ミズカマキリ
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?ミズカマキリ | ||||||||||||||||||
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![]() 伊丹市立昆虫館での生態展示 |
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![]() 体長と呼吸管の長さ対比 |
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Ranatra chinensis | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
Water stick insect |
ミズカマキリ(水蟷螂)は、カメムシ目・タイコウチ科に分類される水生昆虫の一種。その名の通りカマキリに似るが、全くの別種である。
[編集] 特徴
体長40-50mm。水田や池沼の水中に生息する。タイコウチなどに比べて深い水深を好む傾向があるが、これは同じニッチを占める2種が共存するための「棲み分け」だと考えられる。
分布は日本全域に渡る。国外では台湾、朝鮮半島、シベリア、中国から東南アジアと広い範囲に分布する。
水中での呼吸に使用する2本の鞘状の呼吸管は非常に長く、体長ほどもある。その細長い体ゆえか飛行能力は水生カメムシ類の中で最も高く、昼間でも頻繁に飛ぶ。これは生息範囲を広げるのに有効で、市街地近くの池沼でも観察されることがある。近い仲間のタガメやコオイムシが個体数を激減させているのに対して、比較的現代環境に適応した種と言えるが、環境破壊によってその数を減らしているのに違いはない。
形態からも想像できるように肉食性で、他の昆虫や小魚、オタマジャクシなどを餌とする。優れた飛行能力を有する反面、水中での動きはやや鈍く、水草などに潜んで獲物をじっと待つ。鎌状の前肢で捕らえた獲物には口吻を刺し、消化液を送り込んで溶けた肉液を吸う(体外消化)。消化には非常に時間がかかり、大きな獲物なら時に15時間以上も採餌し続けることがある。
11月頃になると、水底の物陰で成虫越冬をする。
4月頃に目覚めた成虫は5~7月になると交尾をし、雌が単独で産卵をする。産卵は陸上の苔など湿った柔らかい場所を選んで、尾端を何度もその中に差し込むようにして行う。細長く白い卵にはヒゲのようなものが先端に2本付いているが、これには卵の呼吸を補助する役割があると考えられている。10日ほど後に孵化した幼虫は、すぐ成虫と同じように水中生活を始め、5回ほど脱皮を繰り返した後、約40日で成虫となる。
[編集] 近縁種
日本で観察できる近縁種に、ヒメミズカマキリとマダラアシミズカマキリが知られる。
- ヒメミズカマキリ(Ranatra unicolor)
- 小さく(25-30mm)、呼吸管が体長よりも明らかに短いことからミズカマキリと識別できる。全国に分布するが、ミズカマキリに比べて個体数はかなり少ない。ヒシの葉柄の浮嚢など水生植物の組織に産卵管を突き刺して卵を産み付けるため、生活史を通じて陸や水際に依存する度合いが極めて少ない。水面に落ちた小昆虫を主な餌としていることが知られている。
- マダラアシミズカマキリ(Ranatra longipes)
- ヒメミズカマキリに似るが、中肢の基部と節に黒い紋がある点で区別される。国外では台湾や東南アジアに分布するが、国内では沖縄の八重山列島が分布の北限だと考えられる希少種である。