ヴォルデモート
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ヴォルデモート (Lord Voldemort) は、『ハリー・ポッター』シリーズに登場する、魔法界で最も恐れられている闇の魔法使い。誕生日は1926年12月31日。恐らくモデルはアドルフ・ヒトラー。[要出典]
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 呼び名
ヴォルデモートは、本名をトム・マールヴォロ・リドル(Tom Marvolo Riddle)という(ミドルネームは母方の祖父マールヴォロ・ゴーントに由来)。しかし、ホグワーツ在学中に自身の出生を知ったリドルは、マグルの父親と同じ名前に我慢できず、自分の名前を並び替え、"I am Lord Voldemort"(私はヴォルデモート卿だ)と名乗るようになる。
その後、魔法界を恐怖に陥れたヴォルデモートに対し、人々は「ヴォルデモート」の名前を口に出すことさえ恐れ、ヴォルデモートのことを「例のあの人」(You-know-who) とか「名前を呼んではいけないあの人」(He who must not be named)等と呼んでいる(ただし,アルバス・ダンブルドア,シリウス・ブラック,リーマス・ルーピンはヴォルデモートと呼んでいる)。
また、死喰い人からは「闇の帝王(Dark Lord)」、「ご主人様」と呼ばれている。
なお、語源として、"Voldemort"は、フランス語"vol de mort"「死からの飛翔」にちなむ。また、作者のJ・K・ローリングは、インタビューで彼に言及した際、フランス語風に「ヴォルドゥモール」と発音している [1]。
[編集] 外見
昔は父親に似て素晴らしくハンサムだったが、自分を不死にする為に殺人を繰り返し、その影響で現在は見る影もない姿に変貌している。肌は青白く、鼻は無理やり切込みを入れたように潰れていて、瞳の色は切り裂いたような赤色をしている。
[編集] 来歴
リドルは孤児院で自らの出生を知らずに育った。11歳の時に、孤児院を訪れたアルバス・ダンブルドアから自身が魔法使いであることを知らされたリドルはホグワーツ魔法魔術学校へ入学し、スリザリンへ入寮する。
自身が魔法使いであることを知った当初は、「死に屈した」母が特別な人間であるはずがない、父こそ魔法使いだと考えた。しかし、在学中に自らの出生を探し当て、父トム・リドルがマグル、母メローピー・ゴーントがホグワーツ創立者サラザール・スリザリンの純血の末裔だと知る。そして母の実家を訪ね、伯父モーフィン・ゴーントから、「凡庸なマグル」の父が「魔法使いの中でも特別」だった母を捨てたことを聞いたリドルは、母の復讐として、また自分に相応しくない血筋の抹殺として、父と父方の祖父母を殺害し、その罪を伯父に着せた。
ホグワーツ在学中に監督生や首席になっているが、教員の目の届かないところで、近しい生徒に自らの力、ルーツを示し、後に最初の死喰い人となる者達を従えていた。また、16歳の時、伝説とされていた「秘密の部屋」を探し当てたリドルはこの部屋を密かに開き、バジリスクを使い嘆きのマートルを死に至らしめた(作中では、偶然居合わせた彼女が偶然バジリスクの目に捉えられ死亡したような書き方をされているが、おそらく秘密の部屋の入り口があるトイレに頻繁に出入りしていた彼女が邪魔だったために、意図的にバジリスクを部屋から開放し、殺害したと思われる)。また、その罪をルビウス・ハグリッドに着せ、自分は犯人を捕らえたとしてホグワーツ特別功労賞を授与された。
卒業後の進路として「闇の魔法に対する防衛術」の教授になる事を熱望し、2度志願した。理由は不明だが、ダンブルドア校長は「教師、恩師と言う立場から教え子に(悪しき)影響力を行使すること」と「歴史あるホグワーツ校に秘された魔術の探求」が目的と考え、リドルに職を与えなかった。彼が2度目の教授職志願を拒否されて以降、ホグワーツでは「闇の魔法に対する防衛術」の教授は任期1年以上続いたことがなく、ヴォルデモートの呪いではないかと噂されている。
[編集] 各巻での出来事
はじめに
ホグワーツ在学中に魔法使いの「純血主義」を知ったヴォルデモートは、卒業後、在学中の知り合いを中心に、自分に忠実に従う者(死喰い人と呼ばれる)を集め、闇の魔術を用いて、マグルや「純血」以外の魔法使いの粛清に乗り出した。その過程で反対勢力を容赦なく殺戮し、魔法界の暗黒時代を招いた。
後に、自らを滅ぼす可能性を持つ者の出現が予言されたことを知ったヴォルデモートは、自らを滅ぼす者が、当時1歳だったハリー・ポッターであると考え、ハリーを殺そうとした。しかし、ハリーに放った「死の呪文」がはね返り、自らが喰らってしまう。以前、自らの魂の一部を閉じこめておく魔法器(ホークラックス )を用いて魔法を講じておいたことによって死は免れたものの、肉体と強い魔力を失ってしまい、失踪する。魔法界はヴォルデモートが滅んだと考え、暗黒時代の終焉を錯覚し、ハリーの名が魔法界の英雄として広まる結果となった。また、この時、ヴォルデモートがハリーにかけた呪文の影響として、後に、二人の間の精神的な交感が強まることになった。
各巻におけるヴォルデモート
他人または動物に憑依しないと肉体を持てない非常に弱い生命体になってしまったヴォルデモートは、アルバニアの森に潜伏する。潜伏先にやって来たホグワーツ校の教師・クィレルに憑依し、肉体を取り戻すべく「賢者の石」を求めたが、ハリーたちの活躍により失敗に終わる(1巻)。
2巻で、ホークラックスの一つである日記の力により秘密の部屋が再び開かれ、怪物バシリスクが解き放たれるが、ハリーにより部屋の怪物が倒され、また日記も破壊された。これにより、ヴォルデモートにとって重要なホークラックスの一つが滅ぼされたことになった。
その後、4巻で、古の魔術によって肉体と力を取り戻し、ハリーと決闘をするが、ヴォルデモートの杖とハリーの杖が兄弟杖(同じ物から作られた杖)であったため、呪文が正常に働かず、結果としてハリーを逃がしてしまう。
5巻で、日和見主義によりヴォルデモートの復活を認めない魔法省の態度に乗じて、ヴォルデモートは死喰い人を再び組織し、魔法省の神秘部に秘されている予言を手に入れようとする。ハリーとの精神的な交感を利用し、ハリーに夢を見させ、神秘部に誘い出し、予言を取らせるよう図る。しかし、失敗に終わり、予言が失われたことを知ると、自ら魔法省に赴いてハリーを殺そうとするが、ダンブルドアに阻止される。
6巻では、魔法界に再び訪れた暗黒時代は、非魔法世界にも暗雲を投げかけていた。こうしたなか、ダンブルドアとハリーにより、ヴォルデモートの出生からホグワーツ卒業後の暗黒時代の始まりに至るまでの経緯が明らかにされ、ホークラックスによる不死の秘密を探られてしまう。だが、巻名にある「プリンス」と呼ばれる人物によりダンブルドアが殺され、ヴォルデモートが唯一恐れる人物がいなくなった。
[編集] 思想
幼い頃から弱者を隷従させることを当然と考えている節があり、弱者を隷従させる為に「力」を意識的に行使していた(反面、その「力」に何らかの限界があることも自覚していたようで、ダンブルドアに「力」が効かないことを知ってからは、彼に対してそれ以上の「力」を行使しなかった)。魔法界と初めて接触した11歳の時には既に選民思想のような思想を抱いており、後に、自分のことを魔法族の中で特別な存在と位置づけるようになる。
[編集] ホークラックス
「死よりも酷いことはない」と信じるヴォルデモートは、自らを不死の存在にすべく、魔法で最も邪悪な発明とも言われる「ホークラックス」により、魂を分割して保存している。魂の分割を行うには生贄が必要だが、そのために、若い頃から躊躇なく殺人を重ねた(第6巻参照)。
ダンブルドアの推測では、魂は7分割され、うち1つは自らの肉体に、残る6つは古の魔法使いの道具に保存されているらしい。この魂が分割保存された「分霊箱」全てを「完全に破壊」しない限り、ヴォルデモートを永遠に葬り去ることは不可能である。
現在判明している分霊箱は、2巻に登場した「トム・マールヴォロ・リドルの日記」(ハリーによって破壊されている)と、6巻で、ダンブルドアが左手にはめていた「マールヴォロ・ゴーントの指輪」(ダンブルドアによって破壊されている)。残る4つについて、ダンブルドアは「サラザール・スリザリンのロケット(「R・A・B」という人物によって隠し場所から盗まれている)」、「ヘルガ・ハッフルパフのカップ」、「ロウェナ・レイブンクロー所縁の品」または「ゴドリック・グリフィンドール所縁の品(2巻に登場するルビー入りの剣ではない)」、「ナギニ(ヴォルデモートのペットの大蛇)」ではないか、と推測している。
[編集] 才能
ダンブルドアに「ホグワーツ始まって以来、最高の秀才」と言わしめるほど、幅広い魔法の知識を有している。しかし、他人を信じ愛することができない性格から、感情に基づく魔法を過小評価している。
また、サラザール・スリザリンの末裔であるヴォルデモートは、魔法界でも稀有な蛇語使いであり、作中でもペットのナギニと蛇語で会話するシーンが随所に描かれている。
[編集] 敵
彼が恐れている人物はアルバス・ダンブルドア1人のみである。その為、6巻では、ドラコ・マルフォイにダンブルドアの殺害を命じた。ダンブルドア以外で彼の活動を妨げてきた最たる人物は、他ならぬハリー・ポッターであり、これまで幾度となく殺害しようとしたが、その試みは全て失敗に終わっている。
彼の活動を阻止すると言う意味では、不死鳥の騎士団や魔法省も敵と言えるだろう。
[編集] 問題点
作中では非常に恐ろしい存在とされているが、初歩的なミスが多くそれが原因でハリーに逃げられたり、許されざる呪文しか使用せずその場その場で効果的ではなく、とても魔法の才能に優れているようには見えないなど、評価と実情に矛盾した印象を抱いてしまいがちである。
以上のことからローリングの文章力を疑問視する向きもある。
[編集] 映画
「賢者の石」ではリチャード・ブレマー、「炎のゴブレット」ではレイフ・ファインズが演じている(日本語吹き替えは江原正士が担当)。「秘密の部屋」では、16歳のトム・マールヴォロ・リドルをクリスチャン・コールスンが演じている(吹き替えは石田彰が担当)。
[編集] 脚注
- ^ Enchanted with Potter Literature: Fans line up for hours to get their books signed この出典は、en:Lord Voldemort(13:40, 1 Mar 2007)を参照。