スカーフェイス (映画)
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スカーフェイス Scarface |
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監督 | ブライアン・デ・パルマ |
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製作総指揮 | ルイス・A・ストローラー |
製作 | マーティン・ブレグマン |
脚本 | オリバー・ストーン |
出演者 | アル・パチーノ スティーブン・バウアー ミシェル・ファイファー メアリー・エリザベス・マストラントニオ ロバート・ロジア F・マーリー・エイブラハム |
音楽 | ジョルジオ・モロダー |
撮影 | ジョン・A・アロンゾ |
公開 | 1983年12月9日(アメリカ) 1984年4月(日本) |
上映時間 | 170分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
allcinema | |
キネマ旬報DB | |
IMDb | |
『スカーフェイス』(Scarface)は、1983年のアメリカ映画。
目次 |
[編集] 概要
1932年のギャング映画『暗黒街の顔役』(こちらも原題は"Scarface"である)のリメイクであり、キューバ移民のトニー・モンタナ(アル・パチーノ)が、コカインの密売で成り上がっていく様子を描く。
ゴールデングローブ賞ではジョルジオ・モロダー(作曲賞)、スティーブン・バウアー(助演男優賞)、アル・パチーノ(主演男優賞)がノミネートされた。
公開当初は興行成績が振るわず、失敗作と呼ばれていた。しかし、レンタルビデオなどを観た者達の間で次第に評価が高まり、現在ではデ・パルマ監督独特のねちっこい演出と色彩、カメラワーク、ジョルジオ・モルダーの音楽、アル・パチーノの大熱演と成り上がりというストーリーから、アメリカ南部出身者や黒人ラッパーなどからカルト映画として絶大な人気を誇っている。全世界で大ヒットしたRockstar Games社のコンピュータゲーム『Grand Theft Auto: Vice City』は、本作の影響を多分に受けた作品として知られている。
ラストシーンでの360度カメラを使った壮絶な銃撃戦と破滅への道をひた走るアル・パチーノの死に様は映画史に残るワンシーンとして名高い。
ちなみに出演者全員がfuckと発言した回数は合計で200以上で、パルプ・フィクションにつぐ回数を誇っている。日本における公開は1984年4月。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
1980年、キューバから反カストロ主義者として追放され、フロリダ州マイアミへ船で渡ってきたトニー・モンタナ(アル・パチーノ)とマニー・リベラ(スティーヴン・バウアー)は、政治犯レベンガの殺害を皮切りにアメリカの裏社会で暗躍するコカイン取引きで一獲千金を狙い、麻薬王と呼ばれるフランク(ロバート・ロジア)の配下におさまる。独断でボリビアの黒幕・ソーサ(ポール・シナー)と高額取引を成立させたトニーを危険視したフランクは、殺害を試みるが失敗。逆にトニーに殺される。
フランクの大邸宅と情婦エルヴィラ(ミシェル・ファイファー)を手にし、マイアミの麻薬王として君臨するトニーは宣伝用の飛行船に浮かび上がる"The World is Yours"(世界はあなたのもの)の文字を目にし、悦に入る。しかし、脱税の摘発をきっかけに麻薬取締りの手がトニーとソーサ達を包囲し始め、事態を打開しようとしたソーサは、麻薬取締り委員会最高顧問の殺害をトニーに依頼。依頼を了承しソーサが差し向けた殺し屋と共に爆殺を試みるが、家族と一緒の場面を見て関係のないファミリーを巻き添えにすることを躊躇したトニーは、家族皆殺しを決行しようとするソーサの部下を逆に射殺し、大邸宅へと引き返す。苛立つトニーは、溺愛する妹と弟分のマニーが結婚していた事実を知らずに誤ってマニーを射殺してしまう。
裏切り者を始末しようと、武装したソーサ一味はトニーの大邸宅を襲撃する…。
[編集] 『暗黒街の顔役』との相違点、評価
ハワード・ホークスが手がけた『暗黒街の顔役』のリメイク作品である今作だが、部分部分に違いが見られるもの基本的に大まかな話の流れは原作と変わらない。近親相姦を思わせる妹への過剰な愛情やチンピラの成り上がり物語、『The World Is Yours』も描かれている。ただし、トニーの凋落と死は原作と大幅に異なり(流れは一緒だが)、原作では警察が彼への包囲網を強め、結果として死に至るという展開だったが、今作では警察の捜査により摘発されたトニーが、それから逃れるために同盟関係にある男から人殺しの依頼を受け、しかしそれができず死に至るという展開である。さらに今作はデ・パルマによる残虐な暴力描写に重点が置かれ、原作と同じといっても内容が意外と薄く感じることもある。
大まかな相違点は、
- 登場人物の出自。現代版リメイクなのでトニーやマニーはキューバからの移民ということになっている。
- トニーの凋落の理由。原作では警察による捜査のため。
- ラストの銃撃戦。まず、銃撃戦の相手が原作では警官。
- トニーの死に様。原作では路地に出たところで警官に射殺される。
原作の上映時間は2時間にも満たないが、今作は3時間もあり、リメイクオリジナルのシーンも多数あるが、その中で印象的なのはやはり電動ノコギリによる拷問シーンだろう。あえて電ノコで頭を切りつけるシーンをあえて描かず、飛び散る血と悲鳴で暴力性と狂気性を表したシーンは異常なほどのインパクトを今なお放っている。
そして、もっとも有名なのがラストの銃撃戦と死に様である。絶望的な状況に追い込まれたはずのトニーが、狂気をむき出しにしてアサルトライフル(M203付きM16A1)を乱射し、どれほど銃弾に傷つけられても立ち続ける場面は、電ノコを圧倒するほどのインパクトと迫力を持っている。360度カメラによるデ・パルマの映像演出もすばらしく、ありのままの暴力性を爆発させた映画史に残る銃撃戦の一つである。そして、背後から忍び寄る刺客によって銃弾を叩き込まれたトニーが、一瞬スローになってから噴水に落ちる死に様は、映画史に残るワンシーンといえるだろう。
[編集] ゲーム版
2006年にVivendi Games社から本作のビデオゲーム版『Scarface: The World is Yours』(対応機種:Xbox360、Windows)が発売された(海外版のみ)。ストーリーは映画版の「If」をテーマにしており、ラストの襲撃を辛うじて生き延びたものの富も権力も全て失ったトニーが、ソーサ一味に復讐するために再び成り上がっていく、という筋書き。本編同様、スラングや暴力表現がふんだんに盛り込まれている。
ゲーム内容は敵対するギャングと戦いつつ、麻薬売買やマネーロンダリングを通じて資金を稼ぐというもの。ある程度持ち合わせができればマイアミの物件(トニーの屋敷も含む)を買い漁ったり、表社会のビジネスに投資したりして徐々に勢力を取り戻していくことができる。三人称視点のゲーム画面や自動車の運転など、一見GTAシリーズに似通った作風ではあるが、街中で銃を構えたり自動車を盗んだりすれば即座に通報されてしまうなど、GTAとは異なったコンセプトに仕上がっている(こうした事情から自動車は自分で購入したり部下に電話して調達しなければならない)。
なお、トニーの声を出しているのはパチーノ本人ではなく彼が推薦した別の声優である。
[編集] スタッフ
- 監督:ブライアン・デ・パルマ
- 制作:マーティン・ブレグマン
- 製作総指揮:ルイス・A・ストローラー
- 撮影:ジョン・A・アロンゾ、A.S.C.
- 音楽:ジョルジオ・モロダー
- 脚本:オリバー・ストーン
[編集] キャスト
- アル・パチーノ:Tony Montana
- スティーブン・バウアー:Manny Ribera
- ミシェル・ファイファー:Elvira Hancock
- メアリー・エリザベス・マストラントニオ:Gina Montana
- ロバート・ロジア:Frank Lopez
- F・マーリー・エイブラハム:Omar Suarez
- ポール・シナー:Alejandro Sosa