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日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(にほんこくとアメリカがっしゅうこくとのあいだのそうごきょうりょくおよびあんぜんほしょうじょうやく、:Treaty of Mutual Cooperation and Security between the United States and Japan)は、日本アメリカ合衆国安全保障のため、日本にアメリカ軍(在日米軍)を駐留することなどを定めた二国間条約のことである。1960年昭和35年)1月19日に、ワシントンD.C.で締結された。

新安保条約、(新)日米安全保障条約日米相互協力及び安全保障条約などと通称されることも多い。

1951年9月8日に日米間で締結された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧安保条約、旧日米安全保障条約)を改定したものである。

目次

[編集] 概説

1951年9月8日、米国のサンフランシスコ市において、米国をはじめとする第二次世界大戦の連合国側49ヶ国との間で、日本国との平和条約(サンフランシスコ平和条約)が締結された。この際、主席全権委員であった吉田茂内閣総理大臣が単独で、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧安保条約)に署名した。この条約に基づき、日本を占領していたアメリカ軍在日アメリカ軍(在日米軍)となり、占領が解かれ他の連合軍(主にイギリス軍)部隊が撤収した後も日本に留まった。

旧安保条約は、1960年に改定された。この改定された条約が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(新安保条約)である。1月19日に署名され、同年6月23日に発効した。新安保条約はその期限を10年とし、以後は1年前の予告により一方的に破棄出来ると定めた。締結後10年が経過した1970年(昭和45年)以後も破棄されず、現在も効力を有している。

新安保条約は、同時に締結された日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)によりその細目を定めている。日米地位協定には、日本がアメリカ軍に施設や地域を提供する具体的な方法を定めるほか、その施設内での特権や税金の免除、兵士などへの裁判権などを定める。

[編集] 内容

第1条
国連憲章の武力不行使の原則を確認し、この条約が純粋に防衛的性格のものであることを宣明する。
第2条
自由主義を護持し、日米両国が諸分野において協力することを定める。
第3条
日米双方が、憲法の定めに従い、各自の防衛能力を維持発展させることを定める。
第4条
(イ)日米安保条約の実施に関して必要ある場合及び(ロ)我が国の安全又は極東の平和及び安全に対する脅威が生じた場合には、日米双方が随時協議する旨を定める。この協議の場として設定される安全保障協議委員会(日本側の外務大臣と防衛庁長官、米国側の国務長官と国防長官により構成(いわゆる「2+2」で構成)される会合)の他、通常の外交ルートも用いて、随時協議される。
第5条
前段は、米国の対日防衛義務を定める。後段は、国連憲章上、各国による自衛権の行使は、国連安全保障理事会が必要な措置をとるまでの暫時的性格の行為とされていることから、定められている。
第6条
在日米軍について定める。細目は日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)に定められる。
第7条、第8条、第9条
他の規定との効力関係、発効条件などを定める。
第10条
当初の10年の有効期間(固定期間)が経過した後は、1年前に予告することにより、一方的に廃棄できる旨を定める。いわゆる自動延長方式の定めであり、この破棄予告がない限り条約は存続する。

[編集] 議論

中立的な観点:この記事は、中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、あるいは議論中です。そのため、偏った観点によって記事が構成されている可能性があります。詳しくは、この記事のノートを参照してください。

[編集] 日米安全保障条約の本質の変化

日米安全保障条約は時代と共に本質を変化させて来た。条約締結時当初は、日本側の思惑として日本の国力が正常な状態になるまで軍事一切をアメリカに委任することで軍事的コストをなるべく安く抑え、経済成長に傾けるのが狙いであり米国の軍事的庇護下に置かれると言うのが事の本質であった。その後、冷戦期に入ると自動的に更新され続け、対ソ・対中軍事同盟へと性質を変えていった。

冷戦が崩壊すると、日本も敗戦の影響から脱し、経済大国になったことによって日米両国で日米安全保障条約の有効性と存在意義に疑問が生じた。しかし以前極東アジアでは冷戦が続いていると言う認識からアメリカの最先端軍事技術を欲する日本側と、日本へ武器を売却して軍事技術開発資金を得ようとするアメリカ側の利害が一致した事もあり、その性質は商業的な物へと変化していった。

2004年度の日本防衛白書では初めて中国の軍事力に対する警戒感を明記し、また米国の安全保障に関する議論でも、日本の対中警戒感に同調する動きが見られ、2005年ブッシュ大統領の外交に大きな影響を持つライス補佐官が中国に対する警戒感をにじませる発言をし、日米安全保障条約の本質は対中軍事同盟・トルコ以東地域への軍事プレゼンス維持の為の物へと変化して来ている。

[編集] 「アメリカ合衆国が日本国を防衛する必要はない」という解釈

第5条を根拠にして、アメリカ合衆国が日本国を防衛する必要がないとされるのではないかという解釈がある。

[編集] 根拠条文

ARTICLE NO.5
Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and security and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes.
第5条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

[編集] 解説

either Party in the territories under the administration of Japan とは、日本の行政管理下内での両国共ではなく、いずれかの国、すなわち日本の主権に対して治外法権を持つアメリカ合衆国の大使館、領事館とアメリカ合衆国軍事基地が一方のPartyであり、アメリカ合衆国の治外法権の施設を除いた部分の日本国の地区がもう一つのPartyであるという定義をすることもできる。

この定義に基づけば、それらのいずれか一方が自分にとって危険であると認識(recognizes) した時、共通の危機(common danger) に対処する。アメリカ合衆国軍の行動は、common dangerが対象であり、common dangerとは、日本国内のアメリカ合衆国の施設と、その他の部分の日本に共通の危機のことである。つまり、日本国内のアメリカ合衆国の施設(軍事基地等)とその周辺(日本の一部地区)に対する危機に限定されると考えることもできる。アメリカ合衆国軍が行動する場合は、アメリカ合衆国憲法に従わねばならないと条文で規定されている。また、アメリカ合衆国憲法では他国(日本など)のアメリカ合衆国軍基地が攻撃を受けた時は、自国が攻撃を受けたと見なされ自衛行動を許すが、他国(日本)の防衛を行う規定はない。

これらのことにから、日米安全保障では、日本国内におけるアメリカ合衆国の防衛を宣言しているとも考えられ、少なくともアメリカ合衆国は日本国内で行動をとることができる。日本にアメリカ合衆国軍基地があるために、日本を敵としないアメリカ合衆国の敵から、日本の一部地区に攻撃を受ける危険が生じることも考えられ、批判的な見方をすれば、この条約の性質は、対日危機保障条約であるということもできる。

ただし、下記に述べるように日米双方から「自分のほうが相手に巻き込まれるから不利」という意見は存在し、自国の主観で見るならば、どちらが正しいのかは答えの出しにくい問題である。現実として、長年に渡る日米双方の膨大な維持負担と実績を積んできたこと及び、日米安全保障条約に危機的に信頼を失墜させるほどの行為を日米両国共にとっていないことなどから、こう言った批判は長年少数派に留まっている。

[編集] アメリカ下院議会で日本側に有利過ぎると非難された日米安全保障条約

上記とは逆に、米国側からの「日本に有利すぎる」といった批判もあるのも事実である。

日米安全保障の本質が時代と共に変化しているが、条約部分に決定的な変化は無い。また日米安全保障条約は、日本側が正常な軍事力を持つまで……として締結された経緯もあり、アメリカ側には日本を防衛する事を必要とされるが、日本側は必ずしもアメリカを防衛することは必要では無い状態になっている。これは日本側の憲法上の制約で、個別的自衛権の行使は日米両国共に可能だが、集団的自衛権の場合は日本は憲法に抵触する恐れがある。抵触するかどうかについては議論が続いており、結論は出ていない。この事実を日本の二重保険外交と解釈し、日本はアメリカに対する防衛責務を負っていないのに、アメリカから防衛されている状態ではアメリカの潜在的敵国と軍事的協調をとれる余地を残している、との批判が米議会にあったことも事実である。 また、アメリカ側は日本に対して集団的自衛権を行使出来ると明言しており、費用面からも、軍事的負担がアメリカ側に多いと、日米安全保障条約はアメリカで時として非難される。

だが実際の所、日米安全保障条約の信頼を失墜させるほどの行為は日米両国共にとっていないので、こう言った批判は、やはり米国でも少数派に留まっている。

[編集] 参考文献

  • 草野厚『日米安保とは何か』(PHP研究所)
  • 室山義正『日米安保体制』上下(有斐閣)
  • 日本国際政治学会編『日米安保体制-持続と変容』(有斐閣)
  • 西原正/土山実男編『日米同盟Q&A100』(亜紀書房)
  • 坂元一哉『日米同盟の絆』(有斐閣)
  • 岡崎久彦『戦略的思考とは何か』(中公新書)
  • 岡崎久彦『日米同盟と日本の戦略』(PHP研究所)
  • マイケル・グリーン他編『日米同盟 米国の戦略』(勁草書房)
  • 田久保忠衛『新しい日米同盟』(PHP新書)
  • 国際関係研究会『日米同盟の論理』(日本工業新聞社)
  • 山本皓一/松本利秋『軍事同盟・日米安保条約』(クレスト社)

[編集] 関連記事

[編集] 条約・機構

[編集] 事件・できごと

日米安保及び駐留米軍の違憲性をめぐる訴訟。最高裁判所統治行為論によって憲法判断を回避した。

[編集] その他

[編集] 外部リンク

Wikisource
ウィキソース日米安保条約の原文があります。
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