CDMA2000 1x
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CDMA2000 1x(しーでぃーえむえーにせん・いちえっくす)は、3GPP2 (Third Generation Partnership Project 2)が制定した、CDMA2000のデータ通信の拡張規格である。1.25MHzの帯域1本を利用する。そのほかに、同帯域を3本利用する3xMCもあるが使用されていない。
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[編集] CDMA2000 1xMC
CDMA2000 1xMC(1x Multi Carrier)は、端末の最大通信速度は144kbpsで、帯域を音声通信とデータ通信とで共用できる。2GHz帯、800MHz帯のどちらでも利用可能である。
音声通信を共用するため、RAKE受信・ソフトハンドオーバーを使用し、送信電力制御で一定の通信速度の確保と、遅延時間を一定時間以下にする符号化方式が採用されている。
[編集] CDMA2000 1x EV-DO Rel.0
CDMA2000 1xEV-DO(1x Evolution Data Only(Optimized)) Rel.0(Release 0)は、パケット通信に特化して通信速度と電波利用効率を高めたものである。米クアルコムのHDR(High Data Rate)を基に開発された。 下り1セクタ当たり2.4Mbps/上り1端末当たり153.6kbps(ともに理想的な通信状況で、1ユーザが独占した場合の最高通信速度であり、実際の最高速度はこの1/3程度)のデータ通信が可能である。
端末から1秒間に800回通信状況を送信させ、下り方向を時分割多元接続とし最も状況の良い端末にタイムスロットを優先的に配分することで、総合的な効率化を図っている。空中線電力一定で通信状況により符号化・変調方式(16QAM~QPSK)を動的に変更する。hybrid ARQを採用して、再送を減らしている。
音声通信を行わないため、遅延が大きくなる高効率符号化を採用する。CDMA2000 1xのパケット通信では複数セクターよりデータを受信するソフトハンドオーバーが利用されているが、この方法は対象セクターの中でもっとも品質の劣るセクターにあわせてデータを送信する必要があるため、EV-DOでは下り方向に対してソフトハンドオーバーを使用していない。ただし同一セクターからのマルチパスを受信するためのRAKE受信は行われている。
[編集] BCMCS
後に3GPP2でBCMCS(Broadcast/Multicast Services)として策定されたマルチキャスト機能で放送形サービスが提供できる。全端末に同じストリームを提供するため、送信方法を最も状態の悪い端末に合わせることとなり、効率低下を避けられないが、強力なエラー訂正符号や端末側でのソフトコンバインにより再送を不要とする。訂正符号が多い分、帯域幅あたりの実データ容量は少ないが、放送型で多くのユーザーに伝達するため、コアネットワークから伝送およびRFチャネルにおいての占有は1コール分となり、従来のデータ型の配信に比べて飛躍的に効率の良い送信といえる。物理チャネルのフォーマットは上記のEV-DO Rel.0と同等なため、最大スループットは下り2.4Mbps(ただしエラー訂正符号を含むことに注意。) 上りチャネルは用意されない。
[編集] CDMA2000 1x EV-DO Rev.A
CDMA2000 1x EV-DO Rev.A (Revision A)は、2004年3月に制定された、セクター当たり下り3.1Mbps/上り1.8Mbpsと上り方向のパケット通信高速化に特化した方式である。
上り通信速度が大幅に向上するが、主眼はVoIPやストリーミングの品質の確保であり、小さなパケットを遅延なく送るための工夫が随所に施されている。これにより、たとえばファイルダウンロード中の快適なVoIPセッション等を提供することが可能となる。各レイヤーでのパケット送信スケジューリングはサービスの内容、加入者のプロファイル、QoSの設定等を入力として、適切な優先順位で配信または廃棄される。詳細なパケットスケジューリングアルゴリズムは各端末あるいはインフラベンダーの裁量にゆだねられている。
KDDIが提供する携帯電話サービス「au」で採用が決まり、2006年12月13日より対応端末W47Tが発売された。
[編集] CDMA2000 1x EV-DV
CDMA2000 1x EV-DV(1x Evolution Data and Voice)は、1xMCを改良した仕様で、高速パケット通信と音声通話の両方を同一の帯域で行うものである。しかし、米クアルコムは開発を打ち切った。
[編集] 次世代CDMA2000
次世代CDMA2000は、次のようなことを目標に2007年中の規格制定を目指しているものである。
- セクター当たり最高通信速度 : 下り100Mbps~1Gbps/上り50Mbps
- VoIP化し音声通信容量を増大させる。
- 周波数利用効率を向上し、需要の増大に対応する。
- 接続時間の短縮で効率的な通信を可能とする。
- ビット当たり単価を低減し、安価なサービスを実現する。
- 現行システムと互換性を持たせ段階的な移行を可能とする。
[編集] 日本の状況
日本では、au(KDDI)が2002年4月1日より1xMCのサービス(愛称はCDMA 1X)を開始した。また、2003年11月28日からは、「CDMA 1X WIN」の愛称で1x EV-DO Rel.0のサービスを開始した。そして2006年12月から、EV-DO Rev.Aを開始した。