ロイヤル・バレエ団
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英国ロイヤル・バレエ団(Royal Ballet)はイギリスの王立バレエ団。フランスのパリ・オペラ座、ロシアのボリショイ劇場と並び世界三大バレエ団のひとつと称される。現在の名誉総裁はチャールズ皇太子。芸術監督は元プリンシパル(最高位ダンサー)のモニカ・メイソン。
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[編集] 沿革
その設立は1931年、バレエ・リュスで活躍していたアイルランド出身のバレリーナ、ニネット・ド・ヴァロアがロンドンで始めた「ヴィック・ウェルズ・バレエ(Vic Wells Ballet)」に遡る。当時の英国には国立のバレエ団は存在せず、私立カンパニーとしてのスタートだった。1942年までに、バレエ団はロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場を本拠地とし、同時にバレエ学校を設立してマーゴ・フォンテイン(マーゴット・フォンテイン)、モイラ・シアラーなど自前のダンサーを育てていった。初期の作品はド・ヴァロアの振付による作品もあったが、やがてダンサー出身のフレデリック・アシュトンが振付を開始し、後にバレエ団の主席振付家となった。第二次世界大戦が始まると、カンパニーはヨーロッパ各国への公演、駐留軍への慰問公演などを積極的に行い、集客力と知名度を上げていった。1946年、王室メンバーを名誉総裁とする国立のバレエ団となり、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスに本拠地を移した。なお、この際にバレエ団は分派して、一部は引き続きサドラーズ・ウェルズ劇場に本拠を置く姉妹カンパニーとなり、名称は旧来の「サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団」を用いた。1991年にサドラーズ・ウェルズ・ロイヤルはバーミンガムに移転し、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団と改称した。
ボリショイやパリ・オペラ座のバレエ団が王室の命によって設立され、200年近い歴史を持つのとは対照的に、ロイヤル・バレエの設立は個人によるものであり、そのために当初から、演劇的で大衆受けする作品が作られていた。王立のバレエ団となってからも、前述のアシュトンに加え、ジョン・クランコ、ケネス・マクミランなど個性的な振付家が輩出され、「リーズの結婚」、「マノン」、「うたかたの恋」、「パゴタの王子」など演劇性の高い、ドラマチックな作品が生まれた。 また、前記の2バレエ団が主にその国出身のダンサー(パリならフランス、もしくはその周辺国、ボリショイならばロシア、および旧ソ連国家)で団員を構成するのとは対照的に、1980年代後半から海外出身のダンサーを積極的に入団させているのも特徴としてあげられるだろう。結果、日本の熊川哲也、吉田都、フランスのシルヴィ・ギエム、スペインのタマラ・ロホ、キューバのカルロス・アコスタ、ルーマニアのアリーナ・コジョカルなど、国際色豊かな多彩な人材がそろうようになった。反面、安易に他国の優秀ダンサーを引き抜いてばかりで自国のダンサーを育成していないという指摘もある。事実、2006年の時点で英国人プリンシパルダンサーはダーシー・バッセルとエドワード・ワトソンの2名のみで、他は全て外国籍である。また、1960~70年代に製作された古典上演を重んじるあまり、ウィリアム・フォーサイスなどコンテンポラリー系の演目を取り入れるのが遅れ、レパートリーが旧態依然となっているという批判もある。
2006年、カンパニーはコンテンポラリー振付家として活躍するウェイン・マクレガー(Wayne McGregor)をバレエ団史上4人目の主席振付家として迎えることを発表。今後の展開が注目される。
[編集] ロイヤル・バレエ団出身の主なダンサー
- ルドルフ・ヌレエフ(旧ソ連、キーロフ・バレエから亡命・移籍)
- マーゴット(マーゴ)・フォンテイン
- アンソニー・ダウエル(後にロイヤル・バレエ団芸術監督に就任。)
- アントワネット・シブリー
- リン・シーモア(後にベルリン国立バレエ芸術監督に就任。)
- レスリー・コリア
- アダム・クーパー
- 熊川哲也
- 吉田都
- イレク・ムハメドフ(ボリショイから移籍)
- シルヴィ・ギエム(パリ・オペラ座から移籍)
- ダーシー・バッセル
- ジョナサン・コープ
- アリーナ・コジョカル
- ヨハン・コボー(デンマーク王立バレエから移籍)
- カルロス・アコスタ(キューバ国立バレエから移籍)
- タマラ・ロホ(イングリッシュ・ナショナル・バレエから移籍)
[編集] レパートリー (抜粋)
フレデリック・アシュトン振付
- 「ラ・フィユ・マル・ガルデ(リーズの結婚)」(La Fille Mal Garde )
- 「シンデレラ」(Cinderella)
- 「シルヴィア」(Sylvia)
- 「オンディーヌ」(Ondine)
- 「真夏の夜の夢」(Dream)
- 「田園の出来事」(A Month in the Country)
- 「ラプソディー」(Rhapsody)
- 「マルグリットとアルマン」(Margrid and Armand)
- 「シンフォニック・バリエーション」(Symphonic Variations)
ケネス・マクミラン振付
- 「ロミオとジュリエット」(Romeo and Juliet)
- 「マノン」(Manon)
- 「うたかたの恋」(Meyerling)
- 「春の祭典」(Rite of Spring)
- 「パゴタの王子」(Prince of Pagoda)
- 「アナスタシア」(Anastasia)
- 「大地の歌」(Song of the Earth)
- 「グロリア」(Gloria)
- 「招待」(The Invitation)
- 「エリート・シンコペーション」(Elite Syncopation)
- 「ダンセズ・コンチェルタンス」(Dances Concertance)
- 「ユダの樹」(Judas Tree)
ニネット・ド・ヴァロア演出・振付
- 「コッペリア」(Coppelia)
- 「チェックメイト」(Checkmate)
- 「放蕩者のなりゆき」(Rake's Progress)
ピーター・ライト演出・振付