ボスキャラクター
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ボスキャラクターとは、コンピュータゲームにおいて、プレイヤーの難関となるよう設計された登場キャラクターである。短く「ボスキャラ」、または単に「ボス」とも呼ばれる。
当初は主にプレイヤー側による表現だったが、1980年代末~1990年代頃より、一般名称としてゲーム提供側も同語を用いるようになっている。
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[編集] 概要
コンピュータゲームの常として、プレイヤーの行動を阻む敵キャラクターは、プログラムとコンピュータにより、自動的に操作されている。その中で、ゲームにおけるステージの最後やストーリーの節目、あるいはゲームのいちばん最後において、プレイヤーが倒さなければならないキャラクターのことをボスキャラクターという。
ボスキャラクターは、多くのコンピュータゲーム、特にステージが複数存在しているシューティングゲーム、アクションゲームや、ロールプレイングゲーム(RPG)に登場する。ボスキャラクターは単純なプレイヤーの攻撃で倒れることは少なく、長期戦を強いられることが多い。多くのゲームでは多種多様なボスキャラクターが登場し、時にはそのゲームの最後に登場するボスよりも倒し難い(プレイヤーの個人差はあるが)ボスが出てきたりもする。
これらはゲームの展開にメリハリをつけ、猛攻撃と凪ぎ(プレイヤーに一息付かせる)の状態を演出する事により、よりゲーム内容への興味や感情移入を掻き立てる効果があると考えられており、一方ではRPGゲームなどの自由度が大きく設定されているゲームに於いては、一定段階に達しないプレイヤーを阻む門のような役割を果たす(後述)。
ボスキャラクターに対して、ゲーム中に頻繁に登場し、比較的簡単に倒せる敵キャラクターは「雑魚キャラ」または単に「ザコ」と呼ばれる。
[編集] ボスキャラクター登場史
[編集] アクション・シューティング
初期のコンピュータゲームには「だんだん敵キャラクターの動きが早くなる」、「攻撃頻度が上がる」というパターンが多かった。中には倒すと高得点が貰えるキャラクターや、嫌な位に攻撃のしつこいキャラクターも見られたが、プレイヤーには特定の敵が「ボス」として認識される傾向は余り見られず、単に難易度が上がったと認識される程度だった。
この流れの中で、初めて明確な「ボス」が登場したのはナムコの『ゼビウス』(1983年登場)であろう。このゲームではシューティングゲームながら、ゲームストーリーが予め執筆され、そのストーリー中に出る「ガンプ」という存在が、アンドア・ジェネシスという巨大空母にて度々登場し、プレイヤーの操作する戦闘機を攻撃した。この巨大空母は画面の1/6を占める物で、攻撃もかなり執拗であった上に、当たり判定を持つのは中心部と、その周辺に4つ設けられた砲台だが、高得点を狙うなら周辺4つの砲台から破壊することを要求する物だった。この巨大空母による猛攻撃というアイデアはプレイヤーに受け入れられ、これ以降、シューティングゲームに明確な形でボスキャラクターが登場するようになった。
シューティングゲームでは当初、ゲーム内でボスキャラクターは画面上の多くを占める「巨大キャラクター」としての側面を持っていて、同じボスキャラクターが何度もゲーム中に出るものも少なくなかった。このあたりが変化したゲームは、実はあまり明確では無い。しかしその転機となったのはコナミの『グラディウス』(1985年発表)であろう。このゲームでは、「ビッグコア」と呼ばれる大型のキャラクターが登場する直前に、各々のステージごとに多彩な攻撃があり、それに続いてビッグコアが登場した。ステージによっては、ビッグコア以外の敵が待ち受けていた。概ね同ゲーム以降、各ステージごとに個性的なボスキャラクターを据える傾向が定着し、今日に至っている。
なお『ドンキーコング』(1981年発表)で、この画面上のゴリラをボスキャラクターとみなせるかどうかは微妙である。この当時、プレイヤーらにはこのゴリラは画面上に表示された「敵」の一つに過ぎず、更にいえば、直接攻撃する対象では無い、画面上の演出に過ぎなかったためである。
[編集] RPG
テーブルトークRPG(TRPG)から発展してきたコンピュータRPGでは、元からストーリー性を持っていたために、明確な形での「最終目標」である倒すべき親玉=ボスキャラクターが存在していた。このあたりはTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(1974年発売)において、各シナリオに各々目標が設定されており、倒すべき最終ボスもいたため、コンピュータRPGにはほぼ初期の頃からボスキャラクターがいたことになる。
初期のコンピュータRPGのボスキャラクターは、『ウルティマ』の原型となった"Akalabeth"(1979年発売)の「バルログ」や、『ウィザードリィ』(1981年発売)の「ワードナー」が挙げられ、こちらの方がシューティングゲーム等より古くから存在していた事となる。ただ『ウィザードリィ』に至っては、ワードナーを倒しても、そこでゲームは終了とならず、更に続けてプレイする事も可能であるため、果たして目的だったかどうかも些か怪しい。
[編集] ゲーム中におけるボスの位置づけ
ステージ単位で分けられているゲームでは、ボスキャラクターと呼ばれるものはそのステージの最後、あるいはその近くに配置されている。ステージ中で倒すことが難しい敵キャラクターという位置づけがなされることが多い。
また、ボスが登場することでゲームにメリハリが生まれプレイヤーを飽きさせないという効果を狙ってか、特にステージ分けをしていないゲームでもボスキャラクターが登場することがある。ステージが存在するゲームでも、ステージ途中の演出として、ボスキャラクターが顔見せのように姿をあらわしたり、あるいは中ボスとも呼ばれるやや難易度を押し上げる要因となるキャラクターが登場する物も見られる。
ボスキャラクターが単体だけではなく、倒すと次から次へとボスキャラクターが現れ、それらをすべて倒さなければならないという要素を含んだ(モードとして組み込まれているなど)ゲームもある。このようなゲームの例として『ロックマン』シリーズや『ファンタジーゾーン』などが挙げられる。
RPGにおいては、主にダンジョンの最深部などにボスがいることが多く、重要なアイテムがボスによって守られていたりする場合もある。プレイヤーはボスに勝てなかった場合、自身が操作するキャラクターのレベルが足りないことを痛感し、ザコ敵を倒して経験値を貯めレベルアップをして強くなった状態で再びボスに挑むか、あるいはあきらめて投げ出してしまうかのいずれかとなる。
いずれのケースにおいても、一般的にボスとの戦いはプレイヤーに様々な感情、感覚を与えるので大いに盛り上がり、興奮する場面となる。その効果を狙ったゲームデザイナーはしばしば緊張感を高めるBGMを取り込んだり、派手なグラフィックを使用するといった演出などをボス戦に巧みに入れ込む。またボスキャラクターを倒した際の爽快感を演出すべく、派手な演出効果を狙った特別の表示が成される事も多い。
特に1990年代以降、ハードの進化に伴う表現能力の向上により、ボスキャラとの戦闘を重要な演出として位置づける傾向はますます強くなっている。デザイナーの意図通りの演出を行うためにはある程度の戦闘時間を確保する必要があるためか、後年のゲームほどボスの耐久力が高く設定されている傾向がある。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ボスキャラクターの種類
[編集] ラストボス
ゲームの最後に登場する敵は、ラストボス、それを略してラスボスと呼ばれる。かつてファミコンの時代には「最後の敵」や「大ボス」などとも呼ばれていた。
通常は、ラストボスはゲームに登場する敵キャラクターの中で最も強大な存在とされる。『ハイドライド』の「バラリス」、『スーパーマリオブラザーズ』シリーズの「クッパ」などがこれに該当する。
中には、ラストボスとの戦闘を複数回行わせ、初回の戦いはボスの仮の姿、2回目以降が真の姿となり、これを本当のラストボスとするゲームもある(『ドラゴンクエスト』第1作の「竜王」、『ロックマン』の「ワイリーマシーン」など)。また、戦闘中にある一定量のダメージを受けると、能力が変化し、それまでとは異なり強くなる場合もある。
大抵のゲームでは、ラストボスを倒すとそのゲームをクリア(終了)したことになる。
ただし、ラストボスを倒した後にもゲームとして続行する例がある。例として「ボスを倒した後、そこから脱出しなければならない」等。これは『メトロイド』等で一躍有名になった。
[編集] 中ボス
ラストボス以外で、ステージの最後、あるいはシナリオ中のイベントなどで登場するボスは中ボス(ちゅうボス)と呼ばれる。『スーパーマリオブラザーズ3』の「コクッパ」や、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の「カンダタ」「バラモス」などがこれに該当する。中には『魔界戦記ディスガイア』の様に中ボスの位置にある存在の名前が「中ボス」と作中で称される場合もある。
ラストボスの事を「大ボス」と呼ぶのに対応した表現であろうが、「小ボス」という表現はあまり用いられない。強さや作中での位置づけによって「中ボス」と「小ボス」を使い分けることが稀にある程度である。
[編集] 隠しボス
ラストボス・中ボスの他に、ゲームを普通に進行する目的では倒す必要の無いボスキャラクターが存在するゲームもあり、このようなボスは隠しボス、裏ボスなどと呼ばれる。
ゲーム中で一定の条件を満たすことで出現するものもあり、ラストボスを上回る強さを誇るものも多い。これらは開発側が、ラストボスを簡単に倒せるくらいにキャラクターを強く成長させたやり込みプレイヤーを試すために用意したものである。隠しボスを倒せば、通常では手に入らない珍しいアイテムや能力などが得られることもある。
これらに該当するものの先駆者として、ともにスーパーファミコンで発売された『ファイナルファンタジーV』の「オメガ」や「しんりゅう」、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の「エスターク」が有名である。
コンシューマ機のRPG初の隠しボスは『ウィザードリィIII ダイヤモンドの騎士』(ファミコン版)の「デーモンロード」である。ただ、ファミコン版で追加された「デーモンロード」は、従来版では姿を現さなかったシナリオ上の「黒幕」ともいえる存在なので、「ゲームを普通に進行する目的では倒す必要の無いボスキャラクター」という意味での隠しボスとは厳密には言えない。
なお、隠しボスの中には、倒すと二度と復活しないものもあるが、一度倒しても何度でも復活するものもある。後者の場合は、倒した後、倒すのにかかったターン数を表示する場合もあるほか、少ないターン数で倒すことで何らかの特典を得られたりすることもある。隠しボスをいかに少ないターン数で倒すか、飽くなき追求を続けるプレイヤーも少なくない。
[編集] 倒せないボス
ボスキャラクターの中には倒すことのできないボスも存在し、特にRPGによく見られる。そのようなボスは無敵(絶対に倒すことができない)であるか、あるいはプレイヤーよりはるかに強大であり、プレイヤーはほぼ確実に敗れることになる。
このようなボスが出現する理由は、主として3種類ある。
- ストーリー上、負けることが前提となっているもの
- ストーリー上、プレイヤーは必ず負けることが前提となっているボスが設定されていることがある。これらのキャラクターとの戦闘では負けてもゲームオーバーとはならない。ストーリーが進むと再度そのボスキャラクターが登場し、そのときになると倒せるようになっていることもある。『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』の「キングレオ(第四章)」、『ファイナルファンタジーIII』の「くらやみのくも(1回目のみ)」などが例として挙げられる。
- そのボスとの戦闘を回避することが前提となっているもの
- 特定のアイテムを入手するなどして、そのボスが出現しない(あるいは出現しても戦闘にならない)ようにすることが前提となっていることがある。これらのキャラクターの場合は、負けるとゲームオーバーになってしまうものが多い。『ファイナルファンタジーIII』の「ネプトりゅう」や『ウィザードリィ #3』(ファミコン版ではII)の「ル’ケブレス」などの例がある。ただしネプトりゅうに関しては倒せない事が前提というだけで、実はレベルを無理やり上げまくると、倒せたりする。戦闘の回避方法としてはアイテムを入手したり、イベントをこなしたりする方法が一般的であるが、中には『ファイナルファンタジーIII』の「バハムート」のように、逃げることで戦闘を回避するものもある。
- ボスの倒し方自体がイベント化しているもの
- ボス自体がマップの一部となっており、一方的に攻撃を仕掛けてくる存在。または、特定の条件を踏まなければ倒せない存在。一度戦ったときはまともに倒すことができず、次に戦うときは倒すことが出来る存在。特定のアイテムを入手したり、特定の能力を上げたりすることによって初めて倒したことになる。通常このような存在はマップイベント扱いになるがこのボスがラストボスと言う条件を満たした時だけボス扱いになる。『ハイドライドII』の「イビルクリスタル」、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ ナイトメアトラバドール』の「闇マリク」の例がある。
以上のようなものに該当するボスキャラクターでも、プロアクションリプレイのような改造ツールを使ってデータを改変すれば倒すことは可能であるが、勝ったとしても負けた扱いになったり、ゲームが正常に進行しなくなったりする場合もある。
なお、「倒せないボス」と見せかけて、キャラクターの成長度やプレイヤーの技術次第ではまともに倒せるように設定されているケースも存在する。この場合、倒したときに隠されたイベント等が現れるものが多い。『クロノトリガー』やテイルズシリーズが有名。特にテイルズシリーズはリニア・モーション・バトル・システムを採用しているがゆえの特徴といえよう。ただ、本来のシナリオからは逸脱した行為なので、大抵ゲームオーバー扱いになってしまう。また、『魔界塔士 Sa・Ga』のあるボスの場合はある武器を使えば簡単に倒せるものの、通常に存在する攻撃で倒すことが可能だがすぐに復活してしまう。また違う中ボスはシナリオ中何度もエンカウント出現するが非常に倒しにくい。特定のアイテムを手に入れない限り、戦闘に勝っても倒した扱いにならないのである(ただし、特定のアイテムを手に入れるまでは、このボスからは逃げられるため、ゲームの進行には影響しない)。
[編集] その他
恋愛ゲーム、ギャルゲー、アダルトゲームなどで、口説き落とす相手のことを、比喩的にボスと呼ぶことがある。同様に、口説き落としたことを「誰それを倒した」と表現したプレイヤーもいる。
何らかの相手を口説き落とす、あるいは結ばれるなどがゲームクリアの条件になっている場合は、まさに文字通りのボスキャラクターと言える。また、そのゲームでもっとも口説きづらい相手をラスボスと称することもある。
音楽ゲームにおいて、シリーズを代表する高難易度の曲を「ボス曲」と表現される事もある。(Dance Dance RevolutionのPARANOIAシリーズ・MAXシリーズ、GuitarFreaks・DrumManiaのMODEL DDシリーズ、pop'n musicのHELLコース及びbeatmania IIDXの段位認定10段・皆伝該当曲など。)