眠れる森の美女 (チャイコフスキー)
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バレエ《眠れる森の美女忠実に翻訳すれば眠れる美女(時折誤って眠りの森の美女と訳される)(露語原題:Спящая красавица)、台本は仏語のLa Belle au bois dormantに着想を得て書かれた》作品66は、最も有名なクラシックバレエ作品の一つである。またピョートル・チャイコフスキーの三大バレエの一つで、その中では最も長い。全曲を通した上演には(普及している縮小版でも)優に2時間を要し、マリインスキー・バレエだけが上演している本格的な「眠れる森の美女」の上演時間は4時間に及ぶ。その一部が2007年マリインスキー劇場ニューイヤーガラのテレビ放映で流され、ネット上でも見ることができる。
目次 |
[編集] 概要
チャイコフスキーに、シャルル・ペローのおとぎ話『眠れる森の美女』に基づくバレエの音楽がほしい、とサンクトペテルブルクの帝室劇場総裁イワン・フセヴォロシスキーが手紙を書いたのは1888年5月13日(新暦では5月25日)のことだった。その後8月22日にやっと台本を手にしたチャイコフスキーは躊躇うことなく新作バレエの作曲を引き受けた。それまでチャイコフスキーのバレエ音楽の作曲の経験は《白鳥の湖》だけであり、しかもライジンガーやハンセンが振付けてモスクワのボリショイ劇場で初演したバレエ「白鳥の湖」は、当時ほとんど歓迎されることのない作品となっていた。《眠れる森の美女》の作曲に当たってチャイコフスキーが取り組んだ台本は、ペローの童話を基にフセヴォロジスキーが書き下ろしたものとされている。王女の両親(国王と王妃)が娘の100年の眠りを生き長らえて、眠りから覚めた姫の晴れの婚礼を見届けるという部分や、王子のキスで目覚める部分などはグリム童話の「いばら姫」に近いが、フセヴォロシスキーは賢明にも、ペローやオーノワ夫人などフランスの童話のいくつかの話も台本に取り入れた。ともあれチャイコフスキーはフセヴォロシスキー総裁に、この台本を読んで大いに感動し、それを最高に生かす良い着想を得たことを嬉々として伝えた。
振付けを担当したのは、ロシア帝室バレエの比類ないバレエマスター(振付・演出家)である、偉大なマリウス・プティパであった。プティパは作曲に必要な指示を詳細に書き、その指示に従ってチャイコフスキーはこの新作を、フローロフスコエの自宅ですばやく書き上げた。1888年の冬に草稿に着手し、管弦楽配置を開始したのは1889年5月30日であった。
このバレエの焦点が、(リラの精に象徴される)善の力と(カラボスに象徴される)悪の力との葛藤に置かれていることは否定しがたい。それぞれを表わすライトモチーフの両方が、話の筋を強調する重要な撚り糸として機能しながら、バレエ音楽全体を貫いているのである。しかしながら第3幕では、その2つのライトモチーフはすっかり息を潜めて、その代わりに、さまざまな宮廷舞曲の一つ一つの性格に力点が置かれる。なぜ2つのライトモチーフが第3幕で息を潜めるのかは昨今の縮小版バレエではわからないが、原作を見ればその意味がわかる。アレクサンドル3世は皇族をつれてゲネプロ当日にこれを観覧し、立ち去り際に、たった一言「とてもいい」と言い残した。チャイコフスキーは、もっと好意的な反応を期待していたので、その言葉に苛立ったという。
初演は1890年1月15日にマリインスキー劇場において行われ、《白鳥の湖》よりも好意的な評価を報道された。だがチャイコフスキーは、この作品が海外の劇場で大ヒットする栄光の瞬間を味わうことはできなかった。
チャイコフスキーは1893年に他界する。それから10年後の1903年までに、《眠れる森の美女》は、帝室劇場で1番人気のチェザーレ・プーニ作曲・プティパ振付の《ファラオの娘》に次ぐ地位を得た。サンクトペテルブルグで活躍したイタリア人バレリーナが帰国して行ったミラノ・スカラ座における上演はまるで人口に膾炙せず、《眠れる森の美女》が国際的に古典的なレパートリーとして不朽の地位を射止めたのは、ようやく1921年のロンドン公演においてであった。ただし、それはチャイコフスキーとプティパが作った「眠れる森の美女」を基にしながらも異なる部分があり、また、ロシアにおいても革命・ソ連時代を経て異なるものに変わっていった。原作がどういうものであったのかがわかったのは、1999年4月30日、ロシア、サンクトペテルブルグのマリインスキー・バレエ団が復原版を上演したときのことである。
[編集] あらすじ
[編集] プロローグ
フロレスタン14世の娘、オーロラ姫の誕生により、盛大な洗礼の式典が行われていた。6人の妖精たちの一行が、彼女の名付け親となるべく招待されてきた。それはキャンディード(純粋)の精、小麦粉の精、パンくずの精、カナリアの精、情熱の精、そして一番偉い善の精、リラの精である。まず国王が妖精たちに贈り物をし、妖精たちがそれぞれオーロラ姫に授け物をする。(正直さ、優雅さ、繁栄、美声、および寛大さなどを授けた、とする改訂版もある。)その時、邪悪な妖精カラボスがやってくる。カラボスは自分が洗礼に招待されなかったことに怒り狂い、オーロラ姫に次のような呪いをかける。
- 「オーロラ姫は、20回目(改訂版では16回目)の誕生日に彼女の指を刺して、死ぬでしょう。」
しかし幸運にも、リラの精だけはまだ姫に何も授けていなかったため、次のように宣言する。
- 「カラボスの呪いの力は強すぎて、完全に取り払うことはできません。したがって姫は指を刺すでしょうが、死ぬことはありません。100年間の眠りについたあと、いつか王子様がやってきて、彼の口づけによって目を覚ますでしょう。」
[編集] 第1幕
オーロラ姫はすくすくと成長し、20歳(16歳)の誕生日を迎えた。その誕生日に編み物をしている娘たちを見て国王は激怒する。オーロラ姫を守るために編み物・縫い物は禁止していたのだ。めでたい祝いの日なので国王は怒りを鎮めて祝宴をはじめる。4人の求婚者がおり、彼らがバラを姫に手渡したそのすぐ後、何者かによってスピンドルを贈られた。彼女は尖ったものに気をつけるようにという両親の忠告にも関わらず、それを持ったままで踊る。そして誤って指を刺してしまった。そこでカラボスは、すぐに邪悪な本性を明かし、勝ち誇り、驚く賓客の前で姿を消す。同時にリラの精が約束通りやってきて、王と王妃、そして賓客たちに、オーロラ姫は死ぬのではなく眠りにつくのだということを思い出させる。リラの精は城にいた全員に眠りの魔法をかける。オーロラ姫が目覚めるその時に、目を覚ますように、と。
[編集] 第2幕
それから100年が経った頃、デジレ王子が一行を率いて狩りを行っていた。王子は狩りが楽しくなかったため、一人になりたいと申し出て、一行から離れた。そこに突然リラの精が現れて、オーロラ姫の幻を見せられ、その美しさの虜となる。王子はリラの精にオーロラ姫の元へ連れて行くよう頼み込み、今や太いツルが伸び放題でからみついている城にたどり着く。リラの精はオーロラ姫の名づけ親だが、デジレ王子の名づけ親でもある。(原作は非暴力的で愛すること・考えることを重視するが、改訂版では邪悪なカラボスを打ち負かす、といった展開もある。)城の中に入る。中で眠っているオーロラ姫を発見し、王子のキスによってオーロラ姫は目を覚ます。彼女が目を覚ましたため、城にいた全員が目を覚ますことができた。王子は姫への愛を告白し、結婚を申し込む。
[編集] 第3幕
婚礼の仕度は整った。祝祭の日にさまざまな妖精たちが招かれている。結婚を祝福するのは、金の精、銀の精、サファイアの精、ダイヤモンドの精である。リラの精もカラボスも出席している。「長靴をはいた猫」や「白猫」などのおとぎ話の主人公たちも来賓として居合わせている。華麗なダンスが次々に踊られる。4人の(宝石・貴金属の)妖精のパ・ド・カトル、2匹の猫のダンス、青い鳥とフロリナ王女のパ・ド・ドゥ、赤ずきんちゃんとおおかみの踊り、シンデレラ姫とチャーミング王子のダンスが披露され、(一般的には省略されるサラバンドの後を受けて、)オーロラ姫とデジレ王子のパ・ド・ドゥが続き、最後にマズルカで締め括られる。オーロラ姫と王子は結婚し、(リラの精が二人を祝福する、という改定版もあるが、原作では)妖精たちを讃えるアポテオーズの中で人々は妖精たちに感謝を表し、リラの精やカラボスなどの妖精たちが人々を見守るうちにバレエは終わる。
[編集] バレエ音楽
[編集] 管弦楽法
[編集] 楽曲構成
Introduction
- Prologue
-
- 1 Marche
- 2 Scene Dansante
- 3 Pas de Six
- a) Candite (Honesty Fairy)
- b) Coulante. Fleur de Farine (Running Fairy)
- c) Miettes qui Tombent (Falling Crumbs Fairy)
- d) Canari qui Chante (Singing Canary Fairy)
- e) Violente (Forceful Fairy)
- f) La Fee des Lilas (Lilac Fairy)
- g) Coda
- 4 Scene Finale
- Act I
-
- 5 Scene
- 6 Valse
- 7 Scene
- 8 Pas d'Action
- a) Adagio
- b) Danse des Demoiselles d'Honneur et des Pages
- c) Variation d'Aurore
- d) Coda
- 9 Scene Finale
- Act II
-
- 10 Entr'acte et Scene
- 11 Colin-Maillard
- a) Scène
- b) Danse des Duchesses
- c) Danse des Baronnes
- d) Danse des Comtesses
- e) Danse des Marquises
- 13 Farandole
- a) Scène
- b) Danse
- 14 Scène
- 15 Pas d'Action (Scène d'Aurore et de Désiré)
- a) Adagio-Allegro
- b) Variation d'Aurore
- c) Coda
- 16 Scène
- 17 Panorama
- 18 Entr'acte
- 19 Entr'acte Symphonique (Le Sommeil) et Scène
- 20 Finale
- Act III
-
- 21 Marche
- 22 Polacca
- 23 Pas de Quatre
- a) La Fée Or
- b) La Fée Argent
- c) La Fée Saphir
- d) La Fée Diamant
- e) Coda
- 24 Pas de Caractere (Le chat botté et la chatte blanche)
- 25 Pas de Quatre (Cendrillon, Prince Fortuné, L'oiseau Bleu, La Princesse Florine) (now known as the "Bluebird Pas de Deux")
- a) Cendrillon et Fortuné
- b) L'oiseau Bleu et La Princesse Florine
- c) Coda
- 26 Pas de Caractere (Chaperon Rouge et le Loup, Cendrillon et Fortuné)
- 27 Pas Berrichon (Le Petit Poucet, ses Frères et l'Orge)
- 28 Pas de Deux
- a) Entrée
- b) Adagio
- c) Desiré
- d) Aurore
- e) Coda
- 29 Sarabande
- 30 Finale et Apotheose
[編集] 「オーロラ姫の結婚」(ディアギレフ版)
1922年にセルゲイ・ディアギレフは、自前のロシア・バレエ団のために、《眠れる森の美女》を45分の長さに短縮し、《オーロラ姫の結婚》と名付けた独自の版を編み出した。この編曲では、第1幕の導入部と、第3幕のほとんどを結び付け、その他の部分を混ぜたものとなっている。この短縮版は、レオポルド・ストコフスキーによって上演・録音されており、デジタル録音ではシャルル・デュトワ指揮の音源がある。楽曲の配列は以下の通りである。
-
- 1) Introduction (Prologue)
- 2) Polacca (Act 3)
- 3) Pas de Six (Prologue)
- 4) Scene; Danse des Duchesses; Danse des Marquises (Act 2)
- 5) Farandole; Danse - Tempo di Mazurka (Act 2)
- 6) Pas de Quatre (Act 3)
- 7) Pas de Caractere-Chaperone Rouge et la Loup (Act 3)
- 8) Pas de Quatre (Act 3)
- 9) Coda-The Three Ivans (Act 3)
- 10)Pas de Deux (Act 3)
- 11)Finale - Tempo di Mazurka; Apotheose (Act 3)
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