ミラージュ2000 (戦闘機)
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ミラージュ 2000
ミラージュ 2000 (Mirage 2000) はフランスのダッソー (Dassault) 社製の軍用機である。
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[編集] 概要
無尾翼デルタ式の単発の戦闘機。フランスの他、7ヶ国に採用されている。
主な武装は、30mm機関砲2門を固定武装とし、ハードポイントは9ヶ所。空対空ミサイル4発の他、通常爆弾、対地ミサイル、対艦ミサイル等を搭載可能である。
現在では、後継機のラファール戦闘機の生産が進められているが、輸出用としては今なお提案が続いている。
[編集] 開発の経緯
ダッソーは無尾翼デルタ機の開発を得意としてきたが、これは機体の小型軽量化、飛行特性の安定性などにメリットがある一方で、STOL性能、低空飛行、機動性などが主・尾翼の組み合わせによる二翼式の航空機に劣るとされ、ミラージュ 2000の前作であるミラージュ F1の開発においては採用されなかった。
ダッソーとフランス空軍は、当初地上攻撃に重点をおいた双発可変翼戦闘機ミラージュG-4を、次いでその派生型要撃機ミラージュ G-8を、次期戦闘機として開発していたが、費用・運用の両面から1975年に全プロジェクトは中止となった。同年にNATO4ヶ国の新型戦闘機導入商戦において、ミラージュ F1E/M53がF-16に敗れていたことも影響した。
フランス空軍・ダッソーの両者が必要としていた次期戦闘機計画は、1976年の時点で実用化までの期限が1982年までという当時としても短期間での開発計画として再度開始された(注:現代の戦闘機開発は、さらに長期化している)。ダッソーにとっては、短期間で十分な成果を残すことを求められた結果、最新の技術を以ってすればデメリットを克服できるとして、1972年より『Super ミラージュ 3』『Delta 1000』などの名称で検討されていたミラージュ IIIの後継機をもってこれに充て、再び得意の無尾翼デルタによる開発が始まった。
ミラージュ 2000はエンジンをミラージュG-4/8用のSNECMA社製 M53を採用するなど開発期間の短期化に注力した結果、設計開始から初飛行までわずか27ヶ月と驚異的な速さで開発は進み(それでも、計画から9ヶ月遅延していた)、1983年には量産型の軍への納入を開始、翌年には実戦配備されている。ただし、レーダーの開発は間に合わず、最初期の37機はRDIレーダーの代わりにRDMレーダーを装備していた。
[編集] 派生型
主なバリエーションは以下の通り。
- ミラージュ 2000
- プロトタイプ
- ミラージュ 2000C
- RDMレーダーを装備した、最初の量産型
- ミラージュ 2000B
- ミラージュ 2000の複座型
- ミラージュ 2000D
- ミラージュ 2000Nの通常兵器のみの戦闘爆撃機型
- ミラージュ 2000E
- ミラージュ 2000Cの輸出型
- ミラージュ 2000N
- ミラージュ 2000DA (ミラージュ 2000C-S4/S5)
- RDIレーダーを装備し、防空戦能力を向上させたミラージュ 2000Cの後期生産型。DAは、Defense Aerienne(防空)の略。
- ミラージュ 2000-5
- 次世代型と呼ばれ、大幅に改良を施した能力向上型。新型のRDYレーダーを装備し、MICAミサイルの運用能力を得た他、計器類がラファールから派生した統合モニターに交換されるなどの改良を施した型。
- ミラージュ 2000-5 Mk2
- ミラージュ 2000-5に、レーダー改良・航法装置の改良・データ処理能力の向上・電子戦能力の強化を施した型。
- ミラージュ 2000-9
- 2003年に納入が始まったばかりのミラージュ 2000の最新型。
- ミラージュ 4000
- ダッソーの社内企画による、拡大双発型。不採用に終わる。
[編集] 採用国
- フランス(315機)
- ミラージュ 2000C x 124 (2000DAを含む。37機がミラージュ 2000-5Fに改修済。2000C全機、2000DA相当に改修済)
- ミラージュ 2000B x 30
- ミラージュ 2000N x 75
- ミラージュ 2000D x 86
- アラブ首長国連邦(68機)
- ミラージュ 2000EAD x 22
- ミラージュ 2000RAD x 8 (偵察型)
- ミラージュ 2000DAD x 6
- ミラージュ 2000-9 x 20
- ミラージュ 2000-9D x 12
- ギリシャ(55機)
- ミラージュ 2000EG x 36 (10機を、ミラージュ 2000-5 Mk 2相当に改修)
- ミラージュ 2000DG x 4
- ミラージュ 2000-5 Mk 2 x 15
- 台湾(60機)
- ミラージュ 2000-5EI x 48
- ミラージュ 2000-5DI x 12
[編集] スペック
- 乗員: 1-2名
- 全長: 14.4m
- 翼幅: 9.1m
- 全高: 5.2m
- 翼面積: 41m²
- 自重: 7,500kgf
- 最大離陸: 17,000kgf
- エンジン: SNECMA M53-P2×1
- 推力: 6,600(9,700)kgp(A/B)
- 戦闘行動半径: 1,480km
- 最大速度: 2,340km/h
- 最大マッハ数: Mach 2.2
- 上昇限度: 16,750m
- 上昇率: 17,000m/min
- 固定武装: 30mm機関砲 2門
- 爆弾: 250kg爆弾
- ミサイル
- ロケット弾: 68mm ロケット
- その他: 増槽
[編集] 余談
日本では2006年2月に公開されたフランス映画「ナイト・オブ・ザ・スカイ」は、フランス空軍所属のミラージュ2000戦闘機のパイロットたちが巨大な陰謀に立ち向かうという内容のアクション映画であるが、この映画の空中シーンの大半は、実際に実物のミラージュ2000を飛行させて撮影された(パイロット役の出演俳優たちも、一部のシーンでは実際にミラージュ2000に搭乗して空中撮影を行なった)。またミラージュが爆破されるシーンでは廃棄予定のミラージュⅢを実際に爆破させた。