F1レギュレーション
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フォーミュラ1 |
F1レギュレーションは、1950年に始まったF1世界選手権における、レギュレーション、すなわち規定値のこと。w:Fédération Internationale du Sport Automがレギュレーションを取り決める。以下にその変遷を示す。。
目次 |
[編集] レギュレーションの変遷
自動車に関する技術の進歩による危険性の増加にともない、F1のレギュレーションは大小さまざまな変更がなされている。特に
- 1968年から起きた、それまでの空気抵抗を抑えるデザインから逆に空気を利用する、流体力学を応用したデザインへの変化
- 1977年に登場したターボエンジンとグランドエフェクトカー
- 1989年から登場した油圧システムと電子制御によるハイテク化
それぞれによる飛躍的な性能向上に対して、数年後に大幅な規制を行っている。また、1994年からは、マシンおよびサーキットの安全面を強化する対策が頻繁に盛り込まれるようになっている。
しかしながら1990年代より、マシンの設計や開発、レース時の管理、制御などにITが導入されたことでマシンの性能は飛躍的に向上しており、1度の規制を行っても2,3年で規制前以上の性能を得るため、現状の独自シャーシによる選手権とそれに対する規制で成り立つ運営に限界が訪れている。加えて、年々規制が強くなるにつれ、それによって失われた性能を取り戻すために必要なコストが年々増加しており、コスト低下を狙った規制が逆にコスト増加(チームの資金面の格差拡大)の原因になるジレンマを引き起こしている。レギュレーションは、レースにおいてドライバーのテクニック以上にマシンの性能が勝敗を左右する状況を作り出さないよう、チームやマシンの格差を抑制する役割もある。その反面、1994年に行った一部ハイテク装備の禁止により著しく制御能力の低下したマシンによって死亡事故が発生しており、規制による安全性の低下にも配慮が必要とされる。
[編集] 前年からの変更点と結果
[編集] 1999年まで
- 1950年
- エンジン:排気量4500ccNAまたは1500ccスーパーチャージャー付エンジン
- 1952年
- エンジン排気量2000cc
- 2000ccフォーミュラ時代の2年間はフェラーリは15戦中14勝している。
- エンジン排気量2000cc
- 1954年
- エンジン:排気量2500ccNAまたは750ccスーパーチャージャー付エンジン。
- 1958年
- アルコール燃料の使用禁止。
- 1961年
- エンジン排気量1500cc
- 最低車体重量450kg
- 1966年
- エンジン:排気量3000ccNAまたは1500ccスーパーチャージャー付エンジン。
- 最低車体重量500kg
- 1969年
- 車載消火器の搭載義務付け。
- ウイング寸法規定
- 新たにウイングが取り付けられ、その脱落などによる事故が多発したため。
- 1970年
- 積層ゴムで製作された燃料バッグの使用義務付け。
- 最低車体重量530kg。
- 1972年
- エンジン気筒数を12気筒までに制限。
- 最低車体重量550kg
- 1973年
- 最低車体重量575kg
- 最大燃料タンク容量250リットル
- モノコック側面にクラッシャブルストラクチャー(衝撃吸収構造)の装着義務付け。
- 1974年
- リヤウイング後端(リヤオーバーハング)はリヤ車軸から1000mmとする。
- 1976年
- リヤタイヤ幅21インチ以下。
- コクピット前後のロールバーを結んだ線からドライバーの頭部が出ないこと。
- 1981年
- サイドポンツーンにおけるシーリング用としてのスライディングスカート使用禁止。
- 1982年
- 最低地上高が6cmに。
- スカートの素材は単一で、高さ6cm以内、厚さは5?6mmでなければならない。
- 最低車体重量585kg
- ホイールの直径が自由化。
- 1983年
- フラットボトム規制
- グラウンド・エフェクト・カーを排除。
- レース中の給油禁止。
- 4輪駆動の禁止。
- 最低車体重量540kg
- フラットボトム規制
- 1984年
- ターボ車の最大搭載燃料を250リットルから220リットルに縮小。
- 1986年
- NA(3000cc)エンジン禁止(排気量制限移行のため)。
- 最大搭載燃料195リットルへ縮小。
- 1987年
- 1988年
- エンジン:ターボエンジンの過給圧をポップオフバルブにより2.5バール(250キロパスカル)に制限。
- ターボエンジン搭載車の最大燃料タンク容量を195リットルから150リットルへ縮小。
- シャシー:最低重量制限がターボ540kg、NA500kgへ。
- 厳しい燃料制限の下でターボエンジン搭載車が全レースを制覇。中でもマクラーレン・ホンダのマシンが16戦中15戦に勝利する。
- ペダル類の位置は前車軸より後。
- 1989年
- ターボエンジンの禁止。
- 1990年
- 危険位置にストップしたマシンが移動させられた場合、たとえレースに復帰可能な場合でも失格になる。
- 燃料タンクの高さや幅の制限(クラッシュでの火災事故を防ぐ為)。
- 1991年
- ポイントシステム変更 1位9点から10点に。有効ポイント制の廃止。
- フロントウイング幅1400mm以下(以前は1500mm以下)。
- リヤウイング後端(リヤオーバーハング)はリヤ車軸から500mm以下(以前は600mm以下)。
- 1992年
- 有鉛ガソリンの使用禁止。
- Qタイヤの禁止。
- 1993年
- リヤ・タイヤ幅が18インチから15インチに縮小。
- 全幅最大2000mm以下(それ以前は2150mm以下)。
- リヤウイング高950mm以下(それ以前は1000mm以下)。
- 1994年
- レース中の給油を許可。
- 変則段数は最大7まで。
- アクティブサスペンション、ライドハイトコントロールの禁止。
- トラクションコントロールシステム (TCS) の禁止。
- アンチロック・ブレーキ・システム (ABS) の禁止。
- 四輪操舵システム (4WS) の禁止。
- フルオートマの禁止。
- 最低車体重量505kg。
- 車載カメラ搭載車がハンデを負わないよう、カメラ未搭載車にカメラ重量相当(5kg)のバラスト搭載。
- 1994年シーズン途中から
- フロントオーバーハングのサイズ縮小(ボーテックスジェネレーターの禁止)。
- ディフューザーのサイズ縮小。
- スキッドブロックの追加。
- ピットロードのスピード制限(120km/h)。
- エアボックス部分に穴を設置(ラム圧の低減)。
- 最低車体重量520kg。
- サンマリノGPのローランド・ラッツェンバーガーとアイルトン・セナの死亡事故、モナコGPのカール・ヴェンドリンガーの重傷事故による安全向上対策。
- 1995年
- ステップドボトム規定。
- エンジン排気量を3000ccに制限。
- 最低車体重量595kg(ドライバーを含む)。
- フロントウイングの高さの幅の制限(リファレンスプレーンの50mmから250mmの間)。
- リヤウイング高の低下(950mm→800mm)。
- モノコックサイドのクラッシャブルストラクチャー衝突試験実施。
- 燃料タンク最低容量(200L)の廃止(燃料補給の定着から)。
- コクピット前後方向の最低寸法拡大。
- ドライバー後方に75mm幅プロテクター装着義務化
- 1995年シーズン途中から
- エアボックス部分の穴を廃止。
- 1996年
- コクピット左右のプロテクター装着を義務化(コクピット左右に75mmのプロテクターの装着を求める)。
- コクピット左右方向の最低寸法拡大。
- 最低車体重量600kg(ドライバーを含む)。
- 1997年
- ギヤボックス後部のクラッシャブルストラクチャー衝突試験実施。
- 1998年
- スリックタイヤ禁止、グルーブドタイヤ義務付け(前輪3本溝、後輪4本溝)。
- 全幅最大1800mm以下(それ以前は2000mm以下)
- 後輪の左右に別々に作用する「第二のブレーキ」とも言うべきブレーキステアリングシステムの禁止(第2戦ブラジルGPから : マクラーレンが使用したがドライバーの能力を補うものとして禁止へ)。
- サイドウイング(Xウィング)禁止(第5戦スペインGPから : 第3戦アルゼンチンGPでピット内のエアチューブに引っかかり外れ飛んだため)。
- ブレーキ・ディスクのサイズを制限。 直径278mm以下、厚さ28mm以下(スピード抑制とオーバーテイクの増加への期待から)。
- ブレーキ・キャリパーに使用出来るピストンの数を最大で6個までに制限(コスト抑制を目的)。
- ブレーキキャリパーの材質の弾性係数の制限(ベリリウム・アルミ合金やMMCの禁止)。
- ミラーサイズの拡大50mmx120mm(以前は50mmx100mm)。
- フロントウイング加重テスト。
- 1999年
- 前輪の溝4本へ
- ホイール脱落防止装置の義務化。
- ドライバーがシートに固定されたままでもシートごと救出できる、セーフティシートの導入。
- 冷却水の水圧を最大3.75気圧にコントロールする、プレッシャーリリーフバルブの装着を義務化(事故時の安全確保)。
- 走行中にエンジンマッピングを変更することを禁止。
- 走行中にデフギヤの特性を変更することを禁止(トラクションコントロールと同じような効果を得ていた疑いから)但しピットでの変更は可。
- 燃料は2000年EU市販ガソリンの規則を適用(硫黄分の削減)。
- リヤウイング加重テスト。
[編集] 2000年以降
- 2000年
- エンジン形式をV10に統一。
- 回転部品以外のベリリウム使用禁止。
- 競技中の再プログラミング禁止。
- 燃料は2006年EU市販ガソリンの規則を適用(硫黄分の更なる削減)。
- 2001年
- 2002年
- レース中のクラッシュの原因となったドライバーは次のレースで10グリッド降格(2002年のみ)。
- 電子制御パワーステアリング禁止(機械式のみOK)。
- ミラーサイズの拡大50mmx150mm(以前は50mmx120mm)。
- 2003年
- フリー走行の回数が4回から3回へ(金曜日午後のフリー走行を行っていた時間帯に予選1回目を実施)。
- 金曜フリー走行1回目の前に、特別フリー走行セッションを実施(事前にエントリーしたチームのみ。なお、レース出走ドライバー以外の第3ドライバーも出走可能)。
- 予選が2日制1ラップ方式(シングルカーアタック)へ(走行順は、金曜日が前戦までのドライバーズランキング上位から、土曜日が予選1回目の下位から)。
- チャンピオンシップのポイントを従来の6位まで付与から8位まで付与に拡大(10-6-4-3-2-1 → 10-8-6-5-4-3-2-1へ)。
- ピットから車へのテレメトリーデータ送信を禁止。
- ドライタイヤを各チーム2種類供給可(2002年までは各メーカー2種類)
- ウェットタイヤを1種類に制限。
- チームオーダーの禁止。
- HANSの装着義務付け。
- 予選終了後から決勝前までのマシンメンテナンスの原則的禁止(パルクフェルメ・ルール)。
- 予選から決勝までは1エンジンのみ。
- 2004年
- 予選が土曜1日制1ラップ×2方式へ(走行順は、予選1回目が前戦リザルトの上位から、予選2回目が予選1回目の下位から)。
- フリー走行の回数が3回から4回へ(金曜日午後にもフリー走行実施)。
- 金曜フリー走行セッションのみ、前年コンストラクターズ順位5位以下のチームが第3ドライバーの出走が可能に。
- レースウィーク中1基のエンジンのみ使用可(交換した場合には10グリッド降格ペナルティ)。
- ローンチコントロールシステムとフルオートマチックの禁止。
- ボディワークサイズの変更(エアボックス部分のサイズ拡大、スポンサー用スペース確保のため)。
- リアオーバーハングのサイズ拡大(翼端板の大型化、スポンサー用スペース確保のため)
- リアウィングアッパーエレメントが2枚までに。
- ウェットタイヤを2種類まで用意することが可能に。ただし荒天用タイヤはレース主催者の許可があった場合のみ使用可能。
- リヤウイングフラップ加重テスト(ハンガリーGPから)
- ピットロードの制限速度が80km/hから100km/hに。
- 2004年シーズン途中から
- 2005年
- 予選が2日制1ラップタイム合算方式へ(日曜午前に予選2回目実施。ただし第6戦モナコGPまで。走行順は、土曜日が前戦リザルトの下位から、日曜日が予選1回目の下位から)
- 第7戦ヨーロッパGPから予選が1日制1ラップタイム方式へ(日曜予選の廃止、走行順は、前戦リザルトの下位から)
- 予選・決勝レースで使用可能なタイヤを1セットに制限(タイヤ交換の原則禁止)。
- 2レースで1基のエンジンのみ使用可(交換した場合には10グリッド降格ペナルティ)。
- フロントウィングの最低地上高を5cm引き上げ。
- リアウィングを15cm前方へ移動。
- サイドディフューザーのサイズ縮小。
- リヤタイヤ前フロアの一部削減。
- コクピット周りのプロテクター75mmから90mmに拡大
- 2006年
- エンジン:形式はV8、排気量を2400ccに制限、Vバンク角は90度、最低重量95kg、最低重心高165mm。
- タイヤ交換の復活(ただしグランプリ期間中に1人のドライバーが使用できるドライタイヤは7セットまで)。
- フロントタイヤ間のディフレクターの高さ規制。
- 予選をノックアウト方式に変更。
- 最初の15分(Q1)は全車両が参加し、このセッションの下位6台(17 - 22位)はグリッド決定。
- 次の15分(Q2)は前のセッションの上位16台が参加し、このセッションの下位6台(11 - 16位)はグリッド決定。
- 最後の20分(Q3)は前のセッションの上位10台が参加し、残り10台のグリッドを決定。(第11戦フランスGPから15分に)
- 選手権参加台数が22台でない場合のふるい落としは以下のとおり。
- 選手権参加台数が20台の場合、Q1とQ2では下位各5台のグリッドを決定し、10台でQ3を実施する。
- 選手権参加台数が24台の場合、Q1とQ2では下位各6台のグリッドを決定し、12台でQ3を実施する。
- 最初の2つのセッションは燃料量は自由とし、最終セッションに進めなかったものはレースまでに再給油可能。最後のセッションはレーススタート時の燃料を搭載(セッション開始時に車両重量計測)し、レース開始までに消費した燃料を再給油するものとする(決勝グリッド確定タイムの120%に満たないタイムで周回した周の燃料は再給油できない)。
- 2006年シーズン途中から
- リヤウイングフラップセパレーター導入(カナダGPから)。
- 2007年
- 金曜日のフリー走行は最大2名まで参加可能。ただし1名をサードドライバーが担当することは可能。
- 金曜日のフリー走行のセッション時間を90分に拡大。
- 1台あたりが使用できるタイヤセットを14に拡大。
- ソフト・ハードの2種類のタイヤをレース中に使用することを義務付け。
- レース中にセーフティーカーが導入された場合は一時ピットが閉鎖され、給油目的でピットインするとペナルティーを受ける。
- 金曜日にエンジントラブルなどのために交換してもペナルティを課さない(土曜日・日曜日の交換は従来通り)。
- エンジンホモロゲーションの実施(2006年日本GPで使用したエンジンを基準に開発を凍結)。
- エンジン回転数を最大1万9000回転に制限。
- ギヤボックスを交換した場合、予選結果より5グリッドの降格。
- ギヤ比の変更はFIAの承認下で1回のみ。
- テストの制限(年間3万kmまで。タイヤもドライ・ウエット合わせて使用出来るのが300セットまで)。
- トラックシグナルインフォメーションディスプレイの義務化。
- メディカルワーニングシステムの義務化。
- ドライタイヤをブリヂストンが各GPに供給する2種類に変更。
- ピットロードの制限速度が、100km/hから80km/hに変更。
- 金曜日のフリー走行は最大2名まで参加可能。ただし1名をサードドライバーが担当することは可能。
- 2008年
[編集] 今後のレギュレーションの変更案
2008以降もさまざまな面においてレギュレーションの変更が予定されている。これらの変更は主に必要経費の削減およびパフォーマンスの減少をねらいとしている。現在変更案として発表されているものとして以下のようなものがある。
- 2008年
- スリックタイヤの復活。
- オートマチック・トランスミッションの禁止や足踏み式クラッチなどギヤボックスの標準化。
- 希少金属の使用禁止と標準コンポーネントの大量導入。
- テレメトリー禁止とデータ取得システムの厳密な管理。
- スペアカーの禁止。
- シャシーのカスタマー供給の許可。
- ギヤボックス4GP1基
- 2009年
- 燃料効率に関するレギューションを導入
- CDG(センターライン・ダウンウォッシュ・ジェネレーティング)ウイング([1])
しかしながら、トップクラスのコンストラクターがマシンやエンジンの製作に多大なコストをかけているため、レギュレーション改定当初の一時期において減少したパフォーマンスは、その後シーズンが進むにつれて元に戻ることが常である。こうしたことから、様々なコスト低減案にも関わらず、コストはむしろ上がる一方となっている。これに対し、チーム予算に対して上限の規制を行う抜本的な対策を要求する声が挙がる一方、自動車メーカーのワークスチームを中心に、規制を緩和しとことん速さを競う独自の選手権を設立する動きも未だ起きており、FIAにとっての舵取りが今後を左右すると見られている。