ブラックレター
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ブラックレター(Blackletter)はアルファベットの書体の一つ。
西ヨーロッパで12世紀から15世紀にかけて使われていたが、ドイツにおいてはフラクトゥール(ドイツ文字)と呼ばれるものが20世紀まで用いられていた。このため、ブラックレター全体を指してフラクトゥールと呼ぶこともある。また、日本語においてゴシック体と呼ばれる書体は、アルファベットの書体としてはサンセリフであり、英語においてゴシック体(Gothic Script)と言うと通常はブラックレターを指すので注意を要する。
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[編集] 起源
直接的な祖先は、カロリング朝のカール大帝がヨークの修道僧アルクインに作らせたカロリング小文字(カロリング・ミナスキュール)である。12世紀ヨーロッパでは新たに大学が設立され、以前のような宗教に関する印刷物以外にも、商業や法律、文学、歴史などの多くの学問に関する書物が多く書かれるようになった。しかし、カロリング小文字は読みやすいものの、書かれるのに時間がかかり、紙面を広く占めてしまうため(当時、紙はまだ高価であった)、11世紀ごろには現在のブラックレターのような、ページに多くの文字を書くことができ、かつ速く新刊書を出せるように改良された書体が使われ始めた。さらに12世紀中頃には、現在のようなブラックレターがフランス北東部やベネルクス三国などで使われるようになった。名前の由来は、ブラックレターで書かれた本は、ページ中の文字による「黒い」部分の割合が多くなるため。
[編集] ゴシックという呼称
ルネサンス期のヒューマニスト達は、ローマ帝国から使われていたローマン書体を敬愛しており、ブラックレターを洗練されていないものとして嫌っていたため、蔑称として「ゴシック」という呼称が15世紀イタリアにおいて使われ始めた。「ゴシック」という語は、ローマ帝国に侵入しその滅亡の一因となったゴート族に由来しており、この場合は「洗練されていない」「野蛮」といった意味で用いられている。
なお、ブラックレターだけが「ゴシック」と呼ばれた訳ではなく、前述のカロリング小文字や、アンティーク文字、ヒューマニストが古代ローマで用いられていたと考え古代文字と呼んだ書体(実際はカール大帝の時代に作られたもの)なども、洗練されていない粗野な書体として「ゴシック」というレッテルを貼られていた。
[編集] 書体の分類
[編集] テクストゥール
テクストゥールは、最も代表的なブラックレターの一種で、ヨハネス・グーテンベルクが発明したことで知られる。これは、1455年発行のグーテンベルク聖書(四十二行聖書)のために作られたもので、多くの合字や省略形を含み、装飾的な書体が特徴である。
[編集] カーシヴ
カーシヴは、ブラックレターに分類される書体のうちで大きなグループの一つで、印刷用書体としてのブラックレターであるテクストゥールなどを、筆記用に簡略化したものである。筆記の対象が羊皮紙から紙へと移り変わっていった14世紀頃から広く使われるようになった。
[編集] ハイブリッド
ハイブリッドは、上記のテクストゥール、カーシヴの中間的な書体で、15世紀ごろにそれぞれの特徴を合成して作られた。
[編集] 各国における書体
[編集] フランス
フランスのブラックレターは、ブラックレターにおける初期、11・12世紀に作られたものである。13世紀に完成されたフランスのテクストゥールは、他国のものよりも縦に細長い形状であり、ミニチュアの聖書を記述するため極小サイズの「パールスクリプト」と呼ばれるものも存在した。現在使われているフランスのブラックレター「リテラ・パリジェンシス」は、パリ大学で開発されたもので、非装飾的で小さく、速く書くことができるのが特徴である。
フランスのカーシヴは、13〜16世紀に使われ、非常にループ状で傾いた書体である。15世紀に発達したハイブリッドの「バスタルダ」は、ラテン語と同様に日常的な文章に使われ、特にブルゴーニュにおいては角ばった書体がベリー公のいとも豪華なる時祷書などの時祷書などに用いられた。
[編集] イギリス
イギリスのブラックレターは、ノルマン征服後にカロリング小文字より発達した「ロマネスク小文字」が使われるようになったのがはじまりである。イギリスのブラックレター(テクストゥール)には非常に多くの種類があり、「Textualis formata」「textualis prescissa」「textualis quadrata」「semi-quadrata」「textualis rotunda」などに区分されている。13世紀〜14世紀前半にオックスフォード大学は、フランスのリテラ・パリジェンシスを基にして「リテラ・オクソニエンシス」を作ったが、これはほとんどそのままで、フランス語の語尾で用いられる、数字の8に似た「s」など少数の差異がある程度である。
13世紀になるとカーシヴが使われ始め、大学における一般的な書体として「リテラ・オクソニエンシス」にとって代った。初期のカーシヴとしては「アングリカーナ」と呼ばれる丸くループのある書体が挙げられる。これには角ばった「アングリカーナ・フォーマッタ」も存在し、これは15世紀まで日常的な書体として使われていた。16世紀までは、アングリカーナとテクストゥールから作られた「アングリカーナ・バスタルダ」も用いられた。
1847年にイギリスで発行されたヴィクトリア女王戴冠10周年記念のクラウン銀貨にはこの書体の銘字が用いられたため、ゴチック・クラウンとして知られている。
[編集] イタリア
[編集] ドイツ
フラクトゥール(ドイツ文字)を参照。
[編集] 関連項目
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