全6場所制覇
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全6場所制覇(ぜんろくばしょせいは)は、大相撲で年6場所開催される本場所のすべてで幕内優勝を達成すること。
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[編集] 概要
当然ながらまず6回以上優勝する実力が必要とされ、また開催地や開催時期にも左右されない安定感も求められる。このことから大力士の目安のひとつとされることも多い。ただしテニスやゴルフなどで言うグランドスラムと同様、運不運も多分に関わる記録でもある。
[編集] 歴代達成者
- | 1月場所 (東京・初場所) |
3月場所 (大阪・春場所) |
5月場所 (東京・夏場所) |
7月場所 (名古屋場所) |
9月場所 (東京・秋場所) |
11月場所 (福岡・九州場所) |
通算 優勝回数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
大鵬幸喜 | 昭和37年(5) | 昭和38年(10) | 昭和38年(11) | 昭和36年(2) | 昭和36年(3) | 昭和35年(1) | 32回 |
北の富士勝昭 | 昭和45年(3) | 昭和42年(1) | 昭和45年(4) | 昭和45年(5) | 昭和46年(7) | 昭和44年(2) | 10回 |
輪島大士 | 昭和52年(10) | 昭和49年(5) | 昭和47年(1) | 昭和49年(6) | 昭和48年(3) | 昭和48(4) | 14回 |
北の湖敏満 | 昭和49年(1) | 昭和52年(8) | 昭和49年(2) | 昭和53年(13) | 昭和52年(9) | 昭和51年(7) | 24回 |
千代の富士貢 | 昭和56年(1) | 昭和57年(4) | 昭和57年(5) | 昭和56年(2) | 昭和60年(13) | 昭和56年(3) | 31回 |
曙太郎 | 平成5年(3) | 平成6年(7) | 平成4年(1) | 平成5年(4) | 平成5年(5) | 平成4年(2) | 11回 |
貴乃花光司 | 平成4年(1) | 平成8年(11) | 平成5年(3) | 平成7年(10) | 平成4年(2) | 平成6年(7) | 22回 |
武蔵丸光洋 | 平成10年(3) | 平成11年(4) | 平成11年(5) | 平成6年(1) | 平成11年(6) | 平成8年(2) | 12回 |
朝青龍明徳 | 平成15年(2) | 平成16年(6) | 平成15年(3) | 平成16年(8) | 平成15年(4) | 平成14年(1) | 19回 |
-
- それぞれ各場所の初優勝。()内はその時点での優勝回数。太字の優勝で6場所制覇完成。
- 朝青龍については平成18年(2006年)11月場所時点。
達成者はみな最高位は横綱で、大関以下で7回優勝の最多記録を持つ貴乃花も横綱昇進後に全場所制覇を達成している。
効率という面で言えば武蔵丸で、初優勝から6回目の優勝までで〝無駄ツモ〟なしの全場所制覇完成だった。ただし初優勝から6度目の優勝まで4年を要しているので、効率的かどうかは意見の分かれるところかもしれない。スピード達成だったといえるのは朝青龍の初優勝から1年8ヶ月で、8回目の優勝で完成。北の富士と曙も7度目の優勝で全場所制覇を完成している。
逆に〝難産〟だったといえるのが、北の湖と千代の富士で、ともに13回目の優勝でようやく全場所制覇。大鵬と貴乃花の11回目での完成がこれに次ぐ。優勝回数20回以上の四大横綱がここに名を連ねているのは皮肉といえる。
[編集] 参考・年6場所制以前入幕で5場所優勝の力士
各場所の初優勝 | 1月 | 3月 | 5月 | 7月 | 9月 | 11月 | 通算優勝回数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
栃錦清隆 | 昭和35年 | 昭和28年 | 昭和29年 | 昭和34年 | 昭和27年 | - | 10回 |
若乃花幹士 (初代) | 昭和33年 | 昭和35年 | 昭和31年 | 昭和33年 | 昭和33年 | - | 10回 |
当然ながら、全6場所制覇達成の前提条件は年6場所制以後の力士となるが、過渡期における第一人者、栃若時代の両雄が5場所までで優勝達成している。これはやはり、惜しかったというより良く取ったとすべきである。特に栃錦は戦前の昭和14年(1939年)の初土俵で、初優勝の27年でさえ年3場所制、一番優勝と縁のなかった1月場所での初優勝が35年で初土俵から21年目で、これが最後の優勝だった。
ともに11月場所での優勝だけがなかったが、同場所は昭和32年(1957年)の新設から4年連続で大関以下が優勝、「横綱の優勝できない場所」のジンクスが破られたのは栃錦が引退した後の昭和36年(1961年)だった。惜しかったのが、昭和33年で、若乃花が千秋楽の1敗どうしの決戦で朝汐に敗れて優勝を逃したのである。
このほか、全場所制覇をあと1場所で逃した5場所で優勝の力士では、玉の海正洋がやはり惜しかった。1月場所だけ優勝がなかったが、現役死した昭和46年には初日から14連勝しながら千秋楽で大鵬に逆転され、32回目最後の優勝を許している。くりかえしその夭逝を惜しまれる力士だが、この面でも天命はあまりに皮肉だった。
[編集] 場所別優勝回数
- | 1月 | 3月 | 5月 | 7月 | 9月 | 11月 | 東京場所 | 地方場所 | 通算 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
大鵬 | 6 | 5 | 4 | 4 | 6 | 7 | 16 | 16 | 32 |
千代の富士 | 5 | 3 | 4 | 6 | 4 | 9 | 13 | 18 | 31 |
北の湖 | 6 | 5 | 7 | 2 | 3 | 1 | 16 | 8 | 24 |
貴乃花 | 4 | 2 | 5 | 4 | 6 | 1 | 15 | 7 | 22 |
朝青龍 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 4 | 9 | 10 | 19 |
輪島 | 1 | 2 | 2 | 4 | 2 | 3 | 5 | 9 | 14 |
武蔵丸 | 1 | 2 | 2 | 1 | 3 | 3 | 6 | 6 | 12 |
曙 | 1 | 2 | 2 | 2 | 1 | 3 | 4 | 7 | 11 |
北の富士 | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 2 | 5 | 5 | 10 |
-
- 朝青龍については平成18年(2006年)11月場所現在
場所ごとの優勝回数を見てみると、優勝30回以上の大鵬と千代の富士には、やはりこれといった苦手場所は見当たらない。千代の富士の3月大阪場所での3回が少ないといえば少ないという程度で、それにしても並の強豪力士が現役いっぱいかけて到達する回数である。荒れることが多いといわれる地方場所でも、大鵬16回、千代の富士18回と意に介していない。千代の富士はむしろ地方場所を得意とし、特に11月九州場所での強さは語り草である。同一場所連覇の最多記録となる8連覇を含む9回優勝、夫人が九州出身で「準ご当地場所」と言われた。
優勝20回以上の北の湖と貴乃花が、ともに11月での優勝が1回きり。ふたりとも11月初優勝の前後に準優勝や優勝同点での敗退も記録していることを思うと、苦手場所というより〝鬼門〟と言っていい相性の悪さである。貴乃花は大関や横綱のかかった場所で、初日からの連敗や負け越しも記録している。また両者ともダブルスコアと言って良いほど地方場所で弱く、この点が優勝30回台と20回台の差を分けた。
今後、大鵬、千代の富士に迫る力士があらわれるかどうかは、いかに苦手場所をつくらないかが重要とも言える。現役の朝青龍は、ここまでのところ各場所を偏りなく複数回制覇している。
輪島以下の優勝10回台の力士が、こぞって1月初場所での優勝が1回きりとなっている。北の富士なら大鵬、輪島なら北の湖、曙や武蔵丸なら貴乃花と、この場所で強かった力士が同時代にいたことが大きい。全場所制覇という観点からなら、逆によく1回だけでも優勝しておいたとすべきである。特に輪島は生涯唯一の初場所での優勝(10回目)で全場所制覇を完成している。やはりこの記録には運不運の要素も大きく関わっている。