智頭急行HOT7000系気動車
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HOT7000系気動車(HOT7000けいきどうしゃ)は、智頭急行の特急形気動車。
形式称号のHOTとは、智頭急行の沿線である「Hyogo=兵庫県」「Okayama=岡山県」「Tottori=鳥取県」3県のローマ字を意味している。なお、東海道本線・山陽本線・因美線・山陰本線に乗り入れる運用上の都合から実際の車両管理は西日本旅客鉄道(JR西日本)に委託されており、同社の鳥取鉄道部西鳥取車両支部(米トリ)の配置となっている。
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[編集] 概要
以下の6形式がある。HOT7050形はグリーン・普通合造車、その他は普通車である。先頭車にはトイレは付いていない。
- HOT7000形(Mc1):7001~7005
- 京都方非貫通形先頭普通車。
- HOT7010形(Mc1'):7011~7015
- 鳥取・倉吉方非貫通形先頭普通車。
- HOT7020形(Mc2):7021~7023
- 貫通形先頭普通車。この車両のみ方向転換可能。コンパートメント付き。
- HOT7030形(M1):7031~7037
- 中間普通車。和式トイレ付き。
- HOT7040形(M2):7041~7048
- 中間普通車。バリアフリー対応洋式トイレ付き。
- HOT7050形(Mhs):7051~7056
- 中間グリーン・普通合造車。バリアフリー対応洋式トイレ付き。
中国山地を通過する智頭急行智頭線・因美線においては、山岳路線ゆえに急勾配・急カーブが続く。この高速運転に不適な条件を克服するため開発された、振り子機構装備の高速気動車である。
気動車における振り子機構は、エンジンから台車への動力伝達によって生ずる反作用から困難とされてきたが、2基のエンジン(コマツ製SA6D125H(355PS/2000rpm))を対称に配置して回転力を相殺させることで反作用を打ち消し、またカーブ進入時には、遠心力による自然車体傾斜に先行して機械的に車体傾斜を生じさせ、乗り心地の改善を図る「制御付自然振子方式」を採用した。これらの特徴は先行して登場していたJR四国2000系に準拠したものである。なお、2000系と異なり、出入口は片側1箇所である。
現在の営業最高速度は130km/hであるが、ブレーキの改良により将来の160km/h化に対応した設計となっている。
最高130km/hでの高速運転を行うため、エンジン1基の出力は355HPと強力である。前述の反作用抑制のため、全車が2基エンジン搭載車である。
当初の車両は普通車のみであったが、1997年にはグリーン・普通合造車が登場した。
HOT7000系は、2003年までにHOT7000形(Mc1)5両、HOT7010形(Mc1')5両、HOT7020形(Mc2)3両、HOT7030形(M1)7両、HOT7040形(M2)8両、HOT7050形(Mhs)6両の計34両が富士重工業(現在は新潟トランシス)で製造されている。
通常は、1号車から順にMc1' - M1 - M2 - Mhs - Mc1の5両編成で、Mc1・Mc1'・M1の代わりにMc2が組み込まれることがある。また、多客時は2号車と3号車の間に増2号車としてMc2・M1・M2のいずれかが組み込まれて6両編成となる。それでも、京阪神に発着する他の主要幹線特急よりも編成両数が短いため、常時混雑することが多い。初期は7両編成で走ることもあったが郡家駅の有効長の関係で中止されている。
なお、鳥取駅で行われた車両展示会では1号車から順にMc1' - M1 - M1 - M2 - M2 - M2 - Mhs - Mc1の8両編成となったことがある。(4号車は反転)
[編集] 経過
1994年12月3日、智頭急行線開業に伴い、「スーパーはくと」で運用開始。車両不足のため、同じ区間にはキハ181系を用いる「はくと」が運転された。
運転開始早々の1995年1月、阪神・淡路大震災が発生、山陽本線は神戸地区で不通となった。これに際してHOT7000系は姫路駅~福知山駅間の振替輸送列車に運用された。山陽本線の復旧後は「スーパーはくと」運用に復帰し、その俊足から利用者の好評を得て鳥取への最速ルートを担う列車としての評価を確立した。
その後増備車の竣工に伴い、従来キハ181系により運行されていた「はくと」を順次置き換え、現在は関西-鳥取間特急の全てが本系列による「スーパーはくと」となっている。
今後、2007年~2009年にリニューアル工事(先頭車の車販準備室を喫煙ブースに改造、同時に客室内を全面禁煙化等)を行う予定。
[編集] 車内サービス
先頭車両にテレビカメラを設置し、客室の前後端にある液晶モニターに映像を映し出している。振り子を利かして走行している時には、画面に映った線路脇の電柱の傾きが速度感をさらにアップする。先頭車と自分の乗車車のずれがよく分かり興味深い。
京都方に指定席喫煙車輌を、鳥取方に自由席喫煙車輌をそれぞれ設定しているため、HOT7000系の売りである前面(後面)展望については、子供や嫌煙者には利用しづらい(紫煙を我慢する必要がある)。
HOT7000は、スタイルや走行性能は高い水準にあるが、欠点として、特急用車両としては客室内のエンジン騒音が比較的大きいことが挙げられる。
[編集] 外部リンク
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