黒部峡谷鉄道本線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
本線(ほんせん)は、富山県黒部市の宇奈月駅から欅平駅までを黒部川に沿って走る黒部峡谷鉄道の鉄道路線。
目次 |
[編集] 概要
一般旅客向けのトロッコ列車が運行される観光鉄道だが、元々は電源開発のための専用鉄道であり、現在でも沿線にあるダム・発電所への資材運搬列車や、関西電力関係者専用列車も運行されている。
全列車が機関車牽引による客車列車で、側面がフルオープンの開放型客車、天井にも窓を設けたパノラマ車などユニークな客車が多い。所属車両数339両、機関車27両、客車138両、貨車172両(2002年6月現在)は、いずれも中小私鉄第1位である。
黒部峡谷は冬期の積雪が多く、雪崩による被害の危険性が高いことから冬期(12月~5月初旬)に運休する。一部区間では線路が撤去され、トンネルの中に格納される。
[編集] 路線データ
[編集] 歴史
1926年(昭和2年)、日本電力(日電)が黒部川沿いの電源開発を目的として宇奈月駅・猫又駅間を開通させたのが始まりである。1937年(昭和12年)に、現在の終点の欅平駅まで開通した。当初は建設用の資材や作業員を輸送するための専用鉄道だったが、登山客や一般観光客からの乗車希望が絶えなかったので、便乗という形で乗車を認めることにした。乗客に発行した「便乗券」(乗車券)には、「生命の保証をしない」旨が書かれていた。この鉄道は、1941年(昭和16年)10月に日本電力から日本発送電へ、1951年(昭和26年)5月に日本発送電から関西電力へと引き継がれた。
乗客の増加と地元の強い要望から、1953年(昭和28年)11月26日に地方鉄道法による免許を受けて、正式な鉄道路線として営業を開始した。1971年(昭和46年)7月1日に関西電力から分社化され、黒部峡谷鉄道となった。
[編集] 駅
有人駅は宇奈月駅・黒薙駅・鐘釣駅・欅平駅で、一般旅客が乗下車できるのもこれらの駅のみである。
運転開始となる春先に積雪が多い場合は、無人駅(出平駅が多い)までの折り返し運転となることもあるが、この場合も折り返し駅では下車することはできず、同じ列車で折り返し乗車することになる。
ただし、列車交換のために長時間停車する無人駅(笹平駅)の中には、ホームに大きなトイレが設置されており、停車時間が長い場合のみトイレ利用のためにホームに降りることはできる。
欅平駅より先には上部軌道(関西電力黒部専用鉄道)があり、普段は一般旅客は乗車することができないが、関西電力が主催し富山県が協賛する「黒部ルート見学会」に応募し当選すれば、欅平駅から立山黒部アルペンルートの黒部ダム駅まで通り抜けることができる。
[編集] その他
- ほぼ全線にわたって線路沿いにコンクリートのシェルター状のものが並行しているが、これは冬季運休中に発電所との間を結ぶための「冬季歩道」である。
- 宇奈月駅を出たところにある赤い鉄橋(写真等で有名な山彦橋)は、黒部川の砂防ダム建設に伴うルート変更で掛け替えられている(新山彦橋)。
- 宇奈月駅に着く前、黒部川沿いのホテルの向かいを通過する時、当日の宿泊客が乗っているとわかっている場合、仲居が皆でトロッコの乗客に手を振る。