SAPIX小学部
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SAPIX小学部(さぴっくすしょうがくぶ)は難関中学受験を対象とした学習塾。1989年設立。
「株式会社ジーニアスエデュケーション」が経営している。1990年代以降、首都圏の学習塾の中では上位の合格実績を保っている。
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[編集] 特徴とその背景
[編集] 概要
SAPIXは日能研や四谷大塚に比べると後発の塾である上に、複数の講師が所属の塾(主にTAP進学教室)を不服として独立集合して成立した塾であり、その発足は決して華々しいものではなかった。しかし極めて強力なカラーを持つことで今日の発展を築いたといえる。そのカラーとは「難関校への登竜門」である。具体的に言うならば徹底した詰込教育、個性の強い熱烈な講師陣、クラス内外での競争の奨励などによって生徒を鍛え上げ、難関校に合格させるというものである。どちらかというと算数や理科で強さが光る。特に超難関と呼ばれる中学校の合格実績は、3倍程度の生徒数を誇る日能研を毎回のように上回っている。 1クラスの人数は15人前後で、大手塾の中では比較的少人数での授業を行っている。
[編集] 教材
「平常授業」では1回の授業で扱う内容ごとに分かれた小冊子の形式になった「Daily Sapix」、というものが毎回の授業ごとに配布される。春季、夏季、冬季の各講習でも同様であるが、このときはタイトルが「Spring(Summer,Winter) Sapix」となる。他塾の様に、1冊の「本」の体裁をなしていないのが大きな特徴である。これは、予習を出来なくすることで、かえって毎回の授業に新鮮な気持ちで、集中して臨むことが出来るという考え方に基づいている。
- 算数
- A,Bの2種類の授業が存在し、B授業は新出事項の解説、A授業は前回のB授業の復習と応用が中心となる。算数Aの授業では「算数A 復習と演習」という4枚とじのプリントを、算数Bの授業では「Daily Support」という5枚とじのプリントを使用する。
- 国語
- 算数同様A,B2種類の授業がある。A授業は慣用句、ことわざ、文法などの基礎知識を身につけることを目的としている。B授業は長文読解を行い、記述問題を書けるようにすることを目的としている。B授業では、授業中に生徒が記述問題を解き、挙手して講師に知らせ、それを講師が添削している。
- 理科
- 記憶の535(5年)、635(6年)という基礎知識確認用の教材が存在する。また思考力を問う確認テストがある。
- 社会
- 理科と同様であるが、635等はない。
[編集] 復習主義
SAPIXには学期を通してのテキストは存在せず、毎回小分けにされたテキストが配布される。それだけでなく、プリント類や授業で扱わない問題集などを指定される事が多い。授業中の暗記物小テストが多く、また、授業も解説以上に問題演習が多い。さらに、授業スピードが極めて速い事でも有名であり、欠席を取り戻すのに苦労するシステムである。最後に重要な点として、効率が重視される。例えば算数では無駄な計算を省き、社会の歴史では一見すると年号暗記が多いが、年号の暗記は流れを掴むのに繋がり効率が上がるという理論に基づいている。授業の延長は最近になり、少なくなってきた。もっとも、これは小学生の塾通いに対する、社会不安の高まりが主な背景である。
SAPIXは「中学受験は4年生から」を常識にしたことでも知られる。 各科目のテキストは、4~6年のそれぞれの1年間ごとに、受験に必要となる分野に一通り触れるようになっている。 ただし、その内容は全く同一ではなく、年を経るごとに内容が深まるようになっている。 例えば、国語の品詞分類について、4年生では「名詞、動詞」などのごく基本的なものだけに触れる。5年生では「連体詞、助動詞」などの、受験に必要な内容を一通り扱う。そして6年生では「『ない』の識別」などの「実戦」において必要な知識を扱う。等といった形である。 これによって、特に重要な知識については繰り返し学習して、確実な定着をはかると共に、「たまに出る」程度の知識についても無理なく増やしていくことが出来るように配慮されている。さらに、国語などの単元数の少ない科目では、同一学年内でもこのような「らせん式」のカリキュラムが組まれている。前回の授業内容を確認するための毎回小テストを行う一方で、長期的な記憶についても考えられている。
予習は教材の体裁上不可能という徹底した復習主義である。
[編集] 授業スタイルと講師陣
講師の授業スタイルが統一されておらず、それに起因する長短がみられる。まず長所は、講師の個性が前面に押し出される授業となり、事務的に教える講師が少ない事、よってクラスが盛り上がる事、生徒と講師の距離が近い事、生徒のやる気が引き出される事、怒られるときが本気で怖い事などが挙げられる。短所は、クラス変動に伴う講師の変更による負担が大きい、下位クラスや4年生クラス、地方クラスに割り当てられる新人講師やいわゆるハズレ講師などに当たると学習効率が落ちる、といった点が挙げられる。
ただし、近年では明確に拡大路線をとっており、校舎数の増大に伴い急増する講師の質の確保のため、月一回の科目別集合研修や、マニュアルの整備を行うなどしている。一方でかつて特色とされた、独自プリントや授業延長などの講師ごとの個性は縮減される傾向にある。
[編集] 競争の奨励
競争は奨励される。例えば頻繁に実施されるクラス分けテストや授業中の演習プリントである。この方法で伸びる生徒はどこまでも伸びていける。
[編集] 独自のカリキュラム
平常授業では「Daily Sapix」と称したテキストが授業ごとに配布され、その回の教材と、家庭学習の課題になる。
6年では土曜日に志望校別特訓の授業が始まり、教材の形式は、志望校や教科によって様々である。
6年後期のSS特訓(後述)まで、一切選択肢のない、単線式のカリキュラムが組まれている。 全員が同一のテキストを使い、一週間(基本的に同じ曜日だが3、4年生に関しては校舎によって曜日が変わる)、4科目全て(算数A・B、国語A・Bは算数、国語で考える)の授業を受けることになる。 また、季節講習でも選択肢はなく、必修となっている(ただし休室扱いで休むことは出来る)。
6年ではGS特訓(5/3~5/5)・夏季志望校別特訓(7月下旬)・正月特訓(12/30・31、1/2・3)という午前午後にわたり、志望校別クラスで1日のうちに4教科全てを行う講習がある。
6年後期にはSunday Sapix(SS特訓)という、日曜日に集中して全科目を教える講習がある。志望校ごとに分かれての、全教科80分ずつの必修授業と、志望校に関係なく国語・算数各2科目、理科・社会各1科目の計6科目から2科目各100分を選んで受ける単科授業とがある。この単科のみ、受講するか否かは各家庭にゆだねられる、弱点補強的な扱いとなっている。
年間のカリキュラムは各教科班によって不断に見直しの検討がされている。また、学習補助教材としてはサピックスカレンダー(年間予定表)、夏期講習専用のタイムテーブルプリント、志望校を記入する形のポスターなどがある。
[編集] 校舎
- 東京都:東京校(日本橋)・中野校・吉祥寺校・渋谷校・自由が丘校・用賀校・成城校・下高井戸校・練馬校・王子校・国立校・高田馬場校(4月開校)
- 神奈川県:横浜校・日吉校・たまプラーザ校・青葉台校・センター南校・上大岡校・大船校・茅ヶ崎校・宮前平校
- 千葉県:松戸校・柏校・西船校・千葉校
- 埼玉県:南浦和校・北越谷校・大宮校