松田隆智
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松田 隆智(まつだりゅうち、1939年月日stub-)は、 愛知県出身の中国武術家・研究家。本名は松田鉦(まつだまさし)。 「隆智」は真言宗東寺派僧侶としての法名。 台湾武壇の著名武術家蘇昱彰に拝師し(内弟子となること)、後に中国本土で通備門の馬賢達に拝師。自身の武術遍歴をもとにした自伝『謎の拳法を求めて』を著し、それが後年、中国武術漫画『拳児』の原作となり大ヒットした。
剛柔流空手(極真会館の前身であった大山道場にも在籍。後に国際空手道連盟から三段位を授与。)、新陰流剣術、大東流合気柔術、八光流柔術(五段師範)や佐藤金兵衛から学ぶなどの武道遍歴を重ねた後、中国武術を知り、本場の台湾・中国大陸に渡って修行を積む。
中国伝来の体技といえば少林寺拳法あるいは健康法の太極拳程度の認識が一般的だった時代の日本に、陳家太極拳、蟷螂拳、八極拳などの中国武術を本格的に紹介し、腕力と体の大きいものが勝つ力道になりつつあった日本武道を原点回帰させようとした功績は大きい。
松田が少林拳という専門用語とその概念を著書等で初めて日本に紹介したことが、「少林寺拳法」が日本独自の武道であるという立場を明らかにする切っ掛けになったのではないかとの説がある。ただし、「少林寺拳法」は中国拳法そのままではなく、多様な武術に新しい工夫を加味していることは以前から公表されている。
厳密にいえば日本人への中国武術の本格的な教授については、松田に台湾の武術家を紹介したことで知られる佐藤金兵衛とその師の王樹金や、その他の在日・来日の中国人武術家たちによる指導貢献が大であるが、松田は真正武術家は自己の組織の営業、組織的発展は関心を持たず、修行に励むとの立場を取った。
また入会すれば誰でも習える日本の近代武道とは異なり、師から素質と修練を認められ、選ばれて初めて本質が学べるという中国独特の拝師制度(中国武術の内弟子制度)をはじめて紹介し、「体育会系武道部」の一部にみられる粗暴、バンカラ、根性主義に嫌悪感を持つ武術に関心の薄かった「知識層(行動する前に読書し、思考してから行動するタイプの意味)」を武術へ参加させたという点で功績大と言える。
松田以前は中国拳法という言葉も一般的でなくブルース・リーについても、「なんだかわからないが凄いアクションスターの出現」よくて「中国空手の達人」という紹介であったが、松田が映画雑誌に「ブルース・リー」が正統な詠春拳門人であること、リーが寸剄を1インチパンチとして空手大会で実演したことなど、を紹介した。
大山倍達、蘇昱彰、佐川幸義、金澤弘和など著名な達人たちと直接の親交があったことでも知られる。
松田の一連の著作発表を契機として同じ頃競うように佐藤金兵衛、笠尾恭二らも相次いで著作を発表し次第に日本国内において中国拳法という言葉が定着していった。これらの著作に影響を受け、台湾さらに日中国交回復後の中国大陸で学んだ者たちにより大衆化が進んでいった。この点で松田はまさにパイオニアと言ってよいだろう。
ただし、中国武術の一般への紹介者としての松田の影響が大きかったことは多くの者が認めているが、武術は危険な技術であり試合はできないとの立場から、公式大会への出場記録はなく、武術家としての実力は不明であるとする見方もある。松田が原作の漫画『拳児』によって広く宣伝し構築した「李書文の最強神話」など、紹介の仕方への偏りや意図的な情報操作があったのではないかと指摘する批判の声もある。
松田の著書『図説中国武術史』において、李書文の弟子であると紹介された馬鳳図、韓化臣、張玉衛などの歴史的な達人たちは、何れも李書文の弟子では無い。また同書では八極拳の正統は李書文にあるとされ、後年、松田が積極的な交流を持つ八極拳の宗家である呉氏開門八極拳については、全く記述されていないが、これは『図説中国武術史』の初版が1976年であり松田が大陸の武術家との本格的交流を行う以前であるためである(1998年版でも訂正されていない)。
松田と言えば中国拳法の紹介者のイメージが強いが、もうひとつ日本古武術の紹介者としての功績も大である。 元来柔道や剣道、空手は学校のクラブや地元の道場、警察等で比較的簡単に学べるが、古武術は個人的、地域的な縁故がなければその存在すら知り得ない。松田自身は日本古武術を継続して稽古した訳ではないが、『秘伝 日本柔術』『謎の拳法を求めて』で日本の古武術の存在を知らしめた功績は大であり「なにも中国に学ばずとも日本にも優れた武術がある。」との考えで日本に踏みとどまり「日本の武道を原点回帰」させようとした人々にも勇気を与えたといえよう。
[編集] メディア、映像資料など
[編集] 主な著作
- 『図説中国武術史』 初版新人物往来社のちの復刻版は壮神社
- 『秘伝 日本柔術』 新人物往来社
- 『中国武術』 新人物往来社
- 『丈夫な体をつくる東洋の秘法』 佼成出版社
- 『タフな体をつくる中国の秘術』 佼成出版社
- 『少林拳入門』 産報
- 『太極拳入門』 産報
- 『中国拳法 形意拳入門』 日東書院
- 『謎の拳法を求めて』 東京新聞出版局
- 『松田隆智の拳遊記』 BABジャパン
- 『写真でわかる実戦中国拳法』 新星出版社