紫禁城の黄昏
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『紫禁城の黄昏』(しきんじょうのたそがれ、Twilight in the Forbidden City)は、イギリスの中国学者で清朝最後の皇帝溥儀の家庭教師を務めたレジナルド・ジョンストンの著書(ヴィクター・ゴランツ社出版:1934年3月)。清朝皇帝溥儀の生涯を描いた映画『ラストエンペラー』(The Last Emperor)(1987年公開)の原作。
日本語版は、第1章から第10章・第16章と序章の一部が未収録となっている岩波文庫版(入江曜子・春名徹訳/ISBN 4003344812:1989年2月)、全26章が完全収録されている祥伝社版(中山理訳・渡部昇一監修/ISBN 4396650329:2005年3月)、同じく全26章が完全収録されている本の風景社版(岩倉光輝訳/ISBN 4939154041:2007年2月)がある。また、1934年7月に大樹社書房から出版された『禁苑の黎明』(荒木武行訳)と1935年1月に関東玄洋社から出版された『禁城の熹光―満洲国皇帝陛下御生立記』(非売品)がある。
岩波文庫版のあとがきで訳者は「主観的な色彩の強い前史的部分である第一~十章と第十六章『王政復古派の希望と夢』を省き、また序章の一部を省略した」と述べている。
祥伝社版の出版社 /著者からの内容紹介では 「戦前のシナと満洲、日本の関係を知る第一級資料の完全訳。『東京裁判』と『岩波文庫』が封殺した歴史の真実を明らかにするために岩波文庫版未収録章を含む原著全26章を完全収録した完訳版を発行した」と述べている。
岩波版で省略された章には、当時の中国人が共和制を望んでおらず清朝を認めていたこと、満州が清朝の故郷であること、帝位を追われた皇帝(溥儀)が日本を頼り日本が助けたこと、皇帝が満州国皇帝になるのは自然なこと、などの内容が書かれている。
岩波文庫版が、「主観的な色彩の強い」として原著の重要部分を省いたことは、原作者に対する著作者人格権の侵害にあたるという意見もある。
本の風景社版には、1934年12月に発行された第4刷には①扇の写真の差替え、②康有為の亡命先に関する記述、③馮玉祥に監禁された曹錕に関する記述、④梁啓超の言葉に対して「私はその提言に従って本書を執筆した」という一文の挿入などの修正が加えられている、という旨の記述があるが、岩波文庫版の凡例には、「訳者たちが依拠した国会図書館の蔵本は一九三四年十二月の第四刷であるが、第四刷への序文が加えられた他は、少数の誤植(主として中国音の表記法についての)を含めて初刷(同年三月)との異同はない模様である」とある。