算数
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算数(さんすう、英 Arithmetic)は小学校の教科のひとつ。
数学の入門編として扱われている。ただ、中学校以降の数学がやや観念的、抽象的であったり、専門的な職業で用いるような応用をにらんだカリキュラムになっているのに対し、小学校の算数は、日常生活に結びついた基本的な数の感覚を身につけることを主な目的としている。
加えて、計算などで反復練習が求められたり、問題を制限時間内に仕上げるために集中力・持続力を育てていく必要もあるため、数学と異なり、躾としての要素も含んでいるといえる。
なお、中国・台湾・韓国・北朝鮮では「算数」ではなく「小学数学」と呼ばれる。中国で「算数」とは数学の源流的なものを指す。
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[編集] 形式陶冶説
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算数の目的として、古くから形式陶冶説がとられていた。形式陶冶とは、算数を学ぶことで、「学んだ問題が解けるようになるだけでなく、広く、思考力が高まる」という主張である。ところが、エドワード・ソーンダイクにより学習転移は狭い範囲に限られるということが証明された。与えられた、予め答えがきまっている問題解きを繰り返しても、その限られた狭い周辺の問題が解けるようになることはあっても、広い意味の思考力はつかないというものである。思考力は、算数の与えられた問題を単に解くのではなく、算数を主体的に学ぶことによって得られるものであろう。
[編集] 小学校の算数の学習内容
[編集] 数の概念
[編集] 計算
[編集] 図形
[編集] 計量、単位
[編集] 統計など
[編集] 中学入試における受験算数の内容
中学入試における受験算数においては上記小学校の算数の学習内容も出ないわけではないが、次のような問題が出る。これらの問題の出題率はとても高く、落とすと致命的である。
[編集] 文章題
[編集] 数論
- 整数の性質
整数の性質に分類は広範であるが,代表的なものは,公約数や公倍数に関する問題である。
★例1★ 3で割っても5で割っても割り切れる2桁の数のうち最大のものはいくつですか。
■解法■ 3と5の最小公倍数15の倍数のうち,2桁の大きい数を求める。 99=15×6+9であるから,15×6=90 ■答え■90
★例2★ 3で割っても,5で割っても1余る2桁の数のうち最小のものはいくつですか。
■解法■ 3と5の最小公倍数15の倍数のうち,2桁の最も小さい数に1を加える。 15+1=16 ■答え■16
(注意) この問題で,もし「2けたの」が無ければ答えは1となる。
★例3★ 3で割ると1余り,5で割ると3余り,7で割ると5余る数のうち最小のものはいくつですか。
■解法■ 各数の公倍数より2少ないことに着眼して,3と5と7の最小公倍数105の倍数から2をひく。 105-2=103 ■答え■103
その他 所与の長方形を並べて,最小の正方形を作る問題, 所与の長方形を,最大の正方形で敷き詰める問題, 所与の複数の分数に,同じ分数をかけたときに,いずれも整数になるような,かける最小の分数を求める問題, ユークリッドの互除法の問題,・・・ など。
- 約束記号
約束記号の問題には大きく分けて2つの型がある。1つは,関数であり,もう1つは演算と呼ばれる。 演算は2変数関数とも見られるが,2変数関数ということばは余り使われない。
★関数の例★ 1からnまでの整数を加えた数を<n>と表すことにします。たとえば, <4>=1+2+3+4=10です。このとき,<10>を求めなさい。
■解法■ <10>=1+2+3+4+・・・+10=55 ■答え■55
★演算の例★ A☆B=A×2+Bと表すことにします。たとえば, 3☆8=3×2+8=14です。このとき,5☆10を求めなさい。
■解法■ 5☆10=5×2+10=20 ■答え■20
[編集] 割合に関する問題
[編集] 速さに関する問題
- 速さを単純にたしひきしない問題(大地から見た速さ)
- 速さの三公式
- 途中で速さを変える問題
- 速さの平均
- 通過算
- 速さを単純にたしひきする問題(相対的な速さ)
- 大地から見た速さどうしをたしひきして得られる速さは,大地から見た速さではない。
- 流水算における速さは
- 上りの速さ=静水時の速さ-流れの速さ
- 下りの速さ=静水時の速さ+流れの速さ
- であるが,ここで,上りの速さや下りの速さや流れの速さは「大地から見た速さ」であり,静水時の速さは「流れる水から見た速さ」である。
- 旅人算における速さは
- A,Bが同方向に進む場合 隔たりの変化の速さ=ABの速さの差
- A,Bが反対方向に進む場合 隔たりの変化の速さ=ABの速さの和
- であるが,A,Bの速さは大地から見た速さであり,隔たりの変化の速さは,「大地から見た速さ」ではなく,互いに他から見た「相対的な隔たりの変化の速さ」である。
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- 通過算とは列車が,鉄橋や,トンネルなど,列車の長さと比べて無視できない長さの静物を通過する際の通過の時間などに関する問題であるのに対し,通過旅人算とは列車どうしの通過など,動くものどうしの通過であり,旅人算の応用に入る。
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- 流水旅人算
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- 流れの上で,船同士の追いつきや出会いなどに関する問題。流れのかわりに,エスカレータや動く歩道が題材になることもある。旅人算の応用に入る。
[編集] 平面図形
- 二等辺三角形と角
- 星型の角
- 多角形と角
- 図形の敷き詰め
- 面積
- 2辺と面積比
- 相似と面積比
- 等角図形と面積比
[編集] 空間図形
中学で方程式を指導する際に、方程式を立てさえすれば、あとは意味を考えなくても自動的に答えが出るとして、方程式の有用性を強調し、それにふさわしい問題を演習するが、中学入試では、最後まで意味をひきずって解かなければならない問題が多く、途中の局面で方程式を使っても、かえってわかりにくくなる。
大学入試でも、入試を念入りに工夫して出題する難関大学では、積分などの文字式の単純計算や、はじめに式を立てさえすればあとは一直線で解けるという問題はほとんど出さない。
したがって、将来難関大学を目指す児童の中には、中学受験をしなくても受験算数に取り組むことも考える場合もある。実際、受験算数は難関大学の入試問題を小学生向けに翻訳したものと見られるものもある。
しかし、注意すべきことがある。相反するようなことであるが、算数が好きになるきっかけは難しい問題に取り組むことであり、算数が嫌いになるきっかけも難しい問題に取り組むことである。難しい問題や先取り学習は、算数を時に好きにも嫌いにもする。指導者の意図通りになるとは限らない。無理のない、学習者にとってほどよい難しい問題に取り組むことが必要であろう。そのためには、与えられた問題を解いたあと、その類題を作ってみる、発展問題を作ってみるなどを心がけると学習者にとって主体的で広がりのある取り組みが身につくという説もある。