身分証明書
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身分証明書(みぶんしょうめいしょ)とは、社会一般で個人又は法人の身分を明らかにする為に使用される文書のことである。官公庁や学校・会社・団体など公的機関が発行する証明書等が利用される。
身分証明(本人確認)を求められる場合、一般には運転免許証やパスポート(旅券)・健康保険証・住民基本台帳カード(住基カード)など公的機関が発行する証明書で、氏名・住所・生年月日・性別・顔写真など個人を特定する情報が記載・貼付したものであれば、身分証明書として通用する。
企業・事業所が社員や出入り業者に対して発行するものには、キャッシュカードやクレジットカード同様、保有者情報記録用に磁気ストライプが張られ(2006年にはICカード方式が現れ始めた)、出入記録やタイムカードとしても使用出来る物がある。
なお、外国に出国した場合、パスポート(旅券)が公的かつ一番通用度の高い身分証明書となる。
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[編集] 日本
日本では身分を証明する際、運転免許証を筆頭に、主に下記に挙げる公的機関の発行する文書等が、身分証明書として社会一般的に使用されている。
- パスポート
- 住民基本台帳カード
- 健康保険被保険者証
- 年金手帳
- 身体障害者手帳
- 宅地建物取引主任者証
- 小型船舶操縦免許証
- 海技免状
- 電気工事士免状
- 無線従事者免許証
- 航空従事者技能証明書
- 危険物取扱者免状
- 猟銃・空気銃所持許可証
- 船員手帳
- 学生証(役所等での正式な証明書としては使えないことが多い)
- 外国人登録証明書(定住外国人が日本国内で身分証明を証明する際)
上述のような身分証明書を持たない人であれば、
などで代用できる場合もある。
どのような証明書を持参すべきかは証明する相手(契約する会社など)に指定されることが多く、指定外の証明書では受け付けてもらえない(運転免許証やパスポート、定住外国人の外国人登録証明書はまず問題なく通用するが、運転免許証以外の各種免許証・資格書や健康保険被保険者証、身体障害者手帳は通用しない場合がある)。最近は個人情報保護の観点から、運転免許証やパスポートはコピーを取らず、番号のみを控える場合も多くなっている。
一部では身分証明という言葉を避け、本人確認書類と言い換えをしている場合があるが、実際は上で言う身分証明書と同等の物を要求しており、呼称以外の差はないと考えられる。
[編集] 身分証明書の提示を求められる場合
日本では、主に次のような場面で、公的な身分証明書の提示が必要となる。
- 公的書類(戸籍抄本、住民票、パスポートなど)の交付を受ける場合
- 固定電話の新規開設
- 携帯電話やPHSの新規購入
- 預金口座の開設
- 不在時に郵便局で保管された郵便物(小包、書留など)を、郵便局で受け取る場合
- 忘れ物や落し物が発見された場合の受け取り
- 利用可能年齢以下とみられる利用者によるタバコやアルコール飲料の購入、レンタルビデオ店におけるアダルトビデオの借り出し
- 警察官による職務質問を受けた場合
[編集] 住民基本台帳カード
2003年より住民基本台帳法に基づき住民基本台帳カード(住基カード)の配布が始まった。これまで国内での一般的な身分公証書類として、写真付きである運転免許証が一般的だが、免許証を持たない者(高齢者等)にとっては身分証明等の場面で一部で不自由を強いられる場面があった(健康保険証や年金手帳は外出の際の必携品ではない)。住基カードの登場により、写真付きで低廉価格であり、住民基本台帳に登録されている者=日本人なら誰もが取得できる統一的な身分証として評価することもできる。→住民基本台帳カードを参照
[編集] 本人確認をめぐる近年の国内の動き
国際的なテロ対策や国内における犯罪対策の為に、各方面で本人確認を強化する動きが強まっている。
- 金融機関においては、国際的な犯罪の防止や国内における詐欺犯罪の防止等の要請の為、2002年に本人確認法が施行され、口座開設時や多額の送金を行う際等の本人確認が義務づけられた。
- 携帯電話に関しては、携帯電話が犯罪等に悪用されるなどの不正利用が問題視されるようになり、2005年に携帯電話不正利用防止法が施行され、契約時・譲渡時等に本人確認が義務づけられることになった。
- 2008年から導入される、成人識別機能付きタバコ自動販売機に使用する証明書(taspo)が、本人の請求によって無料交付される予定。
- 市区町村においても戸籍の変更に伴う手続きや書類交付の際に本人確認を行うところが増えている。
[編集] 市町村の交付する「身分証明書」
こちらの身分証明書は、
の以上3事項を公的に証明し、民法上の行為能力を特別に剥奪及び制限されていない人か、制限されている人であるかを証明する書類である。こちらの身分証明書は、前記のような所有者個人の身分を明らかにするものとして使用することはできない。
後述する「登記されていないことの証明書」と併せて使用されることが多く、会社設立時や古物商許可時、金額の大きい契約時などに行為能力確認の為に提出を求められることがある。前記3項目のいずれかに該当する場合はそれぞれの「~の通知を受けていない」が「~の通知を受けている」に変わる。
平成12年4月1日より制度が改められ、同日以降は禁治産者は成年被後見人、準禁治産者は被保佐人と名称が改められ、登記事務も本籍地の市町村から東京法務局に移管になった。同日以降登記された場合は東京法務局に登記され、同日以前に登記された事項は自動的に東京法務局に移管はされず、特に届出がなければ今も本籍地の市町村より登記・証明されている。破産者に関する事項は引き続き本籍地の市町村が行っている。
禁治産者(成年被後見人)や準禁治産者(被保佐人)でないことを証明する為には、
- 市町村役場の交付する「身分証明書」(平成12年3月31日までに登記されていないこと)
- 東京法務局の交付する「登記されていないことの証明書」(平成12年4月1日から証明日までに登記されていないこと)
の2通が実質的に必要になる。ただし、平成12年4月1日以降に出生した人については、東京法務局の「登記されていないことの証明書」のみで良い。
[編集] 世界の身分証明書
[編集] マレーシア
マレーシアにおいては12歳以上のすべての国民に「MyKad」と呼ばれる身分証の携帯が義務づけられている(Mykadは 2001年に登場した多目的ICカードで、自動車免許証、出入国情報記録、電子財布、ATM機能を持っている)。
[編集] アメリカ合衆国
アメリカ合衆国では、州政府が発行する運転免許証がもっともポピュラーな身分証明書である。カジノ場やアルコール類購入時に年齢の照合のために身分証明書の提示を求められる場合がある(店によっては、レジスターの後ろの壁に「この施設を使うためには、あなたはxxxx年xx月xx日またはその前に生まれていなければならない」と書かれた札を見ることさえある。日付は当然毎日更新される)。さらに、2008年には「Real ID Act(テロのない現実をつくるための国民番号法)」という、一種の国民総背番号制がスタートするかもしれないところまで来ている(法案は下院を通過)。具体的には、国民全員に番号を付け、これを一つのデータベースで管理し、善良な国民と有害な国民に分類して、善良な国民は飛行機に乗れたり政府施設に入場したりする事ができるが、テロリスト予備軍や犯罪者などの有害な国民はそれが叶わなくなるようにするというもの。番号付与は“連邦政府が定めたテロ対策基準に則った”運転免許証などで行なわれる予定だという。
カリフォルニア州やハワイ州では、「State ID」という身分証明書を有料で発行している(アメリカ市民に限らず外国人在留者でも査証があれば取得可能)。
[編集] 大韓民国
大韓民国では満17歳になった時点で、常時携帯が義務付けられる「住民登録証」が交付される。職務質問では、第一声にそれを見せるように言われるようである。特に住民登録番号は、日常生活で必要不可欠なものとなっており、申込書等において必ず記入されられる項目であり、インターネットにおける会員登録においては、本人確認手段として利用されている。
[編集] 香港
香港では、180日以上滞在する11歳以上の全ての者にIDカード(香港身份證・Hong Kong Identity Card)の取得と常時携帯が義務付けられている。取得手続きの際、氏名・国籍・在住資格の別などを書類に記入するほか、指紋の押捺も求められる。香港の居留権(永住権)を持つ者とそうでない滞在者とで、種類の異なるカードが発行されている。警察官による職務質問の際に提示が義務付けられているほか、出入国管理、就職や契約などの際の身分証明などに用いられる。警察官等に提示を求められた際に携帯していないと、罰金を課せられる。しかし、居住地が近くであることを伝えると警察官が自宅まで同行し罰金を請求するため、一時的に罰金を払わなくてもすむ。近年では、ICチップを組み込んだ「智能身份證」への切り替えが進められており、運転免許証との連動や、公共図書館の利用票など公的機関での本人確認等での利用が計画され、一部は実用化されている。この制度は、中国本土との出入境管理がなされていなかった時期に、流入してきた難民と香港の住民を区別するため、1951年に始められた。
[編集] 台湾
中華民国では「国民身分証」の制度が存在する(管轄は内政部―内務省相当)。
[編集] ドイツ
ドイツでは16歳以上のドイツ国民に"Personalausweis"と呼ばれるIDカードかパスポートを持つことが義務付けられているが、持ち歩く必要はない。警察官等はIDを提示することを求める権利があるが、要求されてもその場で見せる義務はない。必要な場合は警察署や市役所に持って行くか、自宅で提示することが出来る。
[編集] スペイン
Documento Nacional de Identidadと呼ばれるIDが14歳以上に発行される。