名鉄モ800形電車 (2代)
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モ800形電車(も800がたでんしゃ)とは、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)まで名古屋鉄道(名鉄)の軌道線で使用された路面電車である。
名鉄での使用後に豊橋鉄道・福井鉄道へ譲渡されたため、本稿では移籍後の状況についても記述する。
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[編集] 名鉄在籍時代

名古屋鉄道在籍時代は美濃町線・田神線の新岐阜(現・名鉄岐阜)駅発着系統のイメージアップを図るため日本車輌製造にて3両が製造され、2000年(平成12年)7月に運行を開始した複電圧車両。
車両のスタイルは、大きな窓を採用したヨーロッパのLRV(Light rail vehicle)車両に似た印象の外観に、バリアフリー時代に対応すべく部分低床という特殊な床構造をした3扉車である。
部分低床構造とは、中扉をノンステップ、前後扉を3ステップとし両方を10%のスロープで結んだ構造。床面の高さは車体中央部をレール面より420mm・台車上部を720mmとしている。このため台車は外側(動軸)と内側(従軸)とで車輪径が異なる特殊な構造を採用している。
中央が低床のため、制御装置等は屋根上、空気圧縮機はパンタグラフのある側の運転台床下に搭載している。車内もスロープ構造となっているため固定クロスシートを装備している。
主回路はVVVFインバータ制御、シングルアーム式パンタグラフ、回生ブレーキを装備。乗降扉の開閉に連動して動くステップを装備している。
2001年(平成13年)に鉄道友の会ローレル賞を受賞している。
2005年(平成17年)3月31日の名鉄岐阜600V線区(岐阜市内線・揖斐線・美濃町線・田神線)の廃止により、名鉄では廃車となった。
[編集] 譲渡後の状況
[編集] 豊橋鉄道
豊橋鉄道東田本線へは、801号の1両が名古屋鉄道より譲渡され、2005年5月頃にモ780形3両(譲渡されたのは7両だが車庫スペースの関係で2回に分けて入線)とともに豊橋鉄道赤岩口工場に入庫した。
営業運転開始にあたっての改装は、豊橋鉄道仕様のワンマン設備の実装以外目立った変更は行われていない。なお、600V区間と1500V区間の走行を可能とする複電圧設備も残されているものの、豊橋鉄道では使用されることはない。また3扉車ではあるが、営業運転時は前乗り中降りのため、進行方向と逆側の運転台よりの扉1つは締め切りとなっていたが、新・競輪場前電停開業により、赤岩口方のもは、競輪場前停車時のみ乗車口として使用されるようになった。
会社創業80周年と豊橋市制100周年記念にあたる同年8月2日より、モ780形781号とともに運用を開始した。
車体カラーは基本的に、ライトグレーを基調に濃淡両方のグリーン帯を配した名鉄時代の塗装に、豊橋鉄道のロゴとマスコット「とよてっちゃん」を車体側面上部に記した程度。運用開始当初はは市制100周年記念「とよはし100祭」のロゴと「トヨッキー(豊橋の豊と豊橋鬼祭の赤鬼をモチーフにしたマスコットキャラクター)」が側面に貼り付けられていたが、現在においては『ドリーム電車』と称して豊橋市内の小中学生による絵画作品が車体側面に貼り付けられていた(2006年12月の「とよはし100祭」事業終了によって基本的な塗装に戻された)。
この車両は井原より運動公園前へ分岐する支線のカーブ(半径11m)を曲がることが不可能のため、駅前-赤岩口間での運用に限定されている。
[編集] 福井鉄道
- 譲渡前の実績
福井市では2001年(平成13年)10月12日から11月4日までの24日間、JR福井駅前電車通りトランジットモール実験が実施された。このとき、モ800形802号が名鉄から福井鉄道に貸し出され、「すまいるトラム」として運転された実績がある。
- 車両譲渡~本格運用
2005年(平成17年)、福井鉄道へは4年前に福井を走った802号に加え803号の2両が譲渡された。名鉄岐阜工場にて改装工事を行い、9月末から10月初めにかけ、名鉄岐阜市内線のモ770形とともに搬出された。
福井搬入後についてまとめると、以下の通りになる(2005年)。
- 10月15日の鉄道の日イベントにて公開と工場構内での試運転が行われた。
- 10月末の国民文化祭の期間中(10月21日~11月3日)には、1両(803)が市内線限定(福井駅前-田原町間)の運行を行った。
- 11月19日に、中部地区路面電車サミット(11月20日)の開催を記念し、事前申し込みの有った参加者を対象に市内線(福井駅前-田原町間)での試乗会が行われた。
- 車両の変更点
福井鉄道へ譲渡された車両の塗装は、白を基調としており、前面部窓の下と側面部の窓部分に青帯、車両下部に黄緑と緑の帯が塗装されている。それぞれの色が、福井の雪、海、野、山を表現している。また、側面部のドア付近に福井鉄道のロゴマークが付されている。このデザインは、同時期に搬入されているモ770形も同じである。
[編集] 主要諸元
- 製造初年:2000年
- 全長:14780mm
- 全幅:2220mm
- 全高:3650mm
- 自重:18.9t
- 車体構造:鋼製
- 定員:72人(座席30人)
- 出力・駆動方式:60.0kw×2、VVVFインバータ制御方式
[編集] 関連項目
- 名古屋鉄道の車両
- 現用車両
- 特急用電車 : 2000系・2200系 | 1000系・1030系・1200系・1230系・1800系・1850系 | 1600系
- 一般用電車(SR系高性能車) : 7000系・7100系・7700系 | 5700系・5300系 | 6000系・6500系・6600系・6800系 | 1380系
- 一般用電車(VVVF車) : 3500系II・3700系III・3100系 | 3300系III・3150系
- 地下鉄乗入用電車 : 100系・200系 | 300系
- AL系電車 : 6650系・6750系
- 電気機関車 : デキ300形 | デキ370形 | デキ400形 | デキ600形
- 過去の車両
- AL系電車 モ3300形・モ3600形・ク2040形 | モ800形I | モ850形 | 3400系 | 3500系I | 3550系 | 3560系 | 3600系・3650系 | 3700系I | 3800系 | 3850系 | 3880系 | 3900系 | 7300系 | 3300系II
- HL系電車(車体更新車) : 3700系II・3730系・3770系・3780系 | 3790系
- SR系高性能電車 : 5000系・5200系 | 5500系 | 7500系 | 8800系
- 600V鉄道線用電車 : モ700形・モ750形 | モ3080形・ク2020形・ク2320形
- 600V軌道線用電車 : モ510形 | モ520形 | モ550形 | モ560形 | モ570形 | モ580形 | モ590形 | モ600形 | モ770形 | モ780形 | モ800形II | モ870形 | モ880形
- 気動車 : キハ10形・キハ20形・キハ30形 | キハ8000系 | キハ8500系
- 現用車両