An-124 (輸送機)
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An-124ルスラーン(ロシア語:Ан-124 Русланアーン・ストー・ドヴァーッツァチ・チトゥィーリェ・ルスラーン)はソ連のアントーノフ設計局(現在はウクライナ)が開発した大型輸送機。量産された機体としては、世界最大の輸送機である。ウクライナでは、ルスラーン(Руслан)の愛称で親しまれている。一方、北大西洋条約機構(NATO)のつけたNATOコードネームは「コンドル」(Condor)であった。また、An-124の発展型にAn-225ムリーヤがある。
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[編集] 概要
[編集] 機体形状
主翼は高翼配置であり、軍用輸送機としては珍しく、T字ではなく通常配置の尾翼である。エンジンは、ターボファンを主翼パイロンに4基搭載している。初飛行は1982年。西側へは、1985年のパリ航空ショーで披露された。
[編集] 開発
ソ連は、西側より高バイパス比大出力ターボファンエンジンの開発が遅れていた。1970年代後半に、エンジンの開発に成功したことにより、この種のエンジンを搭載した大型輸送機の開発が行われるようになった。An-124はAn-22の後継機として開発され、前任機より大きな輸送力ととより優れた飛行性能を持っていた。
2000年以降、ウクライナのキエフにあるアヴィアーント・キエフ国立航空工場では既存のAn-124をAn-124-100に近代化改修する作業が行われている。
[編集] 運用
An-124は、実用輸送機としては世界最大であり、その最大ペイロードは150tにも及ぶ。また、軍用だけではなく民間機としても活用されており、ソ連崩壊後は西側でもその大搭載量を利用したビジネスも活発である。日本では1999年に広島電鉄5000形電車(グリーンムーバー)の輸送や、2003年に自衛隊イラク派遣の物資輸送を請け負う等の実績がある。また、不整地での優れた離着陸能力を生かし南極等へ物資を運ぶ際にも使用されている。その他、ロシアを中心に、災害救助のための輸送においてもその大きな輸送能力から大型ヘリコプターを運ぶなどの任務にも活用されている。アメリカ軍も物資輸送のためにチャーターすることがあり、日本国内の米軍基地への飛来も時折り観察されている。
[編集] 愛称
愛称の「ルスラーン」は、アレクサンドル・プーシキンの書いた詩『ルスラーンとリュドミーラ』("Руслан и Людмила")や、それをもとにウクライナと関係の深いミハイル・グリンカが作曲をした同名の歌劇の主人公の名前が愛称の由来であるとも言われるらしいが、これらの作品の元になった昔話の主人公である騎士の名に由来を求める方が普通である。キエフ大公国時代を舞台とするこの説話では、悪魔にさらわれた大公の娘リュドミーラを助け出し、騎士ルスラーンは姫との結婚を勝ち取る。
なお、「ルスラーン」はウクライナ人やロシア人などの一般的な男性の名前で、アラビア語系の名前と言われており、ロシア語風に直すと「レフ」(Левリェーフ)となる。現代でも多く見られる名前である。一方、「リュドミーラ」(ウクライナ語では「リュドムィーラ」)は女性の名前で、スラヴ系の名前であり、「人々に愛される」など多くの良い意味が含まれる。こちらも、現代も多く見られる名前である。
[編集] 要目
- 全幅:73.3m
- 全長:69.1m
- 全高:21.1m
- エンジン:プログレース製 D-18T ターボファン(23400kg)4基
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