大刀 (ゲーム)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャンル | ファーストパーソン・シューティングゲーム |
対応機種 | Windows 98以降(XPは対象外)、ニンテンドウ64、ゲームボーイカラー |
開発元 | Ion Storm |
発売元 | アイドス・インタラクティブ |
人数 | 1人、マルチプレイヤー |
発売日 | 2000年5月23日 |
対象年齢 | ESRB: M (Mature) |
その他 | ゲームエンジンにQuake IIエンジンを使用 |
大刀(Daikatana)はIon Stormによって開発されて、2000年5月23日にアイドス・インタラクティブによって発売されたファーストパーソン・シューティングゲーム。リリースに先行した高い商業的期待とは裏腹に、コストや度重なる延期、発売当時としては出来が悪いゲームとして有名になってしまった。
プラットフォームはWindows、ゲームボーイカラー、およびニンテンドウ64に対応。プレイステーション版の開発は中止になった。
目次 |
[編集] 概要
時代設定は西暦2455年。舞台は日本で、ヒロ・ミヤモトと呼ばれる宮本茂をモチーフにした男が、剣術道場を開いて日々練習をしているところから始まる。世の中は荒廃し、致死率の高いMMPウイルスが貧困層に蔓延している(富裕層はワクチンによって助かっている)暗黒時代。ヒロは銃器の扱いや物理学、哲学に長けていたが、何故かこの遠未来に剣術道場を開いている。そこへ一人の老人、トシロウ・エビハラと名乗る男が現れる。
彼は、今世界で流行っているMMPウイルスのワクチンを完成させたのは自分の一族だと言うのだが、実際この世界でウイルスに対抗するワクチンを作ったのはカゲ・ミシマということになっており、それが理由で政権を握っている。トシロウが言うには、一時は自分がその功が認められ、富と名声を得、その資金を伝説の宝刀“大刀”の発掘に費やし発見することに成功したという。その大刀には時空を超えて旅をすることが出来るという秘めた能力を持っており、エビハラ一族にとっては魅力的なものであった。しかし、ある日のこと。その大刀がカゲ・ミシマによって盗まれ、その刀に秘められた能力を悪用し、昔に戻ってワクチンを開発したように見せかけ、それによってエビハラ一族は富と名声を失い、現在に至っているという。そして現在、トシロウはそのウイルスに感染し、死を待つ身となってしまった。そしてその一切を聞かされた娘、ミキコ・エビハラは怒りを露にし、単身カゲ・ミシマの基地に行き、復讐をしようとしたがあえなく拘束され、今も監禁されているという。なのでトシロウは、あらゆる能力に長けているヒロに、ミキコを救出し大刀を奪い返して欲しいと懇願する。しかしその後、トシロウはやってきた謀反者に暗殺されてしまう。ヒロはその遺志を継ぎ、単身カゲ・ミシマの要塞に赴くことにした。
大刀のことについては日本の戦国時代にまで遡る。戦国時代、ミシマ・オオサカという戦国武将が強大な勢力を誇っていた。他の勢力は対抗するのを避け、唯一楯突くのはエビハラ・インシロウと呼ばれる武将だけであった。それに憤慨したオオサカは名鍛冶師、ミヤモト・ウサギと呼ばれるヒロ・ミヤモトの先祖に刀を作ることを要請する。ウサギはそれを承諾し、伝説の宝刀である大刀を作り上げる。しかし、最初からあまりオオサカに肯定的でなかったウサギは、遂にオオサカを裏切り、オオサカと対立するインシロウに大刀を託し、オオサカの打倒を懇願する。インシロウは二つ返事で承諾し、ウサギから託された刀を駆使し、見事オオサカの打倒に成功する。しかしインシロウは、その刀の持つ強大な力に魅了され、本来ならばウサギに返すと約束した筈なのだがそれを破り返却しなかった。これに怒りを覚えたウサギは、インシロウから強引に大刀を取り返し、それを火山の中に投げ入れた。その後、ウサギはインシロウに殺された。
[編集] ゲームプレイ
大刀は4つのエピソードに分かれ、合計24のマップがある。4つのエピソードは、遠未来の日本の京都、紀元前の神話が形成されたギリシャ、疫病が流行した暗黒時代のノルウェー、近未来のサンフランシスコと時代も場所も異なるエピソードである。
大刀が酷評を受けた理由としては、二つの事象がある。一つは“サイドキック”と呼ばれる、ゲームプレイ時に重要な役割を果たすコンピュータ操作の仲間のことである。このサイドキックは、ゲーム中にどのような死に方をしてもゲームオーバーにされてしまう。二つ目はサイドキックはマップに存在するパズルを解くのに必要な場合があるのだが、悲しいことにそのサイドキックの人工知能が優れていないためにプレイヤーの思い通りに動いてはくれず、パズルも当然解きづらい。 よって、このサイドキックの不出来さからゲームの評価を下げたと言っても過言ではない。
また、発売時のバージョンは不具合が多く、ゲームプレイ中に強制終了したりフリーズしたりしたので、それも評価を下げたことに一役買ったと言える。更に発売時のバージョンは“セーブジェム”と呼ばれる、ゲームの進行をセーブする際に必要なアイテムが存在しており、それがなければセーブが出来ないというシステムも評価を下げた。
後に修正パッチのバージョン1.2がインターネット上でダウンロード出来るようになった。これは上記の不具合を極力修正し、セーブジェムの概念を無くし(無限にセーブが出来るようになった)、サイドキックが本来ならば使えない無限回復装置“Hosportal”を使えるようになった。その効果もあってか、ゲームの評価は微少ながら上がった。しかしこのパッチはあまり大々的に公表されず、またこのパッチを適用するのに長時間掛かるので、買った人の殆どがパッチを当てず、パッチの公開はもはやゲームを取り扱うメディアのためという風になってしまった。またパッチはアメリカ、イギリス、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスの圏内で発売されたもののみ適用可能で、その他の国で発売されたものに関してはパッチが無く不安定の状態でプレイしなくてはならなかった(ロシア語版や中文版など)。日本語版に関しては、一応バージョン1.1相当の修正はされている。しかし正式な1.1相当の修正ではないので、数々の問題を抱えている。例えば、セーブジェムの概念が残されていて無限セーブが出来なかったり(通常の1.1であれば無限セーブ可能)、マルチプレイをやろうにもバージョン違いで他国のサーバへの接続が不可能であったり等。
大刀では、経験値の概念がある。これは敵を倒した際に得られ、一定の経験値を得た場合に用意されているステータスに任意に割り振ることが出来る。最大レベルはそれぞれ5で、各エピソードによって上げられるレベルは決まっている。京都2、ギリシャ3、ノルウェー4、サンフランシスコ5。
[編集] ステータス一覧
- Power
武器の攻撃力を上げる。1レベルにつき1+上昇。
- Attack
武器の攻撃速度、リロード速度を上昇。
- Speed
移動速度を速くする。また遠距離ジャンプの距離も伸びる。
- Acro
ジャンプ力を高くする。
- Vitality
最大ライフを上昇させる。1レベルにつき50+上昇。初期が100なので、これを5レベルまで上げれば最大350にもなる。
このステータス上昇システムなのだが、様々なメディアで色々見解がなされている。特に目立つ意見としては“Speed”と“Acro”は正直いらないということ。Speedは比較的狭いマップで、しかも素早く動く敵というのが少ないので取る必要性が皆無という意見が多い。また落ちたら死ぬなどの罠を飛び越すのは有利だが、飛び越せないわけでもないので それも取らない方がいいという理由に集約された。Acroに関しては、ノルウェーにおいては使用頻度が高いが、その他のマップではまるで利用されないというのがある。これはノルウェーでは高いところにシークレットがあったりするためだと思われる。しかしマップを進める上ではあまり必要性は無く、また戦闘面で有利になるわけでもないので必要性が無いというところか。逆にこれは取るべきというのはVitalityという意見が多い。これは最大ライフを上げられるということで、これを取ると極めて有利になるからというものだ。その後に続くものとしては、順に大刀、Attack、Powerという意見が多い。
グラフィックはQuake IIエンジンを採用している。これは2000年においてはかなり古いとの評価を受けた。また、エピソードによりデザインの出来・不出来がはっきりとしているとも言われている(京都は出来が悪く、ギリシャやノルウェーは普通、サンフランシスコはあまりよくないといったところ)。京都は全体的に暗く、下水道の深緑色や茶色の色合いが非常に汚らしく、それがゲームの出だしなので一気に評価を下げたとも言われている。ギリシャはエピソードの中では一番まともだと言われている。全体的に明るい、オブジェクトに使われている色彩が、敵や背景と重ならないので見やすい等。ノルウェーは雪の降るアニメーションが取り入れられ、全体的に単調な色合いではあるが見やすく、雰囲気が出ているのでまずまずといったところ。サンフランシスコは全体的に平凡かそれ以下の背景で、それが最終エピソードだっただけに評価を下げた。
難易度もエピソードにより異なるとの評価が多い。京都に関しては難易度がとても高く、ギリシャ、ノルウェー、サンフランシスコは普通だと言われている。京都に関しては、周りの背景の悪さで敵が見えにくいというのもあるが、初期で武器がさほど持ってない時分に攻撃力が高い敵が大量に攻めてくるので厳しいという評価が下された。その他は背景がまともで、敵もそれほど強くないので戦うには支障は出ないと。
マルチプレイは
- Deathmatch
お互いを殺しあう
- Team Deathmatch
二つのチームに分かれ、敵を殺していく
- Capture the Flag
敵陣の旗を奪い時分の陣地に持っていったり、自陣の旗を奪われないようにする
- Death Tag
二人で協力して、敵の陣地にあるオブジェクトを奪ったり、操作したりする。また敵からオブジェクトを二人で守ったりする。
- Co-Operate
3人で協力してエピソードを進んでいく
の5つが存在する。発売時はMplayerと呼ばれる、ゲームにおけるネットプレイをサポートするサーバを提供する会社が存在していたが、やがて有料化しその後会社が無くなったので現状ではプレイ不可能である(Gamespyサーバも現状では働いてはいないようだ)。
[編集] 論争
この最初で最後とも言えるゲーム業界上の商業的失敗をした大刀は、発売元の国アメリカのゲーム雑誌や各ゲーム関連のウェブサイトにマイナスなイメージとしてレビューされ、返品騒ぎや、大作にもかかわらずバーゲンピン(格安で店先にゴミのように放置されて売られているゲームのこと)行きなどの、ある意味凄い反響の引き金となった。多額の資金を投資して作られたが、ヒットには至らず赤字になった“E.T.”というゲームや、発売日が正式発表から遅れに遅れている“Duke Nukem Forever”というゲームが存在するが、そのどちらの汚点をも達成してしまった大刀は、今ではアメリカのコンピュータゲーム界における代表的な失敗としての一例として例えられている。
このゲームのデザイナーであるジョン・ロメロ(John Romero)は、かつてid SoftwareでDOOMやQuakeなどの開発に携わっていた人物である。彼は野心と、ジョン・カーマック(John Carmak)とのもつれ合いからid Softwareを辞め、すぐにIon Stormという会社を創り、そしてその会社の最初の作品として大刀のタイトルの宣伝を積極的に行った。当時のタイム誌は、「元id Softwareのゲームデザイナー、ジョン・ロメロが心血注いで作る期待の大作」等と、ロメロに期待を寄せ大々的にその記事を取り上げた。また、同じid Software出身で、主にビジネス上の仕事をしていたマイク・ウイルソン(Mike Willson)がIon Stormの社長を務め、この大刀に期待を寄せてかなり印象付ける広告を作った。それは赤の背景に黒文字で“John Romero's about to make you his bitch(ジョン・ロメロがお前を雌犬にするぞ)”や“Suck It Down(しゃぶれ)”などと書かれている、あまりにも公序良俗に反するものであった。
この広告は、大刀に期待をしていた人達の大きな衝撃をもたらした。「クールだ」と評価する者もいたが、大半はロメロに対して反感を買うようになった。そして当時ゲームが発売されていないにもかかわらず、期待していた人達は次々と大刀に興味を示さなくなっていった。しかしロメロはそのようなことは露知らず、かつてid Software時代に稼いだ多額の資金をIon Stormのオフィスの資金(オフィスは当時ダラスの超高層ビルの最上階に存在し、数百万ドルという家賃)や開発費、食べ物や趣味(フェラーリを乗り回すこと)などに充て、世間では考えられないような“豪華”な制作活動を行っていた。また、アメリカのPLAYBOY誌でグラビアモデルとして活躍していたスティービー・ケース(Stevie "Killcreek" Case)がロメロによって雇われ、レベルデザイナーとして大刀の開発に携わせた。そのことは雑誌やメディアなどで“ジョン・ロメロの恋人”として大きく報じられた。そのようなロメロの態度に社長を務めていたMike Willsonは激怒し、Ion Stormの社長を辞め、社内で同じ考えを持つ者をと共に新しいゲーム製作会社を設立する(後にバンドであるキッスを題材にしたファーストパーソン・シューティングゲーム、Kiss:Psycho Circus The Nightmare Childrenを発表。)
これらの問題もあってか、1997年以内に発売すると公言した大刀は、最終的に2000年にまで発売日がずれ込んでしまった。その4年間の間、ハーフライフ、Unreal及びUnreal Tournament、Quake III Arena等の高度なグラフィックや人工知能、ゲーム内容の面白さを持ったゲームが次々と発表され、Quake IIエンジンを使って作られた大刀はもはや遺物としてゲームファンにはとられていた。発売された後も、上記に述べたようなサイドキックの不出来さ、セーブする際にセーブジェムというアイテムが必要だということ、バグの多さなどからゲーム評論家からは多めに見ても“平凡かそれ以下”という評価を受けた。
その失敗を埋め合わせするためか、大刀は世界中に20万本以上を出荷し、とりあえず掛かった制作費などの埋め合わせは済んだ。しかしそれは強引な商法であり、酷評を受けたことを知った上で強引に輸出し販売したのでIon Stormやアイドス・インタラクティブの名前に傷が付き、今日ではロメロはもうコンピュータゲーム業界に復帰することは難しいと考えられている。ロメロはというと、Pocket PCやPalmなどのゲームの配信を行うMonkeystoneという会社を設立して活動を行っている。一時期Midway Gamesにも勤めていた時期があったが退職し、MMORPGの開発に取り掛かっているという噂もある。
[編集] ゲーム開発における歴史
ロメロが大刀の構想を発表したのが1997年の3月である。その内容とは、
- 1.全部で25種類の武器が存在し、それぞれ印象の濃いものになっている。
- 2.64体ものモンスター及び兵士が登場し、それらはみなユニークで多彩。
- 3.全24マップで、4つのエピソードに分かれている。時代も場所も違うので、背景は全て異なる。
- 4.以上の内容を含んだゲームを、97年の12月までには完成させて発売する。
というものであった。ゲームのエンジンは使い慣れているQuakeエンジンを起用するとのこと。 スタッフは少なかったものの、かつてQuakeを製作した際、僅か9人のチームでしかも6ヶ月で完成させたので、この大刀も8人でクリスマスまでには完成出来ると思っていた。この考えに、当時ジョン・カーマックは「性質の悪い冗談だろう」とインタビューに答えている。これはジョン・ロメロが自分のスタッフの力量を知らずに、安易な発想で公言したからだと思われる(スタッフの7割は潰れた元7th Levelという平面RTS(リアルタイムストラテジー)制作会社の社員)。
Ion Stormは97年の6月のE3(Electronic Entertainment Expo)で、大刀のゲームプレイをしてデモンストレーションをした。しかし、そのグラフィックはソフトウェアレンダリングで時代遅れの感が否めず、あまり印象的なものではなかった。一方、id SoftwareもQuake IIを携えてE3に発表しに来ていた。Quake IIは当時は高度なグラフィックを持つゲームとして話題を呼んだ。これを受けてロメロはスタッフの技量が劣っていることを悟る。そして約束の発表日であるクリスマスを過ぎると、ロメロは思い切って大刀のグラフィックエンジンをQuakeエンジンからQuake IIエンジンに切り替えることを発表。発売は1998年に変更することにした。
Quake IIが発売された後、ロメロはid SoftwareからQuake IIのエンジンを受け取り、大刀の作り直しに取り掛かった。しかし、従来のQuakeとはソースコードが違い、エンジンを切り替えることは容易ではないと分かった。そのため、Quake IIエンジンのソースコードに慣れるまで約11ヶ月もの歳月を要することになった。
98年頃から、Ion Stormの内部の士気が低下し始めた。上記に述べたロメロの件もあるが、元7th Levelの社員を、トッド・ポーター(Todd Porter。同じ元会社出身のIon Storm社員)が強引にIon Stormに引き入れ、そのため開発費も日増しに増えていくようになったのが原因である。更に、その膨大な資金にあやかって、ポーターは7th Levelで開発を断念していたRTS、Dominionというゲームの製作を強引に推し進めた。こんなことが出来たのは、言うまでも無くポーターが会社の上役になっていたからである。そしてDominionが発売にいたると、数々のメディアから出来の悪いグラフィック及びゲームシステム及びストーリー全てにおいて酷評の嵐を受け取った。このゲームソフトは最終的に2000本以下しか売れず、これが当初期待を集めていたIon Stormの看板に傷を付けたのは言うまでもない。
1999年の1月までには、なんとかQuake IIエンジンの扱いにも慣れてきていた。そのためか、「2月15日に製品版を発売する」という発表をした。この日程ははずれたものの、3月にゲームのデモがリリースされた。しかしそれは、モンスターや兵士は一切出て来ず、マルチプレイのみのデモであった。しかもその内容はDeathmatchだけという、まるでエンジンが動くかどうかのサンプルでゲーム性は皆無というようなものであった。そのためか、デモを待ち望んでいたファンは失望した。
デモが失敗だったと認識したIon Stormは、次なるE3に向けて新たなデモ版の開発に取り掛かった。それは今まで平坦なマップだったのを、地面に高低などのリアルさを付け、フレームレートを12まで上げることに成功した(ちなみに、ファーストパーソン・シューティングゲームにおいてフレームレートは最低30は必要)。しかし開発が長引いたのか、スポンサーのアイドスはIon Stormに2500万ドルもの大金を融資し、Ion Stormと揉めていた。アイドスはDominionの失敗も兼ねてIon Stormの株を強引に取得し、Ion Stormを傘下においた。そしてDominionの失敗や、数々のスキャンダル(電子メールによる内部告発。ポーターが放漫な態度で開発者を見下していたり、自分の地位を自慢したり、Dominionや大刀の売り上げ本数の安易な予想をしたりしたこと)を踏まえてポーターともう一人“Jerry O'Flaherty”という人物(社内の軋轢を生んだ元凶と思われる人物)を解雇した。
1999年の12月17日には大体完成はしていた。なのであとは数々のバグや、サイドキックの人工知能の修正、バランス調整などの補修のみとなった。しかし、それらの補修は当時のスタッフのレベルでは容易に修復することが困難であった。しかしアイドスの圧力が掛かり、すぐに発表せざるを得ない状況まで追い込まれていた。そして2000年4月21日に、大刀は正式なデモ版を発表、5月23日に製品版を発表した。
[編集] Deus Ex
1997年当時、ロメロは多額な資金を蓄えていたため大刀の製作の他に、新たにデザイナーやプログラマーを雇うことにも専念していた。そしてその中に、かつてSystem Shock 2を開発し大ヒットを飛ばした、Looking Glass Studioのウォーレン・スペクター(Warren Spector)がいた。彼はLooking Glassの解散後、新たに小さな会社を立ち上げてスポンサーを探していたが、ロメロの出した好条件をのみ、Ion Stormの一社員となった。しかし彼は華やかなダラスの高層ビルとは距離を置き、オースチンの支社で活動することを決めた。その後、彼は93年頃から構想を抱いていたDeus Exの開発に取り掛かる。
やがて大刀が発表され、その約一ヵ月後にDeus Exも発表された。発売日がほぼ同じ時期で、しかも同じ制作会社ということもあってか、数々のメディアでどちらのゲームが良いゲームかといった比較がなされた。
初期は宣伝効果もあってか、大刀が話題沸騰していたが、その酷評と共に話題は無くなり、逆に優れたゲームシステムを導入したDeus Exが持ち上げられ、数々の賞を受賞した。そのせいか、当時は「2000年における史上最高の作品と史上最低の作品が同じ会社からリリースされた」と話題を呼んだ。
[編集] OSとビデオカード
この大刀、Quake IIエンジンを改造して作られてはいるものの、Quake IIのそれとは違い結構動かないというケースが多く見られる。
[編集] OS
Windows 95、Windows 98(SE)対応。メディアによれば一応はWindows 2000、Windows Meまでは動くようである。しかしWindows XPに関しては動く保証がなされてはおらず、動いたり動かなかったりといった状況である。Quake IIであれば対応OSは32ビットWindowsの全てのOSで動作するのだが、大刀はそうではないようだ。
[編集] ビデオカード
大刀はQuake IIエンジンを使用しているため、OpenGL対応ドライバ若しくは3dfx対応ドライバが動かすのに必須。しかしQuake IIの場合、たとえどちらのドライバに対応していなくてもソフトウェアモードで動かせるのだが、大刀はソフトウェアモードでは動かせない。また大刀が発売された当初は、3dfxは基本的に非対応になっており、対応させるには設定ファイルなどを書き換えるなどして手動で対応させなくてはならなかった(1.1パッチを適用すれば、メニューから選択可能)。現在では3dfxドライバは殆ど使われておらず、このゲームを動かす際はパソコンがOpenGLドライバ対応になってることが望ましい。しかし既にOpenGLドライバの普及率も低下しつつあるので、OpenGL非対応のパソコンが少なからずあるゆえに動かせないという可能性がある。
[編集] ニンテンドウ64及びゲームボーイカラー
ニンテンドウ64版に関しては、Windows版同様ファーストパーソン・シューティングであるが、Windows版でかなりの問題を抱えていたサイドキックのシステムを排除し、バグを全て除去し、メモリ制限でマップを短くしたものである。グラフィックの解像度は酷く、後に発売された拡張パックを導入しなければ人の顔などの見分けがつかないほどである。それゆえメディアの評価も良くなく、数々のゲーム進行における問題を抱えていたWindows版よりも低いところが多い。
ゲームボーイカラー版は、見下ろし型ロールプレイングゲームの形がとられている。ゲームボーイカラー版に関しては評価は普通で、あまり批判などは受けなかった。後にロメロのサイトでエミュレータ及びゲームデータのロムが配布されている(外部リンクの“ジョン・ロメロの大刀のサイト”参照)。
いずれもコトブキシステムが移植・製作を担当している。
[編集] 登場人物
- ヒロ・ミヤモト
このゲームの主人公。2455年の京都で剣術道場を開き、日々剣の修行をしている。剣だけではなく、銃火器の扱いにも長けている。トシロウ・エビハラに頼まれ、大刀とミキコ・エビハラを救出するためカゲ・ミシマの要塞へと向かう。
- ミキコ・エビハラ
トシロウ・エビハラの娘。トシロウから真実を聞かされ、大刀を取り返しに基地へと潜入するがあえなく拘束される。やがてヒロに助け出され共に行動するようになる。サイドキックの一人。
- スーパーフライ・ジョンソン
かつてはカゲ・ミシマの要塞で警備員として働いていたが、カゲ・ミシマの放漫な態度に嫌気が差し蜂起する。しかしそれは失敗し、やむなく拷問にかけられる。後にヒロに助けられ、共に行動するようになる。サイドキックの一人。
- カゲ・ミシマ
かつてトシロウ・エビハラが得た名声を、大刀を奪ってその時空を超える能力を駆使して歴史をすり替え、現在は彼が富と名誉を我が物にしている。これはかつて戦国時代の復讐も兼ねている。
- トシロウ・エビハラ
カゲ・ミシマに名声を奪われ、更に疫病にかかりワクチンも手に入らず、もはや死を待つだけとなってしまった哀れな老人。ヒロに希望を託すが、それがカゲに知られあえなく暗殺される。
- ミヤモト・ウサギ
かつて戦国時代に将軍ミシマ・オオサカに命令され大刀を鍛え上げた人物。後に大刀をエビハラ一族に託しオオサカを撃破するものの、エビハラ一族の裏切りに遭い大刀を奪い返すがあえなく殺されてしまう。それから何百年の時を隔てて、要塞に乗り込むヒロの前に亡霊として現れ、何かとアドバイスをする。
- ミシマ・オオサカ
戦国時代に巨大な勢力を誇った将軍。エビハラ一族が勢力拡大の癌になるためウサギに大刀を作らせるが、ウサギの裏切りに遭いエビハラ一族に破れ死亡。
- エビハラ・インシロウ
戦国時代、巨大な勢力を誇る武将、ミシマ・オオサカに唯一楯突いた武将。ウサギの作った大刀を借り、少数の部隊でオオサカの軍を破り天下を統一する。大刀は最初ウサギに返すつもりが、その秘められた力に魅了されウサギに大刀を返さなくなり、それに怒りを覚えたウサギによって大刀を取り返され、火口に投げ捨てられてしまう。
[編集] 武器
武器は全部で25種類用意されているが、それらは各エピソードにそれぞれ6~7個振り分けられ、他のエピソードでは使えない。またマルチプレイに関しても、その時代の武器が適用されるのでプレイ中は6~7個の武器しか使用出来ない。また武器には自爆するものが多数あり(25種のうち15種)、それによって自分やサイドキックにダメージが入り死にやすいというのがある。数々のレビューでもそのことが指摘され、武器のユニークさを狙ったはいいものの、それが裏目に出てしまった感がある。またロケットジャンプの出来る武器が多いので、トリッキーな動きで対戦する試合がよく見られる。
*印はサイドキックも装備出来る武器。
- 大刀
京都の終盤で手に入る、このゲームの主役とも言える宝刀。この武器はレベルが設定されていて、使えば使うほどその大刀に経験値が振り込まれ、より強力になり振りも速くなる。ただし、その場合は自分に経験値が入らないので注意。
- レベル2:剣の周りが弱い青色に光る。
- レベル3:剣の周りが強い青色に光る。
- レベル4:剣の刃が白色の光を帯びる。
- レベル5:剣が青色っぽくなり、全ての光が強調される。
[編集] 京都
- Disruptor Glove
素手で殴る攻撃。弾無し。EMP(電磁パルス)効果が付き、ロボット系に若干ながら高いダメージを与える。また、あるアイテムにより一時的に攻撃力を増大させることも出来る(時間制限制)。弱点は普通の敵に弱いことと、攻撃範囲が狭いこと。
- *Ion Blaster
名前からしてプラズマを発射する武器。発射された緑色の弾は壁で跳ね返り、それを利用して敵を物陰から攻撃するという方法も可。ただし、壁の正面で撃ったり水中で撃つと自爆する。尚、水中での爆発で敵にダメージを与えられるが、攻撃力は低い。連射が効き、弾数も豊富。
- C4 Vizatergo
設置型グレネードランチャー。撃つとプラスチック爆弾が目標点に張り付き、動くものが近づくと爆発する。動くものとは敵のみならず主人公やサイドキックも含まれ、当然ダメージも受ける。また、貼り付けた後でC4 Vizatergoの割り当てられている武器のキーを押して爆破することも出来る。
- *Shotcycler-6
6連射式ベルトアクションショットガン。撃つ時少々間が空き、それから一気に6回弾を撃ち出す。この武器は撃つと反動が来るので、大きくジャンプする際に利用することも一応可能である。
- Sidewinder
2連装小型ロケットランチャー。撃つと2本のロケットが螺旋を描くようにして飛んでいく。攻撃力は高く装填速度が速いが、サイドキックが爆風に巻き込まれる可能性があるので注意して使う必要がある。尚、2本同時に発射するので当然弾は一回につき2発消費する。
- Shockwave
巨大な弾を放つ大砲。撃つと青い弾が放物線を描いて飛び、一定の時間になると青い衝撃波を出して範囲内の動くものを全て一撃で消滅させる。この衝撃波は範囲がかなり広いので、サイドキックがいる場合はおそらく使うことが出来ないであろう武器。
[編集] ギリシャ
- *Discus of Daedalus
円盤型ブーメランで、10枚まで所持が可能。投げると敵に当たるか、一定の距離に達すると自分の手元に戻ってくる。また、接近戦では斬り攻撃になる。攻撃力はさほど高くないが、連射がそこそこ早い。サイドキックに持たせれば、弾の心配をしなくて済むようになる。
- *Venomous
先端に蛇の頭が二つくっついた武器で、緑色の毒の弾弧を描くようにしてを発射する。これは相手を毒状態にし、暫くの間ダメージを与え続けられるが攻撃力は低い。また自爆の概念もあるので、当然自爆した場合は自分が毒状態になる。ちなみに近距離戦では蛇が敵に噛み付いて攻撃をする。弾も比較的豊富。
- Sunflare
火炎瓶。投げると周囲に炎が散り、範囲内の敵に攻撃をする。ただし炎は燃え移らず、炎が存在する場所しか攻撃判定が無いのでそこを抜けられたらダメージを与えられない。直撃させれば結構なダメージを与えられる。ちなみに、自分が炎のある場所に入ると当然ダメージを受ける。
- Hades Hummer
巨大な金槌。地面に叩きつけ、その地響きによる衝撃波で敵を攻撃する。攻撃力は高く、無限に使えるのだが自分にもダメージが入るので実質無限には使えない。また、この武器でしか倒せない敵が存在する。
- Poseidon's Trident
ポセイドンの三又槍をモチーフにした武器で、撃つと青いエネルギー散弾を発射する。これは爆発の判定があり、敵をまとめて攻撃できるという利点があるが、近距離で攻撃すると自爆するという欠点を兼ねている。連射もそこそこ効き、攻撃力も高いのでメイン武器になりやすい。
- Eye of Zeus
敵を自動で感知し、稲妻を直撃させて一発で葬り去る武器。敵が大量にいる場合、一回の攻撃でその全てにダメージを与えることも可。ただし、周りに敵がいなければ自分に落雷し、場合によっては死亡する。後半からまとめて弾が置いてあることが多いが、ストック数が少ないのであまり意味が無い。
[編集] ノルウェー
- *Silver Claw
近距離専用の鋭い爪を持った手袋。攻撃力は高い。また、ある敵に止めを刺す際に使う。サイドキックではスーパーフライ・ジョンソンのみ装備可。
- *Bolter
小型ボウガン。攻撃力は比較的低いものの、連射が利き弾速が速いのでかなり使いがてがいい武器。弾も豊富だが、低攻撃力の武器では少ない方。
- Ballista
大型の爆発性ボウガン。連射は利かないものの、攻撃力が高く爆発する。当然近距離で攻撃すれば自爆するが、反動もあるためロケットジャンプとして使うことも可。
- Stavro's Steve
赤い宝石が埋め込まれている杖で、撃つと爆発性の火炎弾を発射する。火炎弾は壁などにぶつかると、いくつかの破片になって四方八方に散る。弾速は遅いが、攻撃力と弾の大きさに優れているので、大量の敵を相手にする際に役立つ。弾速が遅いゆえに自爆する傾向が若干強い。
- Wyndrax's Wisp
撃つと電撃弾を発射する杖で、当たった敵はダメージを一定時間受けると共に身動きが取れなくなる。敵の身動きが取れない間に他の武器で攻撃するという手もある。
- Nharre's Nightmare
これは一定の量の敵を倒すと使えるようになる武器で、使用すると円陣を描き魔物が召喚され周囲の敵味方を関係無く攻撃する。その攻撃力は凄まじく、サイドキックがその攻撃を受ければ致命的なのであまり使えない武器。また経験値も入らない上、魔物召喚時にほかの武器に変えてしまうと魔物は消えてしまう。魔物召喚時も相当隙がある。
[編集] サンフランシスコ
- *Colt2020
ハンドガン。攻撃力は低いものの、飛距離、正確さ、連射性、弾速に優れ弾も豊富に手に入る。
- *Slugger
グレネードランチャー付ショットガン。サイドキックはショットガンの機能のみ使用可。切り替えは割り当てられている武器のキーで行う。ショットガンは近距離において攻撃が強く、グレネードランチャーは目標点に素早くグレネード弾を発射する。当然グレネードで自爆する場合もある。グレネードは直接当てなければ、バウンドして爆発する。
- Kineticore
分子の振動を停止させた冷凍弾を3発ずつ発射。これはIon Blaster同様壁に跳ね返るので、同様にして攻撃することも可。当たった敵は“凍え”状態になり、一定時間ダメージを受けるが、自分に当たると同じように凍え状態になりダメージを受けることになる。
- *Ripgun
ドラムロール式多銃身マシンガンで、チェインガンとも呼ばれる。トリガーを引くと銃身が高速回転をし、大量の弾を乱射する。そのため弾の消費が激しいが、攻撃力が高くすぐ着弾するのでかなり使える。発射時や連射時の隙が無いので、ある意味真の最強兵器。
- Novabeam
巨大なビーム発射装置で、肩に背負って装備する。撃つと強力なオレンジ色のビームを発射し(粒子線?)、どんな距離の敵でも攻撃することが出来る。強力ではあるがエネルギーの消費が激しいため、乱射することはあまり出来ない。また照射し続けることは出来ず、一定の間隔で攻撃が空くので隙が多い。
- Metameser
小型固定砲台で、仕掛けて敵が近づくと攻撃力の低いビームを発射する。一定時間が過ぎると、ビームを乱射し始め、最終的に自爆する。
[編集] サイドキック
サイドキックは、プレイヤーが命令するためのボタンを押すと、そのボタンの命令に沿って動く。
[編集] 命令コマンド一覧
- Come
文字通りついて来させる。敵に遭遇した場合は戦ってくれる。
- Get
アイテムなどを取らせる。弾薬やライフはプレイヤーが面倒を見なければならないので、サイドキックの弾が切れたり死にそうだと感じたら、弾薬や回復アイテムを取らせなければならない。
- Attack
カーソルで指定した敵を攻撃させる。
- Stay
その場に留まらせる。サイドキックはやたら死に易いので、敵から見えないところに留まらせて、その間に自分で敵を片付けるということが出来る。
- Backoff
サイドキックを自分の後ろに下がらせる。サイドキックはプレイヤーの向きを基準にしているので、命令した後プレイヤーが敵に背を向けると、サイドキックが敵に攻撃しに向かってしまうので注意。
基本的に使うコマンドは“Come”“Get”“Stay”の3つだけという意見が多い。他のコマンドを用いた場合、かなりのリスクが伴うということで。また、用意された難所は軽々と潜り抜けてくれるものの、少しの段差で通れない等の事象が発生した場合、命令が度々効かなくなる。更に敵に遭遇した場合、弾薬の数を考えず乱射するので弾切れを起こしやすい。