ニューカッスル・アポン・タイン
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ニューカッスル・アポン・タイン(Newcastle upon Tyne)は、イングランド北東部に位置する都市であり、タインアンドウィア州に属する。しばしばニューカッスルと略される。またニューキャッスルと表記されることもある。市の人口は約30万人。周辺都市のゲイツヘッドやサンダーランドを含めた100万人都市圏の中心でもある、北部イングランド最大の都市。
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[編集] 歴史
122年ころローマ人達がこの地に到達する。皇帝ハドリアヌスの命により西部のカーライルまでブリテン島を横断する城壁(ハドリアヌス防壁)がつくられる。ニューカッスルはこの城壁の東端に位置する城塞であり軍事上の重要な拠点であった。また、交通・通商の拠点でもあり、ニューカッスルは商業・貿易の街として発展する。400年ころにはローマ帝国の崩壊にともない、この地からローマ人は姿を消す。
ノルマン人のイングランド征服後、この地は再び軍事上の拠点となる。1080年にはイングランド王ウィリアム1世の命によりこの地に木造の城が造られた。ヘンリー2世の代には石造りの城が造られた。13世紀から14世紀にかけて街を囲む城壁が建設された。 中世には毛織物産業や石炭貿易で栄えた。
1579年のペストの大流行では当時人口1万人ほどであったニューカッスルで約2,000人が死亡した。
産業革命時にはニューカッスル出身のスティーブンソンが蒸気機関車を発明した。1847年にはイギリスを代表する重工業メーカーアームストロング社の工場が建設された。造船業も盛んで19世紀末ごろには世界最大の造船所であり最盛期には世界の1/4の船舶がこの地で造られた。
1854年にニューカッスル・ゲイツヘッド大火災(The Great fire of Newcastle and Gateshead)と呼ばれる火災が起こった。タイン川の対岸ゲイツヘッドの毛織物工場で起きた火災がニューカッスルにも飛び火し、大きな被害を出した。
第二次世界大戦後は造船業が衰退し、1970年代には炭坑も閉山となった。ニューカッスルは中心街の空洞化や失業者の増大、治安の悪化、人口減少などさまざまな問題を抱えながらも、産業構造の転換を模索し、商業・サービス業・観光業に重点を置いた政策を実施した。
1980年代にはニューカッスルはそれなりに活気を取り戻した。しかし重工業の工場労働者をサービス業などへ転換することが難しく失業問題の完全な解決にはいたらなかった。中心街の活性化も隣接するゲイツヘッドの郊外へ大型ショッピングセンターが進出し思うに任せなかった。 1990年代からは外国企業も含めた企業誘致なども行っている。
[編集] 観光
市内にはジョージア朝、ヴィクトリア朝時代からの歴史的建造物も数多く残されている。
市の中心部を通るグレイストリートの起点となる高さ40mもあるモニュメントは、ノーザンバーランド州の貴族で首相を務めたグレイ伯チャールズ・グレイを記念するもので、1838年に建設された。モニュメントの近隣には1837年に完成したシアター・ロイヤルがある。
市の名前の由来となった城、カッスル・キープは1678年に現在のような石造りの城となった。鉄鋼産業・石炭産業の煤煙のため城は黒ずんでいる。城には隣接してセント・ニコラス大聖堂がある。 大聖堂と城の間にある門はブラックゲートとよばれ、現在は博物館になっている。
街の中心部からやや北へ歩くと広大なニューカッスル大学の敷地が街と一体化した形で広がる。1834年開設の医学学校と1871年の物理学校が合流する形で設立された国立大学で、英国内では新しい部類に入るものの、伝統ある大学として内外に認知されている。多くの古い建物と施設を持つが、特に博物館が2つあり、特別展を除きいずれも入場は無料。
市内を流れるタイン川にかかる7つの橋も観光名所。とくに1928年に完成した緑色のタイン・ブリッジは当時世界最長のアーチ型橋で、市のシンボルでもある。ロバート・スティーブンソンにより設計されたハイレベル・ブリッジは現存するタイン川の橋の中では最も古く、1850年に完成したもので開通式はビクトリア女王によって行われた。赤く愛らしいスウィング・ブリッジや歩行者専用のミレニアム・ブリッジもよく紹介される。
タイン川沿いのキーサイドはかつて貿易・商業の中心地であった。1990年代から再開発が進み、歩いて渡れる対岸のゲイツヘッドの再開発も同時に行われ、近代美術館やホテル・レストランが建ち並んでいる。最近はパーティ・タウンとしてヨーロッパから若者が集まり、週末の夜はにぎわっている。
[編集] 交通
[編集] スポーツ
1881年に創設されたサッカークラブのニューカッスル・ユナイテッドは、FAプレミアリーグの前身であるフットボールリーグ優勝4回、FAカップ優勝6回、UEFAカップ優勝1回を誇る名門チームである。FAプレミアリーグに移行後の最高位は2位。本拠地のセント・ジェイムス・パークは街の中心部、ニューカッスル大学に隣接した小高い丘の上にあり、街のどこからでも見ることができる。
ラグビー・クラブのニューカッスル・ファルコンズは1877年に創設された歴史のあるクラブである。本拠地はキングストン・パーク。
[編集] ニューカッスル・アポン・タイン出身の著名人
- チャールズ・グレイ
- ジョージ・スチーブンソン
- ロバート・スチーブンソン
- スティング
- ジャック・ヒギンズ
[編集] 姉妹都市
[編集] 領事館
以下の国々はニューカッスルに領事館を設置している:
ノルウェー王国領事館:14 Grey Street, NE1 6AE
オランダ王国の名誉領事館:The Cube, Barrack Road, NE4 6DB
スウェーデン王国の名誉領事館:2 Osborne Road, Jesmond, NE2 2AA
イタリア共和国の名誉領事館:63 High Bridge, NE1 1DU