地口
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地口(じぐち)は、駄洒落の一種と見なすことができる言葉遊びである。発音が似た単語を用いるため、駄洒落よりも創造性に富み、作成するのも比較的容易であり、また、形態も多様化している。
語呂合わせと同様に扱われるが、例えば円周率のπを「産医師異国に向こう」と憶えるような側面はこの地口にはなく、意味する範囲は語呂合わせより狭い。
落語においてもくすぐりとしてしばしば使われる。話の終わりを地口で締めるのを地口落ちというが、これは落ちの種類としては低いものと見なされる。
東京の稲荷神社では初午の縁日に、行灯に地口とそれに合わせた絵を描いた地口行灯を街頭に飾る風習がある。
また、近年では静岡県三島市でも同時期に商店街(三島大通り商店街、静岡県道51号三島停車場線等)に地口行灯が飾られるが、こちらは地口のみならず川柳の書かれた行灯も存在する(詳細は三島宿地口行灯の項を参照されたい)。
[編集] 地口の例
有名な文句をもじったもの。
- 「舌切り雀」をもじって、「着たきり娘」
- 「いずくも同じ秋の夕暮れ」をもじって「水汲む親父秋の夕暮れ」
- 「お前百までわしゃ九十九まで」をもじって「お前掃くまでわしゃ屑熊手」
- 「しづ心無く花の散るらむ」をもじって「しづ心無く髪の散るらむ」
韻を踏むことによってリズムをつけるだけで、特に意味のないもの。
- 美味かった(馬勝った)、牛負けた
- 美味しかった(大石勝った)、吉良負けた
- 驚き桃の木山椒(さんしょ)の木
- 結構毛だらけ猫灰だらけ、けつのまわりは糞だらけ→映画「男はつらいよ」の寅さんの的屋のセリフで有名。
- 何か用か(八日)九日十日
- 言わぬが花の吉野山
- 見上げたもんだよ屋根屋のふんどし
- 大したもんだよマレーシア→タイの南(下)にマレーシアが位置しているため。
- I'm sorry ヒゲソリー、髭を剃るならカミソリー
- 何のこっちゃ、抹茶に紅茶
- あたりき車力→「あたりき」とは「当たり前」のぞんざい語。さらに後ろに以下のように続けたりもする。
- あたりき車力、車引き
- あたりき車力、けつの穴馬力
- あたりき車力、洗濯機
掛詞の技法を使い、後に意味のない言葉をつなげたもの。
- すみま千円(「すみません」+「千円」)
- あたり前田のクラッカー(「当たり前だ」+「前田のクラッカー」)
- そうはいかのキンタマ(「そうは行かない」+「烏賊の金玉」)
- その手は桑名の焼き蛤(「その手は喰わない」+「桑名の焼き蛤」)
- 恐れ入谷の鬼子母神(「恐れ入りました」+「鬼子母神」)
- びっくり下谷の広徳寺(「びっくりした」+「広徳寺」)
- 嘘を築地の御門跡(「うそをつく」+「築地門跡 (「築地の御門跡」は築地本願寺のこと))
- 志やれの内のお祖師様 (「洒落る」+「妙法寺」東京都杉並区堀ノ内にある寺院で「お祖師様」で知られる。江戸時代より厄除けで知られていた)
- いやじゃ有馬の水天宮(「いやじゃありませんか」+「水天宮」(江戸の水天宮は久留米藩主有馬家の藩邸内にあった)
- どうぞかなえて暮の鐘(「どうぞかなえてくれ」+「暮の鐘」)
- 申し訳有馬温泉(「申し訳ありません」+「有馬温泉」)