表面伝導型電子放出素子ディスプレイ
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表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(ひょうめん でんどうがた でんし ほうしゅつ そし ディスプレイ、SED : Surface-conduction Electron-emitter Display)は電界放出ディスプレイ(FED)の一種。
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[編集] 概要
FEDはCRTと異なり各画素毎に電子放出部を持つ。通常のFEDではマイクロディップと呼ばれる先端を尖らせた電極とゲート電極との電位差によりマイクロディップ先端から電子を取り出す。これに対しSEDでは、超微粒子膜により作ったナノオーダーのスリット間に電圧をかけトンネル効果により電子を放出させる。そのため通常のFEDより低電圧で電子を取り出すことが可能である。放出された電子が蛍光体に衝突し蛍光を発することで画素を点灯させる。
薄型で大型また自発光で原理的にはCRTと同じである為、動画性能や暗部の階調表現力は液晶ディスプレイよりも良いと言われている。
蛍光体の部分は既存のブラウン管の技術がそのまま利用できるため、低コスト化も期待されている。また薄膜部分は印刷技術を応用して作ることができるため、大量生産にも向いていると考えられている。
[編集] 製品化への期待と苦難
キヤノンと東芝が製品化を目指し2004年には両者で合弁会社を設立した。当初は2005年内の生産開始と、2008年の北京オリンピック商戦へ向けての量産化を目指していた。
ブラウン管に比べて画質が劣る現世代の薄型テレビ(液晶テレビ・プラズマテレビ・リアプロジェクションテレビ)の特長とブラウン管に近い高画質を併せ持つため、次世代の薄型テレビ、高画質が求められる業務用のマスターモニター等の用途で期待を集めてきた。2006年10月に55V型・フルスペックハイビジョンの試作品が公開され、ブラウン管を超える画質と評価する向きもある。
しかし2005年頃から市場では液晶テレビ・プラズマテレビの価格下落と大型化が大方の予測を上回るペースで進み、SEDが十分な価格競争力で製品化されるのは難しい状況となった。さらに2007年に入って基幹技術の特許を持つ米国のNano-Proprietary社とキヤノンの間で訴訟問題が持ち上がり、キヤノンと東芝の合弁会社をキヤノンが100%子会社化する対策を取ったものの、裁判ではキヤノンに不利な判決が下った(最終的な決着はついていない)。
最初の製品は2007年の第4四半期(10~12月の間)に発売される予定であるが、特許問題に絡み量産ラインの建設に着手できない状態が続き、本格的な市場投入時期はさらに遅れる見通しである。
キヤノンにとってはテレビ事業への参入は悲願とされているが、東芝は次第にSEDへの熱が冷めてきたと見られている。当初はSEDのみで展開するとしてきた50V型以上の大型製品を2007年内に液晶テレビ(REGZA)で投入するとみられる(2006年末以降毎日新聞などが報道)。市場では2006年までに液晶テレビが大型製品へシフトしており東芝は出遅れた状態となった。また各社独自の技術で液晶テレビの画質面の問題が克服されつつある。このような薄型テレビをめぐる情勢の変化に伴い、SEDのインパクトは当初に比べて薄れてきた。
[編集] 経緯
- 1986年-キヤノンが薄型表示装置用の電子源開発に着手。
- 1996年-3.1インチの試作品をキヤノンが公開。
- 1999年6月15日-キヤノンと東芝が提携。
- 2004年9月14日-キヤノンと東芝が研究・生産の合弁会社SED株式会社設立を発表。この時36V型・1280×768ドットの試作品を展示。
- 2006年10月-55V型・1920×1080ドット(フルスペックハイビジョン)の試作品が公開。
- 2007年1月12日-キヤノンが東芝保有の全株を買い取り、完全子会社化を発表。
- 2007年第4四半期発売予定。
[編集] 関連項目
- ブラウン管(CRT)
- カーボンナノチューブ
- 電界放出ディスプレイ(FED)
- ハイビジョンブラウン管テレビ
- 液晶ディスプレイ
- 映像機器
[編集] 外部リンク
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