲームデザイナーの意図したレベルに調整することが比較的容易である。エンカウントが起こる確率はエンカウント率(エンカウンター率)と呼ばれる。例えばキャラクターが移動するごとにエンカウント判定がなされる場合、エンカウント率は次の式によって算出される。
- エンカウント率 (%) = 1 / 戦闘後、次の敵に遭遇するまでの平均歩数 × 100
(実際は制作者が設定したエンカウント率に基づいて敵が出現するのであり、この式はプレイヤーが得られる情報からエンカウント率を推測する手段に過ぎない)
エンカウント率は、ゲームの良否にも関わる重要な問題で、3%から7%程度が適切だと言われている。ファミリーコンピュータ(ファミコン)全盛期のRPGなどはエンカウント率が非常に高く、ユーザーにストレスを与えることが少なくなかった。
ただし「1歩」の定義や移動速度の違い等などによって、数値上のエンカウント率が同じでも体感的なエンカウント頻度は大幅に変わるので、この値だけを用いて単純に評価することはできない。さらに、マップの広さや戦闘に要する時間も考慮するべきであろう。
同じゲームにおいても、場所や状況によってエンカウント率が異なることもある。フィールドでも平原や海のような開けた場所は低く、山や森などの見通しが利かない場所では少し高めに設定されており、ダンジョンではフィールドよりも高めに設定されているのが通例である。
戦闘はヒットポイントやマジックポイントの消耗につながるため、なるべく避けようとするプレイヤーも多い。そのため一定時間中、エンカウント率を下げたり、ランダムエンカウント自体を無くす魔法やアイテムが存在するゲームも多くある。ドラゴンクエストシリーズの「しのびあし」「せいすい」「トヘロス」等が代表格。逆に『ドラゴンクエストIII』の「おうごんのつめ」のようにエンカウント率が上がるアイテムも存在することがある。
[編集] シンボルエンカウント
フィールド上にあらかじめ敵の形が見えており、プレイヤーキャラクターがそれらの敵キャラクターと接触することにより戦闘が始まる形式をシンボルエンカウントという。『MOTHER2』、『ロマンシング サ・ガ』、『スーパーマリオRPG』、テイルズシリーズ(シンフォニアチームによるもの)などで導入されている。基本的に、はじめはうろついているが、プレイヤーキャラを発見するとスピードを上げて追ってくることが多い。
シンボルエンカウントの場合には通常リアルタイムでシンボルが移動するため、難易度がプレイヤーの反射能力に大幅に依存することになり、人によっては非常に難しいゲームとなってしまうこともある。しかしながら、ランダムエンカウントのような謎解き中にエンカウントするフラストレーションから解放される利点は高く、また、エンカウント数を極端に減らすことも可能なので上級プレイもやりやすくなる。このことから、特にゲームに慣れたプレイヤーからは概ねこちらのほうが好まれる傾向にある。
シンボルエンカウントにおいては、戦闘回避を補助する方法として、一定時間中フィールド上を高速で移動する魔法やアイテムが存在することがある。『MOTHER2』の「スキップサンド」などが該当する。ほかにも、テイルズシリーズのホーリィボトルのように、敵にプレイヤーを追わせず避けさせるようにするアイテムもある。
[編集] 強制エンカウント
エンカウント率や敵シンボルの有無に関係なく、ある地点や区域を通過すると強制的に戦闘が始まる場所をエンカウントゾーンと呼び、そのことを強制エンカウントと呼ぶ。特定の場所を調べたり、特定のキャラクターとの会話・接触によって戦闘が発生する場合も強制エンカウントである。
いわゆるボス戦や、宝箱や通路に仕掛けられた罠として戦闘が発生するケースがこれに当たる。殆どの場合逃げることができない。
[編集] エンカウントの概念の無いRPG
これまでに登場したほとんどのRPGでは、上記で挙げたランダムエンカウントかシンボルエンカウントかのいずれかが採用されていた。しかし、2006年に発売された『ファイナルファンタジーXII』では、フィールド画面上でそのまま戦闘が発生する方式(ADB=アクティブディメンションバトル)となり、フィールド画面とバトル画面との区別が無くなった。つまり、このゲームでは「エンカウント」という概念そのものが無いのである。
また、『ゼルダの伝説』や『イース』に代表されるアクションRPGでも、上記のような感覚で戦闘を行い、エンカウントはないものが多い。