ロイ・エマーソン
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ロイ・エマーソン(Roy Emerson, 1936年11月3日 - )は、オーストラリア・クイーンズランド州出身の男子テニス選手。1960年代に活躍し、4大大会男子シングルス通算「12勝」を記録した選手である。男子ダブルスでも16勝を挙げ、総計「28」の4大大会タイトルを獲得した。フルネームは Roy Stanley Emerson (ロイ・スタンレー・エマーソン)という。“Emmo”(エンモ)という愛称で呼ばれた。
エマーソンはオーストラリアの牧場育ちで、子供の頃は父親の農場で牛の乳搾りをしていた。1959年から男子国別対抗戦・デビスカップのオーストラリア代表選手になる。1961年に全豪選手権(現在の全豪オープン)と全米選手権(現在の全米オープン)で4大大会年間2冠を獲得。当時のテニス界では、トップ選手たちの大半が頂点を極めた時点でプロに転向する道を選んでいた。しかし、当時のテニス4大大会(全豪選手権、全仏選手権、ウィンブルドン選手権、全米選手権)の出場資格はアマチュア選手のみに限定されていたため、プロ選手たちは4大大会から遠ざかっていく。当時のオーストラリア・テニス界で顕著な存在だったロッド・レーバーやケン・ローズウォールなどはプロに転向したが、エマーソンはアマチュア選手としてとどまった。こうして1961年から1967年までの間に、エマーソンは4大大会でシングルス「12勝」を挙げた。その間に、全豪選手権で1963年 - 1967年までの大会5連覇を達成している。
1968年にテニス界は「オープン化」という措置を取り、プロ選手たちの4大大会出場を解禁する。大会の名称も変更されて、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、全米オープンとなった。こうしてレーバーやローズウォールなど、プロに転向していた強豪選手たちが再び4大大会の舞台に戻ってくる。それ以後、エマーソンは4大大会のシングルス・タイトルを獲得できなかった。1968年以後は、テニス界の「オープン化時代」(Open Era)と呼ばれ、それ以前の時代とは明確に区別される。エマーソンの4大大会シングルス優勝はすべて「オープン化時代」以前のものであったため、ライバルたちに比べて評価が低く、長い間忘れられていた。エマーソンは豪放洒脱な人柄で、私生活では有名な大酒飲みだったという。
1982年に国際テニス殿堂入り。それから16年後の1998年、ウィンブルドン5度目の優勝で4大大会通算「11勝」に到達したピート・サンプラスが、これまで男子歴代1位であったエマーソンの通算優勝記録「12勝を更新する」目標を掲げたことがきっかけで、長い間忘れられていたエマーソンの名前が「サンプラスの目標」として語られるようになった。サンプラスは1999年のウィンブルドンで通算12勝に並び、2000年のウィンブルドンにてついに先人の大記録を更新する。2002年の全米オープン優勝を最後に現役を退いたサンプラスは、最終的に「14勝」でエマーソンを2つ上回る男子歴代1位となった。
[編集] 4大大会優勝
- 全豪選手権 男子シングルス:6勝(1961年、1963年-1967年)/男子ダブルス:3勝(1962年、1966年、1969年)
- 全仏選手権 男子シングルス:2勝(1963年、1967年)/男子ダブルス:6勝(1960年-1965年)
- ウィンブルドン選手権 男子シングルス:2勝(1964年&1965年)/男子ダブルス:3勝(1959年、1961年、1971年)
- 全米選手権 男子シングルス:2勝(1961年、1964年)/男子ダブルス:4勝(1959年&1960年、1965年&1966年)
年 | 大会 | 対戦相手 | 試合結果 |
---|---|---|---|
1961年 | 全豪選手権 | ロッド・レーバー | 1-6, 6-3, 7-5, 6-4 |
1961年 | 全米選手権 | ロッド・レーバー | 7-5, 6-3, 6-2 |
1963年 | 全豪選手権 | ケン・フレッチャー | 6-3, 6-3, 6-1 |
1963年 | 全仏選手権 | ピエール・ダーモン | 3-6, 6-1, 6-4, 6-4 |
1964年 | 全豪選手権 | フレッド・ストール | 6-3, 6-4, 6-2 |
1964年 | ウィンブルドン選手権 | フレッド・ストール | 6-4, 12-10, 4-6, 6-3 |
1964年 | 全米選手権 | フレッド・ストール | 6-4, 6-2, 6-4 |
1965年 | 全豪選手権 | フレッド・ストール | 7-9, 2-6, 6-4, 7-5, 6-1 |
1965年 | ウィンブルドン選手権 | フレッド・ストール | 6-2, 6-4, 6-4 |
1966年 | 全豪選手権 | アーサー・アッシュ | 6-4, 6-8, 6-2, 6-3 |
1967年 | 全豪選手権 | アーサー・アッシュ | 6-4, 6-1, 6-4 |
1967年 | 全仏選手権 | トニー・ローチ | 6-1, 6-4, 2-6, 6-2 |
[編集] 4大大会男子シングルス優勝記録
- 1位:14勝 ピート・サンプラス(アメリカ)
- 2位:12勝 ロイ・エマーソン(オーストラリア)
- 3位タイ:11勝 ロッド・レーバー(オーストラリア)、ビョルン・ボルグ(スウェーデン)
- 5位タイ:10勝 ビル・チルデン(アメリカ)、* ロジャー・フェデラー(スイス)
- 7位タイ:8勝 フレッド・ペリー(イギリス)、ケン・ローズウォール(オーストラリア)、ジミー・コナーズ(アメリカ)、イワン・レンドル(チェコスロバキア)、 アンドレ・アガシ(アメリカ)
- 12位タイ:7勝 ルネ・ラコステ(フランス)、アンリ・コシェ(フランス)、ジョン・ニューカム(オーストラリア)、ジョン・マッケンロー(アメリカ)、マッツ・ビランデル(スウェーデン)
- *は現役選手。
[編集] 男子ダブルスの4冠達成ペア
- フランク・セッジマン&ケン・マグレガー (ともにオーストラリア、1951年に唯一の「年間グランドスラム」)
- ケン・ローズウォール&ルー・ホード (ともにオーストラリア、1953年 → 1956年)
- ロイ・エマーソン&ニール・フレーザー (ともにオーストラリア、1959年 → 1962年)
- ジョン・ニューカム&トニー・ローチ (ともにオーストラリア、1965年 → 1967年)
- マーク・ウッドフォード&トッド・ウッドブリッジ (ともにオーストラリア、1992年 → 2000年)
- ヤッコ・エルティン&ポール・ハーフース (ともにオランダ、1994年 → 1998年)
- ボブ・ブライアン&マイク・ブライアン (ともにアメリカ、2003年 → 2006年)