国際文化公園都市
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国際文化公園都市(こくさいぶんかこうえんとし、愛称:彩都(さいと)、国文都市とも略される)は、大阪府茨木市と箕面市の北部山間部に現在開発中のニュータウン。都市再生プロジェクトのひとつとなっているほか、「バイオメディカル・クラスター創成特区」に指定されている。
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[編集] 計画
茨木市と箕面市にまたがる西部地区、茨木市北部に位置する中部地区と東部地区の3つのクラスターからなり、面積は計743ヘクタール、人口は居住人口50,000人(16,700戸)、施設人口24,000人を予定している。既に造成の終わっている西部地区は既存のニュータウンである粟生間谷住宅や大阪外国語大学と隣接し包み込む形になり、将来予定されている東部地区は既存のニュータウンである茨木サニータウン(山手台)と隣接している。
既存ビジネス街へ通勤するための戸建や団地などの住宅地だけでなく、主に生命科学・医療・製薬などの研究施設や関連企業など、働く場所も備えていることが特徴。将来的には人文学系の研究機関や大学、博物館なども予定されている。また商業施設、里山公園、集合農地などもある。予定地の山林に生えていた木を移植・保管し、開発後に植えなおすなど、自然の再生などへも一定の配慮がされている。
都市の重要な機能として、生命科学の研究開発拠点と、国際的な文化学術交流拠点が二本柱になっている。これらは、近隣の千里ニュータウンや万博記念公園などにある大阪大学、千里ライフサイエンスセンター、国立循環器病センター、生物分子工学研究所、大阪外国語大学、国立民族学博物館、国際協力機構(JICA)大阪国際センターなどの既存研究施設と連動することが期待されている。
- 西部地区の東端に、現在「研究開発ゾーン(ライフサイエンスパーク)」が建設中である。バイオテクノロジー、先端医療、製薬・創薬に関する研究開発施設や関連企業などが予定されており、医薬基盤研究所など一部は既に業務を開始している。
- 中部地区は全域が「国際交流ゾーン(カルチャーパーク)」となる。駅のある北部「文化交流ゾーン」では国際交流シンボル施設、セミナーハウス、外国人のための滞在施設、商業施設、文化施設などが予定されている。また南部の「学術交流ゾーン」では人文・社会科学系等の研究機関、博物館、高等教育機関が予定されている。
この計画では、大阪府や都市再生機構など公だけでなく、阪急電鉄など民間も都市建設に協力している。また立地する公的研究機関なども、公設民営方式のとられたものがあり、民間の力が多く導入されている。
主要なアクセスとしては、大阪モノレール彩都(国際文化公園都市)線が乗り入れて3地区を縦貫する予定であるが、第1期として2007年3月19日彩都西駅までの区間が開通した。彩都西駅から千里中央までは17分、梅田までは乗換え時間を除いて40分弱で到達できる。また、茨木箕面丘陵線(大阪府道1号茨木摂津線)、上郡佐保線、耳原大岩線の3つの幹線道路が大阪中央環状線や国道171号とつながる予定である。
[編集] 現状
2004年(平成16年)4月に西部地区で第1期のまちびらきが行われ、大規模マンションを含む350戸ほどが供用された。2007年1月現在、茨木市「彩都あさぎ」「彩都やまぶき」と箕面市「彩都粟生南」、「彩都粟生北」が住居表示として存在している。西部地区はまちづくりが先行したモノレール線より東側に続き、西側の整地もほとんど完了し、今後道路やインフラの工事が行われる。なお、将来開発が行われた場合の住居表示は、中部地区は「彩都あかね」、東部地区は「彩都はなだ」「彩都あけぼの」「彩都もえぎ」となり、茨木市側の住居表示は日本の伝統色の名で統一される予定である。
「里山サークルや棚田ファーマーサークルなど、近隣の自然に親しむ活動が始まり、住宅の都心回帰に対して新しい郊外生活の魅力作りの試みが行われている。
茨木箕面丘陵線(大阪府道1号茨木摂津線)は国道171号線から彩都西駅までの区間がモノレールにさきがけて2007年3月6日に開通した。研究機関では、医薬基盤研究所や彩都バイオインキュベータ、製薬関連企業などがすでに業務を開始している。
なお中部地区、東部地区の開発はまだ何も進んでおらず、山林のままである。今後の経済情勢や住宅需要動向などを見ながら着手されると見られているものの、都心回帰の進む現状では厳しいものがある。特に中部地区は武田薬品工業の新薬研究所施設の誘致が失敗に終わった(これは藤沢市の自社湘南工場跡地に建設される)ことから、このまま手付かずになるという厳しい見方もある。ただし、西部地区の住民は静かな郊外生活を求めている人が多く、これ以上の彩都の発展を望んではいない人が多いのも事実である。
なお予定地の山林のうち一部を阪急電鉄がすでに買収しているが、着工できなかった場合どうなるかは不明である。
長らく、国際文化公園都市の中心部で食料品や日用品の買い物のできる施設はコンビニエンスストアのデイリーヤマザキ(営業時間6:00~24:00)しか存在しなかったので自動車やバイクのない住民には少々不便であったが、(なお、住所が箕面市彩都粟生南となっている地区の南端にもファミリーマートがある。)モノレールの延伸開業前日の3月18日にはモノレール彩都西駅前に平和堂の食品スーパーマーケット、フレンドマートを核テナントとするショッピングセンターの「ガーデンモール彩都」が開業した。ショッピングセンター外でもベーカリーショップや書店、レストラン、美容室などが既に開業している。
モノレール延伸開業にあわせて大規模マンションが、さらに2ヶ所同時に完成し、さらに新たな大規模マンション計画が複数計画されている。誘致がなかなか進まない研究施設とは対照的に、マンションや戸建て住宅地の分譲は、地価が比較的安く、環境に恵まれているわりに鉄道の駅にも近いことなどから好調である。
人口の予想以上の増加に伴い、2006年6月には私立保育園 の彩都保育園が開園し、既に開校している茨木市立彩都西小学校の増築が2007年春に完成したほか、2008年春には市立(仮称)第15中学校の新設が決定しており、既に着工している。茨木市側の良好な教育環境とは対照的に、箕面市側は彩都内での公立小中学校の建設予定が今のところなく、当面はかなり離れた所にある小中学校への通学を強いられることになる。
その他、徒歩圏内の隣接地には私立摂陵中学校・高等学校・向陽台高等学校、大阪外国語大学が立地している。これらの学校は、モノレール開通に伴い、彩都から直通する歩行者・自転車専用道路が供用されている。
[編集] 国際文化公園都市周辺の郊外住宅開発
国際文化公園都市の開発に先駆けて、将来彩都東地区となる予定地に隣接した地域に茨木サニータウンが1970年代末に開発された。また、南には間谷住宅地や外院住宅地などが開発された。
また、1980年代末に大和団地が「北大阪ネオポリス」住宅地(豊能町希望ヶ丘)を開発。販売当初は「国文都市構想に隣接」「国文都市へのモノレール計画などにより将来の発展が約束されたニュー北摂」などと謳われていた。
さらに箕面市北部には水と緑の健康都市(箕面森町)が造成中で、2007年に街開きを行う。
[編集] 批判意見
箕面森町は基本的なコンセプト(環境保全)は彩都と変わらないにもかかわらず、マスコミは「税金の無駄遣い」「自然破壊」等の理由で箕面森町の批判を続けている。しかし彩都が自然破壊につながるといった報道はほとんどされていない。これは、箕面森町の造成地域にオオタカの営巣が発見されたことや、箕面森町のアクセスを建設理由のひとつして箕面トンネルを建設した結果、地下水が失われ、箕面滝ほか地上河川の流量が減少するなど、報道しやすい形で自然破壊につながる現象が発生したことによる。また、現実に行われている開発面積は箕面森町の方が大規模であることも理由に挙げられる。彩都は現状では西部地区の開発しか行われておらず、中・東地区の開発は全くの未定であるからである。ただし、全ての計画が実行されたならば彩都の方が大規模な開発となり、また彩都周辺の自然環境については詳しい調査されておらず、今後彩都にもこういった批判報道が無いとは言い切れない。彩都は大阪府よりも阪急等の民間会社やURが開発を主導しているために、マスコミの批判報道に不向きだという意見もある。いずれにせよ両者には自然破壊や税金の無駄遣いなどの批判意見があることは事実である。これらの問題については水と緑の健康都市や箕面トンネルの項目も参照されたい。
[編集] 主なアクセス
[編集] 道路
- 茨木箕面丘陵線(大阪府道1号茨木摂津線)
- 3地区を貫き、国道171号と交差し万博公園外周道路につながる。現在は彩都西駅から南の区間が整備されており、彩都西駅から北の彩都内は未開通のため、彩都開発後に新しく作られた道が府道1号に指定されているが、彩都を北に抜けた所からは従来からの道が府道1号として指定されており、全くの未整備の状態である。
- 上郡佐保線
- 東地区を南北に縦断し、国道171号につながる。大阪府道114号忍頂寺福井線にかわる道路となると思われる。現在国道171号から福井地区までが順次拡幅整備中である。
- 耳原大岩線
- 彩都の北側を第二名神高速道路が走り、東部地区の北に茨木北ICができる計画がある。その茨木北ICから発して東地区の東端で茨木箕面丘陵線の終点となり、大阪府道46号茨木亀岡線と合流して国道171号へつながる。
- その他、補助幹線道路として、彩都の南で茨木市の山間部と平野部の境を東西に貫く山麓線、地区内を循環する国文都市1・2・3・4号線が予定されている。
[編集] 鉄道
大阪モノレール彩都(国際文化公園都市)線がそれまでの阪大病院前駅から北伸して、2007年3月19日に彩都西駅まで乗り入れた。さらに(仮称)東センター駅までの延伸が行われるかは彩都中部・東部地区の開発次第である。北大阪急行電鉄南北線千里中央駅・大阪国際空港(伊丹)・阪急電鉄京都線南茨木駅・京阪電鉄京阪本線門真市駅などへ乗り継ぐことができる。朝や夕方以降などラッシュ時を中心に彩都西駅~千里中央駅間で直通運転される。運行間隔は昼間時間帯や休日ダイヤの早朝・深夜は20分間隔、それ以外の時間は10分間隔である。
[編集] バス
まちびらきから大阪モノレールが2007年春に彩都西駅まで開通するまでの間、彩都までの公共交通は阪急バスだけであった。北大阪急行電鉄千里中央駅から、「彩都あさぎ」バス終点まで所要約25分。彩都住民の専用バスに等しく、極端な赤字運行を続けていたが、モノレール開通後は廃止されることが当初から決まっており、モノレール開通前日の2007年3月18日限りで廃止された。地元住民らはJR茨木駅・阪急茨木市駅からのバス路線の新設を要望しているが、現在のところその可能性は極めて低い。
彩都あさぎ~彩都あさぎ南~関電学園前~千里中央の路線で運転していた。系統番号は70だった。関電学園前~千里中央間は国道171号線を通るが、この間にある停留所は全て通過した。また、関電学園前は彩都方面と92系統(阪急石橋~JR茨木)および、79系統(関電学園前~北千里~千里中央)の路線を乗り継いで利用する人のために停車する停留所であり、関電学園前~千里中央間だけの乗車は出来なかった。なお、終点の停留所名は「彩都あさぎ」だが、バスの行き先表示は単純に「彩都」となっていた。