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横綱 - Wikipedia

横綱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

横綱の土俵入りを行う朝青龍
横綱の土俵入りを行う朝青龍

横綱(よこづな)は、大相撲力士の格付けの最上位であり、横綱となった力士が腰に締める綱の名前である。横綱になった力士は特別な事がある以外は半永久的にその地位に就き、引退することによってその地位を降りる。

天下無双であるという意味を込めて「日の下開山」(ひのしたかいざん)と呼ばれることもある。

目次

[編集] 歴史

古くは戦国時代に、黒白横綱という黒と白を混ぜて撚り合わせた綱が存在していたとされる。

[編集] 横綱の誕生

江戸時代に興行としての江戸相撲が人気を博した際、吉田司家行司の総下締めとしての権力を確保するため横綱免許を与えて横綱を作ることを考えた。それまでの将軍家の観戦する上覧相撲寺社への奉納相撲等特別な式典に際して行っていた土俵入りを、土俵上で行っていた顔見世土俵入りと結び付け、綱を締めさせて1人で土俵入りを披露させることにした。そして1791年(寛政3年)、第11代将軍・徳川家斉の上覧相撲において谷風梶之助小野川喜三郎が行った純白の綱に幣を垂らした土俵入りが天下公認となり、横綱が誕生することになった。なお、江戸相撲では吉田司家が横綱免許を与えた者が正式な横綱として認められるようになった。

当初は大関の中で横綱を付けられる者のことを「横綱」と呼んでいた。このことから横綱になることを「綱を張る」と表現する。また、横綱は免許を持つ大関に対する名誉称号だったため、番付では大関が最高位であった。ただ、現在なら当然横綱に値する成績を残しながら、横綱免許を受けなかった強豪大関も少なくない。当時の力士は多く大名の御抱えであり、その力関係や派閥争いの影響で、横綱を逃すケースもあったと考えられる。

このように第16代横綱・西ノ海嘉治郎の時代までは横綱は称号という性格が強かったが、1890年(明治23年)5月場所からは番付に横綱の文字が掲載されるようになった。そして、1909年(明治42年)2月には相撲規約改正に伴い横綱の称号が地位として定められることになった。「横綱は大関の中の強豪」という考え方が一般的になると、本場所での成績によって横綱を免許されるようになった。その最初のケースは、第17代横綱・初代小錦八十吉だったと言われている。明治初期は藩閥政治の有力者が後援者として力士を番付面で優遇して誕生させた「藩閥横綱」も存在したが、近代スポーツとしての体裁を整える中でこれらは姿を消した。現在は日本相撲協会横綱審議委員会の諮問を仰ぎ、独自に推挙する。

  • 横綱が大関の名誉称号であった時代の横綱に対しては「横綱を免許される」、地位となって以降は「横綱に昇進する」という様に、表現を使い分ける場合もある。但し、誰までが「免許」で誰からが「昇進」かはっきりした基準があるわけでもなく、区分は明確ではない。第15代横綱・梅ヶ谷藤太郎までは番付が大関のままだったのでこれを基準とする見方や、第19代横綱・常陸山谷右エ門と第20代横綱・梅ヶ谷藤太郎の同時免許で横綱は大関の上位と認識されるようになったのでこれを基準とする見方、史上初の相撲協会推挙による横綱である第41代横綱・千代の山を基準とする見方がある。
  • 現在行われている歴代横綱一覧は第12代横綱・陣幕久五郎富岡八幡宮に建立した「横綱力士碑」を基にしているため、伝説上の人物などを含む。

[編集] 横綱免許

1789年(寛政元年)11月、江戸相撲の司家であった吉田司家が第4代横綱・谷風梶之助と第5代横綱・小野川喜三郎に横綱を授与したのが、横綱免許の始めとされる。吉田司家以外にも横綱免許を出したところは数多く存在したが、吉田司家は文政年間(1818年~1830年)に熊本細川家の威を背景として京都五条家との免許権争いに勝利する。これにより吉田司家による横綱免許の授与が制度化され、江戸相撲では吉田司家の免許を持つ者が正式な横綱として認められるようになった。

吉田司家は明治初期に西南戦争に連座して一時期権威を失うが、1884年(明治17年)2月に免許を受けた第15代横綱・初代梅ヶ谷藤太郎が吉田司家の免許を希望し、復権する。大坂相撲にも吉田司家の免許を持つ公認横綱が4人存在する。

現在では吉田司家以外の免許を持つ力士は後に吉田司家の追認を受けた力士を除くと、歴代横綱として認められていない。ただし、礒風音治郎は正式な番付への掲載がなく(明治16年1月は番付外幕内格、5月は客席三役格)、免許は巡業専用であったと解釈されているため追認されていない。吉田司家以外の免許で土俵入りを行った力士の中には吉田司家に遠慮して綱の色(黄色が多かったという)を変えたり吉田司家の地元熊本では土俵入りを行わなかったりする者もいた。吉田司家以外から横綱免許の話を持ち掛けられたが断った力士も存在する。後述の通り、横綱免許を巡る事件も幾つか発生している。以降、第40代東富士までの横綱は、吉田司家で行われる本免許状授与式で免許を授与され、奉納の土俵入りを行うことが通例であった。

しかし、1950年(昭和25年)に横綱の濫造を指摘された日本相撲協会が横綱の権威を保つために、横綱免許の家元である吉田司家ではなく、相撲に造詣が深い有識者に横綱を推挙してもらうことを目的として横綱審議委員会(横審)を発足させたことで、第41代横綱・千代の山以降に吉田司家の横綱本免許状授与式は行われていない。

慣例として、九州巡業や11月場所前に新横綱が吉田司家を表敬訪問し、土俵入りを披露する慣わしも踏襲されたが、司家の経済問題による相撲協会との絶縁により、双羽黒以降の横綱はこれを行っていない。

[編集] 非公認横綱

相 撲 四股名 免 許
大阪相撲 八陣信蔵 五条家免許
高越山谷五郎 五条家免許
八陣調五郎 神理教免許
京都相撲 小野川才助 五条家免許
兜潟弥吉 五条家免許
大碇紋太郎 五条家免許

[編集] 特権と責務

横綱力士は、横綱を締め「太刀持ち」・「露払い」を従えて横綱土俵入りを行う。横綱土俵入りは現役の横綱力士にしか許されない特権で、横綱経験者であっても自身の引退相撲を最後にこれを行うことはない。唯一の例外として、還暦を迎えた時に赤い横綱を締めて行う「還暦土俵入り」がある。横綱土俵入りは、ショーとしての大相撲の最大の売りであり、一種の責務ともいえる。なお、露払や太刀持には引退相撲や還暦土俵入りなど特別な場合は横綱力士が付き従うことがあるが、それ以外では大関以下(通常大関は使われない)の幕内力士が務める。横綱力士が還暦や引退の土俵入りに付き従う場合でも、自分の土俵入りと同じく綱は締めることになっている。

横綱力士は現役を退くまでその地位を保証される。そのため、常時安定した成績を求められる。また、怪我等により、若くして引退に追い込まれる横綱も少なくない。最近では若乃花勝曙太郎が引退退職後、アメリカンフットボールK-1などの他競技へ転向しているが、これは横綱という地位の特殊性故の現象とも言える。

所属部屋の規模にもよるが、横綱力士には通例15人程度の付け人が付く。綱を締めるのに人手を必要とするためもあって、大関以下の関取に比してその数は非常に多い。

横綱力士は、相撲協会の役員選出などに現役力士の代表として投票権を持つ。

また、大関が不在の場所では「横綱大関」として横綱が大関の地位を兼ねることになっている。

現在、横綱は特権として年寄名跡を持たなくても5年間は四股名のままで親方(委員待遇)になることができる。

[編集] 昇進

2006年現在、横審が内規として定めた「大関にて2場所連続優勝若しくは此れに準ずる成績」が横綱昇進の条件として広く知られている。但し、横綱を推挙するのは相撲協会であり、相撲協会の番付編成上、横綱昇進の条件として明文化されたものは存在しない。

しかし、少なくとも昭和以降は、この「2場所連続優勝か其れに準ずる成績」が昇進の是非を審議する目安とされてきたのは確かである(玉錦三右エ門千代の山雅信のように連続優勝でも昇進を見送られた例もある)。

横審の誕生以降も上記条件の「~準ずる成績」の部分が拡大解釈され、多分に興行上の必要もあって、連続優勝を果たさない横綱が多数生まれた。これに対して「粗製乱造」の批判が高まり、昭和62年(1987年)に一度も優勝経験を持たない双羽黒光司が横綱昇進後のトラブルによって廃業に追い込まれる(双羽黒廃業事件)と、昇進条件の厳密な運用が再認識され、以降の横綱は全て連続優勝によって昇進している。

番付編成会議によって横綱昇進が決定すると、協会が理事・審判委員が当該力士の元(東京場所なら所属部屋、地方場所なら宿舎となっている旅館・寺社など)へその旨を伝達に訪れ、「昇進伝達式」が行われる。使者は当該力士所属の一門出身者が務めるのが通例である。当該力士側は所属部屋の親方夫妻を両脇に従えて当人が使者を出迎える。
現在では昇進の可否は、千秋楽終了後の時点では事実上確定しているといってよい。終了後の報道陣の取材に対し審判部長(理事が兼務。理事会招集の権限を有する)が昇進審議のための理事会招集を口にするかどうかで、ファン・視聴者は判断できるのである。理事会が招集されて昇進が見送られたケースはきわめて少ない(それも、「準ずる成績」だったケースに限られている)。従って、昇進伝達式は形式的なものになっている。

伝達式で使者を出迎えた新横綱は、「謹んで御受け致します」「横綱の地位を汚さぬ様」「稽古に(相撲道に)精進致します」「本日は誠に有り難う御座いました」といったほぼ定型の口上で応じる。新横綱は、新番付の発表を待たず、この時点で横綱として扱われることになる。

[編集] 昭和48年(1973年)以降の横綱の昇進前3場所成績

昇進場所 四股名 3場所前 2場所前 直前場所 3場所合計
昭和48年(1973年)3月 琴櫻傑將 9勝6敗 14勝1敗◎ 14勝1敗◎ 37勝8敗
昭和48年(1973年)7月 輪島大士 11勝4敗△ 13勝2敗△ 15戦全勝◎ 39勝6敗
昭和49年(1974年)9月 北の湖敏満 10勝5敗 13勝2敗◎ 13勝2敗○ 36勝9敗
昭和53年(1978年)7月 若乃花幹士 (2代) 13勝2敗△ 13勝2敗○ 14勝1敗○ 40勝5敗
昭和54年(1979年)9月 三重ノ海剛司 10勝5敗 13勝2敗△ 14勝1敗○ 37勝8敗
昭和56年(1981年)9月 千代の富士貢 11勝4敗△ 13勝2敗△ 14勝1敗◎ 38勝7敗
昭和58年(1983年)9月 隆の里俊英 12勝3敗△ 13勝2敗△ 14勝1敗◎ 39勝6敗
昭和61年(1986年)9月 双羽黒光司 10勝5敗 12勝3敗△ 14勝1敗○ 36勝9敗
昭和62年(1987年)7月 北勝海信芳 11勝4敗△ 12勝3敗◎ 13勝2敗△ 36勝9敗
昭和62年(1987年)11月 大乃国康 15戦全勝◎ 12勝3敗△ 13勝2敗△ 40勝5敗
平成2年(1990年)9月 旭富士正也 8勝7敗 14勝1敗◎ 14勝1敗◎ 36勝9敗
平成5年(1993年)3月 曙太郎 9勝6敗 14勝1敗◎ 13勝2敗◎ 36勝9敗
平成7年(1995年)1月 貴乃花光司 11勝4敗 15戦全勝◎ 15戦全勝◎ 41勝4敗
平成10年(1998年)7月 若乃花勝 10勝5敗 14勝1敗◎ 12勝3敗◎ 36勝9敗
平成11年(1999年)7月 武蔵丸光洋 8勝7敗 13勝2敗◎ 13勝2敗◎ 34勝11敗
平成15年(2003年)3月 朝青龍明徳 10勝5敗 14勝1敗◎ 14勝1敗◎ 38勝7敗
  • ◎は優勝、○は優勝同点、△は優勝次点
  • 2代若乃花は当時「若三杉壽人」。
  • 双羽黒は当時「北尾」。
  • 貴乃花は昇進2場所前まで「貴ノ花」。

[編集] 横綱をめぐる議論

横綱制度をめぐる議論は、横綱不在となったり、そのおそれがあるような時、あるいは逆に横綱力士が揃って不調である様な時、しばしば提起される。但し、多くは好角家の間での議論に留まる。勿論、相撲協会内部で横綱制度の見直しが論じられることもあって、昭和26年(1951年)には一度は横綱降格制度を考えていたが、この時は見送られた。以降は制度の抜本的な見直しではなく、制度の柔軟な運用で対応するというのが、相撲協会の基本的な姿勢である。

横綱の存在それ自体についても、かつてのような名誉称号でなく地位であるとするならば、その昇進に運不運の不公平があろうとも、大関等と同じく常時東西に1名ずつ常設すべきなのではないか、という意見もある一方、寧ろ名誉称号に戻すべきだとする意見もある。

横綱降格制度の是非は、その地位を陥落することがないことを特権と見るかどうかによって、正反対の視点から論じられる。つまり、どれだけ負けても休んでもその地位を保障されるのは、近代スポーツとしては余りに不合理であるという点からの主張と、その地位を降りることが出来ない為に若くして引退に追い込まれる横綱もあり、大関への降格やその位置から再起する選択肢も与えるべきではないかという点からの主張である。

[編集] 昇進基準について

横綱昇進基準については、特によく論じられる問題である。「2場所連続優勝」の基準を厳し過ぎるとするか、甘いとするか、あるいはこれを絶対の「鉄則」として厳密に運用すべきか、将来の有望性や長期的な安定感なども鑑みて柔軟に運用すべきか、等が論点となる。

双羽黒廃業事件以降、厳密な連続優勝を昇進の条件とすることによって基準が明らかとなった一方で、優勝という形式的な基準に囚われ、相撲の内容が顧みられないという問題も起こった。

  • 旭富士正也は昭和63年(1988年)1月場所を14勝で優勝、続く2場所を12勝し、平成元年(1989年)には1月から5月の3場所を14勝(優勝同点)、13勝(次点)、13勝(優勝同点)と極めて高いレベルで安定した成績を残した。以前なら当然横綱に昇進すべき成績だったが昇進出来なかった。最終的に横綱に昇進したものの、昇進が遅過ぎた為か横綱在位は僅か9場所(うち皆勤は6場所)、在位中の優勝は1回に留まった。
  • 小錦八十吉は平成3年(1991年)5月と7月を14勝(優勝同点)、12勝(次点)、また同年11月から翌4年(1992年)3月までの3場所を13勝(優勝)、12勝、13勝(優勝)しながら昇進出来ず。外国人横綱を誕生させる事への抵抗の有無が取り沙汰された。小錦はこの昇進見送りに気落ちしたのか、その後失速、終盤まで優勝争いに絡む事がなくなり、そして平成5年(1993年)11月に大関で2場所連続負け越しにより、関脇に陥落が決定してしまった。
  • 貴乃花光司は平成5年(1993年)5月と7月を14勝(優勝)、13勝(同点)としたが、相撲協会から横綱審議委員会への諮問は無く昇進ならず。翌平成6年(1994年)は1月から9月までの5場所中3場所を優勝、うち9月で全勝を果たし(14勝-11勝-14勝-11勝-15勝)、場所後には協会から横綱審議委員会への諮問が行われたが、またも昇進を見送られた。連続優勝でないこと、特に7月の11勝で貴乃花の綱獲りは白紙に戻ったとしながら、次の全勝で横綱推挙を言わば強行した相撲協会の姿勢への批判などが大きな要因だった。審議委員内部でも貴乃花の昇進に賛成する者が寧ろ過半数だったが、内規に定められた「3分の2以上の賛成」には達しなかったとされている。しかし翌11月場所も15戦全勝、2場所連続全勝優勝という双葉山以来非の打ち所の無い成績で、ようやく横綱昇進を果たした。
  • 武蔵丸光洋は平成6年(1994年)5月と7月を12勝(次点)、15勝(全勝)という成績だったが、横綱問題は議論されなかった。5月場所が大関になって初めての2桁勝利であり、優勝次点も優勝の貴乃花に2点差で、7月場所に武蔵の綱獲りのムードはそもそもなかった。翌9月場所に綱獲りに挑むも11勝に終わっている。
  • 若乃花勝は平成8年(1996年)11月と平成9年(1997年)1月を11勝(同点)、14勝(優勝)と連続優勝に準ずる成績を残しながらも、昇進を見送られている。優勝なしの11勝は優秀な成績とはいえない、との見方もあり、この頃から「綱獲りは優勝が基点となる」という協会の態度が定まる。翌3月場所は横綱昇進のチャンスだったが、初日から3連勝しながらも3日目に右足を大けが、4日目から途中休場。
  • 魁皇博之は平成16年(2004年)9月と11月を13勝(優勝)、12勝(次点)の成績を残しながらも、見送られている。11月場所は初日を落とした後朝青龍と並ぶことが遂に無く、14日目での優勝を許してしまったのが大きかった。千秋楽に朝青龍を下して12勝とし、翌場所に可能性を繋いだが途中休場。その後の魁皇は殆ど勝ち越しと途中休場を繰り返すパターンとなり、又高齢もあって横綱昇進は絶望視されている。
  • 白鵬翔は平成18年(2006年)5月と7月を14勝(優勝)、13勝(次点)の成績を残しながらも、朝青龍に独走を許したのがマイナス要因となり見送られた。新大関から2場所での横綱昇進は年6場所制で初めてとなる為、特に高いレベルでの連覇が求められたためもある。関脇時代の1月場所からの4場所連続13勝以上は考慮されなかった。翌場所再び昇進のチャンスだったが8勝7敗の成績不振で綱取りは振り出しに。
  • 逆のパターンとしては、旭富士が平成2年(1990年)3月にギリギリ勝越しの8勝の後、14勝の連続優勝で昇進、また曙が平成4年(1992年)7月に新大関の場所で全休し翌9月に9勝と一桁勝利の後、14勝と13勝の連続優勝で昇進、更に若乃花が直前場所の平成10年(1998年)5月は12勝の低レベルでありながらも、連続優勝により昇進、そして武蔵丸が平成11年(1999年)1月に千秋楽で辛うじて勝ち越しの8勝の後に、13勝の連続優勝で昇進するなどの例もある。

このように連続優勝という条件だけに固執する弊害を指摘する声も少なくなく、そもそも番付編成上は優勝と全く公平に扱われている優勝同点の価値が低く扱われることも問題視されている。

大関昇進は直前3場所の成績で決まるのに、それより高い成績を求められる横綱昇進は直前2場所のみの成績で決まるのは問題があるとして、横綱昇進の内規についても直前3場所の成績で決まるように改めるべきとの声も少なくない。これには、横綱になる為には先ず大関にならなければならない以上、「大関で連続優勝」の条文はその条件を既に内包している、との反論もある。

また、勝ち星が内規にないのも問題である、今後は、横綱昇進内規を直前3場所の成績に改めるだけでなく、勝ち星についても具体的に付け加えるべきとの声もある。

  • 1958年に年6場所制が施行されてから、負け越し(全休含む)の直後に2場所で横綱に昇進した例は皆無である。前述での横綱昇進の際3場所の成績で見るべきということについて、特に3場所前が負け越し(全休含む)の場合は、直前2場所で高いレベルでの連続優勝(だいたい2場所合計28勝以上)か、連続優勝でなければ2場所合計29勝でなおかつ全勝優勝と14勝の優勝同点か準優勝が求められるべきとの声が多い。横綱なら長期安定こそ望ましいということで、やはり負け越しの後だと成績が不安定だから昇進のハードルを高くすべきだと思われるのかもしれない。

一方で本来、横綱とは数字に表れる強さに加えて力士としての品格・態度が評価されて免許されていたものであり、勝率などで一律に昇進基準を定めてしまっては、その本質を損なうとの反論もある。

[編集] 記録

[編集] 横綱在位記録

順位 四股名 在位場所数 在位期間 在位中成績
1位 北の湖敏満 63場所 昭和49年9月-昭和60年1月 670勝156敗107休 優勝22回
2位 千代の富士貢 59場所 昭和56年9月-平成3年5月 625勝112敗137休 優勝29回
3位 大鵬幸喜 58場所 昭和36年11月-昭和46年5月 622勝103敗136休 優勝29回
4位 貴乃花光司 49場所 平成7年1月-平成15年1月 429勝99敗201休 優勝15回
5位 曙太郎 48場所 平成5年3月-平成13年1月 432勝122敗166休 優勝8回
6位 柏戸剛 47場所 昭和36年11月-昭和44年7月 407勝147敗140休 優勝4回
輪島大士 昭和48年7月-昭和56年3月 466勝142敗85休 優勝12回

[編集] 優勝回数記録

順位 四股名 優勝回数 全勝優勝
1位 大鵬幸喜 32回 8回
2位 千代の富士貢 31回 7回
3位 北の湖敏満 24回 7回
4位 貴乃花光司 22回 4回
5位 朝青龍明徳 20回 5回
  • 平成19年3月場所終了現在

[編集] 大関通過場所数(昭和以降)

大関場所数 四股名 新大関場所 新横綱場所 大関での成績
2場所 双葉山定次 昭和12年(1937年)1月 昭和13年(1938年)1月 11戦全勝◎
13戦全勝◎
(24戦全勝)
照國万藏 昭和17年(1942年)1月 昭和18年(1943年)1月 12勝3敗
13勝2敗
(25勝5敗)
3場所 北の湖敏満 昭和49年(1974年)3月 昭和49年(1974年)11月 10勝5敗
13勝2敗◎
13勝2敗○
(36勝9敗)
千代の富士貢 昭和56年(1981年)3月 昭和56年(1981年)9月 11勝4敗
13勝2敗
14勝1敗◎
(38勝7敗)
朝青龍明徳 平成14年(2002年)9月 平成15年(2003年)3月 10勝5敗
14勝1敗◎
14勝1敗◎
(38勝7敗)
4場所 男女ノ川登三 昭和9年(1934年)5月 昭和11年(1936年)5月 (31勝13敗)
羽黒山政司 昭和15年(1940年)1月 昭和17年(1942年)1月 (46勝11敗3休)
安藝ノ海節男 昭和16年(1941年)1月 昭和18年(1943年)1月 (47勝13敗)
輪島大士 昭和47年(1972年)11月 昭和48年(1973年)7月 (50勝10敗)
双羽黒光司 昭和61年(1986年)1月 昭和61年(1986年)9月 (46勝14敗)
曙太郎 平成4年(1992年)7月 平成5年(1993年)3月 (36勝9敗15休)
  • ☆は年6場所制以前の力士、◎は優勝、○は優勝同点、()内は大関通算成績。
  • 曙は新大関場所を全休。
  • 大正以前では、東西合併による「横綱付出し」の例も在って比較が難しいが、栃木山守也の大関2場所(9勝1預-10戦全勝)、大錦卯一郎の3場所(8勝2敗-7勝3敗-10戦全勝)、太刀山峯右エ門の4場所等が特筆される。

[編集] 新横綱の優勝

四股名 新横綱場所 成績 備考
太刀山峯右エ門 明治44年6月 10戦全勝
栃木山守也 大正7年6月 9勝1敗 *不戦勝制度があれば常ノ花が優勝同点
(宮城山福松) (昭和2年1月) 10勝1敗 *東西合併による横綱付け出し
双葉山定次 昭和13年1月 13戦全勝
東富士欽壱 昭和24年1月 10勝2敗1分 *1分は相手力士負傷による痛み分け
大鵬幸喜 昭和36年11月 13勝2敗
隆の里俊英 昭和58年9月 15戦全勝
貴乃花光司 平成7年1月 13勝2敗(○武蔵丸 *()内は優勝決定戦

[編集] 4横綱

番付上に最も多くの横綱の出揃ったのは4人迄で、2006年現在15通りの例が在る。

最初の4横綱は、大正6年(1917年)5月場所、太刀山峯右エ門鳳谷五郎西ノ海嘉治郎大錦卯一郎によって実現した。翌大正7年(1918年)5月には太刀山引退と入れ替わりに栃木山守也が昇進し、同場所で西ノ海が引退するまで連続3場所4横綱時代が続いた。

同じ顔触れで最も長く続いた4横綱時代は千代の山雅信鏡里喜代治吉葉山潤之輔栃錦清隆による14場所。昭和30年(1955年) 1月場所で栃錦が昇進してから、昭和33年(1958年)1月場所後に鏡里と吉葉山が同時に引退するまで続いた。4横綱の皆勤は昭和31年(1956年)3月の一場所きりとなったものの、8場所で4横綱のいずれかが優勝、吉葉山に優勝がないのを除き、他の3横綱が複数回の優勝を果たしている。

現行の年6場所制定着後で最も長かった4横綱時代は、柏戸剛大鵬幸喜栃ノ海晃嘉佐田の山晋松による11場所で、昭和40年(1965年)3月から昭和41年(1966年)11月まで。実質の4横綱皆勤は40年9月の一度きりとなったが、全盛期の大鵬を中心に11場所すべて4横綱のいずれかが優勝している。4横綱皆勤の最も多かったのは、輪島大士北の湖敏満若乃花幹士 (2代)三重ノ海剛司だが、それでも3場所に留まる。

平成に入ってからは、千代の富士貢北勝海信芳大乃国康旭富士正也が、平成2年(1990年)11月場所の一場所のみ全員皆勤となった。しかし平成3年(1991年)5月場所の千代の富士の引退を皮切りに大乃国、旭富士、北勝海が僅か一年の間に相次いで引退してしまい、横綱不在となった。最近の4横綱だった曙太郎貴乃花光司若乃花勝武蔵丸光洋は、全員皆勤する場所が一度も無いままに終わってしまった。それだけ4人もの力士が同時期に最高位を極め、且つそのの地位を保つことの難しさを表している。


[編集] その他

出身地別横綱輩出数
8人 北海道 千代の山雅信吉葉山潤之輔大鵬幸喜北の富士勝昭
北の湖敏満千代の富士貢北勝海信芳大乃国康
6人 青森県 鏡里喜代治若乃花幹士 (初代)栃ノ海晃嘉
若乃花幹士 (2代)隆の里俊英旭富士正也
4人 宮城県 丸山権太左エ門☆、谷風梶之助 (2代)秀の山雷五郎大砲万右エ門
千葉県 境川浪右エ門小錦八十吉 (初代)若嶌權四郎鳳谷五郎
鹿児島県 西ノ海嘉治郎 (初代)西ノ海嘉治郎 (2代)西ノ海嘉治郎 (3代)朝潮太郎 (3代)
東京都 東富士欽壹栃錦清隆貴乃花光司若乃花勝
3人 栃木県 明石志賀之助☆ 綾川五郎次 (初代)☆ 栃木山守也
茨城県 稲妻雷五郎常陸山谷右エ門男女ノ川登三
2人 石川県福岡県熊本県富山県愛知県三重県アメリカ合衆国ハワイ州
1人 滋賀県大阪府など17府県と、モンゴル国ウランバートル市
    • ☆は伝承上の横綱。明石と綾川には茨城出身説もある。
    • 実際の出身地と番付上の出身地が異なる場合もある。本稿では番付表記を優先している。 
横綱同時昇進(免許)
常陸山と2代梅ヶ谷は入門も同期。
同期生横綱
常陸山と2代梅ヶ谷は横綱昇進も同時。
2代若乃花と隆の里、貴乃花と3代若乃花は同日同部屋入門。
貴乃花と3代若乃花の間で一度だけ実現した兄弟優勝決定戦は、若乃花の大関時代であり、「同日同部屋入門の同期生横綱による優勝決定戦」はまだ実現していない。
横綱としての最多連勝記録

分・預を含まないものとしては、千代の富士貢の53が最多。双葉山定次の69連勝は平幕から横綱に掛けてのものだった為、双葉山の横綱としての最多連勝は36。逆に横綱としての連勝の最少記録は武藏山武の4。

大関陥落を経験している横綱

昭和期以降では、三重ノ海剛司だけ。大関角番を経験した横綱には、 琴櫻傑將(横綱としての大関在位最長記録も持つ)、三代目若乃花、曙、貴乃花らがいる。

横綱在位中に負け越しを経験している横綱
東横綱未経験の横綱

横綱が正式な地位として扱われてから、東横綱未経験の横綱は西ノ海嘉治郎 (2代)武藏山武前田山英五郎双羽黒光司大乃国康の5人。

[編集] アマチュア相撲の横綱

アマチュア横綱全日本相撲選手権大会の優勝者)、学生横綱全国学生相撲選手権大会の優勝者)、実業団横綱(全日本実業団相撲選手権大会の優勝者)、高校横綱全国高等学校相撲選手権大会の優勝者)、中学生横綱全国中学校相撲選手権大会の優勝者)など、年代ごとの主要大会での優勝者を通称として「横綱」と呼ぶことも多い。特に、わんぱく横綱(小学生を対象にしたわんぱく相撲全国大会の優勝者)は、翌年の大会で大相撲の横綱とほぼ同じ横綱土俵入りを披露することが出来る。貴乃花光司が小学生時代にわんぱく横綱として土俵入りを行ったのは有名。

[編集] 関連項目

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