スカイマーシャル
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スカイマーシャルとは、旅客機に搭乗し、ハイジャック等の犯罪に対処する武装警備員のこと。国や組織によって様々な名称で呼ばれている。
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[編集] 歴史
ハイジャック防止を目的とした警備員搭乗の制度は、1970年代から世界のいくつかの航空会社で行われてきた。イスラエル発の主要な国際便・国内便には、早くから武装したスカイマーシャルが搭乗していた。
アメリカでは、1968年に連邦航空局傘下に、航空関係者のボランティア活動によるスカイマーシャルプログラムが誕生したが、21世紀に入るまでは概して活動は低調で、ハイジャック事件が多発するたびに関連する官庁が制度を復活させるものの、数年後には中止・縮小されることが繰り返されてきた。
しかし、2001年に発生した9.11同時多発テロ以降は、航空機テロの危険性に対応するため、国土安全保障省(2003年設立)の連邦航空保安局が、米国内のスカイマーシャル任務を本格的に担当することになった。
また同年、米国内に着陸(もしくは領空内を通過)する旅客機を運航する各国航空会社に対して、出発地から武装警備員を搭乗させるようアメリカ政府が要請したことから、多くの国でスカイマーシャルの制度が創設されることになった。
[編集] 日本のスカイマーシャル
[編集] 経緯
日本でのスカイマーシャルは、2002年の日韓サッカーワールドカップ開催時に、航空機テロ予防・フーリガン騒乱時の対策として、大会期間中の日韓便および試合開催地への国内便に、武装私服警官が警乗したのが始まりである。このときは臨時的な対応であり、ワールドカップ閉幕とともにスカイマーシャルは終了している。
2003年のアメリカの武装警備員添乗要請を受け、警察庁は恒久的なスカイマーシャル専門組織創設の意向を固め、2004年には千葉県警・大阪府警の担当者が研修のため、既にスカイマーシャル制度を実施していたドイツに派遣されている。
同年12月には国土交通省・警察庁からスカイマーシャル制度の実施が公表されている。
[編集] 編成
アメリカ行きの日本の航空機(JAL、ANA)に搭乗するため、千葉県警(成田国際空港管轄)と大阪府警(関西国際空港管轄)の機動隊に、スカイマーシャル組織が創設された。
なお、愛知県警は中部国際空港を管轄しているが、スカイマーシャル組織の創設は現在までのところ確認されていない。
スカイマーシャル組織のメンバー(航空機警乗警察官)は、機動隊員から選抜され編成されているが、正確な人数は不明である。乗客を装って搭乗するが、全てのアメリカ行き旅客機に搭乗できるほど人数が多くないとみられるため、いくつかの便を選んで警乗しているものと思われる。
詳細は不明であるが、選抜・訓練にあたっては下記のようなことがいわれている。
- 選抜には語学能力や身体能力が重視される
- 主たる任務がハイジャック対策であるため、特殊急襲部隊(SAT)を除隊したOB隊員も含まれている
- 入隊後は、射撃、格闘技の訓練を徹底して行う
[編集] 装備
主たる武装は自動式拳銃と思われる。
多数の乗客が搭乗した飛行中の旅客機内で射撃することを考慮し、特殊な銃弾を装備していることが、2004年11月の警察庁長官の記者会見の中で示唆されている。この銃弾についての詳細は不明であるが、航空機への影響を少なくするため、ホローポイント弾やフランジブル弾に類するものを使用していると推測される。
また、特殊警棒や手錠も装備していると思われる。