北の湖敏満

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北の湖敏満（きたのうみとしみつ、本名：小畑敏満、1953年 5月16日 - ）は、北海道有珠郡壮瞥町出身の大相撲力士で、第55代横綱。横綱時代の体格は、179cm・169㎏。三保ヶ関部屋所属。引退後、一代年寄北の湖となり、現日本相撲協会理事長。血液型はAB型。

大鵬幸喜に並ぶ戦後の大横綱。後、千代の富士貢がこれに続いた。重量感と馬力を存分に感じさせる相撲で一時代を築いた。息子には俳優の北斗潤がいる。

[編集] 現役時代

農協職員の家に生まれた（誕生日はNHKで大相撲中継が開始された日）。少年時代から体格に恵まれており、ただの巨漢ではなくスポーツ万能。特に柔道は強く中学1年で初段となり、高校生を破って町の大会で優勝。

多くの相撲部屋から勧誘された中から中学1年で三保ヶ関部屋に入門（女将が手編みの靴下を贈ってくれたのが入門の決め手になったともいう）。1967年1月場所初土俵。

四股名は故郷壮瞥にある洞爺湖にちなんで師匠の三保ヶ関がつけた。湖を「うみ」と読ませたのは水上勉の小説『湖の琴』（うみのこと）からの着想という。改名の多い角界において、珍しく入門から引退まで四股名を変えることはなかった（番付で北乃湖と誤記されてしまったことがあった）。現役引退後も、一代年寄「北の湖」である。

柔道を始めとし、野球、水泳そしてスキーで鍛えたスポーツ万能の体を生かしてスピード出世。当時の最年少昇進記録を次々に樹立。中学生（15歳9か月）で幕下昇進するなど「北の怪童」の異名をとった。ただし途中、三段目で全敗した事もある。横綱で幕下以下の全敗経験者は北の湖ただ一人である。

中学在学中に相撲部屋に入門し、学校に通いながら大相撲の土俵に上がる力士もいたが、当時も社会通念上問題があるとされた。北の湖が大活躍したため、特に話題になったとも言われる。そのため協会は、中学卒業（義務教育終了）後でなければ大相撲には入門できない制度に変えた。

昭和47年（1972年）1月場所、18歳で新入幕。1度陥落したがすぐ再入幕。昭和48年（1973年）11月場所関脇。14日目に足首を骨折しながらも千秋楽に出場し、10勝目をあげたことが自信となりそして後々まで心の支えとなったという。そして74年1月場所、14勝1敗で初優勝して大関に昇進すると、5月場所で2度目の優勝。翌7月場所も優勝決定戦に進み、史上最年少の21歳2ヶ月で横綱まで一挙に駆け上がった。

当時から酒豪で知られ、横綱昇進時には大酒は控えるよう注意を受けたという逸話もある。本人も七升ぐらいは普通に呑めたと言い、「若い頃なら気合いを入れれば一斗呑めたかもしれない」と、回想している。

5場所連続優勝した昭和53年（1978年）が極盛期。「憎らしいほど強い」と言われ、敗れると観衆が湧いた。「ヒール」として扱われることも多く、朝青龍の登場により初代ヒール横綱と言う不名誉なあだ名を今になって贈られた。「巨人、大鵬、卵焼き」（子供の好きなものの列記）をもじって、「江川、ピーマン、北の湖」（嫌いなものの列記）という言葉ができたほどである。他にも「不沈艦」や「モンスター」というあだ名がつけられた。「倒した相手に手を貸さない」ことが嫌われた最大の原因だったが、これについて本人は「自分が負けた時に相手に手を貸されたら屈辱と思うからだ」と語っている。北の湖独特の美学とも言える。また、美男力士の貴ノ花、若三杉や蔵間を引き合いに出して、「ふてぶてしい顔が嫌い」という声が特に女性からあった。昭和52年春場所では全勝の北の湖に、1敗の輪島が追いかける展開だったが、13日目、結び前に輪島が敗れ、結びで北の湖が若三杉に勝ち優勝が決まった瞬間、館内から怒号と共に北の湖めがけて座布団が投げつけられる異常事態もあった。しかしこれに動じず残りの2日間も勝って全勝優勝を果たし、優勝インタビューで「優勝は何回しても、気分がいいものだ」と発言し、反北の湖になる者が増え、アンチ北の湖派は更に恨みを深くした。

人気については不運な面もある。絶大な人気を誇った大関貴ノ花（初代）を始め、横綱輪島、横綱若乃花（二代目）らとの時代。そして千代の富士が台頭した時代。いずれの時代もあまりの強さゆえに敵役とされることが多かった。しかし、真摯に土俵を務める姿、そしてその圧倒的強さに魅了されるファンもまた多かった。

横綱輪島とは最大の好敵手であり、2人で輪湖（りんこ）時代を築いた（輪島との通算成績は21勝23敗でほぼ互角。優勝は両者合わせて38回で、これは柏鵬の37回を上回る）。

優勝回数24回、連勝記録32勝、幕内での50場所連続勝ち越し、37場所連続2桁勝利の堂々たる記録を持つ。年間通算82勝は2005年（平成17年）に朝青龍に超えられるまで27年間最高記録だった。

37場所連続2桁勝利を続けた1975年9月場所から1981年9月場所までの6年間は、ほとんど全ての場所で終盤まで優勝争いの中心にい続けた。体調管理の難しい年6場所制度にあって不滅の記録といえる。

初土俵から1度の休場もない抜群の安定感であったが、1981年の夏巡業中に右膝を痛め、昭和56年（1981年）11月場所ついに休場。翌昭和57年（1982年）1月場所は優勝したものの、足腰の故障との戦いが続き、途中休場も増えた。ついに第一人者の座を千代の富士に明け渡し、完全に世代交代してしまったかと思われていた昭和59年（1984年）5月場所、久々の優勝を15戦全勝で果たし全盛期を再現出させた（13日目に弟弟子の大関北天佑が隆の里を下した直後に北の湖の優勝が決定し、控えに座る北の湖に北天佑が微笑むと、北の湖も思わず笑みを返したシーンは有名）。ただこの頃はかつてのヒールではなくなり、勝って拍手が贈られることもあった。北の湖にしてはあまりに優勝から遠ざかっていたこともあったのだろうが、後年、北の湖は「（観客から）負けろと言われていた頃はこっちも燃えて来る性格だから良かったのだが、引退間際になって頑張れと言われた時は自分でも情けなかった。その為に勝ちたいという意欲も薄れてきてしまっていた」と述懐している。

翌年の昭和60年（1985年）1月場所、こけら落としの新両国国技館の土俵に現役で臨んだが、実は怪我が完治せず土俵に上がれる体ではなかった。しかし、春日野理事長から「晴れの舞台に横綱が休場することはできない。潔く散る覚悟で出よ」との言葉を受け、強行出場。しかし新国技館では勝ち星を挙げることなく、5年時限の年寄襲名前提で引退届を提出。引退表明後協会より現役時代の功績に対し一代年寄が授与され、一代年寄北の湖となった。

土俵外でも高潔で知られた。東大合格者を装って胴上げされる吉田照美の姿をニュースで見て激怒した話は有名である。吉田は番組の企画で胴上げされたのだが、この件で北の湖に嫌われ、当時担当していた大相撲熱戦十番のレポーターを降ろされたと言われる。

[編集] 強さなど

低い重心から立合い、かちあげるか、右上手を引いて、相手を吹き飛ばすかのように土俵外へ出すのが代表的な取り口。左四つに組み止めての右上手投げには威力があった。充分に両廻しを引きつけ、腰をよく落としての怒涛の寄り、巨腹に乗せた吊りも得意とし、地力の強さは際立った。一方で巻き替えが上手く多用したため、評論家からは「横綱の相撲としてはいかがなものか」と批判もされた。しかし、元横綱安藝ノ海には、「あの巻き替えがあるから勝てるのだ」と絶賛されていた。右四つになっても右腕(かいな)を返して腰を下ろせば盤石。こうなったときは識者の評価も高かった。

突っ張りもあり、関脇までは押し相撲が主体だったが、足首を怪我してからは四つ相撲に改めた。巨体ながら非常にスピードがあり、器用さも兼ね備え、その相撲には独特の躍動感があった。

現役時代に北の湖に勝ち越した力士は少ない。ほとんどの力士には大きく勝ち越し、完封もいる。典型的なのは栃光で、29戦全勝というもの（栃光も取り口にムラがあったが決して弱い力士ではない。横綱と29回も当る番付にいた力士である）。もう一人、蔵間に対しても17戦全勝と圧倒している。後の横綱三重ノ海剛司が、何とか勝とうと奇策猫騙しをしたのも話題になった（ただし奇策は通じず三重ノ海は敗れている）。北の湖は負けると騒がれた。殊勲者として昭和50年代前半では黒姫山、栃赤城。後半になると若島津、大寿山らがいる。若島津とは左がっぷり四つからの投げ合い。大寿山とは吊り出し合戦。また、現役後半の好敵手千代の富士は、横綱に昇進してからは互角に近かった。

しかし、土俵を支配する神様はやはりいるというべきか、負けると翌場所も連敗するという脆さを見せることがあった。また初顔合わせの相手に取りこぼすことも多かった。朝潮太郎とは相性が悪く、7勝13敗（不戦敗1含む）という不本意な成績に終わっている。自分の相撲を忘れてしまっていたとコメントしているとともに、遠まわしに「朝潮の顔がおかしくて、力が抜けた」とも言っている。いずれも全盛期を含めてのことである。

また、北の湖はせっかちな点があり、立会いまでが速いため、相手が遅ければ遅いほど勝負を急ぐところがあった。朝潮を苦手としたのもこのためとの見方がある。朝潮は立会いまでが遅く、横綱相手でも合わせないのでますます苛立ったのではないかというものである。

そしてもう一つ、優勝決定戦に弱く、負けて優勝を逃すということが続いた。厚い壁だった輪島に敗れて(横綱昇進を決定的とし、2場所連続優勝という花を添えるべく臨んだ千秋楽に本割り、決定戦と連敗した)以降、まず負けないと思われた相手とのときも勝てず、初出場から実に4連敗している。昭和51年（1976年）5月、輪島に勝ってやっと決定戦初勝利。昭和53年（1978年）3月、5月と2場所続けて大関若三杉壽人に勝つまで「決定戦に弱い横綱」と評された。通算成績は3勝5敗（対輪島1勝1敗、対魁傑1敗、対貴ノ花2敗、対若三杉2勝、対千代の富士1敗）である。

土俵際でしぶとく粘ったりせず、案外あっさりと土俵を割ることも多かった。比較的怪我が少なく、10年以上横綱を務められたのは、無理な体勢で頑張ることが少なかったからという意見がある。

記憶力が抜群で、自分の全取組を詳細にわたって記憶していた。歴代の高視聴率取組では、北の湖が絡んだ取組が数多いが、TVの対談で記憶に残る取組に自身の一番を向けられると、間髪いれずに「○年の△場所□日目の結びですね」などと返していた。自分以外の力士の記録についてもかなり詳しかったと言われる。

ただし学校時代の成績は良くなかったらしい。力士としての全盛期に趣味を聞かれ「マンガを読むこと」と答えたこともあり、「知性に欠ける」などと揶揄される事もあった。

[編集] 引退後

引退後まもなく創設した北の湖部屋は、2006年7月現在、幕内力士は巌雄、北桜を輩出しているものの、三役には届かないまま。ヒールだった北の湖が、現在・高見盛と人気を分け合う北桜を育てた。

現役中は無口で知られたが、テレビ解説で饒舌な一面を見せている。

日本相撲協会では監事を経て、理事として要職を歴任し、2002年より理事長を務めている（2005年の二子山事業部長死去後は翌年初場所まで事業部長兼務）。

理事長として、出羽海→境川理事長が実施した「年寄株貸借の禁止」を旧に復した。また「協会自主興行巡業」も旧の勧進元制に復した。さらに、総合企画部の設置や広報部の強化によるファンサービスの充実を実施している。土俵の充実を目指し、幕内・十両の定員をそれぞれ東西1枚ずつ2人ずつ増員させた代わりに公傷制度を廃止したり、韓国・中国巡業など海外公演を次々と成功させた。

2006年2月より理事長3期目に突入。協会No.2の事業部長に二所ノ関一門の先輩理事を2期据えたが、3期目は同じ出羽海一門の武蔵川を理事にすることで、「攻め」の姿勢も見せている。また、勧進元制に復しながらも実績不振に陥っている巡業の強化するため、2期目まで監事2名だった巡業部副部長を契約推進担当（高田川親方）を含めた3名にして巡業部スタッフの強化をしている。

2006年 5月25日放送のフジテレビ『クイズ$ミリオネア』に息子の北斗潤と一緒に出演した。

2006年12月末に年寄株「小野川」を取得した。

[編集] 主な成績

通算成績：951勝350敗107休

通算勝星951は歴代3位

幕内成績：804勝247敗107休

幕内勝星804は歴代2位

幕内在位：78場所
横綱在位：63場所
大関在位：3場所
三役在位：4場所（関脇2場所、小結2場所）

[編集] 幕内での場所別成績

場所	地位	勝数	敗数	休場	その他
昭和47年 1月	西前頭12枚目	5	10	0	新入幕
昭和47年 5月	西前頭11枚目	9	6	0	再入幕
昭和47年 7月	東前頭7枚目	9	6	0	-
昭和47年 9月	東前頭3枚目	6	9	0	-
昭和47年 11月	西前頭6枚目	10	5	0	-
昭和48年 1月	東小結	4	11	0	新小結
昭和48年 3月	西前頭5枚目	9	6	0	敢闘賞(初)
昭和48年 5月	西前頭筆頭	6	9	0	金星1
昭和48年 7月	東前頭4枚目	8	7	0	-
昭和48年 9月	東小結	8	7	0	再小結
昭和48年 11月	東関脇	10	5	0	新関脇、殊勲賞(初)
昭和49年 1月	東関脇	14	1	0	優勝(初)、殊勲賞(2)
昭和49年 3月	東大関	10	5	0	新大関
昭和49年 5月	東大関	13	2	0	優勝(2)
昭和49年 7月	東大関	13	2	0	優勝同点
昭和49年 9月	西横綱	11	4	0	新横綱
昭和49年 11月	西横綱	12	3	0	優勝同点
昭和50年 1月	東横綱	12	3	0	優勝(3)
昭和50年 3月	東横綱	13	2	0	優勝同点
昭和50年 5月	東横綱	13	2	0	優勝(4)
昭和50年 7月	東横綱	9	6	0	-
昭和50年 9月	東横綱	12	3	0	優勝同点
昭和50年 11月	東横綱	12	3	0	-
昭和51年 1月	東横綱	13	2	0	優勝(5)
昭和51年 3月	東横綱	10	5	0	-
昭和51年 5月	西横綱	13	2	0	優勝(6)
昭和51年 7月	西横綱	12	3	0	-
昭和51年 9月	西横綱	10	5	0	-
昭和51年 11月	西横綱	14	1	0	優勝(7)
昭和52年 1月	東横綱	12	3	0	-
昭和52年 3月	西横綱	15	0	0	全勝優勝(8)
昭和52年 5月	東横綱	12	3	0	-
昭和52年 7月	東横綱	13	2	0	-
昭和52年 9月	西横綱	15	0	0	全勝優勝(9)
昭和52年 11月	東横綱	13	2	0	-
昭和53年 1月	西横綱	15	0	0	全勝優勝(10)
昭和53年 3月	東横綱	13	2	0	優勝(11)
昭和53年 5月	東横綱	14	1	0	優勝(12)
昭和53年 7月	東横綱	15	0	0	全勝優勝(13)
昭和53年 9月	東横綱	14	1	0	優勝(14)
昭和53年 11月	東横綱	11	4	0	年間最多勝新記録(82)
昭和54年 1月	東張出横綱	14	1	0	優勝(15)
昭和54年 3月	東横綱	15	0	0	全勝優勝(16)
昭和54年 5月	東横綱	13	2	0	-
昭和54年 7月	西横綱	12	3	0	-
昭和54年 9月	西横綱	13	2	0	優勝(17)
昭和54年 11月	東横綱	10	5	0	-
昭和55年 1月	東張出横綱	12	3	0	-
昭和55年 3月	西横綱	13	2	0	優勝(18)
昭和55年 5月	東横綱	14	1	0	優勝(19)
昭和55年 7月	東横綱	15	0	0	全勝優勝(20)
昭和55年 9月	東横綱	11	4	0	-
昭和55年 11月	西横綱	12	3	0	-
昭和56年 1月	東張出横綱	14	1	0	優勝同点
昭和56年 3月	東横綱	13	2	0	優勝(21)
昭和56年 5月	東横綱	14	1	0	優勝(22)
昭和56年 7月	東横綱	13	2	0	-
昭和56年 9月	東横綱大関	10	5	0	連続勝越新記録(50)
昭和56年 11月	西横綱大関	5	4	6	初めての途中休場
昭和57年 1月	西横綱大関	13	2	0	優勝(23)
昭和57年 3月	東横綱	13	2	0	-
昭和57年 5月	西横綱	9	4	2	途中休場
昭和57年 7月	東張出横綱	0	0	15	初めての全休
昭和57年 9月	東張出横綱	10	5	0	-
昭和57年 11月	東張出横綱	9	3	3	途中休場
昭和58年 1月	西横綱	5	4	6	途中休場
昭和58年 3月	西横綱	0	0	15	全休
昭和58年 5月	西横綱	0	0	15	全休
昭和58年 7月	西横綱	0	0	15	全休
昭和58年 9月	東張出横綱	4	1	10	途中休場(6場所連続休場)
昭和58年 11月	東張出横綱	11	4	0	-
昭和59年 1月	東張出横綱	8	7	0	-
昭和59年 3月	東張出横綱	10	5	0	-
昭和59年 5月	西横綱	15	0	0	全勝優勝(24)
昭和59年 7月	東横綱	11	4	0	-
昭和59年 9月	東横綱	0	3	12	途中休場
昭和59年 11月	東張出横綱	3	4	8	途中休場
昭和60年 1月	西横綱	0	3	-	引退
通算		804	247	107	-