月の石
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月の石は月で生成された石。「月の石」という呼称は厳密なものでは無く、月面探索中に収集された他の物質についても用いられる。
現在地球上には以下3種類のソースから採集された月の石が存在する。
2,415サンプル(総重量382kg)が主にアポロ15, 16, 17号によって、6度のアポロ計画による月面探索中に採集された。3機のルナ計画宇宙探査機は更に326gのサンプルを持ち帰った。2006年後期において月から飛来した隕石は90以上(総重量30kg以上)確認されている。
アポロ計画において、月の石はハンマー、レーキ、スコップ、トング、コアチューブといった様々な道具を使って採集された。石の殆どは採集前に発見された時点の状態を写真に記録された。石は採集時にサンプル袋にいったん入れられ、それから汚染を防ぐための特別環境試料容器に格納され、地球へ持ち帰られた。
月面探索 計画 |
採集 サンプル |
---|---|
アポロ11号 | 22 kg |
アポロ12号 | 34 kg |
アポロ14号 | 43 kg |
アポロ15号 | 77 kg |
アポロ16号 | 95 kg |
アポロ17号 | 111 kg |
ルナ16号 | 101 g |
ルナ20号 | 55 g |
ルナ24号 | 170 g |
放射性年代測定法によると、一般に月の石は地球上の石に比べ遥かに古く、最も新しいものでも地球上に見られる最古の石より古い。その年代は月の海から採集された玄武岩サンプルの32億歳から高原地帯で採集されたものの46億歳と幅広く、太陽系生成早期に遡るサンプル資料となる。月の石は地球上の石と特に酸素同位体含有量において非常に良く似た性質を持つ。しかしながら、月の石は地球の岩石と比較して、鉄の含有量が少なく、カリウム、ナトリウムといった揮発性元素に乏しく、また、水分を全く含まない。
月面で発見された新物質には、アポロ11号に搭乗していた3名の宇宙飛行士の、アームストロング、オルドリン、そしてコリンズにちなんで名づけられたアーマルコライトがある。
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アポロ計画によって持ち帰られた月の石の主な貯蔵庫はテキサス州ヒューストンのリンドンB.ジョンソン宇宙センター内、月面資料館にある。安全の為に、テキサス州サンアントニオにあるブルックス空軍基地にも少量の資料が保管してある。殆どの石は湿度を遮断する為に窒素の中に保存してあり、取り扱いは特殊なツールを介して行われる。
月面探索の際に採集された月の石は現在のところ非常に貴重なものとされており、1993年にルナ16号から採取されたおよそ0.2gの小断片がUS$442,500で売却され、2002年には月面資料館から極めて微小な月と火星の岩石資料が入った保管庫が盗まれた。これらの資料は後に回収されたが、2003年にNASAが訴訟の為にこれらの価値を算出したところ、285gに対しておよそ100万ドルの査定額がつけられた。月から飛来した隕石については高額ではあるが、個人収集家の間で広く取引されている。
日本では、1970年の大阪万博においてアメリカ館で実物が展示され人気を博した。あまりにも反響が大きすぎた為、入館待ち行列・時間が長くなり体調を崩す来場客が相次ぎ、事態を重く見た日本政府が、万博開催前に政府間レベルの友好の証しとしてアメリカ政府から寄贈されていた月の石(但し、体積はアメリカ館で展示されていた物より遥かに小さい)の日本館展示を会期途中から始め、アメリカ館関係者から不満・苦情を寄せられたという話もある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Apollo Geology Tool Catalog
- 月由来の隕石; Washington University, Department of Earth and Planetary Sciences
- 大阪万博の月の石