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大学入試センター試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大学入試センター試験(だいがくにゅうしセンターしけん)とは、独立行政法人大学入試センターによって例年1月中旬の土曜日日曜日の2日間にわたって行われる日本の大学の共通入学試験である。正式名称は大学入学者選抜大学入試センター試験であるが、一般にはセンター試験と呼ぶ場合が多く、大学入試センター自身もセンター試験と称している。また受験生の間では「センター」「セ試」で通じる場合が多い。なお公式の英語訳はNational Center Test for University Admissionsである。

目次

[編集] 概要

受験生に配布された問題冊子
受験生に配布された問題冊子

全問マークシート方式で、各科目の高等学校学習指導要領に沿って出題される。試験が行われる1月中旬は厳冬期に当たるため、により公共交通機関のダイヤに混乱が生じた場合には、開始時刻を遅らせるなどの措置が取られることが多い。

1979年度から国公立大学大学共通一次試験(共通一次)が、1989年度まで実施されていた。これは入学試験問題の奇問・難問をなくしたり、歴史などの重箱の隅をつついたりするような設問をなくし、一定の学力基準を測るものとして導入されたものである。しかし実際にはこういった設問を完全に排除することができず、1990年度より名称を「大学入試センター試験」に改め、試験自体を流動性のあるものに改めた。2006年度には英語科のリスニング試験がICプレイヤーを利用して初めて実施され、トラブルも含めて話題となった。

国公立大学を受験する際にはセンター試験は必須である。生徒の学力低下の懸念からほとんどの国公立大学ではセンター試験で5教科7科目(文系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、公民、理科1科目が、理系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史または公民、理科2科目が主流)を必須としている。また近年は私立大学の参加も増加している。私立大学の場合、センター試験の入学者選抜への採用方法は各大学が個別に設定しており、センター試験のみで合否が判定される場合と、センター試験を受験した後に各大学が出題する個別学力検査(いわゆる二次試験)を受験しなければならない場合とがある。

問題は前述のとおり、学習指導要領の域を越えてはいけないため、教科書の範囲からの出題だが、ただ単に教科書の例題だけでなく応用問題も出るほか、量が多いため、後述する自己採点を含めて受験生は模試などでトレーニングをしておかないと思うように得点できない。問題によっては、ある年の問題の難易度が低い(平均点が高い)と、翌年は難易度が上がる(平均点が下がる)といった傾向(逆もあり)もみられる。平均点は大体6割程度になるように作成されているが、易しくて7割を超えたり、あまりに難しすぎて5割にも満たなかったりすることもある。

試験会場は、1997年度まで国立大学および高校会場での実施であったが、1998年度からは私立大学でも実施されるようになった。

試験初日前日の金曜日は、「設営準備日」として試験会場の建物とその周辺を大学職員・教職員関係者以外立入禁止とする大学もある。

センター試験が実施される2日間は、なぜか全国的に大雪になる(ぐずつく)ことが多く、1994年1997年2001年2004年2006年には関東地方で雪が降ったこともあり、「センター試験の日は雪の特異日」というのが、もはや通説になりつつある。

[編集] 沿革

  • 1990年大学共通一次試験を改称し「大学入試センター試験(第1回)」を実施
  • 1997年学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定
    • 外国語に「中国語」を導入
    • 「国語」を「国語I」「国語I・II」に分割
    • 社会グループを地理歴史グループと公民グループに分割
    • 新教科である「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」をそれぞれ導入、「倫理,政治・経済」を「倫理」「政治・経済」に分割
    • 数学AグループとBグループを数学 (1) グループと (2) グループに改称
    • 新教科である「数学I」「数学I・数学A」をそれぞれ導入(数学 (1) グループ)
    • 「簿記会計I・II」を「簿記」に変更、新教科である「情報関係基礎」を導入(数学 (2) グループ)
    • 理科Aグループ・Bグループを、それぞれ理科 (1) グループ・ (2) グループに改称(Cグループは廃止)
    • 新教科である「総合理科」「物理IA」「物理IB」「生物IA」「生物IB」「化学IA」「化学IB」「地学IA」「地学IB」をそれぞれ導入
      (1997年度・1998年度は旧課程履修者のため、旧数学I・旧数学II・理科Iも平行して実施)
  • 1999年:旧数学I・旧数学II・理科Iを廃止
  • 2002年:外国語に「韓国語」を導入
  • 2004年:生物IA・生物IBを理科 (1) グループから理科 (3) グループに移行
  • 2006年:学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定
    • 外国語のうち、英語リスニング試験を正式導入(配点50点・試験時間30分)
    • 「国語I」「国語I・II」を「国語」に統合
    • 簿記」を「簿記・会計」に変更、「工業数理」を「工業数理基礎」に変更(数学 (2) グループ)
    • 「総合理科」を廃止し、「理科総合A」(物理・化学分野)「理科総合B」(生物・地学分野)に分割
      (2006年度に限り旧課程履修者のため、物理IA・化学IA・生物IA・地学IA・総合理科も平行して実施)
  • 2007年:物理IA・化学IA・生物IA・地学IA・総合理科を廃止。

[編集] 問題作成から試験実施までの流れ

センター試験は、国公私立の大学教員を中心に約400人が問題を作成している。各教科ごとに問題作成委員会が設置され、委員の任期は2年で、毎年約半数ずつ交代する仕組みとなっている。また、学習指導要領から問題が逸脱していないかを確認するため、少数ではあるが高校の教員も参加している。

出来上がった問題は約100人の点検を経て印刷に回され、試験数日前に全国約700の会場に送られ、当日まで厳重に保管される。これらの過程で、全体で数千人が関わってくる。大学入試センターは、機密事項であることを理由に、問題冊子がどこで印刷されているかを公表していない。事実上、国が実施する試験のため、問題漏洩を防ぐという観点から、国立印刷局もしくは刑務所などで印刷されていると考えられている。問題用紙の試験場までの輸送も特別な専用車を用いて、警備員常駐で輸送されているという。

問題自体も漏洩に備え、数パターン作成される。実際に本試験として使われるものは直前に決定され、本試験で使われなかったものが追試験に回される。また、共通一次試験時代に模擬試験三大予備校など)と国語の出典が一致したことがあったため、問題作成者も模擬試験の検査をし、出典が重なっていた場合は問題を差し替えている。そのため、現在では模試と実際の試験問題の出典が一致することはなくなった。しかし、講習会などで使われている教材までは目が行き届かないようで、理科や地歴公民などで似たような問題が出されることが多々あり、その場合にはそれぞれの予備校のホームページで報告される。

[編集] 受験までの流れ

センター試験においても各大学が実施する入学試験と同様に、厳格に出願方法などが定められている。志願者は大学入試センターが配布している「受験案内」(無料)を参照しながら出願から受験までの段階を踏むこととなる。ただし、志願する時点で高校三年生の者(いわゆる卒業見込者 = 現役生)は志願票送付から受験票の受け取りまでを全て在学する高等学校に任せる。ここが一般の大学入試とは大きく異なる点である。

  • 受験までの流れ
    • 検定料の払込:9月初旬~10月中旬
      期間内に受験案内に添付された払込書を利用して、郵便局銀行などの窓口で払い込む。このとき、払込書の裏面に記載されている指定金融機関で払い込むと、手数料が無料となる。受験の区分によって料金は2種類に分けられており、2科目以下の受験では12,000円、3科目以上の受験では18,000円となっている。成績開示希望の場合は別途手数料800円がかかる。
    • 出願:10月初旬~10月中旬
      志願票に必要事項を記入し、検定料払込の際に窓口で受け取る「検定料受付証明書」を貼り付けた上で、大学入試センターに送付する。ただし卒業見込者は学校単位で送付する。例年、生年月日の記入漏れや記入間違いが1,000件以上発生しており、自分の性別を間違えて志願票に記入してしまうケースも多く、大学入試センターは注意を促している。
    • 登録内容の確認:10月下旬以降
      大学入試センターより志願票内容を確認する「大学入試センター確認はがき(出願受理通知)」が志願者宛に届く。ただし卒業見込者は学校単位で届くので、個人宛に届くことはない。
    • 受験票送付:12月上旬
      登録された内容を基に受験票が送付される。ただし卒業見込者は学校単位で届く。受験票には各大学別の試験に必要な成績請求票、成績開示変更届に加え、写真票が付属しており、受験日までに2枚の同一証明写真を貼り付けておく必要がある。写真票は試験当日に回収され、本人照合に使用される。
    • 受験:1月の第3土曜日・日曜日
      受験票に示されている指定の受験会場で受験する。

[編集] 試験形式

ほぼ全ての科目で、設問に対して与えられた選択肢の中から、受験者が正解と思うものの数字を選択し、それを解答用紙(マークシート)の指定された解答欄に鉛筆でマークする(塗りつぶす)、というものである。

外国語(英語リスニング試験を含む)・国語・地理歴史・公民の問題では、各問いに解答番号が「1」から連続して振られており、表示された番号と同じ解答番号の解答欄にマークする。理科や数学の一部も同様であるが、マークシートの解答欄は大問ごとに区切られ、解答番号も大問ごとに「1」から振られている。最初(第1問)から取り組む必要はないが、マークのズレを起こしやすいため注意が必要である。

[編集] 数学における解答方式

数学(「工業数理」の一部および「簿記」「情報関係基礎」を除く)の解答方式は例外的で、一部の問いを除き、問題文中にある「ア」「イウ」といった枠で囲まれた文字に当てはまる数字や符号を直接マークする形式をとっている。誘導形式が多く、解けない問題があると、その先はできないことがある。また共通一次時代にあった、いわゆる「ダミー」は無いために、自分で出した数値と問題用紙の桁数が違うとその数値は誤答ということになる。決められた区域内の文字のマークが正解とすべて一致しないと得点にはならない。

  • 例1:第1問の問題文中で『~の最小値は [アイウ]』と書かれた部分に対し「-54」と答えたい場合、問題番号1の解答欄「ア」にある (-) をマークし、同様に解答欄「イ」の (5)、解答欄「ウ」の (4) をそれぞれマークする。
  • 例2:問題文中で f(a+3) = [エオカ] / [キ] と書かれた部分に対し \mathbf{-2 a \over 3} と答えたい場合、解答欄「エ」の (-)、「オ」の (2)、「カ」の (a)、「キ」の (3) をマークする。
    なお、分数を含む形で解答する場合は、既約分数で答えなければならないことになっているので、上の例で \mathbf{-4 a \over 6} と答えた場合、数学的に同じ値であっても不正解となる。また、正負の符号は必ず分子に付けることとなっている。
  • 例3:問題文中で OA = [ク] √[ケ] と書かれた部分に対し \mathbf{6\sqrt{2}} と答えたい場合、解答欄「ク」の (6)、解答欄「ケ」の (2) をマークする。
    なお、根号を含む形で解答する場合は、根号の中に現れる自然数が最小となる形で答えなければならないことになっているので、上の例で \mathbf{3\sqrt{8}} と答えた場合、数学的に同じ値であっても不正解となる。
  • 例4:問題文中で『OD = [コサシ]』と書かれた部分に対し「2BC」と答えたい場合、解答欄「コ」の (2)、解答欄「サ」の (B)、解答欄「シ」の (C) をマークする。なお、合同相似条件ベクトルのような頂点の対応関係や向きを考慮する必要がある場合を除いては、BCとしてもCBとしてもどちらでも正解になる。
    なお、このように図形上の点を答えさせる場合は、『ただし、[サシ] については、 (A) から (G) までの適切な記号を入れよ。』との記述があることが多い。
  • 例5:問題文中の [ス] に関して『ただし、[ス] については、当てはまるものを、次の (0)(4) から一つ選べ。』と指示があり、この部分に対し (2) を選びたい場合、解答欄「ス」の (2) をマークする。
  • 極めて技術的な解答方法として、解が小さい順から[アイウ][エ][オカ]とある時、[アイウ]は必ず負の解であり、[オカ]は二桁の解となる。このように実際の学力とは別に解答が導き出せるため、解答方法として果たして適切な方法であるかは疑問ともいわれている。

[編集] 科目選択

地歴科の平均点の推移
地歴科の平均点の推移
公民科の平均点の推移
公民科の平均点の推移

全科目は9グループに分類されており、この分類は同一日時に行われる科目の群と一致する。受験者は各グループからは1科目ずつ(すなわち、最大9科目)しか受験できない。出願する大学により指定された科目は受験する必要があるが、必要のない科目は受験しなくてもよい。出願時に受験する科目を指定しなければいけないが、これはあくまでも印刷部数のおおまかな数を把握するためであり、どの科目を受験するかは、試験当日に決定することができる。また、試験時間中に急遽変更することもできるが、選択教科マーク欄のマークミスが発生しやすいため、注意が必要である。

なお、

  • 「外国語」グループにおける「英語」以外の科目(ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語)
  • 「数学(2)」グループにおける「工業数理基礎」「簿記・会計」「情報関係基礎」

の選択を希望する受験者は、出願時に「別冊子試験問題の配布希望」欄に配布を希望する教科を申請しなければならない。希望しなかった受験者には、試験当日に上記科目の問題冊子は配布されない。

センター試験では、高校での履修の有無などによる科目の受験制限はない。また、多くの大学では理科や地歴公民を必要数以上受験した場合、高得点のものを採用するため、とりあえず受験してみる、といった受験者もいる。 しかし、大学によっては、「選択解答できる者は、高等学校において履修した者に限る」といった受験制限をしている場合(「地理歴史のA科目」「工業数理基礎」「簿記・会計」「情報関係基礎」など)があるため、募集要項などで確認する必要がある。

マークシートに受験した科目をマークしていなかったり、複数の科目にマークしたりした場合は理由を問わず0点となる。2007年度からは科目選択欄の横に「チェック欄」が付けられ、マークミスを防止する仕組みが整えられた。なお、「国語」と「英語(リスニング)」は1科目しかないため受験科目のマーク欄はない。また、「外国語」において別冊子の配布を希望しなかった場合は、受験科目のマークをしなかった場合であっても「英語」として採点される。

[編集] 得点調整

得点調整方法
得点調整方法

センター試験の本試験において、同一グループの科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが問題の難易差に基づくものと認められる場合には、「得点調整」と呼ばれる統計的処理が行われる。適用対象グループは、「地理歴史のB科目(3科目)」「公民」「理科のI科目(4科目)」の3つのみである。

センター試験終了約1週間後に行われる平均点中間発表の際に予告された上で実施される。対象となる受験者と対象とならない受験者間での公平性の観点から、平均点差のすべてを調整するのではなく、調整後も平均点差が15点となるように調整される。この15点の差は、通常起こりうる平均点の変動範囲である。

得点調整は各グループごとに「分位点差縮少法」という方式を使って行われる。分位点差縮少法とは、得点調整の対象となる科目のうち、最も平均点の高い科目と最も平均点の低い科目の得点の累積分布を比較し、図の縦軸の受験者数の累積割合 (%) が等しい点(等分位点)の差(分位点差)を一定の比率で縮小する方法である。また、平均点が最大と最小以外の科目についても、素点の平均点差が同一の比率で縮小されるように調整される。縮小の比率は、15点÷(最も平均点の高い科目の平均点 - 最も平均点の低い科目の平均点)と計算される。

しかし、実際に調整が行われることは極めてまれであり、センター試験の歴史の中でも数回しか行われていない。1998年度には上記のルールに従い、地理歴史において、日本史の得点を地理に近づける形で調整が行われた。また、共通一次時代の1989年度には、物理・生物があまりに低く化学が非常に高かったので調整が行われたが、これについては分位点差縮少法ではなかったため、0点でも50点近くにまで調整されたこともあり、批判が多く出された。ひどい例の場合、ただ座っていただけで数十点獲得した受験生もいたのだ。また89年度の場合、設定予告なしで行われたため、制度としても問題があるものだった。

[編集] 外国語の難易度と点数の扱い

外国語科の平均点の推移(リスニングテストを除く)
外国語科の平均点の推移(リスニングテストを除く)

センター試験では開始当初、共通一次試験と同じく英語ドイツ語フランス語の3ヶ国語のみ試験を行っていた。その後、1997年度からは中国語が、2002年度からは韓国語がそれぞれ導入されている。

韓国語と中国語の平均点は、毎年、英語などと比べて数十点高い。これは、朝鮮学校生徒や在日華僑など、それらの言語をいわば母国語または母語として操る人が受験生の中に多いためと推測される。試験における公正さの観点から、これを疑問視する声が上がっており、得点調整を行うべきとの意見もある。

私立大学では学部を問わず、センター試験での英語以外の外国語の得点が認められる場合が多い。ただし、韓国語のみ認められない場合などもある。 国公立大学については、ドイツ語・フランス語は、学部を問わず認められることが多い。中国語も、比較的選択可能な大学は多い。

なお、外国語の試験で英語にリスニングが導入された結果、英語の総合得点(素点)が250点満点となるため、他の外国語の200点満点と50点の差が生じる。差分の調整方法は各大学によって異なる。以下にいくつかの例を示す。

  • 筆記とリスニングの合計250点満点を0.8倍して、200点満点に換算する方法
  • 筆記とリスニングの各得点を調整し、合計すると200点満点になるように換算する方法
    例:筆記200点満点を180点満点に換算、リスニング50点満点を20点満点に換算した後合算する。
  • 筆記のみ200点満点の点数と、筆記とリスニングの合計250点満点を0.8倍して200点満点に換算したものとを比較し、得点の高い方を英語の得点として採用する方法
  • リスニングの得点を考慮せず、筆記の得点のみ参考とする方法
  • 差分を調整せず、そのまま250点満点とする方法

[編集] 試験結果

受験生は各大学に出願する前に自身のセンター試験での成績を知ることができない。そのため、解答時に問題用紙に自身の解答をメモしておき、後日、新聞などで発表される正解・配点と照合して自身の成績を推定する、いわゆる「自己採点」を行う。解答に「△(部分点)」はなく「○(正解)」か「×(誤答)」しかないので、これが唯一の情報源になるのだが、自分の解答を正確に控えておかなかったり、マークミスなどを犯していると、自己採点の点数と実際の得点が違うということが起こり、受験校を決める上で致命的なミスにつながることもある。

なお、現在では、採点結果を大手予備校に送ることにより、ある大学の志望者の中における成績の位置を知ることのできるシステムも整備されている。予備校は試験終了翌日の夜までに全国の高校・予備校・書店から申込者の自己採点結果を回収し、コンピュータシステムを使いデータを分析する。そして、試験終了から4日後には申込者に分析結果を配布するのである。予備校では、このデータ分析に加えて、各高校などに配布する成績資料も同時に作成しなければいけないため、この時期は繁忙を極めている。なお、受験者の多くは複数の予備校に自己採点の結果を送るため、予備校ごとに順位や合格判定の結果に大きな差が出ることはあまりない。代表的なものでは、代々木ゼミナールのセンターリサーチ、河合塾のセンター・リサーチ(バンザイシステム)、駿台予備学校ベネッセコーポレーションのデータネットなどが挙げられる。

また、2002年度からは大学入試センターによる「成績開示」が導入された。出願時に成績開示を希望し、別途手数料800円を支払った受験者のみに対して行われており、すべての大学入試が完了した後で各科目の成績が印刷された用紙が書留郵便で郵送される。通例ではその年の5月頃、センターは4月下旬までに送付するとしている。国語は各分野別(近代以降の文章・古文・漢文)に、英語は筆記とリスニングが別になっている。なお、成績開示は取りやめることもできるが、手数料の返還はない。

[編集] 入試における利用

大学により、最終判定におけるセンター試験の利用法は異なるが、大きく3系統にまとめることができる。

センター試験単独判定型
センター試験の結果のみで合否を判定するタイプ。私立大学で一般入試(大学独自の問題による入試)と並行して行われる場合が多い。国立大学の後期試験でも、センター試験だけで合否を決めている例もある。
センター試験 + 二次試験型
センター試験の結果と二次試験(大学によっては、小論文・面接等も課される)の結果を合計して合否を判定するタイプ。ほとんどの国公立大学はこれに当てはまる。センター試験の点数による第一段階選抜(いわゆる「足切り」)が行われる場合がある。
センター試験(傾斜配点)+二次試験型
センター試験のうち、一部の科目のみを点数として採用し、かつ各教科の本来の点を4分の3~4分の1程度に圧縮し、そこに二次試験の結果を合計して合否を判定する。京都大学が特に好んで採用している。
センター試験独立利用型
センター試験の結果を第一段階選抜にのみ利用し、最終的な合否の判定は二次試験の結果のみで行うタイプ。


大学入試に関する詳しい情報については、大学受験を参照。

[編集] 大学入試センター試験と「マークミス」

2006年5月25日、大学入試センターは1984年度以降23年間、解答用紙のマークシートに受験番号などをマークし忘れた受験生の答案でも0点にせずに、受験者を割り出して採点していた事実を明らかにした。

受験番号のマーク漏れなどがあると、電算処理でエラーが出て採点できない。このためセンターでは、解答用紙に記入された名前や、座席順などから受験生を割り出し、手作業で受験番号を入力してきた。受験番号のマークミスなどがあった際の措置について、センターのWebサイトでは「個人が特定できた場合に限り、採点します」と説明していたが、実際には全員を救済してきた。一方、受験案内では「受験番号が正しくマークされていない場合は、採点できないことがあります」とだけ記している。

共通一次試験は受験番号の記入ミスを、1979年度から5年間は採点せず一律0点としていた。しかし、「一発勝負の重要な試験であまりに酷だ」との声が上がり、センター内に委員会を設けて検討した結果、救済することを決めたのである。センターでは「高校3年間の学習到達度を測るという趣旨も考慮し、解答とは異なる部分のミスに限定して教育的配慮をした」と説明している。なお、受験科目が複数ある教科(地歴公民科など、外国語を除く)については、採点者が受験者の回答科目を半ば推測的に判断することになるため、受験科目欄の塗り忘れを救済していない。

この救済措置について当時、文部科学大臣を務めていた小坂憲次は、「何年も受験のためにがんばってきた努力を、たった1つのマークミスですべてを失わせるのは、受験者の大半が現役生であることを考えるとあまりにも酷過ぎる」と、センターの対応に理解を示した。一方で文科省は「大学受験生を大人とみて自己責任を負わせるべきなのか、それとも子どもと見て手を差しのべるべきなのか、判断が難しい」とコメントしている。

[編集] 英語(リスニング)について

受験生ひとりに一台ずつ配られたICプレイヤー(2006年度)
受験生ひとりに一台ずつ配られたICプレイヤー(2006年度)
受験生ひとりに一台ずつ配られたICプレイヤー(2007年度)
受験生ひとりに一台ずつ配られたICプレイヤー(2007年度)
あらかじめイヤホンが差し込まれた状態で配布されたICプレーヤー(開封前の様子)
あらかじめイヤホンが差し込まれた状態で配布されたICプレーヤー(開封前の様子)
ICプレーヤー本体
ICプレーヤー本体
金メッキになったイヤホンプラグ
金メッキになったイヤホンプラグ

2006年度から「外国語」で英語を選択した受験生には、「英語(リスニング)」の受験が必要となった。これは、「高校生は読み書きだけでなく、実用的な英語を身につけてほしい」という大学側の要望がある。当初は各会場のスピーカーで音声を流す案も検討されたが、設備面の問題や条件を均質にする配慮から、メモリーに録音された音声を再生するICプレーヤーによる「個別音源方式」に決まった。

リスニング試験は、80分の筆記試験後に行われ、解答時間30分・配点は50点となっている。ICプレーヤーは再生機能しかなく、巻き戻しや一時停止などはできない仕組みとなっている。なお、約2,000円相当のICプレーヤーは、試験終了後希望する者は持ち帰ることができる。また、受験生が持ち帰らなかったICプレーヤーは希望する高校などに配布され、再利用されている。

当初、大学入試センターは、ICプレーヤーについて、「メーカーが出荷前に1台ごとに振動検査を行い、電池も新品を入れているため、途中で動かなくなる事態は考えられない」「プレーヤーは腰の高さから落として動作を確認しており、故障はまずない」と自信満々な姿勢を示していた。しかし、教育関係者などは、英語がセンター試験で受験者数がかなり多いことから、50万台以上の機械を使う試験で、1台も故障せず、1人の受験生も操作ミスをしないということが、果たしてあるだろうかとの疑問を呈していた。

2004年9月26日には、リスニングテストの「試行テスト」がセンター試験を利用する大学を会場として行われた(全国503大学・508会場)。受験対象となったのは、2006年に現役受験生となった当時の高校2年生で、希望者の中から抽選された約4万人が受験した。試行テストは、本番で試験を円滑に行うため、大学側に実施の手順に慣れてもらうことや、ICプレーヤーの性能確認(聞こえや作動具合、ヘッドホンとイヤホンの違い)などが主な目的であった。なお、試行テストの試験結果は受験者には通知されなかった。この試行テストでは、ICプレーヤーによる大きなトラブルは発生せず、「個別音源方式で円滑な試験実施は可能」と大学入試センターは判断した。

しかし、教育関係者の個別音源方式に対する不安は現実のものとなり、東京など20都府県の試験会場で、ICプレーヤーの故障などが発生したとされて再テストが行われるというトラブルが相次いで発生した。約1100人の内1人にトラブルがあったとされ、三大予備校が実施したリスニング試験の模擬試験に比べるとトラブルの発生率が高かった。大学入試センター側の謝罪は無かったが、当時の文部科学大臣が陳謝する事態にまで発展してしまった。

2007年度は、前年度のトラブルを反省し、イヤホンを最初から装着するなどの対策を行ったが、227大学で少なくとも351人から「音声が聞き取りにくい」などとICプレーヤーの不具合があり、少なくとも381人が再テストを行った。

2006年度に使用されたICプレーヤーは、停止後に再度再生をするためには、リセットする必要があったが、2007年度に使用されたICプレイヤーは問題部分の再生が終了した後5分経過すれば、電池の抜き差しをしなくとも再度電源を入れ、再生することが可能になった。本体も塗装が変更されたほか、全てのボタン操作に2秒程度の長押しを必要とするようになった。その注意を促す為に、本体には光るまで長く押すとの表示がなされている。2006年度のものは、電池の残量が不足していても一時的に作動したが、2007年度のものは、ランプが点滅し作動できないようになった。また、配布の際、ホコリの付着を防ぐために音声メモリーを個別に包装している。イヤホンプラグも金メッキに塗装され、既に本体に接続された状態で配布された。

なお、大学入試センターは機密事項であることを理由に、ICプレイヤーがどこのメーカーのものであるかを公表していない。しかし、音声メモリーがメモリースティックであること、ソニー製の電池が使われていること、中の基板がミツミ電機製であることなどから、ソニーが大学入試センターと契約を結び、ミツミ電機に製造を委託しているのではないかと考えられている。

また、地球環境や資源保護の観点から、ICプレイヤーを使い捨てにしていることを問題視する専門家もいる。しかし、ICプレイヤーを繰り返し使用する場合と、使い捨てにする場合とではコストの面で大きな違いが出てくる。業者への輸送経費や、電池交換・動作確認・清掃などを考えても、直接受験料として受験生の負担になるコスト増は避けたいとの大学入試センターの意向が見られる。なお、韓国大学修学能力試験では、以前は問題をFM放送を使って各試験会場に送信し、それぞれの校内放送で一斉に聞かせるという形式をとっていた。しかし、受信などでトラブルが発生したため、現在では問題が録音されているカセットテープを校内放送を使って一斉に聞かせる形式に切り替わっている。音量や音質についてのトラブルで、一部の会場で一時停止が行われるが、日本のような大規模なトラブルは発生していない。また、アメリカ大学進学適性試験では、ポータブルCDプレーヤーを受験者個人で用意させ、問題CDを聞かせるという形式をとっている。以前はカセットプレーヤーを持参させた。

[編集] 日程・出題科目

2007年度の実施日程と出題科目は以下の通り。全6教科33科目。志望する大学の学部(または学科)が指定した科目を選択して受験する。ただし、例外として外国語では、「英語(筆記)」を受験する場合、志望する大学の学部・学科が「英語(リスニング)」を指定していなくても、リスニング試験を受験しなくてはならない。また、国語において、志望する大学の学部・学科が指定する特定の分野のみ解答する場合でも、試験時間は変わらない。

[編集] 第1日

2007年1月20日本試験実施

  • 公民: 各100点満点、試験時間60分
  • 地理歴史: 各100点満点、試験時間60分
  • 国語: 200点満点(近代以降の文章100点、古文50点、漢文50点)、試験時間80分
    • 国語
  • 外国語(筆記): 各200点満点、試験時間80分
  • 外国語(リスニング): 50点満点、試験時間60分(機器等説明時間30分、問題解答時間30分)
    • 英語
      外国語(筆記)で「英語」を選択する受験生は必ず受験しなくてはならない。ただし、重度の難聴者については免除される。また、「英語」以外の外国語を選択した者は受験できない。

[編集] 第2日

2007年1月21日本試験実施

  • 理科 (1): 各100点満点、試験時間60分
  • 数学 (1): 各100点満点、試験時間60分
    • 数学I
    • 数学I・数学A
  • 数学 (2): 各100点満点、試験時間60分
    • 数学II
    • 数学II・数学B
      数学Bについては、数列ベクトル統計とコンピュータ、数値計算とコンピュータから2題を選択して解答する。
    • 工業数理基礎
    • 簿記会計
    会計については、会計の基礎、貸借対照表損益計算書財務諸表の活用、の4項目のうち、会計の基礎が出題される。
    • 情報関係基礎
      職業教育が主となっている農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の8教科に設定されている情報に関する基礎的科目が出題される(農業科:「農業情報処理」、工業科:「情報技術基礎」、商業科:「情報処理」、水産科:「水産情報技術」、家庭科:「家庭情報処理」、看護科:「看護情報処理」、情報科:「情報産業と社会」、福祉科:「福祉情報処理」)。
  • 理科 (2): 各100点満点、試験時間60分
  • 理科 (3): 各100点満点、試験時間60分

[編集] 追試験

疾病などやむを得ない事情により本試験を受験することができなかった者は、本試験の1週間後に東京都と京阪神地方の2会場で行われる追試験を受験することになる。追試験の方が本試験よりも難度が高いことが多い。なお、2006年度に関しては、追試験の問題が非公表だったため、教育関係者などは国の「情報公開制度」を利用し問題を閲覧した。

  • 1998年度 1998年1月24日・25日に実施
  • 1999年度 1999年1月21日・22日に実施
  • 2000年度 2000年1月22日・23日に実施
  • 2001年度 2001年1月27日・28日に実施(受験対象者:258名)
  • 2002年度 2002年1月26日・27日に東京水産大学(受験対象者:138名)と大阪大学(91名)で実施
  • 2003年度 2003年1月25日・26日に東京商船大学(受験対象者:266名)と神戸大学(139名)で実施
  • 2004年度 2004年1月24日・25日に東京芸術大学(受験対象者:253名)、京都大学(119名)、お茶の水女子大学点字試験場1名)で実施
    • 雪害のため、北見工業大学で第1日目実施分のみ4名が再試験の対象となった。
  • 2005年度 2005年1月22日・23日に東京海洋大学(受験対象者:101名)と大阪大学(76名)で実施
  • 2006年度 2006年1月28日・29日に東京芸術大学(受験対象者:144名)と神戸大学(受験対象者:30名)で実施
    • 2会場計174名(追試験165名、再試験9名)が受験
    • 正規の試験時間が確保されなかったため、山陽学園大学で6名が国語のみ再試験の対象となった。
    • 停電のため福岡国際大学で1名が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。
    • ICプレーヤーの不具合等で6大学で9人が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。
  • 2007年度 2007年1月27日・28日に東京海洋大学(受験対象者:69名)と京都教育大学(46名)で実施
    • 正規の試験時間が確保されなかったため、滋賀大学で1名が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。

[編集] 過去のトラブル

  • 1997年度から、それまで「国語I・II」のみであった国語が、「国語I」「国語I・II」の2科目に分割された。2科目は同一冊子の中で「国語I」「国語I・II」の順に印刷されていたが、両科目とも問題構成が同一であったため、本来「国語I・II」を解答すべきであった学生が、違いに気づかずに「国語I」のみを解答するといった事態が初年度に続出した(それ以降も度々起きているが、模試ではこれに合わせて問題冊子を編集している)。大多数の大学では、入試科目として「国語I・II」のみしか認めていなかったため、「国語I・II」のつもりで「国語I」を解答してしまった受験生は大幅に得点を失うこととなったが、これに関する救済措置は一切なされなかった。なお、「国語I」は2005年度を最後に廃止され、2006年度からは再び「国語」1科目に戻っている。
  • 国語同様、地理歴史もA・B科目ともに同一冊子に編集されていて、さらに途中まで問題が全く一緒だったために解答科目を間違うといった事態が起きている。
  • 2001年度のセンター試験本試験「英語I・II」第6問の小説文が、三友社出版発行の高等学校英語教科書掲載の文章と出典が同じで、ストーリーも酷似していたことが指摘されている(読売新聞 2001年1月27日)。ただし、この教科書がシェア0.25%(採択部数 4,000部)と少なかった上、当時は現在ほどには入試倫理に関して各所がうるさくなかったためか、さほど大きな問題とはならなかった。
  • 2005年度センター試験本試験「国語I」第1問(現代文評論)で、大岡信抽象絵画への招待』が出典に用いられたが、この文章は高等学校国語教科書第一学習社『高等学校 現代文2』)に所収されていたほか、過年度にも様々な大学入試や模擬試験での使用実績のある文章であった。大学入試センターは、問題作成時点でのチェックミスと発表、異例の記者会見を開き謝罪したが、チェック自体がきわめて杜撰なものであったことが後日指摘され、社会的非難を受けた。この件に関しても、大学入試センターは得点調整・再試験などの措置は一切講じていない。
  • 同じく2005年度、電子掲示板2ちゃんねる)に英語・国語の出題内容を示唆する書き込みがなされ、文部科学省は大学入試センターに対して内容流出の有無を含めた調査を要請したが、結局、書き込み自体は流出ではなく単なる偶然として処理された。
  • 上述のとおり、2006年度からは英語のコミュニケーション能力をより重視するという観点から英語受験者にはリスニング試験が必須となった。リスニングは受験生一人一人にICプレイヤーを配布する形で行われるが、そのICプレイヤーが不具合を起こすトラブルが2006年度、2007年度と連続で多数報告されており、2006年度は451人、2007年度は381人の受験生が再テストを受けることになった(ただし、リスニング試験に関しての一定確率でのトラブルはセンター側としても想定済みの事態であり、試験当日における対応マニュアルなども試験監督者に渡されている)。大学入試センターによるとICプレイヤーを製造するメーカーとは3年契約を結んでいるため、2008年度も同様の形式で行われる。
  • 2006年度、「政治・経済」において、実教出版発行の教科書の日本と他国のGDP比較のグラフと類似のものが出たが、教科書に誤りがあったため間違えた受験生が発生した。しかし、救済措置は取られなかった。
  • 2007年度、20日に実施されたセンター試験のうち、公民と地理歴史の模範解答が産経新聞電子版に、発表解禁前に約30分に渡って掲載された。
  • 毎年「試験が遅れて始まったのに定刻通りに終了した」「試験官のミスで定刻より若干早めに終了した」といった、試験時間の確保不足に関するトラブルが相次いでおり、近年でも数は少ないものの同様のトラブルが起きている。

[編集] 試験に関する批判

  • 1998年度、センター試験本試験「英語 I・II」第5問で虫歯治療に関する英文が出題されたが、その内容が現在の歯科技術に全く反するものであるとして、全国保険医団体連合会歯科協議会会長が大学入試センターに意見書を提出した。
  • 2004年度、センター試験本試験「世界史」において、「強制連行」などを確定的事実として扱っており、公正であるべきセンター試験がイデオロギー的に偏向しているという批判が「新しい歴史教科書をつくる会」によってなされ、同 7月には当時の受験生が原告となって大学入試センターを提訴するに至った [1]。さらに、藤岡信勝は過去のセンター試験の日本史・世界史の問題 25 年分を検証し、類似の問題点を含む出題が多数あることを指摘している [2]。この影響もあってか、センター試験の出題者氏名公表の動きが強まった。なお、訴訟は 2005年10月25日に請求棄却で終結している。
  • 2005年度、センター試験本試験「英語 I・II」第 5 問の天気図を素材とした設問で、気象学的にはあり得ない寒冷前線図が素材となっていると、気象予報士森田正光らが疑義を呈している(2005年1月19日「センター試験 英語の正解 理科なら×」東京新聞[3]
    これは、前掲の虫歯医療の英文と類似の問題点である。センター試験は、すべての大学受験生が共通に受験する試験という性格から、英語などの読解問題では、特定分野の知識を要求せず、一般常識と語学力のみで解答可能な作問を行う方針が望まれる。しかし、問題作成者(英語の場合は英語教員)が特定分野に素材を取った場合、その分野自体に関しては不案内であるため、常識から見ればさほど問題はなくても、専門分野の人から見ると問題点が見つかるといったケースが生じやすい。こうした背景には、語学教育における、実生活に近い教材 (real-life / authentic materials) を使おうとする方針もある。
  • また、2000年度、センター試験本試験「英語 I・II」第 5 問でコンピューターゲームに関する英文が出題されたが、このゲームが「常軌を逸したクソゲー」であるという批判も出されている。これは半ばジョークの領域であるが、やはり上述の虫歯治療や天気図に関する英文と同様、専門家(この場合はゲーマー)による専門的立場からの批判の一環であろう。なお、このコンピューターゲームと同じものが再現され、フリーソフトとして配布されている。
    この問題文中で登場し、ゲームの攻略法について熱く語る Pat は後に 2003年度の問題にも登場し、ピクニックに行った際に、リュックサックにしまった虫よけスプレーの場所を友人に完全に間違って教えるなど、その滅茶苦茶なキャラクター性から2ちゃんねるなどで話題となった。また、2007年にはリスニングに登場したが、Patは女性になり、話す場面もなかった。
  • 2004年、東北大学教授の森田康夫が、センター試験の数学の問題は「計算力」で解けてしまうため「数学力」の判定にはならないという批判を朝日新聞に寄稿した。同教授の調査によれば、東北大学が独自に行う二次試験の数学の成績とセンター数学の成績に特に強い相関関係は見られなかったと言う。
  • 2005年度、センター試験本試験「国語 I・II」第 3 問(古文)問 4 に関して、河合塾は「正解をひとつにしぼるのは困難」と指摘し、大学入試センターに対して公開質問状を提出した。問題は『日光山縁起』の一節で、5 つの選択肢のうち正しいもの 1 つを選ぶものだが、選択肢 (5)「不孝をわびたい」という気持ちを本文から読み取ることは困難であり、また選択肢 (2) にあるとの対話とも読み取れるとしている。
    この問題の背景としては、近年のセンター試験古文は、高校の学習範囲ではない江戸近代などの文章(平安文法を逸脱しているもの)が多く、また、物語になると、表面からはとても読み取れないような深いことを聞いており、センター試験レベルの出題ではない、といった点が挙げられる(田村秀行『田村のセンター国語ポイント講義』栄光2002年、p.8)。
  • 2007年度、センター試験本試験「世界史 B」小問 32 に関して河合塾は、「フランスでは、普仏戦争プロイセン = フランス戦争)の敗北第三共和政が成立した」という文を正文として扱う問題があったのに対し、東京書籍『新選世界史 B』(採択率 8.2 %)と三省堂『世界史 B』(同 3.9 %)では、第三共和政の開始を普仏戦争1870年として扱っており、学説的にも異同が見られることから、不適切な設問ではないかとする質問状を大学入試センターに送付した。これについて大学入試センターは21日、第三共和政が成立した時期については様々な説があるが、一般的には普仏戦争に成立したと考えられているとして、明らかな出題ミスではないと回答した。だが河合塾は同日、該当の教科書で履修した生徒に対して問題が不利益になったこと、普仏戦争の敗北と第三共和制成立の定義について再考してもらいたいとして、質問状を送付している。
  • また河合塾は化学 I 第 4 問問 4 加水分解後の物質より元のエステルの構造式を問う問題についても、ギ酸フェーリング反応をせず、問題文中の記述「b 得られたカルボン酸は、フェーリング液を還元した」を正確に考えると正解がなく、深く学習をした受験生にとって不利益になったとして質問状を送付している。これに対して大学入試センターは26日、ギ酸とフェーリング液との反応については、通常のアルデヒドと同様に反応性を示すという文献と、ギ酸はフェーリング反応を示さないとの文献の2種類があるが、センター側による実験の結果、ギ酸がフェーリング液を還元することが確認されているため、正答は存在する、と回答している。
  • さらに、愛知県の県立高等学校に勤務する非常勤講師から、物理 I 第 1 問問 1 変圧器の原理を問う問題において、通常の変圧器の計算方法から算出される「5ボルト」が正解とされているが、実際に問題内の図で示されている装置を用いて実験を行った場合、約1.8ボルトしか観測されず、明らかに出題ミスであるとの指摘があったが、センター側は「各科目ごと20人程度が問題作成に関係しており、次回の参集時に検討してもらう。」として、それ以降の回答を行っていない。これは、物理の実験を日頃から行っている者であればすぐに気付くミスであり、今後、等問題がセンター試験の過去問として、事実として広く浸透してしまうことが危惧されている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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