吊り橋
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吊り橋(つりばし)は、橋の形式の一種で、綱などの張力で吊り下げ支える形式のもの。漢字では、釣り橋・釣橋とも表記される。
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[編集] 概説
一般的な用法としては、小さな谷や川に縄ばしごを渡しただけのような簡易なものから、海峡などに架けられる大規模なものまで吊り橋と称する。
狭義の定義、すなわち現代の土木工学分野では2本の主塔とそれに渡される2組のメインケーブル、そのケーブルから垂れされ桁を支えるハンガーロープを持つものを指すことが多い。桁は道路や鉄道、人などが実際に通る橋の本体部分である。ハンガーロープがなく、複数のケーブルを斜に張り直接、桁を支えるものを斜張橋といい区別される。
吊り橋はその性質状、綱の部分は垂れさがり放物線を描くことになるが、ハンガーロープとの2段構成 とすることで桁部分を水平に近い状態に保つことができる。なお、桁を取り付ける前のケーブルだけの状態では、懸垂線というカーブを描く。
いずれも現代のものは、ケーブル、桁などは鋼製、主塔は鋼もしくはコンクリート製である。 長大な橋に向いており、世界の長い橋の上位の多くを吊り橋が占める。一方風や加重によって揺れやすいという欠点ももつ。
[編集] 古典的、簡易な吊り橋
古典的な吊り橋としては、徳島県西祖谷山村(市町村合併により2006年3月から三好市)にある祖谷のかずら橋がある。植物のつるで両岸から本体を支える構造で原始的な斜張橋と言える。現在のかずら橋は安全のため鋼のワイアーで補強されているものの本来はその名の通り植物のしらくちかずら(サルナシ)のみが用いられる。桁部分もかずらで丸太、割木を繋いだだけのはしご状で人専用である。
簡易なものは登山道などで見られ、多くは人専用である。主塔が無く岩盤からケーブルを架設したりハンガーロープがなく直接本体を支えるものなどもあり、桁も板を繋いだだけの簡易なもののことがある。こういったものは吊床板橋と呼ばれる。揺れを抑えるため横、あるいは下方からもケーブルで補強している場合もある。
日本において、かっては釣橋の語が使われていたが、後述のような西欧からの近代的な橋が導入されて以降、吊り橋、吊橋の語が使われるようになったようである。
[編集] 現代の吊り橋
現在の長大な吊り橋の起源は、アメリカのブルックリン橋とされる。1883年に完成したこの橋は、ケーブルの材料として鋼を使いかつ撚り合わせのない平行線ケーブルを用いた。また塔の海底部の工事にケーソンが用いられるなど、現代の工法の多くがこの時代に開発された。またブルックリン橋は塔から桁への斜めのケーブルも持ち斜張橋との複合構造でもある。
その後に造られたジョージ・ワシントン橋でスパン(後述)が1000mを超え、さらにゴールデンゲート橋、ベラザノ・ナローズ橋など建設が続いた。1981年にイギリスのハンバー橋が完成するまで、長期に渡り世界一の座をアメリカが独占した。
[編集] 大規模橋の構造
- 主塔
- メインケーブルをささえる塔で両岸もしくは、岸から全長の1/4くらいのまで位置に設けられる。一組の塔は桁を挟むように建つ2本の柱をトラスまたはラーメン構造で繋いでいる。基礎が水中になる場合は、ケーソンと呼ばれる鉄の枠を沈めコンクリートを流し込み構築する場合が多い。水流を妨げないため複数の柱で構成する場合もある。(大鳴門橋など)
- 吊り橋における長さは全長ではなくこの主塔間の距離である中央径間(スパンと言う)でもって序列されることが多い。
- 塔は通常2組であるが、3組の例もある。(小鳴門橋など)
- メインケーブル
- 主塔に架けられ、ハンガーロープを通じて桁をつり下げる、吊り橋の最も重要な要素である。材質としてはピアノ線を束ねたものが用いられる。少し古いものでは鋼板を束ねたものも用いられたことがある。この材質の張力の進歩にともないより長大な橋が架けられるようになった。明石海峡大橋のものでは1mm²あたり180kgの強度がある。それ以前の瀬戸大橋などでは160kgのものが使われている。
- 桁
- 道路や鉄道が設けられ実際に通行する部分であり、橋桁あるいは補剛桁ともいう。送電線や水道管が併設される場合もある。桁は箱型のものとトラス形式の物があるが、風の影響の少ないトラスのものが多い。扁平で剛性の小さな補剛桁を用いていた米国のタコマナローズ橋が風で共振し落橋した影響もある。
- ただし最近、流体力学の研究の進歩により風の影響を受けにくい形状にした箱形も見直されつつあり、イギリスのハンバー橋や日本の来島海峡大橋にこの例を見ることができる。
- ハンガーロープ
- メインケーブルから垂らされ、桁を支える。懸垂線を描くメインケーブルと桁を結ぶため場所により長さが異なる。通常、撚ったワイヤーロープが使われる。主塔が岸よりにあり外側の桁を支える必要がない場合は無い場合もある。この形式のものを単径間吊り橋という。(下津井瀬戸大橋など)
- ちなみに一般的なものは3径間である。
- ハンガーロープには風による振動防止用に螺旋状に線が巻かれている場合がある。
- アンカーレイジ(橋台)
- 橋の両端にありメインケーブルを繋ぎ止める文字通りの碇である。強固な岩盤などがある場合はアンカーレイジがなく直接固定する場合もある。(これも下津井瀬戸大橋など)
[編集] 世界の長大橋
以下のリストの長さの数値はスパンである。
- 明石海峡大橋(日本) 1,991m - 1998年
- イズミット・ベイ橋(トルコ) 1,668m - 2004年
- グレート・ベルト橋(デンマーク) 1,624m - 1998年
- ハンバー橋(イギリス) 1,410m - 1981年(1981年から1998年までは最長)
- 江陰長江大橋(中国) 1,385m - 1997年
- 青馬大橋(香港) 1,377m - 1997年(道路、地下鉄併用)
- ベラザノ・ナローズ橋(アメリカ) 1,298m - 1964年(1964年から1981年まで最長)
- ゴールデンゲート橋(アメリカ) 1,280m - 1937年(1937年から1964年まで最長)
- ホグステン橋(スウェーデン) 1,210m - 1997年
- マキノー橋(アメリカ) 1,158m - 1958年
- 南備讃瀬戸大橋(日本) 1,118m - 1988年(道路、鉄道併用)
- 第2ボスポラス橋(トルコ) 1,090m - 1988年
詳細は吊り橋の一覧 (長さ順)を参照。
[編集] 類似構築物
吊り橋と同様の技術を用い競技場やホールなど中央に柱を建てられない大規模な建物の屋根を建造する例がある。例として東京オリンピックの国立屋内総合競技場(現国立代々木競技場)がある。メインケーブルは吊り橋と同様な曲線を描きそこから周囲に広がるように垂らされたロープが屋根と一体となっている。