エドウィン・O・ライシャワー
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エドウィン・オールドファザー・ライシャワー（Edwin Oldfather Reischauer、1910年10月15日 - 1990年9月1日）は、アメリカ合衆国の東洋史研究者である。1961年から1966年まで、駐日アメリカ大使。
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[編集] 略歴
- 1910年 長老派教会の宣教師で東京女子大学創立にも加わったオーガスト・カール・ライシャワーの次男として日本の東京府に生まれる。
- 1939年 『入唐求法巡礼行記』の研究で博士号授与。ハーバード大学極東言語学部で教鞭をとる。
- 1956年 松方ハルと再婚。ハーバード大学燕京研究所の所長となる。
- 1961年 駐日大使に着任。
- 1964年 統合失調症患者に太腿を刺され負傷。手術時の輸血により血清肝炎を患う（黄色い血事件）。（この事件は精神衛生法改正、輸血用血液の売血廃止など、日本の医療制度に影響を与えた）
- 1966年 大使を退任。
- 1973年 ハーバード大学日本研究所所長。
- 1975年 脳卒中で倒れる。
- 1980年 ハーバード大学を定年退職。
- 1983年 来日中、3度目の脳出血で倒れる。
- 1985年 日本研究所、ライシャワー日本研究所に改称。
- 1990年 延命治療を拒否し死去。享年79。遺灰は、遺言により太平洋に撒かれた。
[編集] プロフィール
[編集] BIJ
キリスト教宣教師のオーガスト・カール・ライシャワーの次男として東京府（現在の東京都）品川の明治学院大学内の宣教師住宅内で生まれる。なお、生家は現在東京都東村山市にある、明治学院東村山高校の敷地内に残されている。
多くの在京アメリカ人子弟と同じく小学校、中学校と当時築地にあったアメリカンスクール・イン・ジャパン（ASIJ）で学ぶ。なお、兄弟ともに日本生まれであったことから「ボーン・イン・ジャパン（BIJ）」と呼ばれていた。
[編集] ハーバード大学へ
1930年代にアメリカに戻りオーバリン大学を卒業後、ハーバード大学の極東言語学部でセルゲイ・エリセーエフのもと教鞭をとる。なお、この頃日中戦争最中の上海で、兄が中華民国軍機の誤爆を受け死亡する。1941年12月の第二次世界大戦へのアメリカの参戦後に、ハーバード大学に籍を残したままアメリカ陸軍に入隊し、暗号解読や心理戦などの対日情報戦に従事する。
第二次世界大戦終結後の1956年には、明治時代の元勲・松方正義と生糸貿易の先駆者で元横浜生糸会社会長の新井領一郎の孫である松方ハルと結婚する。この年にハーバード大学燕京研究所所長となった。
[編集] 駐日大使
[編集] 就任
日米間に大きな亀裂を残した安保闘争直後の1960年夏、日本を訪れたライシャワーは、「損なわれた対話（Broken Dialogue）」と題した論文を外交専門雑誌『フォーリン・アフェアーズ』1960年10月号に発表し、アメリカをはじめとする西側諸国は、日本の政府・財界の指導者層だけでなく、野党や活動家・知識人とも異端視することなく対話を重ね、彼らの実態や抱える不満を把握するべきであると主張した。この論文が当時就任して間もないジョン・F・ケネディ大統領の目にとまり、駐日大使への就任要請につながったと言われる。
ケネディ大統領からの大使就任要請を受諾したライシャワーは、1961年4月には駐日アメリカ大使として東京に赴任し、「日本生まれのアメリカ大使」として日本人の妻とともに日本国民から人気を博す。出生や家族といった側面だけでなく、ライシャワーは上記の論文で主張した日本の多くの層との対話を実行に移し、アメリカ本国のケネディ政権と協調して日米政府間の対等をアピールすることで、「日米パートナーシップ」「ケネディ＝ライシャワー路線」と称される日米蜜月時代を演出した。しかし、ジョンソン政権に代わって後には、アメリカのベトナム戦争政策を起因とする反米感情の高まりへの対処に苦慮することとなる。
[編集] ライシャワー事件
また、1964年3月には大使館入り口で統合失調症患者にナイフで刺され重傷を負った。この時に輸血を受け「これで私の体の中に日本人の血が流れることになりました」と発言し多くの日本人から賞賛を浴びたが、この輸血が元で肝炎に罹る。その後、この事がきっかけになり売血問題がクローズアップされ、その後日本において輸血用血液は献血により調達されることになる。この事件は「ライシャワー事件」と呼ばれ、精神衛生法改正や輸血用血液の売血廃止など、日本の医療制度に大きな影響を与えた。
[編集] 退任
その後3ヶ月の入院を経て回復し、その後も大使として活躍したものの、ベトナム戦争が本格化した1966年に、多くの日本人に惜しまれつつも大使を辞任し帰国した。
[編集] 帰国後
帰国後もハーバード大学日本研究所所長などを務め、日本を始めとする極東問題の専門家として歴代政権に助言を行った他、研究者として活躍した。なお、同研究所は、退職後の1973年にライシャワーの業績をたたえて「ハーバード大学ライシャワー日本研究所(RISJ)」と改称された。
[編集] 核持ち込み疑惑
1981年に毎日新聞の古森義久記者の取材に対して「日米間の了解の下で、アメリカ海軍の艦船が核兵器を積んだまま日本の基地に寄港していた」と発言したことを受け、「非核三原則」違反を元アメリカ大使が認めたとして日本国内で騒動になった。「核兵器搭載艦船は日本寄港の際にわざわざ兵器を降ろしたりしない」の“ラロック証言”と並び有名な“ライシャワー発言”である。
なお、後の1999年には、日本の大学教授がアメリカの外交文書の中に「1963年にライシャワーが当時の大平正芳外務大臣との間で、日本国内の基地への核兵器の持ち込みを了承した」という内容の国務省と大使館の間で取り交わされた通信記録を発見し、この発言を裏付けることになった。
[編集] 死去
1964年に暴漢に襲われた際に受けた輸血により肝炎になった後も、度々肝炎に悩まされていたが、肝炎で1990年に79歳で逝去した。
[編集] 逸話
第二次世界大戦中に対日情報戦の専門家として働いていた時の事。ある時アメリカ軍による日本の主要都市の爆撃リストを受け取る。そしてその中に、数々の名所、旧跡を持つ古都である（と同時に西日本の交通の要所でもある）京都の名前があり、そのあまりの無知、無軌道さに愕然としたという。ショックのあまりに自分の上司のオフィスに駆け込み大粒の涙をこぼしながら上司に京都を爆撃リストから外す事を必死に頼み込んだという。ライシャワーの必死の説得に心を打たれた上司は、陸軍長官ヘンリー・スティムソン大将に事情を説明する。
そのスティムソンもまた、自分のハネムーンで京都を訪れて以来日本に感銘を受け、必死に京都をリストから除外する事に尽力。日本の文化遺産、古都である京都はアメリカ軍機による爆撃を免れ今日までその文化遺産を伝えているという逸話がある。
ライシャワー本人はそのような気持ちがあったのかもしれないが、吉田守男が書いた「日本の古都はなぜ空襲を免れたか」によれば、京都が空襲を受けなかったのはそのような理由ではなく、京都は広島、長崎に次ぐ第三の原爆投下予定地の一つであったことが明らかにされている。京都は当時、日本陸軍第十六師団の衛戍地である上、交通の要所で、しかも三菱系の軍需工場などが多数存在するという「軍事都市」としての位置づけもあり、当然に戦略目標であった。
したがって、京都は古都だから無傷だったのではなく、原爆投下対象都市だったために原爆の破壊力を測定するために無傷にしておくように命令が出ていた。というのが実情であった。京都が戦災を免れたのはたぶんに偶然の産物であった。ただライシャワーの働きかけにより、京都の原爆投下の優先順位を広島、長崎の次に先送りされた可能性はある。
[編集] 研究事績
- 円仁（慈覚大師）の「入唐求法巡礼行記」の研究で知られる。
- マッキューン＝ライシャワー式朝鮮語ローマ字表記を考案した。
- 「近代化」論を展開する。
[編集] 自著（抜粋）
- Ennin's Travels in T'ang China （Ronald Press Company, 1955／『世界史上の円仁―唐代中国への旅』, 実業之日本社, 1963年／講談社学術文庫, 1999年）
- Wanted: an Asian policy（Knopf, 1955／『転機にたつアジア政策』, 一橋書房, 1957年）
- The United States and Japan(Viking Press, 1965, 3rd ed.／『ライシャワーの見た日本』, 徳間書店, 1967年）
- Beyond Vietnam: the United States and Asia（Vintage Books, 1967／『ベトナムを越えて』, 新潮社, 1968年）
- The Japanese（Belknap Press, 1977／『ザ・ジャパニーズ』, 文藝春秋, 1979年）
- 『日本への自叙伝』（NHK取材班構成, 日本放送出版協会, 1982年）
- Japan The Story of a Nation（C.E. Tuttle, 1978, 3rd ed.／『ライシャワーの日本史』, 文藝春秋, 1986年／講談社学術文庫, 2001年）
- My Life Between Japan and America （Harper&Row, 1986／『ライシャワー自伝』, 文藝春秋, 1987年）
[編集] 翻訳
- Ennin's Diary: The Record of a Pilgrimage to China in Search of the Law （Ronald Press Company, 1955／円仁『入唐求法巡礼行記』）
[編集] 共著
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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