ユリアン (ストリートファイター)
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ユリアン(Urien)は、カプコンの対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターIII』シリーズに登場する架空の男性人物。
『ストIII』シリーズでは『2nd IMPACT』より登場し、後に『CAPCOM FIGHTING Jam』にもプレイヤーキャラクターとして参戦。
声優はうえだゆうじ(『2nd IMPACT』)、ローレンス・ベイン(『3rd STRIKE』以降)。
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[編集] キャラクターの設定
本作品のボスキャラクターであるギルの実弟。紀元前より世界を裏から支配しているという謎の秘密結社の副総統。(兄のギルは総統)組織は2200年の地球上に理想世界をつくりあげるべく活動している。
24年に一度開かれる組織の総統選抜の候補者として、ギルと共に幼少の頃から英才教育を受けてきた。しかし、情緒不安定という理由で兄であるギルが総統に選抜される。このことからユリアンは副総統の座に甘んじる事になり、その屈辱からギルに激しい憎悪と殺意を抱いてきた。
『2nd IMPACT』のエンディングではギルを倒し、念願の総統の座を手にするも総統の上には更に天帝なるものが存在する事を知る。それもあろうことか、天帝がギルという衝撃の事実が明らかになる。つまり、ユリアンはまたしても二番手という立場に立たされてしまう。
続編である『3rd STRIKE』では、天帝の座を奪うため「この理不尽を許してなるものか! 余こそが君臨者たるべきだ! 愚兄には絶望の制裁を与えん!!」と再び立ち上がる。最終ステージのギル戦では双方共に殺意を明確にして戦い、そしてついにギルを倒し天帝の座につく。エンディングでは組織の遺産である2000年にわたり蓄積され続けた歴代天帝保存施設を爆破。実兄であり、同時に宿敵であったギルを地球上から完全に抹殺したユリアンは、その年をもってAU(アフターユリアン)元年と定める事を宣言した。
[編集] 人物
- 銀髪碧眼、長身で筋骨隆々。平時はスーツを着用しているが戦闘時はそれを内側から筋肉で破り、さらに肌の色が変化する。またギルと同じくふんどしのような着衣のみを身に纏って戦いに臨む姿は、良くも悪くも、見る者に強烈なインパクトを与える。あまりに奇異なその姿は2ちゃんねるの格闘ゲーム板で一部の好事家によって、定期的にユリアンのネタスレが立てられるほど。
- 一人称が余であるようにいわゆる俺様人間。自らを神と称し、他の人間全てを自分によって支配されるべき存在と位置付けている。勝ち台詞や対戦前のデモ画面ではそのキャラクターが遺憾なく発揮されている。
- ユリアン同様に自らを神としながらも、人類の宗教哲学や精神世界といった哲学的世界観にその身を置き、人類の救済を目的とするギルとは対照的に、ユリアンは暴力をも辞さない人類全体の直接的な支配あるいは地球全体の管理を目的としている。その性格は残忍極まりなく、己のためならば躊躇せず人を手にかける。
- 『3rd STRIKE』では春麗の教え子を誘拐。本人は「かの組織を壊滅させた足を試してみたくなった。」とベガの組織、シャドルーの存在を口にする。しかし、その真意は謎のまま。
- 『3rd STRIKE』より参戦したトゥエルヴを開発する際に用いられた人体再構成理論はユリアンによるもの。『CAPCOM FIGHTING Jam』のエンディングでも量産されたトゥエルヴを組織している事から、ユリアンにとってトゥエルヴは中々の自信作のようである。
[編集] キャラクターの特徴
基本技や必殺技のモーションはギルに酷似している。しかし性能はプレイヤーキャラクターのためか、若干抑えられた仕様になっており、必殺技のコマンドも大部分がタメコマンドである。
高威力な技を用いた戦法、連続技が非常に強力。通常投げの間合いが広く、威力も高い。体力と防御力も全キャラクターでトップクラス。素早く長いダッシュとリーチと判定に優れる基本性能を持つ。
ただし、食らい判定が大きく完全な無敵技を持たないために守勢に立つと弱い部分もあり、いぶきや豪鬼、ユンといった手数の豊富なキャラを苦手とする。
[編集] 技の解説
[編集] 必殺技
- メタリックスフィア
- 組んだ両の拳から球状の雷撃を放つ。一般的な飛び道具とは違って弱中強で撃つ方向が変わり、空中ヒット後は追撃が可能となる。スキは大きく発生も遅いが空中ヒット時はすさまじい威力の連続技を叩き込む事が可能であり、その後も後述のスーパーアーツ(以下、SA)を用いた回避困難なガード不能連携に移行できる。EX版は『2nd』では二発同時に撃つものだが、『3rd』以降は一発になっている。
- バイオレンスニードロップ
- 上空に飛び上がった後に膝蹴りで急降下する中段技。被ガード時はスキも大きく使いにくい技であるがガード不能連携で活躍する。
- デンジャラスヘッドバット
- 後ろに身をそらしつつ軽く跳躍しての頭突き。瞬時に下半身の食らい判定と投げられ判定が消失する。ダメージ、スタン値共に高くスキもほぼ皆無、移動後に投げやブロッキングも狙えるユリアンの高性能な主力技。EX版はスタン値、ダメージ共に大幅に上がり、更に浮いた相手に追撃が可能になる。
- チャリオットタックル
- 相手めがけて高速で突進するショルダータックル。EX版は二段タックルになる。発生、判定、ダメージ共に高性能だがスキはやや大きい。熟練したプレイヤーはこの技を用いた空中コンボで、相手の体力の半分以上を軽く奪い去る連続技を可能とする。ユリアンの代名詞。
[編集] スーパーアーツ
- SA1 タイラントパニッシュ
- 天を仰ぐように身をそらした後にチャリオットタックルを4発、最後に強烈なラリアットを見舞う突進技。発生も速く、ダメージも高いがスキは大きい。特筆すべきはその威力にあり、体力の低い豪鬼にしゃがみ状態でヒットさせると、なんと体力の約60%を奪う。ゲージストックは2本、ゲージの長さは104。
※タイラントとは英語で「暴君」、パニッシュは「処罰」を指す。
- SA2 ユピテルサンダー
- 巨大なメタリックスフィアを放つ飛び道具。ダメージは低いがスタン値は高い。これを用いて一発で相手をスタン(気絶)に追い込む連続技も存在する。しかし実戦時のポテンシャルは低く、あまり使用されることのないSA。これを受けてか『CAPCOM FIGHTING Jam』では強化されている。ゲージストックは2本、ゲージの長さは80。
※ユピテルとはローマ神話における神々の王。ユピテルの雷撃を司る。
- SA3 エイジスリフレクター
- 前方に雷で作った鏡を模した物体を設置する。鏡は攻撃判定と飛び道具反射能力を持ち、約3.5秒の時間経過か相手に6回触れた時点で消失する。弱中強で設置位置の調整が可能となり、同時押しで上方に設置できる。このSAがユリアンをユリアンたらしめると言っても言いほどに凶悪な性能を秘めている。最もプレイヤー間で使用されているSA。ゲージストックは2本、ゲージの長さは88。
※ギリシア神話に登場するゼウスが、娘であるアテナに与えたイージスの防具がその名の由来と思われる。
[編集] 「ハメキャラ」としてのユリアン
『3rd STRIKE』において、ゲームの攻略が進みキャラクターの詳細な性能が明らかになる過程で、旧基板においてエイジスリフレクターの設置時からみて逆方向から、相手キャラクターをエイジスリフレクターとユリアン本体で挟撃する位置関係を取ると、なんと相手側のガードが不能になる現象が発覚した。(このバグを修正した新基板もあるが稼動台数は少ない)
その後、職人系プレイヤーのいわゆるやりこみによって、全キャラクターに対応したガード不能連携が確立されていく。この連携の発達でユリアンが受けた恩恵は絶大で、元々コンボの威力が非常に高いために、ありとあらゆる状況からSAゲージを回収しつつ、相手をそのまま即死に追いやる事も可能となった。
更なる発展により現在ではハメパターンは膨大な数に達しており、従来のエイジスリフレクター設置後の中下段の二択攻撃に加えると完全に対応するのはまず不可能と言われている。結果としてユリアンの評価は急上昇、未だに発展する余地があるとの声もある。 一見ゲームバランスの破壊に繋がるだけと思われるが、更なる上位キャラの存在や、ブロッキングで回避できる事等から(非常に困難ではあるが)プレイヤー間で広く戦法として認知されており、こうしてユリアンは「ハメキャラ」としての位置を不動のものとする。
しかし、多くの場合において実戦でこれらの強力な連携、連続技を完璧に使いこなすには様々な高等技術の習得と精緻な入力動作、更には経験則で一瞬にして状況を判断する能力も要求される。安易に使いこなせるキャラクターではないが、ツボにハマった時の爆発力はまさにゲーム中最強であり、マスタークラスのプレイヤーは他を寄せ付けない安定した強さを誇る。