ハマグリ
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?ハマグリ | ||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||
Meretrix lusoria | ||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||
ハマグリ | ||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||
Common orient clam |
ハマグリ(蛤、英名 Common orient clam、学名 Meretrix lusoria)は、マルスダレガイ目 マルスダレガイ科に分類される二枚貝の一種。広義には、ハマグリ属(Meretrix)に属する種はどれも外見が似ているため、それらもしばしばハマグリと総称される。また、マルスダレガイ科には、ハマグリ属以外にもハマグリと名のつく種が多数いる。 食用として重要な貝類の一つである。
なお、欧米の言語で二枚貝一般を指す単語、例えば英語の clam を、生物分類学の知識を十分に持たない翻訳家が翻訳するとき、一律にハマグリとすることが慣例化している。そのため、翻訳文の中でハマグリと訳されている貝がハマグリとは似ても似つかないものであることもしばしばである(下記 Clamの例も参照)。
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[編集] 特徴
長さ8cm、幅3.5cm、高さ6.5cmほどの丸みを帯びた三角形の貝殻を持つ。 東北地方以南に広く分布し、淡水の影響のある内湾の砂泥底に生息する。国外では朝鮮半島の一部にも分布する。
ハマグリは少なくとも1980年代以降、干拓や埋め立て、海岸の護岸工事などによって生息地の浅海域が破壊されたため、瀬戸内海西部の周防灘の一部、有明海の一部などの局地的な生息地を除くほとんどの産地で絶滅状態になり高価になった。ハマグリの全国的な減産にともない、中国大陸と朝鮮半島から別種のシナハマグリ(Meretrix pethechialis)が大量に輸入されている。輸入されたシナハマグリは、日本の浅海域で一時畜養されると、「国産」「~県産」や「地はまぐり」の表記が可能となるため、これが市場に大量に出回っている。また、潮干狩り場でまかれたりもしている。そのため実際に見られるハマグリのほとんどはこのシナハマグリである。
ハマグリは主として熊本県産のものが流通しているが、シナハマグリの流通量に比べるときわめて少量である。厳密ではないが、殻の光沢の有無によってシナハマグリと見分けることができる。しかし、在来のハマグリと交雑して遺伝子交雑を引き起こしている可能性も指摘されている。
また茨城県産のものも"ハマグリ"として売られているが、これはチョウセンハマグリ(Meretrix lamarckii)という外海の砂浜を生息場所とする別種で、鹿島灘が主要産地となっており、「鹿島灘はまぐり」の名でも呼ばれている。また、千葉県産もかつて多産した東京湾の真のハマグリはほぼ絶滅状態であり、今日では九十九里浜産のチョウセンハマグリが主体である。
このほか缶詰や剥き身などの加工食品にはベトナム産のミスハマグリ(Meretrix lyrata)なども多く使用されている。
[編集] 食材
日本人にとって非常に古くから親しまれてきた食材で、日本書紀にも記述がある。
成分にコハク酸を多く含み、旨みに富む。吸い物やクラムチャウダー、鍋ものの具、酒蒸し、焼き蛤、佃煮、土瓶蒸し、串焼き、寿司など、幅広い料理で利用される。
ビタミンB1を分解してしまう酵素アノイリナーゼを含むため、生食には向かない。
[編集] 語源
「ハマグリ」という言葉は、浜辺にあり、栗と形が似ていることから「浜栗」と呼ばれたことに由来する。
[編集] ぐれる
少年などが非行に走ることを「ぐれる」というが、この言葉はハマグリに由来する。江戸時代から使われるようになった。
ハマグリの貝殻は貝合わせという遊びにも使われるように、ペアになっている殻以外とはぴったりと形が合わないという性質を持っている。このことから、「はまぐり」の倒語として「ぐりはま」という言葉が生まれ、食い違って合わないことを意味するようになった。これが「ぐれはま」に変化し、さらに「ぐれ」と略されるようになる。そして、この「ぐれ」が動詞化したものが「ぐれる」である。
ちなみに、「ぐりはま」の漢字は、「蛤」をそのまま180度回転させ、見た目を逆さまにしたものである。
[編集] 分類
- ハマグリ属 Meretrix
- チョウセンハマグリ Meretrix lamarckii
- ハマグリ Meretrix lusoria
- ミスハマグリ Meretrix lyrata
- シナハマグリ Meretrix petechialis
[編集] Clamの例
- Asian clam Corbicula シジミ属
- Hard clam Mercenaria mercenaria ホンビノスガイ
- よくハマグリを Hard clam としている場合があるが別の種。いわゆるクラムチャウダーの素材として現地で主に使われている貝のひとつである。
- Soft clam Mya arenaria
- Pacific razor clam Siliqua patula ダイコクミゾガイ
- Surf clam Spisula solidissima アメリカウバガイ
- Pismo clam Tivela stultorum
- Giant clam Tridacna gigas オオシャコガイ
[編集] 漁業
- 日本におけるハマグリ類の漁獲高の推移
- 1920年 7103トン
- 1930年 5629トン
- 1940年 3940トン
- 1950年 -(欠測)
- 1960年 15847トン
- 1970年 4955トン
- 1980年 1910トン
- 1990年 2251トン
- 2000年 1543トン
ハマグリ類にはハマグリ、チョウセンハマグリ、シナハマグリ等が含まれる。 (漁業・養殖業生産統計「農林水産省」)