運転免許証
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運転免許証(うんてんめんきょしょう)とは、運転免許が交付されていることを示す公文書。運転に一定の技量が必要な機械装置や設備の運転許可を受けていることを示す。クレーンなどの建設機械やボイラーなどの産業設備の運転にも運転免許証が交付されるが、日本においては、自動車及び原動機付自転車の運転免許証を指すことが多く、この項ではそれらの運転免許証について述べる。
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[編集] 概要
顔写真付きの公文書で本人確認が可能であり、保有者が多いことなどから、国内では一般的な身分証明書として幅広く利用されている。そのため、偽造の対象になることがある。また、検問等により、指名手配犯などの犯罪捜査に利用されることがある。 大きさはクレジットカードやキャッシュカードとほぼ同じ、縦5.4cm×横8.56cmである。幾度かの変更を受け、現行サイズは平成6年5月施行の道路交通法一部改正により5年以内(平成11年5月)までの間(更新または再発行時)に小型化されたものである。
- 交付
日本の運転免許証は、原則として住民票(海外からの一時帰国者については例外あり。日本国籍を有しない者の場合は外国人登録原票)のある各都道府県の公安委員会の管轄下にある運転免許試験場等(一部の地域では警察署)で交付される(実際の業務は警視庁及び各道府県警察本部に委任されている)。
[編集] 免許の種類
[編集] 現行免許
- 第一種運転免許
- 第二種運転免許
- 大型自動車第二種免許(限定なし、マイクロバス限定)
- 普通自動車第二種免許(限定なし、AT車限定)
- 大型特殊自動車第二種免許(限定なし、カタピラ限定)
- 牽(けん)引第二種免許
免許の種類によっては、運転可能な車両の範囲に関する限定条件(「AT車限定」、「小型二輪限定」など)が付される場合がある。
[編集] 免許証上の表記順
大 型 |
普 通 |
大 特 |
大 自 二 |
普 自 二 |
小 特 |
原 付 |
け 引 |
大 二 |
普 二 |
大 特 二 |
け 引 二 |
- 原則として実際に取得した免許(法令改正の経過措置等により取得したものとみなされるものを含む)の文字が、上表の位置にそのまま(左詰めなどをせずに)表示される。
- 所持しない免許の枠内には、文字の代わりに中央の位置に「―」(ハイフォン)が表示される。
- 下位免許の取得を経ずに上位免許を取得(例:小特・原付を持たぬまま普通免許を取得)した場合は、その者の法的な運転可能範囲には下位免許の部分も当然含まれるが、下位免許自体の取得手続を経ていないため、免許証上の記載は当該上位免許だけが表示され下位免許の枠内の表示は「―」となる。
[編集] 更新期間
2002年(平成14年)6月1日施行の道路交通法改正で、運転免許証の更新期間は従来の誕生日前1か月間から、誕生日を挟んだ前後それぞれ1か月間(計2か月)になった。
[編集] ICカード免許証
2007年(平成19年)1月4日に東京都・埼玉県・茨城県・兵庫県・島根県の5都県でICチップ内蔵の運転免許証の交付を開始した。他の道府県でも2008年度末までに導入予定である。当初は2004年にも導入予定だったが、予算の関係で全国的に保留されていた。
ICカード免許証交付に際して、これまでの免許証と異なる点は以下の通りである。
- ICチップ封入の為、厚さが0.5mmから0.76mmとなる。
- 表面の本籍欄は個人情報の保護の為、空欄となり印字されないが、ICチップには本籍(日本国籍を有しない者はその国籍)の情報が記録されている。
- 取得・更新の際に数字4桁の暗証番号を2つ設定する。
- ICチップに記録されている「氏名」「生年月日」「免許証交付年月日」「有効期間」「免許の種類」「免許証番号」を読み取るためには、暗証番号1が必要である。
- 暗証番号1で読み取れる内容に加えて「本籍」「顔写真」を読み取るためには、暗証番号1と暗証番号2の両方が必要である。
- 暗証番号を3回続けて間違うとICチップに記録されている情報がロックされて読めなくなり、運転免許試験場・運転免許更新センター・警察署においてロックの解除を行う必要がある。
- 暗証番号を忘れた場合は免許証を持参して、運転免許試験場・運転免許更新センター・警察署へ申し出る。
- 暗証番号の変更は、次回の更新時まで不可。
- 免許証の交付費用にIC化のコストが上乗せされた。
- 中型自動車免許の新設に伴い「種類」の枠が「中型」「中二」と二つ増えたことにより、14種類となった。
画像は、ICカード免許証発行直後の為に「種類」の枠が、単純に二つ右側に追加された状態だが、 中型自動車免許が施行される2007年6月2日以降免許取得及び更新の際には「表記」の並び順が変わる。
[編集] 運転経歴証明書(ゼロ免許証)
運転免許証が身分証明書として広く用いられているのは先述の通りであるが、これ以外に写真付きの身分証明を持てない高齢者の増加を考慮し、免許の全部取り消し(免許証の自主的な返納のこと。免許の更新切れではない)をした人に対し、身分証明として使える運転経歴証明書(通称、ゼロ免許証)が発行されるようになった。ゼロ免許の由来は、昭和48年4月より発行されていた旧型サイズ(縦6.9cm×横9.7cm)の頃、免許された運転区分が免許有り(1)・なし(0)で表されていた事から、運転できる車両区分がないのは全てが0となる事から。当然、一部区分を取り消した場合は発行できず、全部取り消しをした場合に限られる。
交付は有効な運転免許を申請して取り消した人に限られ、期限が切れた免許証での申請はできない。また、運転免許を取得したことがない人は発行されない。
尚、ゼロ免許証交付後の住所・氏名等の記載事項の変更、及び紛失時の再交付はできない。その代わり、更新制度もない。勿論、過去免許されていた区分に関わらず、ゼロ免許証で自動車、オートバイ等を運転する事はできない。
これもICカード化される。一部には警察による顔貌データベース整備との批判もある。
[編集] 番号の属性
運転免許証番号のうち、先頭の2桁は最初に免許の交付を受けた都道府県を表し、次の2桁が初取得年(西暦)の下2桁である。最後の1桁は紛失・盗難等による再交付の有無を示す(受けていなければゼロになっている。更新や他区分の免許取得による免許証の代替わりはカウントされない)。交付年月日の次に記載されている番号は、交付日における連続番号(その日一日でその都道府県内で何人目に交付されたかが分かる。当日一緒に更新講習を受けた前後の人に見せてもらえれば続き番号になっているはず)。下1桁を除く11桁は、免許を取り消されて再取得するなどの事がない限り変わらず、また全国共通である。
番号に密かに意味を持たせ、犯罪歴や思想を記載するのではないかという懸念から審査請求が東京で起き、以後は意味が公開された。
道路交通法違反の免許停止処分は裏面に記載され、その処分前歴も警察庁交通局のデータベースに照会しなければ確認は出来ない。
[編集] 備考
運転免許証の大きさや厚さは全国共通だが、上記のとおり各都道府県公安委員会単位で発行されるため、各都道府県毎に印刷される公安委員会の公印や書体(フォント)をはじめ、氏名欄では氏名の始まる位置や文字間の空白の数等、記載事項には細かな点でいくつかの違いがある。また、これらの事項は定期的に変更される。
運転免許証が汎用性のある身分証明書として用いられているのは先述の通りであるが、運転免許証には性別の記載が無いため、性別を証明することはできない。従って、簡易保険の保険金請求など性別の証明が必要な手続きについては、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の施行日以前に契約したものを施行日以降に請求する場合に限り、運転免許証を身分証明書として用いる場合には「性別を証明する書類」を添付するか、事前に提示しておくことが必要になった。
なお、運転免許証は公文書であるので、偽造・変造・不実記載は文書偽造罪になるのはもとより、その顔写真に冗談で悪戯書きを・裏面の各種記載欄に落書きしたりするだけでも、同罪や文書等毀棄罪に問われる(成田空港近くで、検問中の空港警備隊員が、職務質問した空港反対派関係者の免許証に活動非難の意の落書きをした事が発覚、処分された)。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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