フォーミュラ1
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フォーミュラ1 |
フォーミュラ1(正式名称:FIA Formula One World Championship、略称:フォーミュラ・ワン、Formula One、F1)は、最もよく知られたモータースポーツのカテゴリーであり、その世界選手権も意味する。F1世界選手権は、国際自動車連盟 (FIA) が主催する自動車レースの最高峰で、四輪の一人乗りフォーミュラカーで行われる。
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[編集] 概要
[編集] モータースポーツの最高峰
1950年にイギリスのシルバーストン・サーキットで始まった。ヨーロッパを中心に世界各国を転戦し、各レース毎の順位によって与えられる点数「チャンピオンシップ・ポイント」の総計によってチャンピオンを決定する。なお、FIAが認めている(世界選手権がかけられている)最高峰の四輪自動車競技は、フォーミュラ1と世界ラリー選手権 (WRC) 、世界ツーリングカー選手権 (WTCC) の三つのみである。また「世界三大スポーツイベント」の一つに挙げられ、毎年開催する点やその開催規模から見て世界最大であると言う見方もある。
Formula とは「決まり」「規定」を意味し、F1以外にもフォーミュラ3 (F3)、フォーミュラ3000(F3000、現在はGP2)などの競技がある。ちなみにアメリカではフォーミュラとは言わずオープン・ホイール(ホイールが露出した、の意)と呼ぶ。その北米圏のフォーミュラはIRL、チャンプカーの2団体がトップフォーミュラを形成している。
出場する車両には、タイヤ・シャシー・エンジンなどあらゆる部分に規定(レギュレーション)があり、これに反した車両は走行できない。2005年のB・A・Rホンダのスペイン・モナコ戦の2戦出場停止処分もこれによる(規定重量違反)。また、走行中のマナーなどの取り決めもあり、違反した場合にはピット通過や、グリッド降格などのペナルティを課せられることもある。
かつては他のカテゴリー同様、1社のシャーシを複数のチームが使用することもあったが、現在ではコンコルド協定において、知的所有権を含め、過去2年のうちに参戦した他チームのシャーシを使用できないよう規定されたため、フォーミュラカー選手権としては唯一、全チームがオリジナルのシャーシを使用している。
(ローラやダラーラなどのシャーシメーカに製作を依頼することは可能だが、供給できるのは1チームのみである。)
[編集] 開催国と開催数
イギリスとイタリアでは、1950年以来継続して開催されている(フランスは1955年のみ未開催)。1960年代まではヨーロッパを中心に年間10戦前後で行われていたが、商業化と共に開催地域の拡大と開催数の増加が図られ、世界中を転戦する興業一座という例えでグランプリ・サーカスと称されるようになった。1970年代から1980年代にかけてはアメリカ大陸での開催が盛んであったが、1990年代以降は参戦自動車メーカーが市場開拓を図るアジア地域での開催が増えている。開催数は年間16戦前後で推移していたが、2005年は19戦にまで達し、移動等の負担が大きいことからスケジュールの見直しが議論されている。
[編集] 1国1開催
原則として1つの国で開催されるグランプリ (GP) は1シーズン中1回だけ(1国1開催)と定められている。しかし、様々な理由により複数回開催される例外がある。主な理由として、商業的見込みから人気ドライバーや人気チームを有するF1熱の高い国を重視する傾向が挙げられる。通常開催名は「国名+グランプリ」で表されるため、これらの例外では以下のような「別名」を使用している。
- 地域名を冠する例
- ヨーロッパ各国で1国2開催の場合用いられる。1983年と1985年のブランズハッチ(→イギリスGP)、1993年のドニントンパーク(→イギリスGP)、1994年と1997年のヘレス(→スペインGP)、1984年、1995年から1996年、および1999年から2006年はニュルブルクリンク(→ドイツGP)で開催されている。
- 日本で2開催されたことがある。1994年と1995年、TIサーキット英田(現岡山国際サーキット)で行われた。
- 地名を冠する例
- 1957年、ペスカーラ・サーキットで行われた。
- 近隣国名を借りる例
- サンマリノGP(→イタリアGP)
- 1982年、スイスの名を冠し、フランスのディジョン・プレノワで行われた。
- ルクセンブルグGP(→ドイツGP)
1997年は1国2開催がスペインGPとヨーロッパGP、ドイツGPとルクセンブルグGPの2例行われた。極端な例としては、1982年にアメリカで「アメリカ西GP」(ロング・ビーチ)・「アメリカ東GP」(デトロイト)・「アメリカGP」(ラスベガス)という1国3開催が行われた。
しかしながら、FIAは2007年以降は1国1開催の原則を徹底する方針を示しており、すでに同年より2010年の4年間のドイツグランプリはニュルブルクリンク(2007年,2009年)とホッケンハイム(2008年,2010年)で交互開催することが決定している。これはタバコ広告の禁止などもあり、できるだけヨーロッパ以外の開催地を増やしてマーケットを拡大する意図があるものと見られており、実際に2010年には韓国やインドなどでの開催が噂されている。
また、2007年の日本GPが富士スピードウェイで開催されることが決まり、鈴鹿サーキットが別名称での開催継続を要請したものの、上記の原則もあり、カレンダーから外れた。(ただし、富士で2008年以降に継続開催するか否かは2007年の状況を見て判断するとされている)なお、鈴鹿サーキットに限らず、イモラでのサンマリノGPも2007年には開催されない。
[編集] チャンピオンシップ
各レース毎の順位によって与えられる点数「チャンピオンシップ・ポイント」の総計によってチャンピオンが決定する。獲得ポイントの最も多い選手が「ドライバーズ・ワールド・チャンピオン」となる。過去には(年間でのポイント獲得レースのうち得点の多い定められた数レースのみを計算対象とする)有効ポイント制を採用していたこともあった。車体製造者(コンストラクター:厳密にはチームではない)には2台までポイントが与えられその合計で「コンストラクターズ・ワールド・チャンピオン」が与えられる。(注:2005年現在、レギュレーションにより「チームと車体製造者は同一でなければならない」と記載されている)
強力なターボ・エンジンと自然吸気 (NA) エンジンが混走した1987年には自然吸気エンジン搭載車のみでのチャンピオンシップが制定され、それぞれドライバーに与えられる「ジム・クラーク・カップ」、コンストラクターに与えられる「コーリン・チャップマン・カップ」と呼ばれたが、翌1988年、ターボ・エンジンの燃費規制が厳しくなり自然吸気エンジンとの戦力差が縮小したため、1年限りで廃止された。
[編集] 基本的な競技の進行
土曜午後に、「ノックアウト方式」と呼ばれる方式(予選を3つのラウンドに分けて、各ラウンドで遅いクルマが脱落しながら順位を決めていくもの)でスターティンググリッド(スタート時の整列順)が決定する。最終ラウンドで一番速いタイムを記録した者にはポールポジションが与えられ、その後ろはタイム順で整列することになる。(ただし、第1ラウンド・第2ラウンドの下位で次のラウンドに進めないドライバーはその時点で順位確定。また、決勝レース前までにエンジン交換を行った場合にはその回数・タイミングに応じて、10グリッド降格等のペナルティが課される。また、危険走行等のペナルティでグリッド降格となることもある)
なお、タイムはマシンに搭載された無線装置により1/1000秒単位まで計測される。まれに1/1000秒まで同タイムのケースが見られるが、その場合には先にタイムを出したドライバーの順位が上になる。(1997年ヘレスサーキットでのヨーロッパグランプリにてジャック・ビルヌーブ、ミハエル・シューマッハ、ハインツ・ハラルド・フレンツェンが1'21"072の同タイムとなりビルヌーブがポールポジションを獲得した。それ以前には1988年鈴鹿にてネルソン・ピケと中嶋悟が1'43"693の同タイムだったが先にタイムを出したネルソン・ピケが5位になったという例もある。)
日曜午後に行われる決勝は、原則的に距離305kmを超える最も短い周回数で争われる。また、レースは2時間を超えた場合は,その周回で打ち切られる。例外として、モナコGPは市街地で行われることによる体力的・精神的負担などを考慮し、また平均速度が極端に遅く(他コースより60km/hほど遅い)競技時間が長くなってしまうことから、1967年から約260kmで争われる。また、ドライコンディション時に2時間を超えて終了したコースについては翌年から周回数を減らして行われる(例 : フェニックス市街地で行われたアメリカGPなど)。全車静止した状態からスタートを切り(スタンディングスタート)、最も速く定められた距離を走破したドライバーが優勝となる。
その後の順位は走破した周回数とその時間により決まる。すなわち優勝者と同じ周回を走りきったドライバー、その次に1周遅れのドライバー、2周遅れ・・・という順で、それぞれの中で先にゴールしたドライバーから順位がつけられる。途中リタイヤして、最後まで走り切れなかったドライバーも、全体の9割以上の周回を走っていれば、周回遅れとして完走扱いになる。
- 例 2004年日本GP 53周
1位 - M・シューマッハ - 1:24:26.985 2位 - R・シューマッハ - 14.098秒遅れ 3位 - J・バトン - 19.662秒遅れ 4位 - 佐藤琢磨 - 31.781秒遅れ … 11位 -J・トゥルーリ - 1周遅れ … 16位 -G・ブルーニ - 3周遅れ -R・バリチェロ - 38周(15周遅れ)→完走扱いではない
レース中にピットで可能な作業は時代によって異なり、2007年現在は給油・タイヤ交換・マシン微調整などを行うことができる。2007年からはレース中に2種類のタイヤを使用することが義務づけられたため、レース中のタイヤ交換は必ず行なう必要がある。その他については必ずしも行わなくてもいいが、ガソリンタンク容量などの関係により給油なしでの完走は現実的ではない。このようなピットでの戦略(タイミング・給油量など)によりレースの勝敗は左右される場合が多い。
[編集] レギュレーションの変遷
自動車に関する技術の進歩とマシンの高速化による危険性の増加にともない、F1のレギュレーションは大小さまざまな変更がなされている。特に1994年サンマリノグランプリで起きた2件の死亡事故以後は、安全性向上のためのレギュレーションが多く施行された。この流れのレギュレーション変更には、主にスピードの低下を狙ったものと安全設備の設置を義務付けるものとがある。また、2000年代に入ってからは高騰したマシン開発費を抑制するためのレギュレーションが施行されている。
詳細は、F1レギュレーションを参照。
[編集] イベント
各年毎の結果は下記囲み内のリンクを参照。
また、各グランプリの年別の勝者等については、F1選手権レースの一覧から各グランプリ別の記事を参照。
F1世界選手権 1950 | 1951 | 1952 | 1953 | 1954 | 1955 | 1956 | 1957 | 1958 | 1959 |
[編集] 日本での開催
日本では、1976年と1977年、2007年から静岡県の富士スピードウェイで、1987年から2006年は、三重県の鈴鹿サーキットで「日本GP」が行われている。また、1994年と1995年には岡山県のTIサーキット英田(現岡山国際サーキット)で「パシフィックGP」が開催された。
また、過去には大分県のオートポリスでの「アジアグランプリ」や横浜みなとみらいで市街地サーキットを用いた開催が計画にあがったことがあった。
2000年からはトヨタが所有し、近年大リニューアルが行われた富士スピードウェイで、2007年より日本GPが開催される(2011年までの5年契約)ことが発表された。富士スピードウェイでは、F1開催時の交通アクセスの整備や、ホテル建設などの準備を、急ピッチで進めている。そして2006年8月下旬にFIAにより発表された2007年スケジュールには9月30日開催が決定した。1年目の開催でコンストラクターズに関連する終盤に行われるのはきわめて異例。
これに対して、従来日本GPを開催していた鈴鹿サーキットは、2006年までで開催契約が切れるが、FIA/FOAとの間で、パシフィックGPなどの別名称での開催や富士スピードウェイとの日本GPの交互開催の交渉を行っているようであるが、1カ国1開催の原則が徹底されつつある状況と、富士スピードウェイとの5年契約のため、実現は早くても2012年以降になると推測される。
[編集] 今後選手権に追加される可能性のあるレース
2008年以降に選手権に追加される可能性があるレースイベントは以下の通り。
- メキシコグランプリ(カンクン)
- アフリカグランプリ(ケープタウン)
- インドグランプリ(ムンバイ)
- ロシアグランプリ(モスクワ)
- ギリシャグランプリ(アテネ)
- ルーマニアグランプリ(ブカレスト)
- アルゼンチングランプリ(レセンド・エルナンデス・サーキット)
- アブダビグランプリ
- 韓国グランプリ
- シンガポールグランプリ
[編集] F1を題材とした作品
- グラン・プリ(アメリカ映画:1967年)
- 赤いペガサス(漫画:1977年 - 1979年 作:村上もとか)
- 赤いペガサスII -翔-(漫画:1988年 - 1990年 作:村上もとか、画:千葉潔和)
- F(漫画・アニメ:1985年 - 1992年 作:六田登)
- HAYATE(漫画:1992年 - 1997年 作:風童じゅん)
- アローエンブレム グランプリの鷹(アニメ:1977年 - 1978年)
[編集] 日本におけるテレビ中継
[編集] 1986年以前
1976年のF1世界選手権・イン・ジャパンと1977年の日本GPをTBSが中継し、その後1986年までは、TBSがダイジェスト形式で放送を行っていた。
[編集] 1987年以降
1987年から日本GPが復活することや中嶋悟のフルタイム参戦に伴い、フジテレビは日本GPのみを中継できる権利を購入しようとFIAにかけあった。しかし、FIAの放映権販売の方針として、一つのグランプリだけを売ることをせず、すべてのグランプリの放映権を一括で購入させる方式をとっていた。そのため、ある意味においてはフジテレビはやむなく独占中継権を取得した。現在、地上波とCS放送(フジテレビ721)においてテレビ放送を行っている。また、同局は日本GP(正式名称「フジテレビ日本グランプリ」)においては冠スポンサーにもなっている。
[編集] 生中継
2005年には、フジテレビが放送開始後初めて日本GPの地上波生中継が実現した(日本開催のF1としては、それ以前にも1994年のパシフィックGPが生中継されたことがある)。平均視聴率10.3%(関東地区)とまずまずの結果を残したことから、2006年も生中継された。2007年以降も継続されることが期待される。
海外グランプリではカナダGPやブラジルGPなどが時差の関係から生中継となることが多いほか、1999年オーストラリアGPが生中継で放送されている。
[編集] CS放送
なお、CS放送は全戦生中継(土曜日フリー走行、予選、決勝。日本GPは金曜フリー走行も中継)で、地上波とは別の実況・解説者にて放送している。今宮純や川井一仁が現地のスタジオで、フジテレビのスタジオにいる実況アナウンサーともう一人の解説者(熊倉重春・小倉茂徳など)と共に中継を行っている。なお音声切り替えにより、解説、実況のない現地の音声のみで楽しむことができる。
なお、テレビ放送の詳細については「F1 GRAND PRIX」の項を参照。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
2007年のF1世界選手権を戦うチームと出走ドライバー | |||||||||||||
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