クリスタル・ガラス
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クリスタル・ガラス(くりすたるガラス)は、高品位の無色透明ガラスのこと。
一般的には、珪砂、カリウム、ソーダ灰というガラスの主成分に、酸化鉛(PbO)を添加して形成される鉛ガラスの一種のことを指す。
ガラスの製造時に酸化鉛等を添加することでガラスの透明度と屈折率が高まり、その輝きから水晶(クリスタル)のように透明なガラスになるということから、通称として「クリスタル」と呼ばれる。ただし、光学的に無色透明であるよりもわずかに青みを帯びた方が肉眼では「美しい透明」と感じがちなため、アルカリ金属酸化物などの着色剤を用いて調整する事が多い。酸化鉛がガラス全体の25%以上のものを、クリスタル(レッドクリスタル・フルレッドクリスタル)、12%程度以下のものをセミクリスタルと呼ぶ。
一般的には鉛の含有量が上がるほど光の透明度や屈折率が高くなり、また比重が大きくなるとともに打音が澄んで余音を持つ。このため、特にワイングラスなど工芸用では酸化鉛が多いものが好まれる。しかし、その実現には、溶解・成形・徐冷・加工などの高度な製造技術や、鉄分など不純物の除去や他の混合物の配合など全体的な化学組成の調整が重要であり、一概に鉛の含有量が高ければ良いという訳ではない。
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[編集] 組成
- ライム・クリスタルガラス:Na2O-CaO-SiO2系。
- ボヘミア・クリスタルガラス:K2O-CaO-SiO2系。
- 半鉛クリスタルガラス:R2O(アルカリ金属酸化物、Na2OまたはK2O)-CaO-PbO-SiO2系。
- 鉛クリスタルガラス:R2O-PbO-SiO2系。酸化鉛の含有量は17~23%。
- 高鉛クリスタルガラス:K2O-PbO-SiO2系。酸化鉛の含有量は30%以上。
それぞれ、少量の酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムなどを含有する場合もある。
[編集] 用途
成型・徐冷後に、高い透明度のガラスとなるためガラス食器・グラス類・ガラス工芸及びその素材に用いられる。 素材としては、カッティング装飾による一層の輝きを与られるカットグラス(切子)向け、またとんぼ玉等のバーナーワーク向けのグラスロッドなど。 工業用途としては、ブラウン管用のガラスや医療・研究向機器の放射線遮蔽ガラスとして用いられている。
製品としては、高級洋食器・グラス・トロフィー・シャンデリア・ジュエリー・ビーズ等となり販売される。
[編集] 関連項目
[編集] 製品
[編集] クリスタル・ガラスの代表的なメーカー
- HOYA -日本。傘下に高級クリスタルのグラス、花瓶、トロフィー、ジュエリーのHOYAクリスタル。世界的透明度。海外進出、京都迎賓館納入等日本を代表するメーカー。
- カガミクリスタル -日本。日本初のクリスタルガラス専門工場を作ったメーカー。赤坂迎賓館や在外公館に納入実績多数。
- バカラ -フランス。高級クリスタル食器ブランド。グラス、花瓶、シャンデリアなどから、ジュエリーにも進出。ロシア王室の愛用で知られる。
- スワロフスキー -オーストリア。オブジェ、ビーズやボタン等のファッション向けも生産。
- ラリック -フランス。香水瓶、花瓶、グラス、ジュエリーを生産。
- スチューベン -アメリカ。アメリカの至宝。オブジェを中心にして生産。コーニング傘下。
- リーデル -オーストリア。ワイングラス。
- ウォーターフォード -アイルランド。イギリスで花開いたカットグラス文化を代表する企業。ウエッジウッド傘下。
[編集] 参考文献
- 浅見 進一『19.2 ガラス(19.装飾用セラミックス)』窯業協會誌(日本セラミックス協会 発行) Vol.72(820)、P.C348-C349、1964.3
[編集] 外部リンク
- ジャパンクリスタル委員会 -クリスタル・ガラスの安全性について。